俺の戦闘力は53万らしい   作:センチメンタル小室

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第4話

さーてやって来ました放課後。また彼女に引きずられて世界樹前の広場にいる。

 

え?昼休み?逃げ切ったよ。

 

めっさ辛かった。なんであいつらあんなにポジティブなんだよ……

 

完全に手加減してる感じで戦ってるのに勝てるって思われてるとか、自分の性格のせいか?

 

なんかどっかから弱く見えるオーラでも出てるのかね、とかそんなことを考えていると古菲が話しかけてきた。

 

 

「師父、早速手合わせ願うアル」

 

 

 

 

 

 

……

 

いやいやいやいやいやいやいやいや、なんでいきなり組手なんだよ。

 

え?実力を見せるため?いや何回か戦ってるしだいたいわかるし……

 

そうなのだ。彼女とは割と何度か戦っている。

 

そのため大体の実力はわかっているし、その動きを真似することもできる。

 

 

「つい最近新しい技を身につけたアルね。それを見てもらうためネ」

 

 

そう反論するように彼女は返す。

 

あー、いつものやつね。なんか新しいバット買ったから殴らせろみたいな。す、すさまじいまでのジャイアニズムだな。

 

彼女は割と戦いに来るが武術家の嗜みなのか何なのか、無駄な戦いはしない。

 

今の実力では無理だと言う時は絶対に戦いを挑んでこないのだ。

 

では、どういう時に戦いを挑んでくるか?

 

それはたいてい新しい技を覚えた時だ。

 

前は確か八極拳覚えたから試させてくれと言って来た記憶がある。

 

サンドバックじゃねえんだからかんべんしてくれ。仮にも今は師父だろ。

 

せめて他のやつで試してくれませんかねえ……

 

そう、ため息を付く。

 

 

「加減が分からないと不味いアル。だから信用のある師父でなきゃ試せないアル」

 

 

嫌な信用だ……まあ確かに、戦闘力53万あればだいたい無傷だ。

 

というかこの学園にいる奴で傷を付けれる奴はいない。

 

今は語らないがエヴァンジェリンとやった時も『おわるせかい』含めて効かなかった。

 

そんなわけでサンドバッグとしては自分はこの麻帆良学園都市最高だ。

 

豪徳寺にも新技試させろとよく言われる。い、いじめじゃないよねこれ?

 

教育委員会訴えたら勝てないかなあ……まあムリだろうな。学園長あれだし。

 

そもそも麻帆良では常識が通用しないし。

 

この麻帆良では常識に囚われてはいけないのですね!いや常識に囚われさせてくださいお願いします。

 

 

 

っと思考に没頭しすぎた。

 

ふと向かい合う彼女を見ると準備ができたらしく、構えている。

 

んー受けるとか言ってないんだけど止めるのは……無理か。

 

まあ、技の加減を見るためというなら付き合ってやらんこともない。

 

俺もそっち方向では苦労してるし。主に手加減するほうで。

 

そして俺も構える……わけではないが戦闘に意識を集中する。

 

それを感じ取ったのだろう、彼女は一瞬笑みを浮かべた。

 

場が張り詰めていく。どこに攻撃するか考えているのだろう。

 

どこが隙なのか、どこに攻撃すればダメージが入るのか。こちらを注意深く観察している。

 

しかし、俺は構えてもいないし、基本的な戦い方は『見て避ける』か『見て受ける』のどちらかなわけでどう見ても隙だらけだ。

 

どうやっても躱されるか、受け切られることは避けられないと判断したのだろう。

 

覚悟を決めたのか表情が引き締まる。

 

そして目の前から彼女の姿が消える。否、俺の後ろに回りこんでいた。

 

瞬動術か……と俺は思い当たる技を思い浮かべる。

 

『瞬動術』大地を蹴り、大地を掴むことで6~7m程度の距離を移動する歩法であり、古くは縮地と呼ばれるものだ。

 

なるほど、瞬動術を身につけたのか。

 

そう納得しながら後ろに抜けていく彼女を見送る。

 

だが瞬動術は早いだけで特に攻撃力とかないし、加減も要らない。

 

加減とか言ってたし新しい技はここからかと期待し、ゆっくりと後ろを振り返ると彼女の手のひらに光球のようなものがあった。

 

は?気弾?彼女って気使えたっけ?この時期は体術はすごいがそこまで行ってなかった気がするんだが……

 

首を捻るがその間に気弾がこちらに打ち出される。

 

見た感じ威力的には豪徳寺とあまり変わらない。これなら避けるまでもないかなとそのまま突っ立っている。

 

そして気弾が着弾した。俺の目の前の地面に

 

気弾は石畳の床を破壊し、土煙が上がる。

 

外したのか?と考えるが、すぐに相手の考えに至る。

 

ふむ、『見て』避けられるなら見えなくすればいいと、そういうわけか。

 

まあダメージないだろうし食らうか―と軽く考え待機する。

 

完全に驕っているが、戦闘力53万もあれば驕らない方がおかしい。

 

武術なめてるよなーとか思うがチートなんだし、まあ仕方ないかと最近は思うようにしている。

 

そして彼女の手のひらが俺の背中のあたりに触れているのに気づいた瞬間、俺の内側の方に衝撃が走った。

 

浸透勁か、でも残念。俺の身体、内臓のほうも強いんだ。

 

彼女の方は手応えがあったのか、少し動きを止めているこちらを見て語りかけてくる。

 

 

「さすがに、師父であれと身体の内側、内蔵に対して攻撃すれば無事では……」

 

 

が、そう言いかけた瞬間彼女は膝から崩れ落ちた。

 

予想外の事態に彼女は混乱した。

 

 

「な、何が起こったアルか……」

 

 

何の事はない。攻撃を食らった後に顎を撫でただけだ。

 

すさまじい速度で撫でれば、たとえ撫でただけであっても攻撃へと変化する。デコピンですら粉砕骨折させられるしな。

 

ボクシングでアッパーカットを打つような方向に高速で顎を撫でることで脳みそを揺らし相手を倒す。

 

相手へのダメージも少ないので割と重宝してつかってる技の一つでもある。

 

脳が揺れ平衡感覚が狂っているため彼女はフラフラになっている。

 

彼女は負けを悟ったのか参ったと降参し、戦闘はそれで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり師父は強いアルー」

 

まだ脳が揺れているため、立てないのかその場に寝転びながら彼女は負けた負けたとさっぱりした表情で愚痴をこぼしていた。

 

 

「師父強すぎアルよ。ほとんど何もできなかったアル」

 

 

そりゃ、53万に何かできたら怖い。

 

多分、何とかする方法って宇宙空間に強制転移させるくらいしかないんじゃないか?

 

でもフリーザ様的には宇宙空間でも生存できるのか?試したことないからわからないけど。

 

そして、しばらく彼女の愚痴を聞き、少し落ち着いたところでずっと昨日から考えていた疑問を聞いてみた。

 

 

「なんで、俺なんかの弟子になろうと思ったんだ?」

 

 

まあ当然の疑問だ。正直自分は武術を舐めていると言っても過言ではないようなことをやっている。

 

弱くなるために相手の技を見て覚えるとか、向こうからしたら屈辱だろう。

 

それに強い相手に弟子入りするというのならば、他にもこの学園都市にはいる。

 

高畑だってそうだし、その他魔法先生だってそうだ。

 

俺みたいなやつの弟子になろうとする訳がわからない。

 

だがそう聞くと彼女は笑ってこう返した。

 

 

「んー、勘アル」

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

あー勘かー。勘なら仕方ないなー。ってなんでやねん。

 

即座に突っ込む。直感で弟子入りする奴とか始めてみたよ……

そう、聞き返すも

 

「勘としか言いようがないアル。なんというか師父に弟子入りすれば強くなれるというインスピレーションが働いたアル。それに……いや、これは別に何でもないアル」

 

となんか思わせぶりなことを返された。

 

「それに……」で止めんなよ。気になるだろうが。

 

だがそのことを問い詰めるがはぐらかされた。

 

そして、ある程度彼女が回復したところで、お開きとなり、弟子入り初日はそのまま幕を閉じた。


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