不屈のエース~甦るレジェンド~   作:フリュード

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気力がある限り俺は突っ走るぜ!うおおおおおおおおおおおお!!!

・・・直しをくっつけたりした結果、過去最大字数になっちまったのは勘弁で。




第4話 対決

「ふわぁぁぁぁ・・・」

 

朝早く、いつも通り起きた武藤はすぐに着替え外へと出た。

 

「そういや、今日は早めに練習切り上げるって言ってたな。」

 

武藤は練習着に着替えている中、昨夜の監督が言ったことを思い出していた。

 

 

 

 

『明日から入学式だから朝練は早めに切り上げる。』

 

 

今日は入学式なので朝練習は早めに切り上げると昨日監督が言っていた。

 

(よーし、今日から高校生活の始まりだ!)

 

練習着に着替えた武藤はこれから始まる学校生活に内心わくわくしていた。

 

着替えを終えた武藤が外に出ると朝早くなのに既に先輩たちが外にいた。

 

「毎日毎日早いなお前。」

 

先に出ていた伊佐敷が苦笑しながら武藤にそう言ってきた。

 

「ははは。今日が入学式でもやることは変わりませんから。」

 

武藤はストレッチをしつつ笑いながら伊佐敷にそう言った。

 

「おお!?言うじゃねえかこの~」

 

「いででででで!!」

 

ニヤリと嫌な笑みを浮かべた伊佐敷が首を絞めてきて武藤は痛みのあまり叫んでいた。

 

「くすっ。それ以上やると翔也が死ぬからやめておいたら?」

 

「けっ、これぐらいにしてやらぁ。」

 

小湊がそう言ったので伊佐敷は武藤を離した。武藤は掴まれていた首をさすりながらふぅと一息ついた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「はは。大丈夫っスよ増子さん。」

 

それを見た伊佐敷と同級生である増子(ますこ) (とおる)が心配してくれたので武藤は苦笑しながらそう言う。

 

「ヒャハ!笑えるわぁ武藤。」

 

「倉持てめ~」

 

すると増子さんのルームメイトで同級生の倉持がそう言って笑っていたのでカチンときた武藤はそう言い追いかけようとしたときに他の皆が出てき始めたので武藤は追いかけるのをやめた。

 

 

「よしっ!練習行くか!」

 

伊佐敷がそう言いグラウンドへ行ったので武藤も一緒にグラウンドへ向かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、オレのクラスはどこかな?」

 

そして朝練が終わり、制服に着替えた武藤は他の新入生でごった返す高校の玄関前で、貼りだされたクラス表を見ながら自分のクラスはどこか探していた。

 

「ヒャハ。俺は何処かな~」

 

倉持も近くにおり、一緒になって探していた。

 

「うーんと・・・あった!」

 

探していた武藤は漸く自分のクラスを発見したので声を上げた。

 

1年1組

 

川上 憲史

 

倉持 洋一

 

武藤 翔也

 

「おっ、翔也と一緒か!」

 

「翔也とか、よかった~」

 

川上と倉持が武藤と同じクラスでよかったのかほっと一息をついてそう言った。

 

「これからよろしくな2人とも。」

 

『おう。』

 

武藤がそう言うと2人は返事をした。

 

いつまでもここにいると迷惑なので武藤たちはさっさと学校の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サード!行ったぞ!」

 

入学式が終わり、授業が終わってからも野球の練習はあるので武藤もしていた・・・ランニングを。

 

「くそっ!御幸は1軍の練習に参加しているのに!」

 

倉持が愚痴をこぼしながら走っていた。

 

「仕方が無いだろ。俺から見ても御幸のプレーは凄いと思うし1軍には行ってもおかしくはない(・・・でも良いなぁ)。」

 

武藤は口ではそう言うものの内心羨ましいと思いながら先輩と一緒に練習している御幸を見た。

 

ポジション別テストが終わった後も1年生は変わらずランニング中心のメニューをこなしていた。しかし一年目から練習に参加できるほど甘くないとは武藤も重々承知していたが、それでも投げたいという欲が抑えることが出来ない。

 

片や御幸は即戦力として走っている武藤たちとは違い、1軍の練習に参加していた。

 

青道は春の大会を勝ち進んでおり、今週の土曜日には試合をするそうだ。御幸はそれに出るため1軍に呼ばれたと本人が言っていた。

 

「けどクリスさんと比べるとまだだけどな。」

 

「なんか上からだなノリ。」

 

「え!?いやそういう意味で言ったわけじゃ!?」

 

「冗談だよ。まぁ、俺も思っていることだしな。」

 

走りながら川上が上から目線で言ったので武藤が茶化すと川上はものすごい勢いで首を横に振りたくった。

 

今の正捕手は2年の滝川・クリス・優と言い、シニアでは№1捕手と有名だったらしくプレーを見ても2塁への送球は御幸よりも鋭く早い送球を投げている。

 

「くっそ~行きたいあそこに。」

 

武藤は自分の気持ちを抑えきれずに自然とそう言った。

 

「ひゃ、は。まったくだよ!(けど話しながらでもこのスピードをかれこれ10分以上持続している。凄いな。)」

倉持はそう言いながら内心走り始めてからずいぶん経つのに肩で息をしていない武藤の凄さに驚いていた。

 

 

そして10分走った後、打撃練習をするため1年は守備につき始めた。

 

「おい武藤。」

 

「何ですか先輩?」

 

武藤も1年と同じように守備に就こうとしたら先輩に呼び止められたので武藤は立ち止まって振り返る。

 

「すまんがバッティングピッチャーを頼む。」

 

「分かりました(やった投げられる!)。」

 

武藤は内心ガッツポーズをし、マウンドへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おら~1年のがきが、はよ投げんかい!」

 

武藤がマウンドに着くと、最初のバッターである東が待たされた鬱憤を晴らすように俺に怒鳴ってきた。

 

(ちっ、黙れやデブが。ちょっと打てるからってこの態度ってどうかと思うがな。)

 

怒鳴る東に腹を立てた武藤は内心悪口を言いながらヘッドバンドを付けたりと準備をした。

 

武藤の言動から分かるように武藤は東の事を快くは思っていない。確かに東はチームの打の柱であり、パワーも規格外である。だが、所々に見られる少し見下した態度が武藤にとって気に食わないのだ。

 

準備をしながら武藤は周りを見ると、監督が見ているのを確認する。

 

「(認めてもらえるチャンス!)それでは行きまーす。」

 

ここでアピールのチャンスだと思った武藤はそう言い投げ始めた。

 

ノーワインドから投げ始め、足を上げる際にグラブも一緒に上げてからキャッチャーが構える位置、アウトローへと投げた。

 

パァン!!!

 

一球目、きれいな音を立ててミットに納まったボールを東は打たず見送った。

 

「・・・入ってるかの?」

 

「えぇ。ギリギリ入っています。」

 

東はキャッチャーに入っているのか確認をしていた。

 

「おお・・・(えげつないでこいつ。球速自体は早くないとは聞いているのに球が伸びている所為か早く見えるのぉ・・・ええピッチャーやの。)」

 

初球を見送った後、東は武藤に対しての評価を改める。

 

「2球目行きまーす。」

 

会話が終わるのを見て武藤は投げ始めた。

 

 

今度はインハイだった。

 

「オラアアア!!!」

 

ガシャン!

 

そう言い東さんが振るが前に飛ばず後ろのゲージにあたる。

 

「・・・くっ!(何やこいつ。この俺が打てないやと。くそぉ!!!)」

 

東はそう言い苦虫を噛んだような顔をしていた。

 

2人対決にのざわつき始める。

 

『おい、あの東さんが打てていないぞ。』

 

『誰だアイツ。』

 

周りの声は武藤の耳にもそれは届いていた。

 

(よしっ!次で決めて見せる。)

 

もはやバッティングピッチャーということを忘れ武藤は再び投げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・インハイを投げた後のストレートなら次は・・・ここ!」

 

3球目武藤が投げたボールはインハイから対角線上にあたるアウトローに向かっていく。

 

 

「・・・ふん!」

 

キィイイイン!

 

「うはっ!?」

 

東はコースを確認するやいな体制を崩しながらも強引にライト方向に流す。惜しくも打球はポールの右に切れる。

 

「・・・遠く見えると思ったんだけど、ただガタイが良い訳じゃなさそうだな。下半身の粘りがやばいな・・・やっぱスゲー。」

 

武藤は打球の方を見た後呟いた。明らかに体制を崩したと思ったが強引に打ちに行った打球はあわやホームランに3年の怖さを実感する。

 

 

「くそっ!あとちょっとやったのに!(・・・とは言えこれで球速が速くなったら・・・分からんな。)」

 

東は悔しがるが内心ほっとしていた。まだまだ球速が遅いので強引に打ちに行けたがこれからの事を思うと背筋が凍る思いである。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

「ふん!」

 

キィン!

 

4球目、インコースに投げたボールを巨体をねじらせながらレフトに引っ張るもファールとなる。

 

「・・・・・・まじか。」

 

武藤もインコースを上手く捌いてくるとは思わなかったようで驚愕の表情を出す。

 

「おいコラァ!お前わしが巧く捌けないと思ったかぁ!」

 

東はこめかみに青筋を立てながら叫んだ。

 

「いや~思ってないすよ!」

 

そんな東に武藤はさわやか笑顔で答える。

 

「ぬぅ~~~今すぐその表情を変えてやるから覚悟しとかんかぁ~い!」

 

しかしその反応が気に食わないのか東はついに切れた。

 

 

 

 

 

 

『なぁ、これって練習より対決じゃないか?』

 

『監督は何も言わないが大丈夫なのか!?』

 

ただのバッティング練習が対決と化してきたため周りも当然大丈夫なのか心配になってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「だ、これは大丈夫ですか片岡監督!?」

 

「・・・・・・」

 

太田はあたふたしながらも片岡に言うが片岡は無言を貫く。

 

「(・・・ふふっ、内心武藤君が抑えるのが見たいのか・・・どうかしらね。)」

 

高島は片岡の表情を見ながら笑みを浮かべる。高島自身もこの2人の対決は見てみたいと思っていたので何も言わなかった。

 

「ふぅ~・・・大丈夫。集中。」

 

心を落ち着かせる武藤。もはや試合モードになってきているのを武藤は無意識に感じ取った。

 

 

・・・がばっ!

 

「(あっ・・・いい感じ。)・・・・ふっ!」

 

スムーズに動作を行えるのを感じた武藤はリリース時にしっかりとバックスピンがかかった渾身のボールをアウトコースに投げ込んだ。

 

「うおおお!!!」

 

東はこれ以上ない気迫のフルスイングでボールを打ちに行った!

 

 

・・・・だが、武藤にコケにされたからか頭に血が上りスイングに力みが出ていた。

さらに東はスイング開始時にヒッチ(バットのグリップを上下すること)する癖があり、頭に血が上っているせいか体の上下したため目線がぶれる。

 

 

 

 

・・・・武藤が投げたボールはバットの下をくぐり乾いた音を鳴らしミットに収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おおお!!???』

 

『あの東さんが空振り!?』

 

ミットに収まってからぶりが成立した瞬間周りがどよめいた。

 

 

 

 

 

「・・・よしっ!」

 

東を空振り三振にしとめた後、武藤はガッツポーズをした。

 

武藤が気持ちを込めて投げたボールはアウトコースに行き、東が振ってきたが当たること無く、空振り三振となった。

 

 

 

 

 

「くっ・・・・」

 

東さんが悔しさを隠しきれず、その場を去っていった。

 

「それじゃ、次「武藤、交代だ。」・・・えっ?」

 

次のバッターに投げようとした武藤に片岡がようやく口を開く。

 

 

「それと武藤。練習が終わった後監督室に来い。」

 

そういい監督もその場を去っていった。

 

「・・・・クッ(チャンスだったのに)。」

 

せっかく空振りをとったのに・・・悔しい思いをしながらも武藤はマウンドから降り、外野へといった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃは。残念だったな。」

 

「凄いよ!東さんを三振に取るなんて。」

 

武藤が外野へ行くと倉持と川上が出迎え、武藤にそう言ってきた。

 

 

「・・・まぁな。」

 

しかしぶすくれた表情の武藤は短くそう言い外野の守備をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(流石武藤だな。これはもしかすると・・・な。)

 

スローイングの練習をしていた御幸は武藤を見てそう思っていた。

 

「・・・東さんを空振り三振にしとめたアイツは誰だ?」

 

一緒に練習をしていた正捕手であるクリスが聞いてきた。

 

「クリスさん。アイツが武藤翔也です。」

 

「あぁ、あいつがかつてレジェンドって呼ばれてた。」

 

クリスは武藤に興味を持ったのか表情をピクリと動かした。

 

「えぇ。あいつ肩を壊して右に転向して1年であれですよ。」

 

「なに?」

 

クリスもその情報にはさすがに驚く。

 

「(当たり前だよなぁ・・・俺もテストのときに受けさせてもらったけどどれもキレがあって、かつストレートも130キロ近く感じるくらいのノビのあるストレート。今まで受けてきた投手とは比べ物にならないくらいだった。)」

 

クリスの驚いた表情を見て御幸は苦笑する。

 

「(それにあの東さんをストレートだけで三振とか怪物かよ。東さんがキレてたのもあるけどやっぱ翔也はスゲーな。)」

 

御幸は改めて武藤のすごさを実感する。

 

伸びるストレートは一流の証。まだまだ球速は無いにしてもこれからが楽しみでもある。

 

「・・・・」

 

するとクリスは思いつめたような顔をしていた。

 

「クリスさん?」

 

「!!!あぁ、すまんな。再開しようか。」

 

「はい!」

 

御幸はクリスに聞くとクリスはすぐに気がつき、御幸にそう言い練習を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習終了後 監督室

 

 

「失礼します。武藤です。」

 

練習が終わった後、武藤は監督室へ来ていた。打撃練習時、片岡に呼び出されたからだ。

 

「良く来てくれたね。こっちへ来て。」

 

「はぁ・・・」

 

高島に案内されて、武藤は椅子に座った。

 

「さて、俺が言いたいことは分かるか?」

 

椅子に座った後、片岡が武藤に何で呼ばれたのか分かっているかのような物言いで言ってきた。

 

「打撃投手の件ですか。」

 

「そうだ。あれは明らかに勝負感覚で投げていたな?」

 

武藤が聞くと、片岡が頷きながら言い武藤にそう聞いて来た。

 

「・・・はい。確かに勝負感覚で投げていました。監督に認めてもらうためにやっていました。けど俺はしっかりとミットをめがけて投げていました。でも自分の球なら東さんほどのバッターなら打てると思っていました。」

 

「・・・ふん。」

 

まっすぐな目で片岡を見る武藤に片岡は鼻で笑った。

 

「お前は気づいてなかったと思うが、相当厳しいコースに投げ込んでいたぞ。」

 

「そうですか・・・」

 

武藤はそう言いながら肩を落とした。まさか怒られるとは思わなかったので(実際勝負になっているので怒られるのは当然だが)これで監督評価は最悪だと感じたのであった。

 

「・・・・だがな。」

 

肩を落とした武藤を見ながら片岡は続けた。

 

「お前のボールは悪くは無かった。正直肩を壊して右に転向したと聞いたときは正直使えるのか半信半疑の状態だった。」

 

「か、監督・・・」

 

まさかそんなことを言うとは思わなかったので武藤は驚きながら片岡を見た。

 

 

「ふん。だがお前のストレートを見たときにその気持ちはすぐに吹っ飛んだ。凄いノビのあるストレートを投げ込んでいたときは正直1年でここまでくるとは思わなかった。そこで聞きたかったことだが、誰から教わったのだ。」

 

 

片岡がそう言い武藤に聞いてきた。

 

 

「あ~・・・教えてくれたのは幼馴染ですね。」

 

「幼馴染?」

 

武藤の発言に監督が興味深そうにそう聞いてくる。

 

「はい、知っていると思うんですけど龍王学院の昴くんから教わりました。」

 

「龍王学院の昴君!?」

 

武藤の口から出てきた幼馴染の名に高島が横から驚いた表情で言って来る。

 

「それは本当か!?」

 

片岡も驚きながら武藤に聞いた。

 

「は、はい・・・そうです・・・」

 

驚かれるとは思わなかったのか武藤もそれに驚く。

 

 

 

昴君というのは三重の名門である龍王学院(りゅうおうがくいん)高校の2年生エース(すばる)竜太(りゅうた)のことである。

 

1年の秋からエースナンバーを背負い今年のセンバツで準優勝の原動力となった選手だ。

 

 

 

「・・・なるほど。それなら納得だ・・・それにお前が東を三振にしとめたことで俺がしたいことも決まった。」

 

「したいこと?」

 

片岡の言葉に武藤は首をかしげる。

 

「お前は今回の関東大会では出さないが、夏の大会前にある試合で帝東高校と試合をやろうと思うのだがその先発を武藤、お前がやってほしい。」

 

「俺が帝東との試合で先発をするんですか!?」

 

監督の言葉に武藤は驚いた。

 

帝東高校って言えば東東京の強豪で甲子園にも過去何度も出場している高校である。

 

「(そんな高校との試合に俺が・・・・)」

 

武藤はそんな強豪との試合に、先発なんて務まるのか心配になってきた。

 

「この試合の結果次第でお前を夏使うかどうか決める。」

 

「!???(おいおい・・・マジか。この試合で俺が1軍か夏の終わりまで2軍になるかどちらかになるか・・・・考えたら怖い。)」

 

片岡の発言を悪く言えば帝東戦でボコボコにやられたら夏は無いと言っている様なものであった。それを察した武藤は先発の知らせを聞いてから出てきた緊張がさらに増大したのを自覚していた。

 

(・・・けどもらえたチャンス。このチャンスをモノにしないと1軍には上がれない!)

 

しかし、武藤は後は無いと自分で悟っている。それなら武藤の答えは一つであった。

 

「分かりました。帝東との試合の先発やらせてもらいます!」

 

武藤は自信を持って返事をした。このチャンスを無駄にしたくない・・・答えには一切の迷いもなかった。

 

「そうか・・・分かった。なら明日から1軍の練習に参加しろ。」

 

「!!??・・・はい!(くぁ~~~漸く投げられるのか!)」

 

監督がそう言うと武藤は喜びを抑えながらも返事をした。

 

「ふふっ。今日はここまでだけど、試合がんばってね。」

 

「はい!それでは失礼しました。」

 

そう言い武藤は顔をほころばせながら監督室を出た。

 

「よっしゃ。頑張るぜ!」

 

武藤は部屋を出た後、ガッツポーズをしながらそう言ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監督室にて

 

「ふん。意外と冷静なやつだとは思ったがあの笑顔を見ると・・・」

 

「まだ年相応なんだなと思いますね。」

 

「だな。」

 

片岡と高島はそんな会話をしていた。

 

「・・・武藤君を試すのは青道の投手陣が薄いからですよね。」

 

しかし急にまじめな表情に変えた高島は片岡にそう言った。

 

「・・・あぁ。3年の細野と2年の丹波の2人はいい投手なのだがなにぶん欠点もある。細野はスピードはあるが安定感が無い。丹波は最近気が弱いのは良くなってきているが5回を過ぎたあたりからボールが甘くなってきて痛打される。けど細野は球は速いし守備も上手い。丹波は代名詞になるだろう縦に大きく割るカーブがあるから2人とも良い所はあるけどまだエースとは呼べない。」

 

高島に対し片岡は机に肘をつきながらそう言った。

 

今青道には3年の細野(ほその)勝幸(かつゆき)、2年の丹波(たんば)光一郎(こういちろう)の2人が1軍にいるのだが2人とも良い所もあれば悪い所があり、それが出てくることがあり過去も現在も投手陣がネックとなり甲子園に4年間いけない原因となっていた。

 

「えぇ。確かにまだ1年ですが投手というのを良く知っている武藤君ならそのネックを弾き飛ばしてくれると。」

 

「あぁ。だが武藤だけではない。川上や他の投手にもそのチャンスはある。」

 

監督はそう言いタバコを一本吸った。

 

(えぇ。確かに武藤君は凄い。投手陣にも刺激になるだろう。川上君もいいピッチャー。もしかすると今年いけるかもしれない。)

 

監督の姿を見て高島は期待から笑う。

 

(今年武藤という素晴らしい選手が入ってきた。これで投手陣も刺激になり良くなっていくだろう。何とか今年こそ・・・)

 

かれこれ4年も甲子園に出場していない危機感。誰よりも焦りを持っている片岡も監督室から見える満月を見ながら切実にそう思っていた。

 

 

監督室視点 終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?お前が夏前の試合でか!?」

 

伊佐敷が驚きながらそう言った。

 

武藤は自分の部屋に戻った後、監督室でのことを2人に話したら2人とも驚いていた。

 

「フフッ・・・1年を1軍に2人も上げるって言うのは珍しいね。」

 

小湊もそう言っていた。聞けば去年は飛びぬけて上手かったクリスさん以外は1軍には上がっていないという。それを聞くと今年は珍しいんだなと武藤は思った。

 

「まぁ、投手もホントに悪いところが表にでまくっているもんな。」

 

「えっ?そんなに投手陣は酷いんですか?」

 

伊佐敷の発言にに武藤は疑問を持った。

 

「うん。ホントにこっちが見てて野手陣のこと考えてほしいって思うよね。」

 

「うわっ。そんなにひどいんすね。」

 

小湊の代名詞ともいえる毒舌に武藤は顔を引きつらせながらそう言った。

 

「だけど翔也がきたらこっちも楽になると思うし早く来てほしいと思うかな。」

 

「いや~そんな自分は期待するほどでもないですよ。」

 

小湊が珍しく褒めてきたので武藤は恥ずかしくなり、そう言った。

 

「ふん。おれぁ認めたくは無いけどなぁ、お前がこればいっそう甲子園に近付くと思う。だから早く1軍を助けろ!」

 

「純さん・・・・はい!」

 

「おお~いい返事をするじゃねえか。」

 

「いでででで!!!」

 

武藤が元気よく返事をすると伊佐敷が毎度のごとく首を絞めてきて武藤が苦しむというお馴染みとなってしまった光景が広がっていた。

 

(よし!明日から頑張るぞ!)

 

武藤は伊佐敷に首を絞められながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

・・・夏はすぐそこまで近付いていた。




・・・対決を簡単に終わらせてすいません。だが悔いはない。

東については原作でも記述していた?と思うんですが描写を見る限りノリ打法と思ったのでこのような対応をしました。

何か意見があればお願いします。

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