退き佐久間   作:ヘッツァー

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お久しぶりですか?
待っていた方、遅れて申し訳有りません。
次は早めに書き上げたいなって思ってます。
え?思ってるだけ?
HAHAHA、ソンナコトナイヨー。
追記
お気に入り260件超えてたの今見ました。
有り難き幸せであります!


第四十三話

「・・・敵陣の中で騒ぎが起こりましたね。頭領は上手くやっているでしょうか。」

「分からんな。まぁ、姫様から始末しろと言われている以上、敵将と一緒にくたばってくれてて貰えるとありがたい。あんな化け物と戦いたくはない。」

「・・・・・・。」

「技を授けてくれた恩がある。同じ他所から来たもの同士、情けをかけたい気も無いわけじゃないがしかし、姫様が仰られるなら是非もない、いずれ斬らないといけないのだろうな。あぁ、面倒だ。」

 

綱成は吐き捨てるようにそう答える。

猪助はその言葉に無言で頷く。

北条氏康も武田信玄や上杉謙信と同じく、加藤段蔵を脅威と感じていた。

その為、北条綱成と二曲輪猪助に加藤段蔵の隙を見て殺せという指令を出していた。

そして姉様LOVE勢の綱成と忍びである猪助はそれを断る事をせず、段蔵が播磨へ旅立つ前までずっと隙を伺っていた。

 

「さて、小太郎が向かった方は放っておいてもじき撤退するだろう。我々は姫様が向かってきている方の援護へ向かう。川越城全軍へ通達、突撃準備だ。姫様の土地へ無断で立ち入った罪を思い知らせる。」

「・・・いつもその調子なら格好良いんですけどねぇ。」

「ん?なんか言ったか?」

「・・・何でもありません。」

 

いつもの面倒臭がっている態度は鳴りを潜め、きりりと張り詰めた表情を浮かべる綱成に、猪助はやれやれと肩をすくめる。

 

その背後で、ガタッと何かが蠢く音がした。

 

「「‼︎」」

 

二人が振り向けば、小太郎が置いていった友人とやらが、ゆらりと立ち上がっていた。

 

「なんかよく分からんけど起きれたな・・・ん、お前ら誰、そしてここどこ?」

 

その男は頭を掻きつつ「またどこか分からない所かよ」と独り言を呟く。

綱成と猪助は一瞬目配せをした後、無表情で名乗り始める。

 

「ここは北条家所領、川越城だ。そして私はその城主、北条綱成だ。」

「・・・二曲輪猪助、よろしく。」

 

二人は豪胆に、それでいて警戒しながら名を名乗る。

この男はあの小太郎の友人である。

そして、人一人を担ぎながら播磨からここまで走って来てしばらく寝ただけで何事も無かったかの様に起き上がるような男だ。

鬼か蛇か、あるいはそれ以上か。

そんな恐れが二人にはあった。

 

「あぁ、なるほど。じゃあ今は『川越夜戦』の真っ只中って訳だ。俺は佐久間信盛だ、よろしくな。・・・えっそれはちょっと無理って言うかそのー、いくらなんでも、ね?・・・いや知らないし。そんなの理由のうちに入らないし。」

 

何だコイツ。

訳の分からない事を話す男に対して、二人は不思議を通り越して不気味だとさえ思った。

 

「あー、佐久間殿?一体誰と喋っているのだ?」

「あぁすまんな、こちらの話だ、気にしないでくれ。・・・あぁもう分かったようるせえなぁ!行けば良いんだろ行けばよ!・・・ん?」

 

気狂いかな?

いきなり叫び出した信盛に対して二人がそんな結論を出しかけていたその時。

すたすたと、まるで一度来たことでもあるかの様に迷い無く信盛が歩き出した。

 

「佐久間殿!どうかされましたか!」

「段・・・小太郎が一人で出陣したんだろ(・・・・・・・・・・・・・・)?なら友として、加勢に行かん訳にはいかないだろ。」

「・・・起きてたんですか?」

「いんや、読めたんだよ。成る程、『記録巡り』とはこうやって使うのか。便利だが、使い勝手は悪いな。何でもかんでも読んでしまう。まぁ深く潜らなければ強く記憶に残らないから良いけどな。」

 

まるで意味が理解出来ない二人をよそに、信盛はそのまま行ってしまう。

 

「・・・どう致しましょうか、綱成様。」

「どうするも何も、あの口振りだと小太郎の加勢に行くんだろ。なら放っておこう、我々は変わらず姫様の援護に向かうぞ。」

 

信盛に対して一抹の不気味さを感じながらも、猪助はその言葉に否を唱える事は無かった。


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