仮面ライダーカブト×IS 〜天の道を往き、総てを司る男〜   作:ドラグブラッカー

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第4話 「クラス代表」

「そんな...私の...負け...」

 

セシリアは驚愕していた。

何せ『男』に自分が負けたのだから。

 

彼女にとって男とは自分の父親の様な只女の顔色を伺っている弱く醜い生き物と言うイメージしか無かった。

 

しかし天道は違った。彼は自分に自信を持ち、まるで世界が自分を中心に回っているかの様な立ち居振る舞いをする。

セシリアはその事に我慢ならなかった。只ISを使えると言うだけでIS学園に入学出来た癖に偉そうなのが気に食わなかった。

だが実際は違い、天道は実力も伴っていた。その証拠にセシリアは天道に為す術もなく倒された。

 

「私は間違っていましたの...?」

 

「そうだ。お前は間違っていた。」

 

いつの間にかISを解除していた天道がセシリアの問いに答えた。そして倒れ込んでいるセシリアに手を伸ばした。

 

「立てるか?」

 

「え、ええ...」

 

「確かにお前は今までは男を見下す様な最低な人間だったかもしれない。だがお前はもう二度と間違わない。俺と言う『男』と出会ったんだろう?」

 

「...ええ。私の父は何時も何時も、母親の顔色を伺うだけのか弱い生き物と言うイメージしか有りませんでした。」

 

「だがそれでも、お前の親父さんは何時もお前やお前のお袋さんを守る為に頑張って来たんじゃないのか?」

 

「...はい。父も私が知らない所で頑張っていたのは今になって見れば簡単に分かっていた筈ですのに...今では父は亡くなってしまいました。こんな娘に育って、さぞ気分が悪いことでしょうね。」

 

「それは違うな。」

 

「え?」

 

「お前の親父さんはお前やお前のお袋さんを愛していたからこそお前達の為に頑張っていたんだろ?」

 

「あ...」

 

「お婆ちゃんが言っていた。『人は人を愛すると弱くなる...けど、恥ずかしがる事は無い。それは本当の弱さじゃないから。』ってな。」

 

「貴方のお婆様は凄いことを仰いますのね。」

 

「ああ。お婆ちゃんは俺が尊敬する数少ない人間の一人だ。」

 

「そうなんですの?天道さんが尊敬する程なら余程凄い方なのでしょうね。」

 

いつの間にかセシリアの顔に笑顔が戻っていた。セシリアは自分でもその事に驚いていた。

 

「そろそろ行くか。あんまり陽乃を待たせていると怒られる。」

 

「(そう言えば天道さんと雪ノ下さんは付き合っておられるのですわね。何なのでしょうか?この雪ノ下さんに対する羨望や嫉妬の様な気持ちは...)ええ。そうですわね。」

 

それはセシリアの初恋の瞬間であった。

 

総司side

 

俺達が管制室に着くと、織斑千冬が話しかけて来た。

 

「ご苦労だった。織斑の専用機は到着が遅れて来週になるそうだ。織斑VS天道、織斑VSオルコットで勝負をして勝ち数が一番多い者がクラス代表だ。辞退は不可能だ。良いな?」

 

「「「はい。」」」

 

「それと天道。話がある。後で屋上に来い。」

 

「分かった。」

 

そして屋上へ向かうと...

 

「来たか。」

 

その声と共に周囲から黄色いラインが入った黒いスーツを着た集団ーーー精鋭部隊の『シャドウ』があっと言う間に俺を取り囲んだ。

 

「お前がカブトだったんだな?」

 

「愚問だな。太陽に『貴方は太陽ですか?』と聞くか?」

 

「相変わらずお前と話していると腹が立つ。最後の誘いだ。私たちZECTと共にワームを倒さないか?」

 

「それも愚問だな。太陽に『闇に墜ちないか?』と聞くか?」

 

「...どうやら私達は分かり合えない様だな。」

 

「その通りだ。」

 

「ならばこうするまで!」

 

 

そう言い、彼女は腕を上に伸ばした。

 

ナレーションside

 

千冬は何処からかやって来た黄色い蜂の様な機械ーーーザビーゼクターを掴み、腕に巻いてあるブレスレット型の機械のライダーブレスにセットした。

 

「変身!」

 

そう言うと彼女の身体が六角形の様なパネルに包まれて行き、やがて鎧の様な物になると、複眼が緑色に発光した。

これが今の彼女のISーーーザビー。

 

「お前もカブトゼクターを呼べ。」

 

「その必要は無い。」

 

「何?」

 

「「「「ウワァァ!」」」」

 

その時、何処からかやって来た青色のクワガタムシの様な形をした機械ーーーガタックゼクターがやって来て、ゼクトルーパーシャドウ達を吹き飛ばした。

 

「何だ!?」

 

ザビーが後ろを振り向くと、そこには腰に天道と似たベルトを付けた陽乃の姿が有った。

 

「こんにちは。織斑先生。いや、『マスクドライダーザビー』。」

 

「それはガタックゼクター!?まさかお前も!?」

 

「ええ。私が『ガタック』です。」

 

「貴様もネオZECTか!だが私の使命はカブトを倒す事だ!どけ!」

 

「それは無理な話ですね。」

 

「何だと!?」

 

「一応私は総ちゃんの護衛の為に此処に入学したんです。総ちゃんに手を出すなら...」

 

陽乃はガタックゼクターを掴み、腰のベルトにセットした。

 

「変身!」

 

そう言うと彼女の身体が六角形状のパネルに包まれ、鎧の様な物になり、身体全体が包み込まれると、複眼が赤く発光した。これが彼女のISーーーガタック。

 

「容赦はしません!」

 

「「「「隊長!」」」」

 

ガタックゼクターの攻撃で吹き飛ばされていたシャドウのメンバーが集まる。

 

「ならば教えてやろう。戦闘において最も重要な事。それはパーフェクトハーモニー、完全調和だ。各人、敵と距離を開けて戦え!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ゼクトルーパーシャドウ達はガタックに向かって行ったがガタックは気にせず両肩にある二門のガタックバルカンでゼクトルーパーシャドウ達を一掃した。

 

「お前達!よくもあいつ等を!」

 

ザビーはガタックに殴り掛かった。千冬の身体能力も相俟って強力な一撃になるーーー筈だった。

 

「何!?」

 

しかしガタックはそれを受け止め、至近距離でガタックバルカンを連射したのだ。

 

「グハァ!」

 

勢いで変身が解除される。

 

「ガハッ...」

 

「良くやった陽乃。後でお前の好きな物を何でも作ってやるぞ。」

 

「わーい♪じゃあ鯖味噌食べたーい♪」

 

何時の間にか変身を解除していた陽乃は天道に抱き付いた。

 

「良いだろう。この前じいやさんに教わった美味い作り方があるんだ。」

 

そう言い天道は全滅したシャドウと千冬の方を振り向いた。

 

「お前の上司に伝えておけ。ZECTはネオZECTには勝てんとな。」

 

「クッ!だがまだだ、まだ私達ZECTには最後の切り札が残されている。」

 

「『黄金のライダー』か。上等だ。俺は負けない。」

 

そう言い、天道は陽乃と一緒に部屋に帰って行った。

 

そして学生寮の1026号室。

 

「わーい♪さっばみっそだー♪」

 

「だがこの学園は休みの日以外の外出は禁止らしい。材料が買いに行けないから週末まで食堂の飯で良いか?」

 

「うん♪さっばみっそさっばみっそー♪」

 

「陽乃はホントに鯖味噌が好きだな。」

 

陽乃は鯖の味噌煮が天道に食べさせて貰った最初の料理で大の好物なのだ。

 

そして一週間後、アリーナでは。

 

「あ、あの...雪ノ下さん?どうしたんですか?」

「さっばみっそさっばみっそー♪」

 

「気にしないでくれ。彼女は俺の鯖味噌を食うとこうなるだけだ。」

 

「そ、そうなんですか。お、織斑先生もどうしちゃったんですか?」

 

「...」

 

彼女は屋上での一件以来、ずっとこの調子で、授業も全て真耶に任せっきりだった。

 

「千冬姉?俺、参考書頑張って覚えて来たぞ?」

 

「...」

 

「そんな...何時もの千冬姉なら『織斑先生だ』とか言いそうなのに...」

 

「彼女なら大丈夫だろう。少し気が動転してるだけだ。」

 

「でも...」

 

「大丈夫だ。それより次はお前の番だぞ。大丈夫なのか?」

 

「ああ。絶対勝って来るぜ!」

 

そう言って一夏は会場へと向かって行った。

 

「ふん、面白い奴だな。」

 

「でも相手は代表候補生だよ?初心者の彼なら負けるんじゃないかな?」

 

何時の間にか元に戻っていた陽乃が話す。

 

「いや、一夏なら絶対勝つ。あいつはこの一週間私と一緒に剣の練習をしていたからな。」

 

「ほう、そういえばお前は剣道大会の優勝者だったな。」「知っているのか?」

 

「新聞で読んだ。」

 

「む。皆新聞新聞と。どうして新聞を読んでいるのだ。」

 

「世間の情報を把握しておくのも大事な事だ。」

 

「そ、そうなのか。」

 

箒は何故か少し罪悪感を覚えた。

 

「そろそろ始まるぞ。」

 

一夏とセシリアのバトルが今始まろうとしていた。

 

『試合開始。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了。』

一夏とセシリアの戦闘が終了した。

結果は...

 

『勝者、セシリア・オルコット』

 

勝負は一夏の自滅だった。

最初はセシリアが有利に進んでいたが、一夏の専用機の『白式』の第一形態移行(ファーストシフト)が完了した途端、形勢逆転。一夏がセシリアを押し始め、一夏が単一仕様能力(ワンオフアビリティー)の『零落白夜』を発動し、セシリアに止めを刺しに行こうとした所で零落白夜の欠点であるシールドエネルギーの消費でシールドエネルギーが0になり、セシリアの勝利となった。

 

「クッソー...後ちょっとだったのにー...」

 

「負けから学ぶ失敗と言うのもあるんじゃないのか?」

 

「そうかー。ありがとな。」

 

「(別に励ましたつもりは無いんだがな。)」

 

「では次で最後ですね。織斑君VS天道君の勝負は放課後からです。二人共しっかり準備をしておいて下さい。」

 

「「はい。」」

 

「と、所で総司さん、わ、私の操縦は如何でしたか?」

 

「ああ。お前の弱点はビットに有る。」

 

「え?」

 

当然の反応である。セシリアはビットの操縦に自信を持っていたのだ。

 

「確かにお前はビットの扱いが上手いがビットの操縦に神経を使い過ぎて他の武装が操れていない。その所為でビットの攻撃を全て避けられた場合に距離を詰められ易い。同時に扱える様に精神を集中させる練習をしておけ。」

 

「アドバイスを有難う御座います!」

 

「ああ。頑張れ。」

 

「(もう。総ちゃんの女たらしぃ。)」

 

「どうした陽乃?」

 

「な、何でもないよ。」

 

「教室に戻るぞ。」

 

「「うん。(はい!)」」

 

そして放課後、アリーナーーー

 

天道と一夏は既にISを展開して待機していた。

 

「手加減はしないぜ?天道。」

 

「ならば俺が手加減してやろう。」

 

「何でだよ!そこはお前も手加減すんなよ!」

 

「俺はその気になれば1分と掛からずにお前を倒せる。」

 

「そうやって余裕こいてられんのも今の内だぜ!」

 

「掛かって来い。」

 

『試合開始。』

 

カブトの声と同時に試合がスタートした。

 

「行くぜ!」

 

先陣を切ったのは一夏だった。一夏は武装の『雪片弐型』で重い一撃をカブトに叩き込もうとしたがカブトは何時も通り最低限の動きで避け、一夏の背中に蹴りを叩き込んだ。

 

「うわ!」

 

一夏は思い切り地面に倒れ込んだ。

 

「どうした?『余裕こいてられんのも今の内』、じゃなかったか?」

 

「クッソ!」

 

一夏は挑発に乗ってしまい、天道に突撃した。天道はそれを軽く避け、すれ違い様にカブトクナイガンで一太刀浴びせた。試合はこの調子で続き、遂に試合が終了した。

 

『試合終了。勝者、天道総司。』

 

「うわあああああ!結局一勝もできなかったあああああ!」

 

「五月蝿いぞ。お前がワンパターンな攻撃ばかり出してくるからだ。『変幻自在』と言う言葉を知っているか?」

 

「知っとるわ!けど俺はあのやり方が一番何だ!」

 

「やれやれ...一組が弱い奴ばかりだと思われてはいけないからな。やはり俺がクラス代表になるしか無い様だな。」

 

「弱い奴とは何だ!弱い奴とは!」

 

「ま、まあまあ。落ち着いて下さい。」

 

「あ、すみません...」

 

「では一先ずクラス代表は一番勝ち数が多い天道君ですね!」

 

「良いだろう。クラス代表としての初陣はクラス対抗戦か。優勝を約束してやろう。」

 

「頼もしいですね!これから頑張って下さい!」

 

その後、夜の食堂ーーー

 

パーン!

 

クラス代表の決定を祝うクラッカーの音が鳴った。

 

「「「天道君、クラス代表就任おめでとう!」」」

 

「そんな事を言ってる暇が有れば飯を食え。冷めるぞ。」

 

一人黙々と鯖の味噌煮を食べ続けていた天道が言った。

 

「天道君って食事のマナーには厳しいよねー。」

 

「お婆ちゃんが言っていた。『食事の時間には天使が降りてくる。そういう神聖な時間だ。』ってな。」

 

「へぇ〜、天道君のお婆ちゃんって凄い人なんだね。」

 

「ああ。俺のお婆ちゃんは何時も良い事を言っていた。」

 

「そうなんだ〜。」

 

「ところでお前達、さっきから箸が止まっているが?」

「わ、私達は...ねえ?」

 

「ダイエットか?」

 

「う、うん...」

 

「だからと言って飯を残して良い理由にはならない。自分で選んだ量だ。責任を持って残さず食べろ。」

 

「は、はい...」

 

とそこに、一人、眼鏡をかけた女性がやって来た。

 

「はいはーい、新聞部でーす。一年一組のクラス代表になった天道君にインタビューしに来ましたー。」

 

「食事中だ。後にしてくれ。」

 

「まあまあ、そんな堅い事言わずにさーーー」

 

「後にしろと言っている。」

 

天道は薫子を睨みつけた。

「う...は、はい...」

 

目は口程に物を言うとはこの事だ。

そして天道が食事を終えるとインタビューが始まった。

 

「あ、私は新聞部の副部長で二年の黛薫子。これ名刺ね。」

 

そう言い、彼女は自分の名刺を差し出した。

 

「画数が多いな...織斑の次に書き難い。」

 

「え?俺の方が多いのか?」

 

「一見すると黛の方が多い様に見えるがな。」

 

「へぇ、凄えな。」

 

「私何か空気になってない?」

 

「ああ、すまないな。それで何のインタビューに来た?」

 

「天道君って代表候補生に一ダメージも受けずに勝ったって話じゃん。強さの秘訣を教えてくれる?」

 

「ならば一つだけ言ってやろう。ISは人を殺す事等容易い『兵器』だ。お婆ちゃんが言っていた。『戦いはへそでするものだ。へそに気合を入れろ。』ってな。」

 

「えー、もっと良いの無いの?『俺に触ると火傷するぜ』とかさ。」

 

「これ以上に良いアドバイスは無いな。」

 

「分かったよ。じゃあ後はこっちで捏造しとくから。」

 

「(こいつ今さらっと爆弾発言をしたな。こんな奴を副部長にするとは、部長の姿が拝んで見たい物だ。)」

 

「じゃあ最後に戦ったセシリアちゃん、織斑君と一緒に手を重ねて。写真撮るから。」

 

「分かった。」

 

そして三人が手を重ね合わせーーー

パシャッ

 

「あ、あの...私と天道さんの握手する写真も撮って欲しいのですが...」

 

「良いよ。ちょっと織斑君離れてくれる?」

 

「あ、はい。」

 

「じゃあ行くよ。2321÷3025は?」

 

「0.767273。」

 

「せいかーい。」

 

パシャッ

「ええ!?何で分かったんだ!?」

 

「あれ位簡単だ。」

 

因みに計算機で適当にやったので、本当に合っているのかどうかは分からない、と言うのは内緒である。

 

「おいナレーターメタ発言止めろ。」

 

「?」

 

「いや、何でもない。」

 

「あのう、それで、写真は頂けるのですか?」

 

「うん、後で渡しに行くからね。」

 

「有難う御座います!」

 

その後、パーティーは10時頃に千冬が怒鳴りに来るまで続いたと言う。




はい。と言う訳で第4話でしたが、如何でしたか?
コメ返等でキャストオフする事を仄めかす発言をしましたが、尺の都合で次回に延期する事になりました。ライダーキックを楽しみにされていた方、申し訳ありません。

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