退き佐久間   作:ヘッツァー

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すみません、更新がすごく遅れてしまいました。
この話が難産という訳ではなく、書く時間を確保できませんでした。
次の話は早めに仕上げたいと思います。
お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
追記
今回、時系列とか色々崩壊します。



第三十九話

ぼんやりと視界が晴れてゆく。

倒れてからどれだけ時間が過ぎたのだろうか。

ああ、なんか頭が柔らかいものに乗っている・・・。

もしかして、段蔵が膝枕でもしてくれてんのか?

まるで本物の枕のような寝心地ってこれ本物の枕やないかい。

目を開ければ、段蔵が布団の近くに座っていた。

 

「・・・なんか、段蔵と居ると気絶しちまう運命にあるのかな。」

「看病してやってた相手に対して第一声がそれか、信盛ぃ?」

 

うるせえよお約束ってやつがあるでしょうが。

あとこの布団大丈夫なのかよダニとか。

 

「俺は何日寝てたんだ?」

「ざっと半日だな、何日も寝てたらそんな憎まれ口も叩けなかったろうさ。」

 

・・・なんかすみません。

俺はとりあえず上体を起こして手とかが動くかどうか試してみる。

よし、問題は無さそうだ。

 

「さて、段蔵。もうここに長居は不要だ、さっさと帰ろういや帰らせて。」

 

なんだよこれ怖すぎんだろ薬飲んで気絶ってやだよ。

絶対やべえやつじゃん。

 

「そうだな、私も特に用なんか無いし、帰ろうか。いや、用があっても来たくない場所なんだけど。」

「さらっと酷いこと言うよなぁ・・・。」

 

まぁ、トラウマなのだから仕方ないが。

さぁそうと決まればさっさと帰ろう。

 

「なんだ、意外と元気そうじゃないか。で、どうかね?わしの薬のの効果は?」

「出たな妖怪人殺し!あんたのせいで散々だ、というかまず薬飲ませる前に俺に了承を取れよ!」

「ぎゃあぎゃあうるさいねこの実験動物は。で、わしの薬はちゃんと発現したかえ?」

「俺の問いかけに答えろよ!」

 

言葉のキャッチボールが成立せんのですが。

これが更年期障害・・・?

この人更年期ってレベルじゃねえだろこれ。

 

「失礼な事を考えているようだが、まぁ良いじゃろう。ほれ、用事が済んだならさっさと出て行きな。」

「おう、言われんでも出て行くけどな。あ、そうだ、『物の記憶を読み取る』能力だっけ?それってもう使えるのか?」

「知るか。お前の体じゃ、その体の事をお前以外の誰かが知るわけなかろうが。」

 

それもそうか。

なんか言いくるめられた気もするが、納得するしかないだろう。

さて、それではここを出るとしますか。

 

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「じゃあ、もう行くよ。ありがとう、おばば。」

「ふん、礼なんて要らないよ、わしは自分の薬の実験をしただけじゃ。ほれ、上であの小僧が待っているんじゃろ?早く行っておやり。」

「・・・あぁ。」

 

独りでに岩の扉が閉ざされる。

またこの場所に来て、こんな風に話すことが出来るようになるとは。

信盛のお陰だな。

外に繋がる階段を登っていくと、佐久間信盛が木に手を当ててうんうん唸っていた。

 

「・・・・・・何してるんだ?」

「ん?あぁ、木の記憶を読み取ろうとしてるんだが、どうにも上手くいかなくてね。一つ聞きたいんだけど段蔵、お前の能力が発現したのはいつ頃だ?」

 

やっていた理由は分かったが、間抜けのようだな。

それで、いつ頃発現したのか、か。

 

「それは能力によってバラバラだ。お前に見せた物だと、『骨肉細工』なんかは時間がかかったな。体を変化させられるようになったからってすぐ変化させられる訳じゃないし。これは変化できるようになるのに一ヶ月、完全に会得するまでに一年はかかったな。」

「アレを一年でか、やっぱ凄いんだな、お前は。能力によってバラバラって事は、お前は他にもこういう能力を持ってるのか?」

 

む、勘が良い・・・訳じゃないか。

あんな答え方をされたら馬鹿でも気付く。

 

「ああ、確かに他にも能力を持っている。教えないけど。」

「何だよ、ケチだなぁ。まぁそれよりも俺はまず自分の能力を発現させる事が先だけどな。」

「そうだな、頑張れー。・・・・・・何かあったのか?」

 

信盛はいきなり文脈が狂った私を怪訝に思ったのか、こちらをジロリと睨んで来る。

しかし、私が質問を投げかけたのは信盛ではない。

背後を見れば、忍び装束を身に纏った大柄の人物が立っていた。

 

「うわぁなんか居たあ!なんでその図体で音も無く動けるんだよ!」

「はっ。頭領、一大事にございます。今川の助力もあり、扇谷上杉家と山内上杉家が結集し大軍を率いて駿河の地へ攻めて参りました。姫様から頭領に至急、戻るようにとの事でございます。」

「・・・何?分かった、すぐ戻る。先に戻っていてくれ、すぐ追いかける。」

 

大柄の忍びはすぐさま踵を返し走り去る。

北条家に、大きな危機が迫っていた。

くっ、よりによって私が相模を離れた時に・・・!

急ぎ、姫様の元へ馳せ参じなければならない。

 

「なぁ。」

「何だ信盛、時間が無いので手短に。」

「これって、何日前の事なのかな?」

「・・・・・・。」


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