女神を腕に抱く魔王   作:春秋

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字数を稼ごうとして間に変なのブチ込みましたw





 

 

 

 

 

 

時は沙耶宮馨とその配下が情報を集め始めた翌日。

場所は草薙家から適度に離れた自然公園。

 

そこで草薙護堂とパラス・アテナの魔神夫婦は、人目も(はばか)らずクレープの食べさせ合いをしていた。

 

草薙護堂は神殺しである。

何度もしつこいようだが、これは歴とした事実だ。

 

「護堂、あーんです」

「あー、っん」

 

神殺しの魔王たる彼は、宿敵たるまつろわぬ神とイチャついていた。

毎度しつこいが、これも変わりようのない事実である。

 

「アテナ、お返しだぞ」

「あむっ……この甘味、故郷では終ぞ感じたことのない味わい。美味です」

 

しかし、彼の性格からして人目を気にしないというのは不自然ではないか?

 

無論、考えるまでもなく不自然である。

故にこの行為には理由があった。

 

カンピオーネ特有の直感で監視の視線に気付き、神の御技にて所在を把握。

事情を知ったが疑っていると判断したアテナは、護堂との関係をいっそ大々的に宣伝するべきだと判断した。

 

ので、こうして公にイチャついているのである。

そこに草薙静花と共に見たテレビドラマで食べさせ合いをするカップルを羨み、この状況に乗っかる形で理屈を述べて実行に移したとか、そんな思惑などアテナには一切ない。

 

女神(アテナ)様がみてるからって、静花がお姉さまとか言い出す事もない。

……面倒見が良く大人びている彼女の方が、そう呼ばれる可能性は否定出来ないが。

 

 

 

 

 

「こちら高崎(男)、もげろ」

「こちら川内(男)、爆発しろ」

「こちら斎藤(女)、モテない男の僻みは鬱陶しいですよ」

「こちら渡辺(男)、そういうお前も妬ましそうにするな。視線に怨念こもってんだよ斎藤」

「こちら斎藤、だって私先週彼氏に振られたばっかりなんですよ? それなのにあんな子供が彼氏持ちっていうか旦那持ちなのはおかしいと思います!」

「こちら高崎、子供ってか神だけどな、女神さまだけどな」

「こちら川内、その相手も魔王様らしいですけどね、あな恐ろしや」

「こちら渡辺、今一瞬だけど女神様と目があったぞ? 気付かれてるんじゃないか?」

「こちら川内、絶対に斎藤先輩のせいですって、嫉妬ビームのせいですって」

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「こちら渡辺、俺もう家帰って嫁さんとイチャついて来るわ」

「こちら高崎、ええ、俺もデート行ってきます。川内、報告よろしく」

「こちら川内、了解でっす」

「こちら斎藤、パルパルパルパル」

 

以上、監視者たちの愚痴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって正史編纂委員会の東京分室。

 

「参ったねー」

「参りましたねー」

 

投げやりな態度で会話する上司と部下。

原因は言うまでもない。

 

「監視を付けた途端にああも大胆になるとは」

「明らかに見せつけて来てますね。現場の者たちも居づらくなったようなので、報告をもらって送り返しました」

「恐怖じゃなくてっていうのは何とも言い難い話だけどね」

「いやぁ、私も拝見しましたが中々にお熱いご様子でしたよ」

 

サブカルチャーに造詣が深い甘粕冬馬は、二人の大恋愛に興味深々であった。

 

それもそうだろう。

何せ魔王と女神という宿敵同士であり、方や見た目は平均的な日本人、方や銀髪の幼子というゲームの題材にでもなりそうな組み合わせである。敵対関係の立場といえばロミオとジュリエットにも通ずるそれは、背後関係がなくとも想像を掻き立てる。

 

「まぁそれは一旦横に置いておくとして、新たな問題が顕れた」

「顕れたというと、まさか……」

「まさかの神だよ。もっとも、欧州の方だから関わり合いになることはないだろうけどね。僕らが今抱えてる難題もその関係だから、甘粕さんには伝えておいた方がいいと思ったんだ」

「それはそれは、お気遣い感謝します。――また規定外業務ですか(ボソッ)」

「何か言ったかい?」

「いえいえ、何でもありませんよ」

 

正史編纂委員会がブラックな職場なのか、馨の人使いが荒いだけなのか。

真実は神も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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