カラスが鳴き、人々が家路につく夕暮れ時。
青山遊里と天城カイト。
2人は何故かキッチンにいた。
「んじゃとりあえず野菜をばばっと切るか」
「ああ」
遊里がまずはと玉葱を取り出す。
包丁でまず半分に切った後、皮を全て剥き丁寧にみじん切りにしていく。
カイトが取ったのはジャガイモだ。
こちらはまず、皮をピーラーで剥いていき、食べやすい大きさに乱切りしていく。
「あっちは盛り上がってるなぁ」
「今は遊馬と神代凌牙のデュエルか」
「ああ。どっちが勝つと思う?」
「……遊馬だ」
「んじゃ俺は凌牙に賭ける」
「……賭けか?」
「いや、適当に言っただけだ」
玉葱のみじん切りを終えると新しい玉葱を取り出す。
今日は人数も多いし、きっと大量に食べるだろう。1つや2つでは足りないに違いない。
カイトも同じように新しいジャガイモを取り出すと黙々と切っていく。
「あっ、勝ったのは遊馬か」
「勝ったのはいいが、最後は博打同然だな」
「そこで勝ち札を引っ張ってくれるのは強さの1つだと思うけどな」
ある程度、玉葱をみじん切りをすると次はくし型に切っていく。
ジャガイモを切り終えると、次に取り出したのは人参である。
こちらも皮を剥いた後、乱切りで切っていく。
「将来の夢、か」
「そろそろ進路を決める時期だからなぁ」
「そういう貴様はどうする気だ?」
「んー……」
玉葱を切る作業を終えると、次は肉を取り出す。
本日はビーフカレーだ。
一口サイズに切って、食べやすい状態にしていく。
「家族からはデュエルアカデミアを進められてるんだけどね……」
「……プロになるのではないのか?」
カイトが人参を切る作業を終える。
さて本番とばかりに大きいなべにサラダ油を入れて鍋を温めて行く。
最初に炒めるの肉だ。
「俺のデュエルってプロ向きじゃないんだよね」
「……なるほど、そういう事か」
「ああ。どっちかっていうと賞金稼ぎみたいな感じかな。そういうカイトはどうなんだよ?」
肉の表面にしっかり焼き色がつくまで炒めると、1度肉を別皿に移す。
改めてサラダ油を入れると玉葱のみじん切りを炒めて行く。玉葱が茶色になるまでしっかりとだ。
「俺は研究者としての道に進もうかと思っている」
「親父さんの跡を継ぐんだ」
「そこは分からないが……嫌いではないからな」
「ふぅん」
玉葱が茶色になってくると、残りの玉葱と人参、ジャガイモも入れて更に炒めて行く。
一方、遊里はゆで卵作りや野菜を切っていた。サラダを作る為である。
「そういえば瑠那が世話になったみたいだな、礼を言う」
「ああ、気にしないでくれ」
「父さんの助手で前から世話になっていたからな、改めて言わせてくれ」
「んじゃ受け取っておくよ」
炒めている野菜全体に火が通ると、最初に炒めておいた肉を入れてしっかりと混ぜて行く。
その後は水を入れてしっかりと煮込んで行く。
沸騰したら火を弱めてアク取りだ。
ジャガイモなどが柔らかくなるまでしっかり煮込む。
「しっかし遊馬達はどうするんだろうなー」
「さてな。ただ……」
「ん?」
「まずはバリアンの問題をどうにかするしかないだろう」
野菜を盛り付けながらふむ、と思う。
そうだ。
まずはこの世界を狙っているというバリアンをどうにかしなければならない。
将来の進路について考える事など世界を救ってからでも遅くはない。
「頑張ってくれ」
「お前は協力しないのか?」
「俺にできる事ならやらせてもらうさ。でも洗脳とか色々あるからなぁ」
アクを取りながらそれもそうだった、とカイトは瞠目する。
この青山遊里というデュエリストはデュエルの腕は間違いなく一流のものを持っているが、ナンバーズやバリアン達に対する耐性は皆無なのだ。
ナンバーズを持っていれば乗っ取られる可能性は高いし、バリアンには実際に洗脳されてしまったのだ。
ナンバーズの真の所有者であるアストラルと共にある遊馬達とは違うのだ。
「……そういえば凌牙の奴はなんで平気なんだ?あいつもナンバーズを持ってるって聞いたぜ」
「奴は何度かナンバーズを所有していた事がある。予測にすぎないが、何度もナンバーズを持った事により耐性を得たのだろう」
「カイトは?」
「今の俺はナンバーズを持っていない。持っていた頃はある装置を使って影響を無効化していた」
「へぇ……」
ゆで卵の殻を剥きながらへぇ、と遊里が呟く。
元々ナンバーズの洗脳効果は非常に強い。
大体の人物はナンバーズを持てばあっさりと洗脳されてしまうのだ。
しかし同時に対抗策もしっかり用意できている。
因みにほんのわずかではあるが、取り込まれる事がなかった人物がいたりする。
「まっ、必要なら呼んでくれ」
「ああ、そうさせてもらおう」
「おう。さて、そろそろ仕上げに入りますか」
「ああ」
遊里はサラダを。
カイトはカレーを仕上げて行く。
既にご飯は炊けている。後はカレーが完成すれば完成だ。
「しかし他の連中、飯の事を考えてなかったのかねぇ」
「普段なら瑠那が作っているんだがな……」
「あの人か。というか助手に料理とか作らせてるのかよ……」
呆れた様子で呟く遊里に、珍しく申し訳なさそうな表情になるカイト。
とは言え、現在の天城家で料理ができるのは助手の瑠那とカイトのみ。ハルトは要練習だし、フェイカーは残念ながら問題外である。
「悪いとは思っているんだがな……」
「まぁ、大変みたいだしな」
カイトはバリアン対策で色々と動いている。
最近では《銀河眼の光子竜》についての伝承があるらしくそれについて調べているらしい。
カードに伝承とは一体、と思うのだが残念ながらこの世界では割とよくある話である。突っ込みなんてものはない。
「だがバリアンについて何か分かるかもしれない」
「バリアンについてはみんなよく知らないんだっけか」
「ああ。だからこそ情報が必要なんだ」
今まで交戦しているものの、バリアンについては未だに謎が多い。
いや、殆ど分かっていないというのが本音だろうか。
「まっ、とりあえず飯を食おうぜ、今は」
「そうだな」
煮込んでいた鍋の火を止めると、ルウを入れていく。
後は弱火でしっかりと煮込んでいけば完成だ。
その間にサラダの盛り付けをすませる。
少し待てばトロミも出てきた。これで完成である。
「んじゃ盛るか」
「ああ」
「おーい!お前ら!飯作るの手伝えー!」
未来はまだ分からない事ばかりだ。
でもとりあえず今は目の前の食事である。
「飯だ!飯だー!」
「ご、ごめんねカイト君!準備するの忘れてたわ!」
「気にするな……運ぶのを手伝ってくれ」
腹を空かせたデュエリスト達が押し寄せてくる。
やれやれと2人が呆れながらカレーを盛っていく。
「遊里」
「おう、凌牙。手伝ってくれ」
「ああ。しかしお前が料理を出来るとは思わなかったぜ」
「基本的な事を守ってレシピを見れば出来ると思うぞ、ちゃんと見れば」
言え悲しいかな。
そういう基本的な事を無視して調理する阿呆がいるのも事実である。
だからムド○ンカレーとか認めない。
「……そんな料理を食った事があるのか?」
「……愛華がなぁ」
「……悪かった」
思わずため息を吐く2人。幸せが逃げていきそうである。
「おーい!2人とも早くー!」
「ああ」
「今行く」
遊里とカイトが作った料理は非常に美味しかったとだけここに残す。
遅くなった上に短い。
内容もオリ主とカイトがカレーを作ってるだけ。
次回も遅くなるかもしれません。
デュエルは残り3回。デュエルがない.5を入れても残り6、7回で終わる予定です。