『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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グッ、モーニング〜〜〜〜‼︎
朝からテンション高めなのは睡眠障害でちっとも寝ていないから……ではないですよ?
ええ。2時間しか寝ていないからではありませんて。


そんなことより、今話から第三部開始です。
あのキャラやあのキャラ。そしてキンジと縁が強いあのキャラも出る予定ですので引き続き応援の方をお願いします。
ではそろそろ。

第三部、百物語のエピソード3を語ろうとしましょうか……。


第三部。終わる日常
プロローグ。キンジの日常①


よお、元気か? さて、今回も前回同様にハーレムを作りあげた男の話を語ろうと思うのだが。

……なんだかうんざりした顔をしているな?

まるで俺の話を聞きたくないみたいじゃないか!

ははーん、さては「こんな調子で百人もの物語こと、美少女を集められるのか?」みたいな心配をしているんだな?

まあ、普通に考えたらこの調子だと無理だろうな。

今のところ、ハーレム要員はまだ四人しかいないし、一見すると攻略されてる感じの子達をいれても百物語にはほど遠いしな。

だからお前らが無理だと思うのも解るぜ!

だが、だがな。

奴はハーレムを作りやがったんだ。

なんせ奴は百物語の主人公でもあり、不可能を可能にする伝説の男だからな。

不可能という言葉はやり難い、成し遂げるのが困難というだけで、無理ではないのだからな。

それにどんなものにも抜け道や裏技があるものだろ?

よく聞かないか? ギャンブルで必ず当たる方法とか、絶対モテる口説き方とか!

あれ? さっきまで話を聞きたくなさそうにしてたのになんだか聞きたそうな顔をしているなぁ。

大変解りやすい反応だから話す俺としては楽しいぜ!

……まあ、その手の裏技系のほとんどは眉唾ものなんだけどな。

そんな方法が実際にあるはずないけどな。

あったら、世の中の誰もがバラ色の人生を歩めるはずだし、わざわざその方法を他人に教えてくれる親切な人なんて、そうそういるはずないんだからな。

おっと、話が逸れたな。

で。その方法というのが。

そう、ライバルの登場という奴だ。

……って、おいおい。

なんでまたげっそりして溜息なんて吐くんだよ?

ライバルだぜ、ライバル。

涙あり、笑いあり、友情あり。

信念と思想の戦いの果てに培われたそういったものは、物語を盛り上げるのになくてはならないキーワードみたいなものだろ?

……だから、げっそりするなって!

わかってるよ。

どうせまた、ライバル戦とかいっておいて、結局可愛い女の子達とイチャイチャするだけだろう、って思っているなら……まあ、その通りだけどな。

つまり今回はそういう裏技があるせいで、ライバルが出たり、余計なバトルに巻き込まれたりして大変な目に遭うみたいな話だ。

いつの世も、楽をしようとすると楽してるはずが実際には大変な道を歩んでいた、そういう教訓的な話の内容だ。

やっぱり苦労をして生きる方が充実した楽しい人生を歩めるのかもしれないな。

おっと、また話が逸れたな。

では、百物語のエピソード3を語ろうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある都市伝説系サイトに記載された書き込み。

目撃者Aさんの話。

 

これは、私と私の友人が体験した恐怖体験である。

 

 

 

20⁇年?月?日。境山峠道。

 

 

 

 

一台の車が暗い山道を爆走しています。

その赤いスポーツカーを運転しているのは、地元の大学に通う学生。

私の友人です。

彼の名前はそこまで重要ではないですが、一応記しておくとしましょう。

彼の名前は茶羅伊織と言います。

社会的な身分は大学生という事になっていますが、長髪茶髪で普段からシルバーのアクセサリーを身に付けていることか、学内ではチャラ男と呼ばれていました。

そのアダ名の通り、彼は女性関係にだらしなく。よく女性関係のトラブルを抱えていました。

そんな彼はほとんど毎日のように、深夜になるとここ境山の峠道を魔改造したお気に入りの愛車で爆走していました。彼の趣味というか、特技がカーレースなのです。

俗にいう、『走り屋』というやつです。

急勾配のある山道でもほとんどスピードを落とさずに駆け抜けるその様は、地元でも知られた存在で多くの若者から羨望の眼差しで見られていました。

そう、見られていたのです。

とある日まで。

その日、彼はいつものように愛車を走らせていると、車のバックミラーとサイドミラーに不思議なものが映っているの見つけてしまう。

自身が運転する車の後ろ。後方に車ではない異様なものが車間距離ギリギリに、ピッタリと張り付いていたからだ。

 

「おいおい。なんだよ、アレは?」

 

そう声に出してから気づく。

彼が運転する車の真横にピッタリと寄り添うように走るバイクがあることに。

 

(族の奴ら……か? いや、でも……そんな……)

 

「う、うわあああぁぁぁ‼︎」

 

彼が驚きのあまり大声をあげたのには訳がある。

彼の運転する車の横に寄り添うように走るバイク。

それを運転するライダーの体。

そのライダーの体が一部アリエナイ事になっていたからだ。

 

(ク、首から上がねえ⁉︎)

 

そう。彼が見たのは上半身の首から上がない人間と思わしき人が運転するバイク。

都市伝説として語られる『首なしライダー』を彼は見てしまったのです。

 

「おいおい……嘘だろ? 夢だ。夢、夢、これは夢だ!」

 

彼はあまりの恐怖に車を停車させようとブレーキを踏んだ。

その瞬間、後方から迫っていた何かの声が聞こえてしまう。

 

「なんじゃ、せっかくわらわが走っているのに止めようとするなんて競いがいがない奴じゃな」

 

「ケッ、だから言っただろうが。美しい車を美しくない改造している奴なんて戦う価値もねえって」

 

後方のその何かの姿が見えた。

それは一人の少女だった。

フリフリで、ヒラヒラのいわゆるゴシックロリータと呼ばる服装を身に纏い、体の至るところには包帯は巻かれていた。

年齢は小学生くらいだろうか。

怪我をしているのか、全身を包帯で巻かれていて、片目も包帯に包まれている。

その様は怪我の痛々しさよりも、ゴシックホラー的な恐怖と威圧感を放っていた。

一方の『首なしライダー』はド派手な特攻服を着用している。

その特攻服には『天上天下唯()独尊』という刺繍が入っていた。

 

「まあ、そういうな。キンゾーよ。わらわ達を見て驚いただけなのかもしれぬ。

平常時に競い合ってみたら意外とやる奴なのかもしれぬぞ?」

 

「ブチ殺すぞ! てめぇらがその名前で呼ぶんじゃねえよ!」

 

車外から聞こえてくる化け物達の怒鳴り声。

恐怖のあまり、運転していた彼はそこで気を喪ってしまいました。

私?

私は、助手席で最後まで彼らの声を聞いていましたよ。

彼が気を喪ったのが解ると、その人達は私に向かいニッコリ微笑みましたから。

ええ、怖かったです。

トラウマものです。

停車している私達の車を置き去りにして。

彼らは去っていきました。

去り際に彼らの叫び声が聞こえたのでここに記しておきます。

 

「それじゃ、とっとと行くかの、キンゾー? 『音速境界(ライン・ザ・マッハ)』」

 

「ライン、てめぇは後でブチ殺す! 『流星(メテオ)』」

 

気を喪った彼はその日から街中で幼女や高齢の女性を見ると失神してしまうようになりました。

あれ以来、境山はおろか。

他の場所にもカーレースに行くことはなくなり。

バイクや特攻服を見ると奇声をあげるようになったとか。

これは本当にあった怖い話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2010年6月18日。夜坂学園。2年A組。

 

 

俺は一人で自分の席にぼんやりと座って教室のドアを眺めていた。

ここ最近の俺の日課と化している行動だ。

______ここでいくら待とうが、毎朝楽しそうにトークしてくるあいつの姿があるわけないのは解るのだか、ついなんとなく待ってしまうんだ。

仁藤キリカ。

俺の親友であり……この世界で初めて俺に話しかけてきた人物でもあり、また『魔女喰いの魔女・ニトゥレスト』でもある。

そのキリカはここ数日、学校を休んでいるんだ。

元々そんなに体が丈夫な方ではなく。ちょくちょく病気になって学校を休む。

______そういう事になっている。

本当のところちょっと違うという理由を知っている俺は複雑な気持ちになるが、俺の口からはなんとも言えない。

そんな事を考えていた時だった。

 

ピロリロリーン! と俺の携帯にメール着信があった。

 

メールを開いて見るとそこには……。

 

 

 

差出人・仁藤キリカ

 

 

タイトル・モンジ君へ

 

内容・モンジ君おはよー! 今日も雨で外がしとしとだね。

ちゃんと傘を持ってきてるかな?

もしかしたら、予備の傘があると……中略……。

それじゃ、瑞江ちゃんや音央ちゃん、鳴央ちゃんと仲良くね。

今日もぐっすり寝て過ごしまーす♪

おやすみなさいっ。

 

 

あなたのキリカより。 チュッ♡

 

 

 

いかん、頭痛がしてきた。

それと同時に体中に血液が勢い良く流れるのも感じる。

くっ、静まれ! 俺の血流。

いろいろツッコミたいが、一番ツッコミたいのはモンジ君っていう辺りだな。

まあ、可愛い子からこんなメールを貰って嬉しくないわけがない……なんて思わないがな。

病気(ヒス)持ちには朝っぱらから辛いメールだ。

だが、メールの返信はしておこう。

 

「俺にはちゃんと一文字疾風という名前があるんだからな、っと」

 

そんな返信をしながらふと、教室のドアの方を見てしまう。

キリカの体が弱っているのは本当だが、それは病気だからではない。

実際は『神隠し(チェンジリング)』をなんとかするために力を使い過ぎてしまい、そこで失われた体力や魔力を回復するために自宅療法をしているんだ。

______こないだの事件の時に、魔女の魔術には代償が必要だというのを語られた。

あの時はかなり魔術を使ってくれたり、俺を助けてくれたからその代償はかなりキツイはずだ。

 

「……ちゃんと休むといいんだが」

 

もしかしたら、今頃苦しくて大変な目に遭っているのかもしれない。

もしかしたら、今頃あの綺麗な髪や玉のような肌を掻き毟っているのかもしれない。

もしかしたら、また別の五感の何かを喪って、辛い思いをしているのかもしれない。

……そんな事を考えてしまい、いてもたってもいられなくなるのだが、グッと耐えている。

キリカのところに駆けつけても、今の俺では出来る事なんてないからな。

 

「ちょっと悔しいな……」

 

『百物語の主人公』、『ハンドレッドワン』。

 

『不可能を可能にする男』、『哿』、『エネイブル』。

 

そんな風に呼ばれても、苦しむ親友を助けることも出来ないのなら意味がない。

主人公というのは、苦しむ仲間や人を助けることが出来る奴の事をいうのだから。

そう思うのは、俺が未熟で。

キリカを頼らないと事件を解決出来ないからだ。

 

「早く、一人前の物語にならないとな」

 

キリカの席を見ながらそう呟いた時だった。

 

「おはようございます」

 

俺の背後を一瞬でとったような、冷たい声が聞こえた。

 

(なっ、そんなバカな。つい一瞬まで俺は教室のドアを見つめていたのに。ほんの一瞬キリカの席を見ただけで俺の背後を取った……だと⁉︎)

 

ヒステリアモードではないとはいえ、元武偵である俺に気づかれることなく背後を取るとは……やはり油断ならない奴だ。

 

「『朝のトークタイム』とやらをしてあげます」

 

「いや、別にしなくていいんだが」

 

「遠慮はいりません。ほら、とっとと話しやがれです」

 

「こんな殺伐としたトークタイムなんて御断りだ!」

 

なんで俺は朝っぱらから首にナイフのような金属を押し当てられないといけないんだ?

『月隠のメリーズドール』というロアである一之江は、何かある度に俺を刺す癖がある。

前世でアリアが事あるごとに俺に銃を向けてきたように。

だが、人前でザックリやるほどのお茶目な奴ではないはずだ。

というかないといいな。

 

「いいからとっととトークしなさい。こちとら、キリカさんに言われたので仕方なく付き合っているのですから」

 

一之江が何故こんな殺伐としたトークをしたがるのか。

それはキリカに頼まれたかららしい。

キリカを心配して電話した一之江にキリカが『モンジ君との朝のトークはお願いね!』

などと言ったそうだ。

それを毎朝実行しようとする律儀さはいいが、いかんせん本人にその気が無さ過ぎだ。

 

「では、語りなさい」

 

「急に言われてもな……ええと、いい天気だな?」

 

「ええ、朝から土砂降りでテンション下がりますね」

 

「昨夜はよく寝れたか?」

 

「深夜まで通信番組を見ていたので3時間しか寝ていません」

 

「朝食は何を食べたんだ?」

 

「朝は基本何も食べません」

 

「……」

 

「他には?」

 

「……特にないな」

 

「コミュ力の低い人ですね」

 

お前が言うなー!

どうしろというんだ?

話題を出そうとすればその話題を全てぶっ潰す一之江相手にトークしないといけないなんて。

これ何の罰ゲームだよ!

そう思っていると。

一之江がはぁ、と溜息を吐いたのと同時に首筋に当てられた金属の冷たさは無くなった。

会話するつもりが微塵も感じられなかった一之江に愚痴りそうになったが、愚痴ったが最期。

どんな目に遭うかは想像出来るので心の中だけで愚痴ることにしよう。

そう思いながらも、それとは別に聞きたい事があった俺は一之江に小声で話しかけた。

 

「なあ、一之江」

 

「なんですか。宿題ならやっていませんよ」

 

「見せませんよ、じゃなくてやってないのかよっ」

 

「宿題は決して家ではやらない主義なのです」

 

「……昨日学校でやってなかったか?」

 

「授業の時は眠いので寝ていました」

 

堂々とした態度で言う一之江。

これで、宿題提出の時もしれっと「すいません、やってません。申し訳ありませんがやる気も起きませんでした」などと語るので、教師泣かせだったりもする。

 

「ちょっとあっち系で聞きたい事があるから、教室の外で話さないか?」

 

「またどこかに連れ込んでエロい事をするつもりですね」

 

「またって、お前にはしてないよな⁉︎」

 

「には?」

 

「うぐっ」

 

しまった、という表情を浮かべてしまった。

そうなんだ。一之江以外の子にはアクシデントが起きてしまったせいでヒステリアモードになってしまい、あっちの俺がいろいろやらかしてしまっているのだ。

 

「このエロ助」

 

「エロ助じゃないが……本当にすまん」

 

「まあ、貴方の性癖については後でお仕置きするからいいとして。いいでしょう、話があるからツラを貸せ、ということですね」

 

言い方は悪いがその通りなので俺は頷くしかなかった。


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