いつも以上に短いですが、せっかくの新年なのでやってみました。
それでは、おやすみなさい……zzz
バシレイオス、ヴァシリオス、ヴァーシリー、聖大ワシリイ、聖バジリオ、様々な地で様々な呼び名を持つキリスト教の聖人。
アテナイにて哲学を学んだ彼は、ギリシャ正教において毎年の一月一日に祝われている。
現代ギリシャでは、新年にやって来るサンタクロースに近い存在なのである。
「それで
大晦日の夜。
そろそろ新年が来ようかという頃にアテナがリビングから抜け出していたのは、これを部屋に取りに行っていたのだと納得する。
年越し蕎麦を食べ終わって食器を片付けた後の食卓に、綺麗に包装された三つの品物が並んでいる。
包装紙の色はそれぞれ赤、青、緑。
大きめの赤が静花、手のひらサイズの青が護堂、細長い緑が一郎の分である。
「わぁ、開けていいですか?」
「はい、どうぞ」
まずは静花が先陣を切った。
リボンを解くと、中から現れたのは白のマフラーだ。
中央に走る黒の毛糸がアクセントになっている。
「あったかそう!」
「静花が風邪をひかないように守ってくれます」
「ありがとうアテナさん」
布地を胸に抱いて満面の笑みを振りまく静花に、兄ながら可愛い奴だと頬を緩める。
ふと思いついて、少々無粋だが魔術的に見てみる事にする。
マフラーに編みこまれた黒の毛糸が、こちらに牙を剥く姿を幻視した。
直感の通り、あの毛糸はアテナの蛇が取り憑いている。
あれでは恐らく、病魔どころか並み居る妖魔でさえも静花に手出し出来ないだろう。
後日アテナより、白い毛糸にもアテナの毛髪を織り込んでいるらしい事を聞く。
髪の数本とは言え神の一部を宿すとは、何とも贅沢な代物である。
もはや御神体と呼んでも差し支えないかもしれない。
「どれ、じゃあ僕も見てみようかな」
続いて一郎が開封する。
入っていたのは紺色のネクタイであった。
「ルクレチアとの合作です、遠出の際には是非に」
「これはこれは、とても光栄だね」
もうこれは言われなくても解かる。
その名前だけで魔術的な品以外に思えない。
案の定、裏地に守護を与えるための
後日、祖父の代わりにお礼の電話を入れた際に教えてもらった。
さて、いよいよ最後のひと品だ。
トリは勿論、草薙護堂その人である。
「さて、俺だな」
「開けてみて下さい」
「何が出てくるのか……」
先の二つがアレなのだ、包が小さいのが返って気になる。鬼が出るか蛇が出るか。
蛇が出るのはもう確定的に明らかなため、少々以上に不安を覚えながらも封を解く。
注目の中で出てきたのは、縦に長い五角形の底辺が鎖に繋がれ、頂点が下を向いた金属製のペンダントだった。
鉄製の五角形の表面には女性の横顔が掘られている。
見る者が見ればこう言うだろう。
そして護堂もそう思った、これはアイギスだと。
「お前、これは……」
アイギスの楯。
女神アテナが父ゼウスより授かり、怪物殺しの英雄ペルセウスに託し、蛇の魔物
「ペルセウスは英雄にしては珍しく、無残な死を迎える事なく生涯を終えた者です。そして
音なき声によって伝えられた言葉に、護堂は苦笑いを浮かべる。
「例え
微笑みながら言葉を紡ぐ妻を、護堂はじっと見つめる。
ところで、お
いや、特に何か意味がある訳ではないが。
「ありがとう、大事に飾っておくよ。外に持ち出して傷が付いたりしないようにな」
「そうですか、残念です」
護堂が部屋に置いておくのを決めたのは、ただなんとなくなのだ。
特に意味があるという訳では、決してないのである。
ちなみに、アテナの起源は地母神。死と闇を司る冥府の女王である。
この説明にも、意味はない。
そう
ゴーン――
ゴーン―――
ゴーン――――
「「「「明けましておめでとうございます」」」」
除夜の鐘が打たれ年が明けた。
「今年もお兄ちゃんをよろしくね、アテナさん」
「はい、言われるまでもなく」
「良い年になるといいね」
「はい、私もそう思います」
「今年も改めてよろしく、アテナ」
「はい、旦那様」
我が家の女神様は、今年も愛らしく美しい。