不屈のエース~甦るレジェンド~   作:フリュード

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3日連続!


第5話 一軍へ・・・ 

翌日、青道高校 1-1

 

「良いよなぁお前。」

 

「凄いな!」

 

 

「まぁな。このチャンスは絶対に逃したくないな。」

 

 

武藤は倉持・川上に昨日のことを言うと羨ましがられた。武藤は決して自慢はせず、普段どおりの態度でそう言う。

 

「ほんとにええわぁ。俺らの分まで頑張れよ翔也!」

 

「あぁ、頑張るわゾノ。」

 

違うクラスで武藤達と同じ野球部所属のいかつい風貌をしている、ゾノこと前園(まえぞの) 健太(けんた)も武藤にそう言ってくれた。

 

「ははは。お前も一軍に来たのか。」

 

前園と同じクラスで、一軍である御幸も武藤にそう言ってきた。

 

「おう。すぐにそっちに来れたわ。」

 

武藤は満面の笑みでそう御幸に言い返した。

 

「はっはっは。というわけでお先に~♪」

 

御幸は笑うと、他のみんなに嫌味を言っていた。

 

「じゃかましいわ御幸!お前は一軍だからって。」

 

「はっはっは。悪いなゾノ。」

 

切れる前園に御幸は笑いながらそう言った。

 

「まぁまぁ。おちつけ・・・・」

 

「そうだよ。まったく。」

 

武藤と同じクラスで友達である白州(しらす) 健二郎(けんじろう)とノリは2人をなだめていた。

 

 

 

(よし!やってやるぜ!)

 

前園と御幸のやり取りをしている間武藤は1人そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ってなぜランニング。」

 

武藤はげんなりした表情で走っていた。1軍にあがってもランニングをすることには変わらず、それに加え明日は関東大会があり、武藤はそのメンバーには入らないのでやることは2軍と変わらなかった。

 

 

「最初はランニングしてからブルペンに入るんだよ。けどお前は関東大会には出ないから入るかどうかは分からないな。」

 

青道のエースである短髪のさわやかな表情が特徴的な3年生の細野が武藤にそう言ってきた。ちなみに細野と武藤ともう一人、2年生の丹波の3人で走っていた。

 

「ん~投げたいです。」

 

やはり投げたい気持ちが抑えられないのか、武藤は細野にそう言った。

 

 

「まだ分からんからとりあえず走ってからだ。」

 

「うーす。」

 

細野とそんなやり取りをしながら武藤は走っていた。

 

一方丹波はというと

 

(絶対1年には負けん!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

「・・・・ははは。オーラ出まくりじゃないですか。」

 

そんなオーラがでまくっているのを武藤でもわかった。武藤は丹波のほうを見て苦笑するしかなかった。

 

「はは、丹波はあーいうやつなんだ。許してな。」

 

「はは。大丈夫です。投手はそういうやつですから。」

 

苦笑しながら細野がそう言ったのに対し、武藤はそれが当たり前ですからと言っておいた。

 

(俺だって今右で何処までいけるのか試せるチャンス。闘争心なら誰だって負けていない!それに俺には後がもう無いんだ!!!!)

 

武藤も丹波と同じ思いを抱いている。負けじと武藤も闘争心を前面に押し出す。

 

「・・・!!!(俺とて負けん!!)」

 

丹波も武藤のそれを見てさらに出し始めた。

 

「・・・(3年がこれを見て出さないわけにはいかないな・・・勝つのは俺だ!)」

 

「「・・・!!!」」

 

細野は2人の出し合いに刺激を受け3人が3人お互いに譲らない思いをしながらランニングをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!!

 

「ナイスボール!」

 

御幸がそう言っていた。ブルペンでいい音が鳴るたびにギャラリーからおお~と感嘆の声がする。

 

『良い球投げるな彼。』

 

『ですよね!彼まだ一年生ですって。』

 

『ええ。知っていますよ。彼は中学校から期待のルーキーとして言われてきましたからね!』

 

『それは聞いていますよ!けど彼肩壊したって聞きましたがね・・・それでもあのストレートのノビは将来性抜群ですよね!』

 

『ええ。漸く青道の長年のネックも解消されそうですね!』

 

ギャラリーからそんな声が聞こえてくる。

 

(いい音するなぁ・・・・)

 

細野はブルペンに入りながらミットの音を鳴らしている主、武藤翔也を見ていた。

 

 

(まだ球速は遅いが、利き手を変えてもこのストレートのノビ・・・中学のときもえげつなかったけど、これも成長したらもっとやばいと思うな。)

 

細野は武藤の投球を見て汗が一粒流れるのがわかる。

 

 

細野はシニアからここに入学したが、シニア時代友人を応援しに軟式の全国大会を見に行ったときものすごい球を投げていた投手に細野は凄いと思った。それが当時中学2年生の武藤だった。

 

今は利き手も変わってしまったが、感じるものって言うのは変わらないというのが本音だ。

 

いつの間にか指導者みたいな感じで思っていた細野はすぐに切り替え、ブルペン投球をやり始めた。

 

ひゅっ! ドン!!

 

『おお~細野も良い音させますね!』

 

『ええ。けど細野もコントロールが良くなればもっと良い投手になれるんですけどねぇ・・・』

 

(そんなことは分かっている・・・俺とて考えずに投げているわけじゃない!!!)

 

ギャラリーから聞こえてくる声に細野は強くそう思いながら一球一球力をこめて投げていた。自然とミットの音も変わってくる。

 

ドン!!ドン!!ドン!!!

 

「おぉ、細野さんすごいな・・・よーし、俺も。」

 

その音を聞いて武藤はさらに燃えたのか、投球に身が入り始める。

 

(見てろよ武藤、丹波・・・エースは俺だ!!)

 

彼も3年。最後の夏にかける思いはだれよりもある細野は熱い闘志を内に秘めながら一球一球投げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カン!!!

 

「ボール三つ!」

 

ノックの時間にて捕手・クリスが指示をすると武藤は華麗な動きでボールを三塁に投げた。

 

「アウト!」

 

三塁の審判役の生徒はそう言った。

 

今は2塁ランナーがいることを想定して、バントノックをしてなるべく進塁を阻止させようとするバント処理の練習だが、ここまで武藤は全部進塁を阻止している。

 

「スゲーな武藤。俺も守備はいいほうなんだけどなぁ。」

 

「いえいえ、スタートダッシュと下半身さえしっかりしていればなんとか行けます。」

 

「やっぱり終盤にバントしかけてくると下半身の疲労度でランナーを刺せるかどうか変わってくるからなぁ。」

 

武藤は終わった後投手陣の輪に戻ると細野と話をしていた。

 

「・・・」

 

「丹波君。そんなに睨まないでくださいよ。」

 

「君はやめてくれよ武藤。」

 

「睨んでばかりじゃないですか~それ止めてくれるんでしたら僕もやめます。」

 

「・・・・」

 

変わらず武藤をにらむ丹波に絡む武藤でもあった。

 

「やはり投手の守備というのを分かっていますね彼。」

 

横で見ていた高島部長も片岡と同じ思いを口にしていた。

 

「ええ。フィールディングも打球反応もバント処理も全てにおいて他の投手より桁外れに違う。守備が上手い細野と比べても武藤のほうが上手い。」

 

片岡はそう言った。が、もう一つ片岡が武藤が凄いと思ったことがある。

 

 

ここまでノックから連続で一番きついバント処理の練習をしていて他のものは足に来ているのに未だに武藤の下半身がしっかりとしている。

 

(そういや町内マラソンに良く出場したり、日課でランニングをしていると言ってたな。ならば下半身はすごい鍛えられているに違いない。見ていても無駄な筋肉がついていないことが見て取れる。ふん・・・これはうちに来てもらって正解だったな。)

 

片岡はフンと、小さく笑い練習を見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習終了後

 

「・・・以上のメンバーで明日の関東大会は戦っていく。今回は全員参加だから時間に間に合うように。以上解散。」

 

『したぁぁぁぁ!!!』

 

片岡監督が明日の予定を言った後、部員が大きな声で礼を言い練習が終わった。

 

 

 

「ふ~終わった。」

 

解散した後武藤は汗を拭いながらそう言った。

 

事前に武藤は関東大会には出さないと片岡から言われていたので、今回は応援席からの試合見学ということになった。

 

 

「武藤。」

 

「あっ!哲さん。」

 

武藤を呼ぶ声がしたので振り返ると、2年生の中で唯一のレギュラーである結城がいた。

 

 

結城と武藤は練習初日に伊佐敷さんに言われた通りランニングコースを教えてもらって以来、一緒に走るようになった。

 

「明日も行くぞ。」

 

結城がそう言った。多分ランニングのことだろう。

 

「了解っす。明日の関東大会俺は出ませんが。」

 

「はは。けどお前のペースはホントに良い汗を出せるから走ってくれないか?」

 

武藤の発言に結城が笑いながらそう言った。そういわれると武藤は嬉しくなった。

 

「別に走らないとはいってませんよ!俺も毎朝の日課ですし、走りましょう!」

 

武藤が結城に言うと、「そうか、良かった。なら明日の朝な。」と言い、結城は帰っていった。

 

 

「しかし哲さんすげーよな。帰っても素振りをするって言うのは。」

 

武藤は歩きながらそう呟いた。ランニング中に結城が、家に帰っても素振りを毎日欠かさずやっていると言っていた。こつこつとやっている姿勢に武藤は感動した。

 

「はは。だから哲はあの結果を残していると俺は思うがな。」

 

「えっ!クリスさん。」

 

いつの間にか横に立っていたクリスに武藤は驚きながらも何とか言い返した。

 

「だがお前も肩を壊しながらここまで血反吐を吐くような努力をしてきたからこそあのノビのあるストレートを繰り出せるんだろう。そういう意味ではお前も努力の量で言えば哲には負けていないと思うぞ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

武藤は褒められて嬉しくなりクリスにお礼を言うと、クリスもにこりと笑いながら、寮へと戻っていった。

 

 

 

「・・・・・・・」

 

「はっはっは。良かったな褒められて。」

 

クリスが帰ってから、クリスが帰っていった方を見ていた武藤に御幸が声を駆けてきたが、武藤は真顔でクリスの帰る方向を見る。

 

「ん?どうした翔也。」

 

「・・・ちょっと練習中に気付いたことなんだけど・・・・」

 

そう言い、武藤は気になったことを御幸に言った。

 

 

「・・・ははっ。冗談言うなよ翔也。」

 

それを聞いた途端、御幸が顔をゆがめてそう言った。

 

「まだ分からない。けど明日の試合でそれが出てくるかもしれない。このことは冗談でもクリスさんやみんなには言うなよ。」

 

「・・・・分かった。」

 

武藤が釘を刺しながらそういうと御幸は表情を曇らせながらそう言った。

 

 

 

武藤が御幸に言ったこと、それはクリスが肩を痛めているかもしれないということだった・・・・




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