その青年―
しかし、竜介にはある秘密があった。
それは家族だけしか知らない秘密。
そう、彼は”二重人格”なのだ。
これはちょっと変わった二重人格の青年たちが織りなす
こちらにて掲載することになりました。
本作をよろしくお願いします。
それは遠い昔の物語。
とある星に伝えられる最強の男の物語。
戦乱の時代、その青年は存在した。
荒廃したその場所は、まるで戦争があったかのような状態であった。
炎に包まれた周辺には建物の形はなかった。
もともと、その場所は人の暮らしていた場所なのだろうか、燃えている炎に飲み込まれている家のような建物がかろうじて見えるぐらいだった。
そんな人のいる場所ではない地獄と化した場所に、数人の男たちがいた。
「た、退避! 退避!」
目の前で起きた爆発に、軍服に身を包む男が後ろにいる数人に声をかけ、その場から離れようとする。
「シェイント・フレア」
「なッ!? ぐあああッ?!」
「「「隊長!!」」」
逃げ出そうとする声をかけた隊長と呼ばれた男は、一瞬で業火に見舞われる。
肉の焼ける匂いが男達が持っていた恐怖心を増させる。
「なに逃げようとしてんだ?」
「ッ!?」
この一連の行為を行った人物は黒髪に赤い目をした青年だった。
青年の地獄のように低い声は、目の前での出来事に震えていた男達をさらに震え上がらせた。
「テメェらのせいでこの争いは起きた。それなのに元凶であるテメェらが逃げても良い何て理屈は……ないよな?」
「た、助けて!」
「や、やめてくれぇ!!」
「せめて命だけはっ」
たった一人の青年に数人の兵士たちは完全にひれ伏していた。
土下座をして命乞いをする男たちは惨め以外の何物でもなかった。
「お前らは、餌だ」
「ヒっ!?」
そんな惨めな思いを味わって男たちに、青年は無慈悲にも冷たい声でそう告げた。
それは一種の死刑宣告でもあった。
兵士たちが見たのは、青年の右腕だったものが怪しげに揺れる紅く輝く”何か”だった。
「喰らい尽くせ。ブラッディ・アブソプション」
静かに……だが、周囲にはっきりと聞こえるように告げられた言葉。
その言葉に呼応して、怪しげに揺れる赤く輝くそれは、一瞬で男達を飲み込んだ。
最期は悲鳴などはなく、一瞬ですべてが終わった。
「はぁ……」
青年のため息とともに赤く輝くそれは普通の腕へと姿を変える。
赤く輝消え去ると、男たちのいた場所には人影すらなかった。
「また、争いが起こってしまった」
青年はどんよりとする空を仰ぎ見ると、嘆く様に呟いた。
「いつになったら、この無限に続く争いは止められる? いつになれば、僕の理想の世界になるんだ?」
それは最強の男にはそぐわない嘆きだった。
「誰でもいい。誰か、この無限の戦いの連鎖を止めてくれ。そして、僕を救い出してくれ」
その言葉を聞くものは誰もいなかった。
それから少しして、青年は突如行方をくらませた。
青年の行方は、未だに不明だ。
全ては輪廻する。
今、その時が訪れる。
さあ、始めよう。
新たな物語を。
主人公置き換え型の作品です。
文字数は気にしないでください