消す前とあまり変えていないのでかなり短いです。申し訳ありません。
「えっ、今週の土曜日から夏の合宿ですか?」
「そうだ。青道では夏前に合宿をする事が恒例となっている。場所はここ青道高校で行う。部員全員のレベルアップを図るために合宿をするのだ。」
6月も半ばに入り夏の大会も迫っていた頃、食堂での朝礼で片岡からこの事が告げられた。
片岡の発言に武藤は1年を代表して聞き返した所だった。それに対して片岡は頷く。
「まじかぁ・・・」
2・3年生は皆頭を抱えて、搾り出すように呟いていた者もいた。
「???」
対照的に1年生は2・3年生の行動を疑問に思ったのか、頭に(?)マークが出ていた。
「1年だけでなく、2・3年生もしっかりと準備しておいてくれ。」
片岡はそう言い、今日の朝礼は終わったのだった。
「しかし、合宿かぁ~楽しみだなぁ。」
朝礼が終わった後、武藤はこれから始まる合宿にどんな事が起こるのか、想像しながら楽しんでいた。
「コラコラ。合宿って言っても野球だけじゃなく学校も行かないといけないんだぞ?」
武藤が一人楽しんでいたところで御幸が寄ってきて楽しんでいる雰囲気を壊そうとしたのか、ヘラヘラと笑いながら言ってきた。
「そうだぞ?2・3年生の態度見たろ?きつそうな感じがするわ。それに一軍中心だからお前の方がもっときついと思うぞ?」
「うん。正直付いてこれるか・・・」
倉持と川上もちょっとやりたくないのか、苦笑しながら後ろ向きな発言をする。
「強くなれるならかかって来いって感じなんだけどなぁ。」
しかし武藤は2人の発言をモノともせずに、ケロッとした感じでそう言い放つ。
「おい翔也。覚悟しておいた方がいいぞ・・・」
「あっ。哲さん!オザマス!」
すると横から結城と伊佐敷が武藤に寄ってきてそう忠告してきた。
「そうだぜぇ!そんな事言っていられるのも今のうちだぜ翔也ァ!!」
「いでででで!!!」
伊佐敷は頭をゴリゴリしながら武藤に対して忠告する。
(この頭ゴリゴリはマジで痛いからやめてほしい)
武藤はゴリゴリされながらそう思っていた。だが、対して先輩に言える筈が無い・・・
「そうだよ!哲さんと純さんが言うほどだよ!」
川上は伊佐敷の発言にかぶせるように心配したような表情で武藤に言った。
「いててて・・・分かったよ(泣)」
ゴリゴリされて痛む頭を半泣きで抑えながら武藤はそう言った。
これ以上調子乗ったらまた伊佐敷にやられかねないと悟ったからだ。
川上は武藤の言葉を聞いてホッと安心したようだ。
「死ぬなよお前ら!特に一軍に入ってる武藤と御幸!」
「まぁ、頑張れよ。」
結城と伊佐敷は一年達にそう忠告し、その場を後にした。
「まっ、どっちにしろ頑張るしかないでしょ?頑張ろうぜ!」
「そうだな。」
「あぁ!」
「うん。」
武藤が皆に対してそう言うと、皆が武藤の発言に同意したのか顔を引き締めながらそう言った。
「よ~し、今週の土曜日頑張るぞ!」
武藤は張り切って再度その台詞を言い、自分も気を引き締めて今週の土曜日から始まる合宿に思いを馳せていた。
土曜日 早朝6時 合宿初日。
「ふわぁ・・・ねむ。」
いつもの時間、武藤は起きるとすぐに練習着に着替え始めた。
「いつも早起きごくろーさん。」
「純さん、オザマス!」
武藤が練習着に着替えていると、伊佐敷が起きて武藤にあいさつしたので武藤は元気良く挨拶を返す。
「朝っぱらからうるせーよ。」
武藤の元気いい挨拶に伊佐敷はいつもの調子で目を三角にして怒鳴った。
「そういう純もね。」
びしっ!
「いって!うおおおお・・・」
すると小湊も起きてすぐに伊佐敷にチョップを食らわす。くらった伊佐敷はその場にうずくまり痛がっていた。
「あはは・・・とりあえず時間も時間なんで早く着替えましょ?」
「お前が元だろうがぁぁ!!!」
『うるせぇ!朝っぱらからうるせえわ!!!!』
苦笑しながらの武藤の発言に、伊佐敷は痛みから涙を流しながら大声で叫んだ・・・
その後、伊佐敷が叫んだため先輩からの苦情で3人はこってりと叱られる事となった。
「さて、朝早くからバカな奴らが騒ぎ立てて少しどたばたした感じになったが、今日から合宿が始まる。皆それぞれがレベルアップできるように日々の練習を怠らないように。合宿の最終日には練習試合も立てているから、しっかりと練習していけ。それじゃ、これから練習始める。」
選手がグラウンドに集まった後、いつものように監督が話をしていた。
それが終わると選手たちは一斉にランニングの準備を始めた。
「たくっ。誰かのせいでこってりしごかれる羽目になったじゃねぇか!」
「挨拶しただけで叫ぶ方もどうかと思うよ?」
ランニングの準備をしながら伊佐敷はぶつぶつと文句を言っていたのを小湊の耳に入り、表情を崩さないまま笑顔でそう言った。小湊もとばっちりを受けたせいか、その笑顔がかなり黒かった。
「うっせ。んなこたぁ知ってるわ。」
伊佐敷はそう言い列に加わっていった。なんだかんだ言って根は優しい伊佐敷なのでぶつぶつと文句は言っても嫌ったりはしないのだ。それゆえ後輩からは慕われていた。これも伊佐敷の良い所でもある。
「(こうでもしねぇとクリスに会わす顔がねぇ!)」
伊佐敷はケガで戦列を離れたクリスの事を思い、一人気合が入った。
「ふふ。機嫌も直ったし、僕も頑張らないとね。」
小湊も伊佐敷に遅れて列に加わる。
「先輩たちも気合入っているね。」
「そうだな。」
武藤と御幸はいつもより気合が入っている先輩たちを見て思った事を口にする。
「俺たちも負けてられないな。」
「そうだぜ。気持ちなら俺だって負けてねぇ。やってやろうじゃねぇか。行こうぜ!」
「あぁ。」
2人は気合を十分に入れ、意気揚々と列の中に入っていった。
「さぁ、声出していくぞ!」
主将である中村がそう言うとランニングが始まり、青道高校の夏の地獄合宿が幕を開けたのであった。