退き佐久間   作:ヘッツァー

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色々忙しく、投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
それと、今回からサブタイトルを変更させていただきます。もとより、無謀な挑戦でした(笑)
これからもどうぞ宜しく。


第七話

織田家の姫、吉改め織田信奈の初陣(実は俺も初陣)から帰って来て、信晴さんにこっぴどく怒られた後。

俺がとぼとぼと自分の部屋に向かっていると、廊下で信辰ちゃんとすれ違った。

 

「ん、おかえり、信盛。」

「うん、ただいま・・・。」

「ふふ、親父もなにもあそこまで怒らなくてもな。」

「まったくだよ、本当。」

「だが、腕が折れているのに出陣したお前もお前だぞ。」

「うっ・・・。」

 

だって、断れねーじゃん。

 

「やれやれ、とにかく、今日はもう寝なよ。腕が治るまで稽古は無いが、疲れが残ってない方がきっと治りも早いだろうさ。」

「へいへい、じゃあお言葉に甘えて寝るとするよ。おやすみ。」

「うん、おやすみ。」

 

そうして俺が自分の部屋に向かおうとすると、

 

「信盛。」

 

そう呼び止められた。

 

「?」

「お前は今日出陣した時、刀を抜いたか?」

「いや、抜いてないな。だって、敵兵の一人にすら会ってないよ?それがどうかした?」

「いや、なら良いんだ。済まなかったな、呼び止めて。」

 

そうして歩いて行く信辰ちゃん。一体なんだったんだ?

気にしても仕方ないので、俺も部屋に行ってその後すぐ眠りについた。

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翌日、朝のランニングを終えて家に戻ると、俺へ那古野城への出頭命令が出ていた。俺はなんかしたのかとビクビクしながら向かうと、平手さんが迎えてくれた。

 

「平手さんが俺を呼んだんですか?」

「うむ、いかにも。」

「で、話とは何ですか?」

 

俺何かやらかしたかな〜、そう考えていると、

 

「今日はお主に頼み事があってな。それで呼んだ次第じゃよ。」

 

と平手さんが言って来た。良かった〜、少なくともやらかしたとかではなさそうだ。

 

「頼み事、とは?」

「うむ、実は、織田家の姫、信奈様の教育係になって欲しいのじゃ。」

「え?教育係に、ってことは・・・。」

「そう、お主が家臣になれる良い機会ぞ?」

 

この人、マジで俺を重臣にする気だったのか・・・。

しかもなんか裏技っぽいし。

 

「でも、そう簡単に家臣になれるものですかね?」

「その点は心配ご無用ですぞ。既に殿(信秀)には許可を貰っておる。後はお主次第じゃが・・・。」

「でも、教育係と言っても俺には教えられる様なことは何も・・・。」

「よいよい。教育係と言っても名ばかりじゃよ。一緒に遊んでくれればよい。」

 

俺が、信長もとい信奈の教育係か。やってみたい!

 

「やります。是非、やらせて下さい!」

「ふっ、その言葉を待っておったよ。」

「でも、その前に一つ良いですか?」

「なんじゃね?」

「どうして俺の様な若造に?他にも家臣は一杯居るのでは・・・?」

すると、平手さんは顔をしかめてこう言った。

「実は、織田家の中には姫様を賛同する者は少なく、中には弟の勘十郎様を当主に据えようと考えておる者もおる。」

「なるほど・・・。」

「初陣が成功に終わったおかげでこの動きは今は沈静化しておるが、きっかけがあれば再燃するじゃろうな。」

 

だから俺なのか。今までいた家臣達と関わりが薄く、また誰の直属の部下でもない俺が。信奈ちゃんの部下にするには相応しかった訳だ。

 

「勘十郎様に跡目をついで欲しいと思う者の正確な数は分からぬが、噂によると、儂と共に信奈様の教育係を務めた林秀貞殿までも勘十郎様派の様じゃ。なにより、母である土田御前様と姫様が不仲なのが痛いのう。」

「それは、まずくないか?」

「そうじゃな、状況は良くは無いが、希望が無いわけでもないぞ?」

「どうして?」

「殿はあくまでも信奈様を当主にしようとしているからじゃよ。殿は見抜いておるのだろうな。信奈様の才能を。」

 

それに、と平手さんは付け加えた。

 

「姫様の才能は目を見張るものがある。普段は農民の子供などと遊んだり乱れた格好をする為に尾張の大うつけなどと呼ばれておるが、初陣の立派な指揮を見て分かったわい。あれは遊んでいたのではないとな。ほれ、今もじゃ。」

 

平手さんが指差した方を見ると、少し離れた原っぱに信奈ちゃん、犬千代ちゃんと数名の子供が二つに分かれて先を丸めた棒の様なものを持って対峙していた。目についたのは棒の長さだ。信奈ちゃんの率いる隊は犬千代ちゃんの率いる隊に比べて長くなって居る。だが、信奈ちゃんの率いる隊には女の子が多く、犬千代ちゃんの方には若干男の子がいる。戦闘が始まった途端、運動能力の勝る犬千代ちゃんの隊が突進するが、信奈ちゃんの隊は慌てずリーチを生かして迎撃していく。そして戦闘が終了すると、信奈ちゃんが何かを説明していた。

 

「驚くじゃろう?姫様はあの年でもう既に戦における間合いの重要さを誰に聞くでもなく知っておる。それを周りの子に実践して覚えさせておるのだ。」

「すげぇ・・・。」

「儂は近頃思う事があってな。それは、姫様がうつけと呼ばれるのは姫様が悪いのではなく、周りの儂らが姫様の考えを理解出来ていないからではないかと思うのじゃ。」

「だったら、努力すれば良いじゃないか。俺が偉そうに言うのも何だけどさ、人は、良くも悪くも変われる生き物なんだぜ?」

 

漫画で読んだだけだけど。

 

「ふっ、それは儂の様な老いぼれでは無く、お主らの様な次の世代に託すとしようかのぅ。とりあえず、教育係の任は受けるのだろう?なら、声に出して宣誓してもらおうかのう。」

「佐久間信盛、織田信奈様の教育係の任を承ります。これで承認されるのか?」

「あとは、書類に名前を記入して殿に提出すれば完了じゃな。それはやっておくから、今日はもう帰って良いぞ。」

「分かりました。ありがとうございます!」

「ははは、よいよい。承認され次第、教育係の仕事に励むがよい。」

「はい!では、お願いします。」

 

そう言って俺は那古野城を後にした。

後から聞いたけど、俺が帰った後、教育係を一人増やす事について林秀貞さんと一悶着あったらしいけど、信秀さんが許可しているし信奈ちゃんもそれを望んだらしく、渋々秀貞さんは引いたらしい。

何はともあれ、楽しみだ。だけど、佐久間信盛って信長の教育係だったかな?俺の記憶違いなら良いけど、もし歴史が変わっているのなら、由々しき事態だな。いつか戦の結果そのものに影響を及ぼすほど歴史が歪まなければ良いけど。いや、考え過ぎかな。

そう考えつつ、俺は帰路についた。


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