「たぁあ!」
ガングニールを纏った響の振るった拳が、A型のソルジャーの胴体を貫き機能を停止させる。
そんな彼女に、他のA型がライフルから放たビームを浴びせていく。
その弾幕を交差させた腕を盾に、ギアの耐久力を頼りに突き進んでいくと、顔面に飛び蹴りを叩きこみ、頭部を吹き飛ばして撃破する。
着地を狙い、上空から数体のB型が背部のポッドから放ったミサイルが降り注ぐ。
「わわ!?」
どうにか回避していくも、爆風に吹き飛ばされ地面を転がる響。
起き上がろうとするも、ダメージのせいで動きが鈍い彼女に、ビームランチャーの照準を合わせていくB型。
そこへ美紀恵が割って入り、キティファングで斬り裂いていくのだった。
「大丈夫ですか、立花さん!?」
「うん。ちょっと擦りむいたくらいだから、ありがとう岡峰さん」
美紀恵の手を借りて起き上がる響。そこに、2体のA型が迫る。
「!」
それに素早く気づいた美紀恵は、放たれるビームをキティファングで弾きながら肉迫し、胴体に蹴りを入れ怯ませると、その勢いを利用し飛び越えるようにして、もう1体の背後に回り肩車をするように密着し、ファングで喉元を搔っ切り。
そこから飛び降りながら、怯ませたA型をテリトリーで引き寄せると胸部をファングで貫き撃破してみせた。
「(凄い!岡峰さん、この一週間くらいで凄く強くなってる!!)」
傷だらけでありながら、淀みない機動を見せる美紀恵に、思わず見惚れてしまう響。
戦い始めたのは自分とそう変わらない彼女が、見違えるまでの成長を遂げていることに、衝撃さえ受けていた。
彼女に比べて自分は何も進歩していないことに、焦りと自分は必要とされているのかという不安に駆られてしまう。
「立花さん危ない!!」
美紀恵の言葉に、A型が背後からビームサーベルを振りかざしていることに気づく。
意識が完全に逸れてしまったことで対応が遅れた彼女に、光刃が振り下ろされ――同時に翼が響を押し退けカウンター気味にA型を刀で横薙ぎに両断する。
だが、サーベルが右腕を掠め焼かれた肌が異臭を放つ。
「翼さん、腕が――」
「馬鹿者ッ!!」
「!?」
心配する響を翼は一喝する。その余りの気迫に、思わず後ずさる響。
「
「わ、私は…」
響はどうにか言葉を紡ごうとするが、翼は言い訳など聞きたくないと言わんばかりに背を向けて、次なる敵へと駆け出す。
「立花さん…」
「…半端な言葉はためにならねーですよ。行きますよ伍長、厄介なのがまだいやがるんですから」
何か声をかけようとする美紀恵を真那が諭す。
アシュクロフト・モンスターが未だに猛威を振るっている中、優先すべきことは何かと理解はできるが。それでも、彼女は響へ歩み寄り手を取る。
「立花さん。私だってどうしようもないくらい、馬鹿な失敗を何度もしてしまいました。自分だけ助かろうとしたり、1人で勝手に動いて捕まってしまったり…。でも、アルテミシアさんが――そんな私でも必要としてくれる人がいてくれたんです。私なんかが、誰かの手を掴んでもいいんだってわかったら力が湧いてきて…。だから立花さんにも必要としてくれる人は絶対にいます!!だから、諦めるのはまだ早いと思うんです!!」
「岡峰さん…」
「響さんが初めて戦った時のことを聞いて、私感動したんです!!知らない人のために頑張れるこの人なら信じられるって思ったんです!!
「伍長っ早く!!」
「はい!!すみません、行きましょう立花さん!!」
そう告げると、美紀恵は響の手を引いて駆け出した。
始めは引かれるままであったが、走るだけでも相当に無理をしているにも関わらず、そんなことを全く感じさせないまでに、彼女の目には力強さに溢れていた。
その姿に背中を押されるように、響は自分から手を離すとしっかりと己の足で走る。
どうしたのか?と振り返る美紀恵を安心させるように、笑みを受かべた。
「ありがとう
その言葉に、弾むような笑顔になる美紀恵。
「はい!一緒に頑張りましょう、響さん!!
『――――!!!』
怒り狂うようにレーザーやミサイルを撒き散らすアシュクロフト・モンスター。それだけでなく、その巨体で押しつぶさんと腕を振り回す。
暴風雨の如き猛攻を避けながら、横薙ぎに振るわれた腕をすれ違いざまに、ビームサーベルで斬りつけ浅くだが傷をつける――が、周りの装甲がその傷を覆うように増殖し、その場で元通りとなりやがる!!
「チィッ!!」
何度目も繰り返される光景に、思わず舌打ちしてしまう。
見た目通りの強固さに加え、この再生能力のせいで突破口が見えん!!
「この手の相手は、急所を突くのが定石か?」
『はい、エルトリアにも似た特製を持つ生物は、コアと言える部分を叩いて対処していました』
創作ものでありがちな推測に、ナイトをいなしながらアミタが同意してくれる。
「問題はそれがどこか、だが…」
あの巨体のどこを破壊すればいいのかがわからん。無難にいくなら中心部だが、それにしても今ある戦力で火力が足りるか…。
『隊長!!』
「岡峰伍長か!どうした!?」
打開策を思案していると、立花を連れた伍長が駆け寄ってくるのが見えた。
『私感じるんですっ。あの怪物の中からアルテミシアさんを!!』
「!どこからだ!?」
『一番奥深いところから、微かになんですけど…』
明確な根拠がないのか、自信を持ちきれない様子だが。アシュクロフトを装備し心を通わせていたている彼女は、最もアルテミシア氏に近い存在と言えるだろう。ならば疑う理由などあるまい。
「ッ!」
そうしているとアラートが鳴り響き、こちらを狙ってきているソルジャーを迎撃しようとすると、ヴォルフ・ストラージが足先の隠しナイフを急所に突き刺し沈黙させるのだった。
そして、彼はこちらへ歩み寄ってくる。
『岡峰、あいつはあのデカブツの中にいるのだな?』
『はい、ヴォルフさん!!早く助けにいきましょう!!』
『いや、お前はここに残れ。あいつは俺が
『――え?』
想定外の言葉に呆けた声を漏らす伍長。意味を理解できない――いや、したくないというよううに震えたことで問いかける。
『何を言って…いるんですか?アルテミシアさんを助けるために今まで…!』
『そんな余裕はなくなった。アレを止めるにはあいつごと中枢を破壊するしかない』
『そんなの、そんなの――』
――――ぇ――ん――――み……き……え――――美紀恵、ちゃん…――
『!この声、アルテミシアさん!?!?』
通信機越しにノイズ混じりに聞こえてきた声に、伍長が反応する。そして、それと同時にアシュクロフト・モンスターの動きがピタリと止まった。
彼女からの通信を通してのみ聞こえるということは、アシュクロフトを通して通信しているのか。
『待っていて下さいアルテミシアさん、今助けに行きますから!!』
『…いいえ、美紀恵ちゃん。もう、いいの…。お願い私ごと、アシュクロフトを『壊して』』
『アルテミシア、さん????』
『暴走したアシュクロフトを止めるには、私のメモリーを取り込んだコアごと破壊するしかない。そして、それができるのは正常な状態であるチェシャー・キャットにしかできないの』
『どういう、ことですか?』
『チェシャー・キャットのコアを、暴走しているアシュクロフトに直接接続して。後は私が、オーバーロードして自壊するようにプログラムを書き換えるから』
『そんな、そんなことをしたらあなたは――!!』
死んでしまうという言葉を遮るように、いいのとアルテミシア氏は優しく語り掛ける。
『アシュクロフトの素体にされた時点で、本当なら死んだも同然だった。それでもあなたのおかげでセシルにアシュリーにレオ――それにヴォルフともう一度お話ができた、それだけで十分救われたわ。本当にありがとう美紀恵ちゃん』
『い、嫌です…!約束しましたっ、元も戻って…また会おうってっ…!私はアルテミシアさんに会いたい!!会わなきゃいけないんです!!それなのに…それなのにッ!!』
『…もう、時間がないの…。これ以上は抑えることができない…。だから…』
彼女の言葉を示すように、アシュクロフト・モンスターが束縛を振りほどこうとするかのように、僅かにだが全身を軋ませていた。
『です…がっ』
『俺がやる。チェシャー・キャットのコアをよこせ岡峰美紀恵』
それでも躊躇う伍長に、ヴォルフ・ストラージが肩に手を置きながら語りかけた。
『ヴォルフ、さんっ…』
『コアを接続させるのだけならお前でなくてもできる。そうだなアーシャ』
『うん、そうだよヴォルフ』
『ならば問題ないな』
『ありますよ!!あなたはアルテミシアさんを――!!』
『舐めるなよ』
泣き叫ぶような伍長の言葉を遮り、ヴォルフ・ストラージは揺るぎない目で見据える。
『この手はとうに血に塗れている。今更1人2人増えようが変わらん』
『そういう…そういうことじゃありません!!死んでしまうんですよアルテミシアさんがッ!!』
『このままあのデカブツを放置すれば多くの人間が死ぬ。あいつに虐殺の片棒を担がせるのか?』
『それは、それは…!!』
……うん、もういいか。部外者なんで今まで黙っていたが、流石に我慢の限界だ。
なので、ヴォルフ・ストラージの顔を思いっきり
『ッが!?』
間の抜けた声を漏らしながら倒れ込む
「さっきから黙って聞いてりゃ女々しいことばかりほざきやがって。まだ彼女は生きてんだろ!!!目の前にいんだろ!!!最後まで手を伸ばすべきテメェが真っ先に諦めてんじゃねェ!!!」
『ッ――他の手がない以上、これが最善だ。それくらい――』
「わかんないね!!!やるだけのこともしてない奴の戯言なんざこれっぽちもなァ!!!」
可能性が残っているのに、もう無理だ諦めようだなんて、俺は認めないぜっっったいに認めてたまるか!!!
母さんが死んでしまったあの時の俺と違って、それだけの力があって助けてくれる仲間がいるのにやらない理由を探すなんざふざけんじゃねェ!!!
『ならばどうするというのだ!!!本来の力も使えない貴様に、何か手立てがあるのかッ!!!』
『ここにあるぞォォォ!!!』
「ッ!?父さん!?」
機体を視認できる高度で通過していった輸送機から、父さんのゲシュペンストとそれに支えられながら1つのパラシュートのついたコンテナが降下してきたぁ!?
『来い勇ゥ!!お前の新しい『剣』だッ!!』
戦場から少し離れた場所に、墜落気味に着地したコンテナを指さしながら叫ぶ父さん。
そのコンテナから何か懐かしい気配を感じ、引かれるように気づけば駆け出していたのだった。
『ッ!させん!!』
そんな俺をナイトが阻もうとするのを、伍長とヴォルフ・ストラージが割って入り防いでくれた。
『行って下さい隊長!!』
『大口を叩いたのだ、お前の『可能性』を見せてみせろッ!!』
「おう!!」
頷きながら、足を止めることなくコンテナを目指すも、再び動き出したアシュクロフト・モンスターが俺に狙いを定めながら、雄叫びと共に拳を振り上げやがった!!
『――――!?』
だが、不意に振り上げられた拳が凍りつき始めると、瞬く間に拳どころか腕全体が氷に包まれ、自重に耐えられず根元から折れて崩れ落ちるのだった。
「これは――」
『勇さん!!』
思わず足を止めた俺の側に、聞き覚えのある声と共に、大型の熊くらいのサイズのいかつい風貌の兎が降り立った。そして、その背に乗っている少女に思わず目を丸くしてしまう。
「四糸乃!?どうしてここに!?」
助太刀に現れたらしいのは、最近友達になった精霊の四糸乃であった。彼女は霊装こそ身に纏っていないも、私服であろう、幼さの残る彼女を引き立てるワンピースの要所を、神秘的な光の膜が覆っているではないか。
『は、はい。その、お手伝いできればと、思って来ちゃいました…』
「あ、いや、驚いただけで、怒ってるわけじゃないんだ。助かったよありがとう」
申し訳なさそうにしてしまう彼女に、慌ててフォローを入れていると、乗っている兎がこっちを見ながら口を開いた。
『やっほーイサムン。もっと早く来たかったんだけど、こと――保護者の人がなかなか許可してくれなくてね~』
「その声…よしのんなのか!?」
『そだよ~ハンサムでいいでしょ?』
見た目に合わない間延びした声は、四糸乃の親友のよしのんだ…。コミカルなパペットから変わり過ぎですよあなた…。
『ちなみに、他の皆も駆け付けてくれてるよ~』
「他??」
『私もいるぞ!!』
跳び込んできた夜刀神がその勢いのまま、手にした大剣でソルジャーを両断すると、フフン、と得意げに胸を張る。そんな彼女も四糸乃同様、私服を光の膜が覆っていた。
『グランドブレイザー!!』
『エグゼキュートウェーブ!!』
続けと言わんばかりにテイルレッドとブルーが放った必殺の技が、多数のソルジャーを巻き込み蹴散らしていく。
「レッド、ブルーも来てくれたのか」
『はい!ここは俺達が!』
『ま、貸し一つってことで』
貸し作りまくってるのはブルーじゃ…というレッドのツッコミを誤魔化すように、ブルーはランスを振り回して突撃していく。
「すまない頼む!」
ブルーを追いかけていくレッドらに、礼を言うと再びコンテナへ走る。
『――――』
それを許すまいとでもいうように、アシュクロフト・モンスターが腕を振りかぶると、突き出された腕がゴムを伸ばすかのようにして迫って来やがった!?
『止まるなァ!!そのまま進めッ!!』
避けようとする俺を庇いながら、迫る拳へと父さんが跳び出した!
『究ゥ極ッゲシュペンストォキィィィイイイッッッック!!!』
全身全霊をかけた雄叫びと共に放たれた渾身の蹴りを受けた拳は木っ端微塵に粉砕される!!
量産機でこの威力、やっぱり凄い人だとしか言いようがないよ。
「ありがとう父さん!!」
振り向かずにサムズアップだけすると、父さんは機体が負荷で各部に火花を散らしているのも構わず、俺を阻もうとするソルジャーへ立ちはだかってくれのだった。
そして、ようやくコンテナに辿り着くと、パネルを操作し開放する。
「!これって…」
コンテナ内に入ると、中にはハンガーで固定されたPTが鎮座していた。
かつて武士が纏っていた甲冑を連想させる独特な装甲が追加されているが、そこにあるのはこれまで俺と共に戦ってきてくれた戦友――ヒュッケバインMK-Ⅱ2号機だ!
『――あたた…』
そんなMK-Ⅱのスピーカから、女性の声が漏れ出てきたかと思ってた、装甲が解放され誰かが出てきた!?
「ってミリィ!?!?」
『あっ勇さん…。良かったご無事だったんですね…』
MK-Ⅱから出てきたのはなんと、マオ社へ出向していたミリィであった!
打ち身のせいで覚束ない足取りの彼女に急いで駆け寄り支えると、彼女は俺の顔を見て安堵した様子で笑みを浮かべる。
「何やってんだよ!!こんな無茶して…!!」
そんな彼女に思わず怒鳴ってしまう。いくらPTのアブソーバーとはいえ、あの墜落同然に落下した衝撃に訓練されていない者がただで済む筈がない!
『あはは、基地まで戻っている余裕がなかったので…。それより、早く
少し動くだけでも苦痛だろうに、それでもミリィは俺から離れると、コードをMK-ⅡとタイプTに繋いでいきコンソールを操作し始める。
できるならすぐに休ませたいが、状況を打開するにはMK-Ⅱに頼るしかない以上、彼女に従うしかないか…。
タイプTから降りると、MK-Ⅱへと乗り込むと装甲が閉じられる。
『データ転送完了、各種バイタル更新、ニューロン接続、運動ルーチン再設定――』
普段のほんわかした雰囲気とはうってかわり、引き締まった顔つきで目にも止まらぬ速さでタイピングしていくミリィ。…あの状態になると、作業が終わるまで周りのことが入ってこなくなるから、最悪ぶっ倒れて医務室行きになるんだよなぁ…。
『システムオンライン、ブートストラップ起動――システムオールクリア、起動いきますっ!』
「OK!いつでも!」
Enterキーが押されるのと同時に、モニターにシステムの起動画面が表示される。
『RTX-010-02M HuckebeinMK-Ⅱ Muramasa』
「(ムラマサーーそれが君の新しい名前なんだね。再会したばかりだけどごめん、どうしても助けたい人がいるんだ。だから、力を貸してほしいんだ)」
心で語り掛けると、それに応えてくれるかのようにT-LINKシステムが立ち上がる。
「(――馴染むT-LINKシステムが、これなら!)」
タイプTと同じモデルであるが、こちらの方が何の違和感もなく受け入れられ、元から肉体の一部であるかのような一体感を感じられた。
『各部正常、どうですか勇さん?』
「問題ない。これならいけそうだ。ありがとうミリィ。後は安全な所に退避していてくれ」
ハンガーの固定を解除し外に出ようとすると、何故かそれを止めるようにミリィが目の前に立つのだった。
『――ごめんなさい。こんなことをしている場合じゃないのはわかってます。それでもこれだけは言わせて下さい』
俺の胴体に額を押し付けて寄りかかって来る彼女の、その震える声に何も言わずに耳を貸す。
『あなたが全てを出し切れるように、この子にはできるだけのことをしました。でも、それはあなたがどれだけ傷ついても――命を落とすことになっても良いなんて訳じゃないです』
「うん、わかるよ。君が俺のことを護ろうと想ってくれていること、暖かさが伝わってくるよ」
装備した時から、彼女が己がもたらす力が起こす結果に対して不安を抱えていたこと、それを押し殺して頑張ってくれたことが心に流れ込んできていたのだ。
「!」
そんな折、激しい振動と共に天井がひしゃげていき、俺達を押し潰そうと崩れてくるのであった――
「――そんな…」
アシュクロフト・モンスターによって、勇達がいるコンテナに拳が叩きつけられ潰される瞬間を目撃した誰かが、無意識に呟いていた。
希望を繋ぐために、誰もが懸命に戦った。しかし現実はどこまでも残酷で、そんな努力を踏みにじり嘲笑うというのか…。
「――嘘…やだよ…」
失われた存在に――その暖かさがもう感じられなくなることに、アミタの目から涙が零れ落ちていく。
「いさ…む、君――勇君ッッッ!!!」
嫌だ!!と叫ぶアミタや、呆然とする他の者達を尻目にアシュクロフト・モンスターは、満足げに唸り――
『!?!?!?』
違和感に気づき目を見開く。コンテナを潰していた腕が徐々に――徐々にと持ち上がられていたのだから。
『――ごめんミリィ。多分、これからも不安にさせてしまうことは多いと思う』
拳を
モニターに『ウラヌス・システム稼働。念動フィールド収束展開異常なし』と表示されるのを確認すると、指を食い込ませながら拳を引っ張ると、まるで粘土を千切るかのように軽々と腕ごと引き裂くのであった。
『――――!?』
そんな勇に、アシュクロフト・モンスターは怯え狂乱するように全ての砲門を発射してくる。
暴風のような弾幕を前に、ミリィを背後に下がらせると、勇は落ち着き払った動作で左肩に懸架されているT-LINKセイバーを手にし、両手で上段に構えながら、刀身に念を纏わせていく。
『T-LINKフルコンタクトッ!!!』
出力を最大まで高めると、弾幕目掛けセイバーを振り下ろす。
『セィヤァァァアアア!!!』
刀身から解き放たれた念は刃となり、迫る弾幕を全て跡形もなく消し去り。そのまま一切の勢いを失うことなくアシュクロフト・モンスターへと飛んでいき。その身を紙切れの如く容易く斬り裂いていった。
『――――!?!?!?』
コアを傷つけることなく、半身を消し飛ばされたアシュクロフト・モンスターが苦悶に喘ぐように叫び散らし悶え狂う。
その信じがたい光景に誰もが唖然とする中、勇太郎とヴォルフはそれでこそよ!と笑みを浮かべた。
『でも、かならず帰ってくるから大丈夫。俺を信じてくれ』
「――はい!!!」
視線だけ振り返りながら、笑みを浮かべる勇。あらゆる闇を掻き消す日輪のごとき姿に、ミリィは満面の笑みで応えるのであった。
新しいMK-Ⅱの名前はアマテラスにしようかとも思いましたが、仰々し過ぎると思いやめました。