暗麺麭男   作:ゆうれい

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#3  I don't like not being able to answer the questions

『死の宴(デスゲーム)』

 

1、4日間の『殺戮人形(トークン)』との殺し合いである。

2、『死の宴(デスゲーム)』は、《フード世界》の住人の中で6人選抜して参加させる。

3、『死の宴(デスゲーム)』中は『暗がりの森』から出てはいけない。

4、もし、参加した住人が1人、死《リタイア》した場合は『死の宴(デスゲーム)』参加者以外の住人を処刑するペナルティが発生する。

5、『死の宴(デスゲーム)』中は『暗がりの森』から出てはいけない。

 

《ヤマダ》の口から『死の宴』の説明がされると、住民側に『死の宴』の出場者を決める話し合いをする時間を与えられた。

それと同時に住人達の間に殺伐と静寂した空気が流れる。

暗い、暗い、暗がりの森の中で、ある者は震え、ある者は絶望し、そしてある者は、これから行われるであろう虐殺に、ただただ涙を流していた。

そんな中、その静寂はある者たちによって破られる。

 

「アタシは絶対に嫌です!」

「そんなの私だって嫌よ!」

 

拒絶。

そんなものは、誰だってそうであろう。

ただ、この場で言葉に出して言わないだけだ。

誰が、自ら進んで地獄に身を堕としたいと思う?

誰が、《ニンゲン》側に落ちたとは言え共に生きてきた仲間を地獄へ陥れようと思う?

「そんなことは誰だって嫌だ。」

皆、口を揃えて言いたかった筈ではあるが、それを口にだすのを躊躇っていたのだ、

もし、それを言葉にしてしまったら、認めてしまう気がして。

それを、言ってしまえば、卑怯者になるような気がして。

それを吐いたのは、先日、《ヤマダ》の性奴隷になったドキンちゃんと、メロンパンナであった。

この両者は性奴隷になることで少しでも《ニンゲン》側についていたと思っていたのであろう。しかし・・・

 

「は?お前たちも参加するんだぞ?」

「「え・・・・?」」

「ヒャハハハ!勘違いしてもらっては困るぜ?俺はビッチが嫌いなんだよ!」

 

《ヤマダ》から告げられた言葉は、その二人の考えや気持ちなどを裏切るなんとも残酷であり外道なものであった。

しかし、それでも《ヤマダ》への批判や憎悪の言葉などが彼女たちの口からでてこないのは、それだけ《ヤマダ》のもつスキル【異性への魅了(ニコポ・ナデポ)】が凄いのか、それとも、単に《ニンゲン》が恐ろしいだけなのか、彼女たちの心境は読めない。

 

二人は言い争い、それが掴み合いにまで発展したときであった。

 

「いい加減にしなさい!今は争ってる場合ではないでしょう!?」

 

怒りの声を上げたのは《バタコさん》であった。

思わぬ人物からの一括に争っていた人物は一瞬、肩をビクリと震わすが、

しかし、すぐさま反論する。

 

「バタコさんは、《死の宴》に参加しないからそんなこと言えるんです!」

「そうよ!いいわよね。貴方は弱いから。他人に命を預ければいいのだから。背負わされる身にもなってみなさい!」

 

そう。《ヤマダ》が説明した《死の宴》と呼ばれる殺し合いの厄介な所は、参加者一人が死亡した際に住人一人を処刑するといわれるルールにある。

この《フード世界》で一定の戦闘能力を保持しているものは、今まで他者の命を背負って戦ったことがない。

何故なら、今まで“死”という概念から余りにも遠い生活を送っていたのだから。

だが、彼等は知ってしまった。《ニンゲン》がフード世界にやってきて、それを嫌というほど体験してしまった。今まで隣で笑い、語り合い、生きてきた者が簡単に死んでしまったのだ。その、命の重さ、それを背負うという事に、生き残ったフード世界の強者達は皆、言いようのない恐怖と、逃げ出したくなるほどのプレッシャーを感じていたのだった。

フード世界の一定の戦闘力を保持するものでさえこれなのだ。

戦闘能力を保持しないバタコさんには、その言葉に押し黙ってしまう。

 

「僕がでますよ。」

 

そんなときだった。

その声に皆は揃ってその声の主の方に顔を向ける。

カレーパンマンである。

 

「でも・・・!!」

「ピンチに、僕たちヒーローが向かわない訳にはいかないんだ。こんな事では死んでしまった他のヒーロー達に顔向けできません。安心してください。4日生き残ればいいんだ・・・!絶対に生き残ってみせます。」

 

カレーパンマンはバタコさんが抗議に近い声を半ば強引に押し切る。

その姿は、久しく忘れていた、しかし、前はそれが当たり前であったヒーローのそれであり、その姿に住民達は一筋の希望を、生への期待を見出す。

 

 

「そうだ・・・!4日生き残ればいいんだ・・!」

「うん・・!私たちの命預けます!」

「なんなら、僕も出ようかなぁ?」

「ちょ・・・。カバオくん無茶すんな」

 

諦めてなるものかと。絶対に生き残ってやると。

そして、この《死の宴》に挑まんとする、6人の代表者が決められる。

丼マントリオ、カレーパンマン、メロンパンナ、そして、アンパンマンである。

それぞれの、命の手綱は、てんどんマン=みみ先生、かまめしどん=やぎ先生、

カツ丼マン=犬のおまわりさん、メロンパンナ=ドキンちゃん、カレーパンマン=バタコさん

アンパンマン=カバオくんが握っている。

ちなみに、命を預ける側は住人の大人を中心に選ばれており、カバオくんは残った住人の子供の中からくじにより選ばれたのだった。

 

 

「ヒャハハハ!どうやら、戦闘能力がある者が順当に選ばれたらしいな!」

「そうでヤンスね!旦那!」

「ヒャハハハ!では、《タナカ》例のやつを頼む。」

 

《ヤマダ》の支持を受けた両者が反応し、《タナカ》は【悪食の大斧(ジャイアント・クロタ)】を振りかざし、【作成(メイク)】のスキルを使用し、近くにあった岩を切り裂く。

巨大な大斧の刃が口のようにパックリ開き、それは岩を正しく食うように取り込み、モグモグと歯で噛むように砕いた。

数刻後、【悪食の大斧(ジャイアント・クロタ)】の口から大きな鏡が現れる。

その大きな鏡は、怪しく輝き、地獄への挑戦者である六人を映し出した。

 

「ヒャハハハ!いつ見ても便利だな!お前の【悪食の大斧(ジャイアント・クロタ)】で奪った【作成(メイク)】のスキルは!」

「 cool japan hentai!」

「ヒャハハハ!喜べ!お前ら!この!楽しい楽しい、殺し合いに参加できない奴も、ライヴ中継で、状況が感じられるようにモニターを作ってやった!さぁ、命がかかった楽しいゲームを一瞬も見逃すなよ?」

 

《ヤマダ》が狂気に満ちた笑を浮かべ言い放つ。月に照らされるその顔は、酷く整っていた。

 

「ヒャハハハ!!それでは、退屈なこの世界にオサラバをする『死の宴(デスゲーム)』の開演をつげる!精々、4日間生き残って俺達を楽しませてくれ!!!」

 

《ヤマダ》が己の右腕を天高く翳し、その指の1本1本から、青白い光弾を発射する。

それは、フード世界の空で爆ぜて真っ赤な花火のように、最高でクソッタレな『死の宴(デスゲーム)』の開演式を彩ったのだった。

 

 

 

 

 

────暗い、暗い、暗がりの森を駆ける。駆ける。

────走る。走るは6人の挑戦者。追うは百の殺戮者。

──── 一方はただ生き残る為に。もう一方はただ殺す為だけに。

 

 

ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!

静寂包まれる暗がりの森を一定の歩幅、一定のリズム、の音楽が聞こえる。

それは『殺戮人形(トークン)』の足音である。

 

「(くそが、お前達も“アレ”を作った者ならその性能が分からん訳じゃないだろうに)」

 

暗がりの森、中心部。木の影に息を潜ませ、一人悲観する者がいた。

アンパンマン、改め『暗麺麭男』。

そう。この『死の宴(デスゲーム)』。はじまった時点で詰んでいるのだ。

『殺戮人形(トークン)』は自分並みの戦闘能力を保持していて、決して疲れない。

おまけにその数は百体。

唯一の欠点である視覚をもたないことは、熱により敵を判断するという奴らに、この薄暗い暗がりの森では大してマイナスには働かないであろう。

その事を、《ニンゲン》の命令であるとは言え開発に関わったとも言える、彼は理解していた。

 

「(どうにかして、生き残らなくては・・。俺はまだ・・)」

 

死ぬわけにはいかない。

今の状況は、彼の中で、芽生えた「強い者の味方」という概念には当てはまらない。

味方であるならば、こんな真似をする筈ないのだ。

強くなりたい。彼ら《ニンゲン》はあそこまでの強さの頂上にいて、どのような世界を

見ているのだろうか?それが分かるまでは。

 

ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!

死神の歩み寄る音が近くなる。

今は、思考している暇などないか。そう思い彼は、潜んでいた木の影から身を離し

再び、足を動かす。

 

 

暗い、暗い、暗がりの森の中心部からやや東。

そこには共に駆ける3つの影があった。

どんぶりまんトリオである。

彼らは、《フード世界》のヒーローの中でも余り力がある方ではない。

故に、三人固まって行動していた。戦闘になっても大丈夫なようにと。

しかし、彼等は理解していない。それがこのゲームで如何に危険であるかを。

『殺戮人形(トークン)』は熱に反応する。その狩人にとって、3人固まって行動するということは、獲物の居場所を教えてるのと同じ事であった。

 

3人はあっという間に、『殺戮人形(トークン)』に囲まれる。

 

「くそ!囲まれちまったっす!」

「強引に突破するしかないようざんすな!」

 

3人は、自らを囲む『殺戮人形(トークン)』を相手に構えをとると、その内の一体に向かって一気に駆けだした。

 

「釜飯空手!正拳突き!」

「天丼剣術!箸挟み!」

「カツ丼蹴術!回し蹴り!」

 

それぞれが、『殺戮人形(トークン)』を相手に、

かまめしどんは拳を、てんどんまんは鋼鉄の箸を、かつどんまんは蹴りを、その殺戮者に叩き込んだ。

電光石火の3人の連携に、その技をうけた『殺戮人形(トークン)』は

後ろに3メートルほど

吹き飛ぶ。その体は木に激突し、ドォンと大きな音を立て動かなくなった。

 

「今だ!!」

 

円のように囲っていた『殺戮人形(トークン)』たちの陣形がわずかに乱れる

その隙をつき、3人は駆け出す。

しかし・・

 

「うがッ・・・・!!!」

 

かまめしどんが何かに足をとられ体勢を崩し、地面に倒れこむ。

その足をとられた原因は、先ほど自らが殴り飛ばした『殺戮人形(トークン)』であった。

その『殺戮人形(トークン)』が、かまめしどんの足をつかんでいたのだ。

 

「かまめしどん!!!」

 

すぐさま二人は、振り返り、かまめしどんの足を掴んでいる『殺戮人形(トークン)』を振り払おうとするが、二人はかまめしどんを見て絶句する。

彼は足の骨が砕けていた。

『殺戮人形(トークン)』の恐ろしいところは、その驚異的なパワーとタフネスにある。

作成者である《ニンゲン》は動きの速さや、視覚をもたない代わりに、獲物を捉えると何があっても離さないと肉食獣とばかりにそこを重点的に強化していったのだ。

 

「オラのことはいい!後で追いつく!先に行ってくれ!」

 

かまめしどんが、叫ぶ。

二人はすぐそれが、虚勢であることを察した。

しかし、何も言うことはできない。彼は覚悟をきめたのだと。

自らが足手纏いにならぬ為に、ここで死ぬつもりだと。

その、かまめしどんの思いを無駄にせしないためにも二人は歯を食いしばり、涙をみせぬように前を向き、走り出す。

 

「行ったか・・・」

 

かまめしどんは、二人が行ったのを確認し、自らの足をつかむハンターに意識を戻す。

思えば、二人とは喧嘩ばかりしていた。

どちらが、真に美味しい丼かを毎日のように議論する。

時には、殴り合いもした。時には、「お前、丼じゃないじゃねーか!」という暴言をはかれ

傷ついたりした。しかし、いつのまにか、認めていた。いつのまにか、友となっていた。

かまめしどんは、苦笑いし、物凄い力で足を掴まれてるのも関わらず、立ち上がる。

ブチっという嫌な音と共に、かまめしどんは激痛を感じた。みると掴まれていた足がちぎれていた。

 

「(ふぅ・・・、ヤギ先生。済まないだー。オラ、ここまでだべさ・・)」

 

心の中で、自らに命を預けたヤギ先生に謝罪をすると、かまめしどんは激痛に耐えながらも、いつのまにか囲まれていた『殺戮人形(トークン)』に向けて構えをとり、駆ける。

 

「うぉおおおおおおおお!!!!」

 

かまめしどんの、咆哮が暗がりの森に木霊した。

暗い、暗い、暗がりの森。宴はまだ始まったばかり。

 

 




厨二の妄想を文章にするのってすごく難しいです・・;;
頭の中ではこう思ってるんだけど、自分の文章力じゃ上手く書けないみたいな。
僕のオナニーを読んでくれた人に感謝。

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