あらすじ
おみくじ町から海路を隔ててそびえ立つ、メダロットをテーマとしたアミューズメント島「メダロッ島」。
イッキは両親にねだっても行くことが出来なかったが、隣人友人たるアリカとその母のおかげで訪れることが出来ていた。
ひとしきりアミューズメントを回ってみたうえで。
しかしメダロット大好き少年であるイッキは、偶然に催されていたロボトル大会にエントリーしてみていた。
少し遅れてエントリーをしたイッキであったが、世界と名付ける大会だけあって、予選からして大激戦だった。
イッキの持つメダロットは、トラップなどの設置にたけた「クモ」メダルのスパイダ。メダルの属性から重力射撃と、援護防御などの役割を務めている「クマ」メダルのベアー。そして「カブト」メダルのメタビーである。
特にスパイダとベアーは加入してから日が浅いこともあって、この大会でチームワークを慣らしながら進めていく必要があったのだ。
初戦の相手はグレーテルという少年、2回戦はヘンゼルという少女だった。
ヘンゼル少女は少年の姉であり、また、金髪という見た目からして明らかな外国人である。ロボトルとしては海外ならではの低装甲高威力というピーキーなコンセプトを持った純正一式に苦しめられたが、バランスの良いイッキのチームは何とか勝利。押しの強い天然な姉とは、ネットロボトルサービス「メダリンク」での再戦を約束させられたりした。
3回戦。綺麗だが我の強いお姉さん、イセキさんとのロボトル。
イセキさんは現在アパレル関係の仕事をしているらしいのだが、どうやらロボトルの腕を買われてこういった外向けの用事には顔を出しているらしい。大人の事情である。
停止攻撃を操るネコ型メダロットは、決して旧式と侮ることのできない機動力だった。射撃攻撃を集中させて、何とかしのぎ切った形での勝利である。
負けたイセキさんは、イッキへ頑張りなよと姉御肌なエールを送りつつも、「メタルビートルといい、ヒカルを思い出す強さだね」とかぼそりと呟いていたのが印象的だった。
国内を飛び回っている根無し草、マイタケ・キノコさん(仮名)。幼馴染のアリカ以上の行動力、そして洞察力を持つ少女である。彼女の性格らしい自由奔放そのままのキノコ型メダロットによるマイナス症状の雨霰には苦労させられた。
ついでに、最後には「お茶しない?」とか言われてしまった。断った。断ったが……なんとなく、なんとなくだが、イッキは今回のやり取りで彼女に気に入られてしまった気がする。それが良いのか悪いのかは、さておくとして。
5回戦は、海外からハッカという名前の青年が相手だった。
どうやらオーロラフォールという海外の寒い地域から来ているらしい。招待選手としての参加費に加えて、観光事業に力を入れている町の興行的な意味もある様だ。手ごわい上に海外製のメダロットを使っているため手管が読めなかったが、それは相手も同じなようで、何とか正攻法で勝利することができていた。
ちなみに生まれたての娘さんがいるらしい。ハッカさんはどうも頑固親父な気質を持っているので、何というか、すれ違いとか無ければいいのだが……そこはイッキが気にしていてもしょうがない。
さて。その後も辛勝、辛勝。何とか決勝まで勝ち進んだイッキではあるが、今大会で苦戦に苦戦を重ねていた理由は、自身の経験の浅さも1つだが、他にも大きな理由がある。
サイカチス。ユウダチからテスターを任された、新生代……可変KBT型メダロットに慣れていなかったのである。
メタビーはどうやら、コウジからもらった「フレクサーソード」がお気に入りの様子なのだが、残念なことに可変型メダロットは純正一式……ナンバリングを揃えて使用しなければ変形を行えないらしい(ただこれは、イッキとしては、むやみやたらと我武者羅な格闘攻撃に挑まれるよりは安心している)。
幸いにも、今大会では未だ変形を試せるような場面には出会っていなかったのだが。
「―― 次の決勝は……コウジが相手!?」
やや疲れながらも勝ち抜いたイッキは、ロビーへ。
そこで対戦相手を確認してみると、見知った名前。奇しくもカラクチ・コウジとの対戦カードが表示されていたのだ。
「やったじゃねえか、イッキ。おどろ沼での決着、つけときゃいいんじゃねえの?」
「そういうけどな、メタビー。コウジは強いぞ?」
むしろ1度戦っている分、実力がリアルに想像できてしまうからたちが悪い。
スカートめくり事件の際に勝てたのは、1対1だったからこそだとイッキは思っている。その点、今回はメダロット社とRR社が規定するロボトルのルールに則った3対3。今度こそ花園学園のエースメダロッター、カラクチ・コウジが全力を出せる舞台となるだろう。1番はユウダチらしいのでエースとか呼称しておく。
「出来れば、この大会の内に変形を試してみたかったんだけどな……」
そのコウジが相手では、変形機構を試している余裕などないのではないか。そう思ってしまう。
パーツを貰っている以上、なるべく早期に試してはおきたかった。データはメダロッチの中に自動で蓄積されるとのことで、おみくじ町にいるうちに適当な野良メダロッターを相手に試したりはしてきたものの、こういった「本番」と呼べる中でのロボトルにおけるデータもまた貴重なものなのだとユウダチ談。
テスターの義務について、イッキがそんな風に思い悩んでいると。
「ていうかよイッキ。むしろコウジ相手だからこそ使うべきなんじゃないか? 変形するとか予想しないだろ、あいつ。パーツ変わったのには気づくだろうけどさ」
気楽な感じで放ったメタビーの言葉に、思わず目から鱗な気分になる。
そういえばそうだ。イッキにとってのコウジとは、負けて元々な相手。……むしろ予選は負けて元々な相手ばかりであったが……兎も角。
挑んで、試して、それで結果として悔いが残らないのであれば。
「……うん。いいかもな、それ」
「だろ?」
作戦は決まったと、イッキは拳を握る。
ようは、やってやれの精神が大事なのだ。
男ならでっかく生きて、横道それずにまっしぐらなのだ。
◇∈
んなっ!? というコウジの驚き声と。
おおっ、という観客の歓声とがメダロッ島のロボトル大会会場を埋め尽くした。
「―― う゛ろろんん」
四つん這い……の様に身を低くしたまま、メタビーがエンジン音風味に唸る。
肩と脚から突き出した車輪。まるで四輪駆動の自動車の様なシャーシ。
変形、レリクスモード。驚きと歓声は、このメタビーの変形によるものである。
変形すると、変形専用の攻撃が可能となる。メタビーの手と足から突き出した車輪が鋭くスパイクし、援護機体 ―― ベアーの横から勢いよく飛び出してゆく。
「クママーッ」
「クモモーッ」
利用するのは、先んじて設置された「設置弾丸」。
弾丸を放つ砲塔は、変形したメタビー自身。
「いけえっ、メタビー!
「だりゃあああーーっ!」
大口径の弾丸が放たれ、メタビーの後輪がキュキュッと反動を受け止める。
コウジの機体、おそらくリーダー機であろうスミロドナットを目がけて、放物線。
スミロドナットの前に、「植木鉢とそこに生えた花(葉っぱは応援旗)」そのまんまの形をした援護機体「さくらちゃん」が飛び出す。
「よろれい ―― ひーーーぃぃぃ!?」
「さくらちゃんを、弾き飛ばされた!?」
コウジの指示だったのだろう。
スミロドナットを庇おうとして、しかし、メタビーが放った弾丸はさくらちゃんの左腕を弾き飛ばし。
「ぐ、おおおおおおっ!?」
庇われるからには反撃をと足を止め防御をおろそかにしていたスミロドナットに、サーベルタイガーを模した黄色の頭部に、直撃。
信管が作動し、爆発が起こる。
なんと、跡形も残らない ―― とまではいかないが。
メダロット2体分の爆発力と推進力を詰め込んだその威力は、スミロドナットの頭部を破壊するに十分過ぎる。
「メダロッ島、ロボトル世界大会! 優勝者は……テンリョウ・イッキ選手!!」
ミスターうるちが手を振り下ろす。
こうして、「変形するメダロット」というインパクトと共に。
結果として、メダロット歴若干数月のメダロッターが、世界大会(呼称)を制することとなったのであった。
とりあえずこれ1つ。
修正するだけしといて、更新忘れとか……。
・ヘンゼルとグレーテル
童話ではなく、メダロット5より。外人(ぉぃ
しかし彼女たちよりも温泉街イコールミニゲームのイメージしかない。ロボロボ危機一髪は割とガチ。
ゲスト出演。
・イセキ
メダロット初代の悪ガキ3人組の姉御。初代にあまり出番はない。
不思議鳥版、メダロット
ゲスト出演。
・マイタケ・キノコ
舞茸茸。頭痛が痛い。
メダロット4より、リバティーズのリーダー。「お茶しない?」が合言葉。
キノコメダロットが揃ったのを良い事に、割と容赦ない実力を持っている。
メダロット4はストーリーでは1体ずつ出し合うロボトルが多いため、かなり理不尽な縛りプレイを要求されており、メダルが育たないというジレンマ。そのくせ最後は9体ロボトルだから質が悪い。
ゲスト出演。
・ハッカ
メダロット8より、ヒロイン・ミントの家族。父。
8のヒロインは、メダロットがそういう分野でも開拓者であることを再確認させてくれる(ぉぃ。ただしミント父はヒロインではない残念ながら。ミント押し。
ゲスト出演。
202200527 書き方変更のため、前書き追加。