退き佐久間   作:ヘッツァー

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発言を許可願います、議長。
まずは、更新遅れて本当に申し訳有りません。
さらに、もしかするとこれが今年最後の更新になります。
リアルの方がそろそろ本格的に忙しくなってきてしまっているので、これは本当にどうしようもないですごめんなさい。
長くなってしまいましたが、楽しんでくれると幸いです。
追記
お気に入り150&UA27000突破ありがとうございます!
なかなか新しい話を書けず、お礼のコメントが言えなくてもどかしかったです!
本当にありがとうございます!


第三十六話

「んっ、あ、ああっ!」

「もう少し静かにしろよ、周りに聞こえるだろう?」

 

部屋に嬌声が響き渡る。

防音設備など無い時代である、声は周りに届いているのだろう。

 

「くっ、あうっ、あ〜!」

 

すると、隣の部屋から怒声が聞こえてくる。

 

「うるせぇな黙ってろ男の声なんざ聞きたくねえんだよ!」

「すんませんっした!」

「ほれみろ信盛、なんであんな色っぽい声出してたんだよ。」

「いや、喜ぶ人いるかな、って思って。」

 

段蔵だと思った?

残念、俺でした!

 

「どう?面白かっただろ?」

「死ね。色々なものに謝った後血ぃ吐いて死ね。」

「そこまでのことをしでかしたのか俺は⁉︎」

「全く、余計な事してると止めるぞ?」

「すみませんでしたもうしません。」

 

現在、俺は布団にうつ伏せになっている。

そして、体のコリをほぐす為に段蔵にマッサージして貰っております。

体の各部位を踏んで貰うっていう方法でね。

なんか新たな扉を開きそうなう。

 

「どう?気持ち良い?」

「あー、とても良いよ、すまんねぇ。」

「そうか、信盛は踏まれて気持ち良いのか、心底気持ち悪いな。」

「あ、いや、趣旨違うじゃん。そういう目的の為にやってないじゃん。」

 

一瞬、ありがとうございます!って返事しかけた事は絶対に隠し通すと決めたであります。

 

ふみふみ、ふみふみ。

会話が途切れて、部屋が静けさを取り戻す。

なんか喋っといた方がいいのかな。

そういえば、俺はこいつのことを何も知らないんだよな。

仲良くなる為にも必要だろうし、話しかけるか。

 

「そういや、段蔵は疲れてないわけ?」

「ふっ、あれだけで駄目になるような鍛え方はしてないよ。」

「・・・そうですか。」

 

化け物かこいつ。

多分バカなだけだな。

きっとバカだから疲労とか感じなくなってんだよ。

馬鹿の馬は馬車馬の馬ってな。

馬って字多過ぎだろ。

 

「・・・・・・えい。」

「そこは膝の裏ッ!関節はやめて!」

 

すかさず段蔵が鋭い蹴りを放つ。

な、なんで心が読めるんだ・・・。

 

「ふん、これに懲りたら失礼な事は考えない事だな。」

「なんで分かったんだよ・・・。」

「ほう、否定しないって事は、考えてたんだな?」

「・・・・・・あ。」

 

やっべえやられた逃げよう。

そう思ってほふく前進しようと腕に力を入れるが、それよりも早く上から足で押さえつけられる。

ぐいぃ、とこちらを覗き込む段蔵。

邪悪な笑みを浮かべながら、囁き掛けてくる。

 

「覚悟は、良い?」

「良くないっす!」

「ならば決めさせてやる!くらえ!」

 

それを言うが早いか技を決めてくる段蔵。

それもなぜか完璧なスリーパーホールドを。

 

「あぎゃー!なんでお前スリーパーホールドとか知ってるわけぇ⁉︎」

「ほう、これはすりーぱーほーるどって言うのか。なんだか強そうだな。」

「ぐおっ、意識が・・・。」

 

こうして、俺と段蔵は暑い夜を過ごした。

まぁ、俺はすぐに意識を手放す事になったんだけど。

 

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「んっ、うぐぉ、あ、頭痛え・・・。」

 

俺はのそりと布団から這い出て上体を起こそうとする。

しかし、何かが腕に絡みついて上手くいかない。

ちらりと視線を移せば、段蔵が腕に絡みついていた。

俗に言う、添い寝である。

 

「・・・・・・え?」

 

説明しよう!

俺は昨日の記憶がない。

風呂を入ったところまでは覚えているのだが、上がってから部屋に行って何をしたのか覚えていない。

そして起きたら段蔵と一緒の布団で寝ていた。

これは、つまり・・・?

 

「大人の階段を登っちまっていたのか、俺は・・・?」

 

くっそお、記憶がないのが悔やまれる・・・!

てか残暑キツいのにくっついてんじゃねえよ。

暑いじゃねえか。

ってそうじゃねぇ。

俺は不倫するためにここに来てるわけじゃねぇんだぜ。

これはバレたら信辰にミンチにされる。

で、でもこの時代じゃ側室っていう手もあるし。

でも待てよ、そういう時はどのツラ下げて信辰に会えばいいんだ?

そもそも段蔵が側室になるかも分からないのに。

いやいや、風魔衆頭領が側室とかもう尻に敷かれるの目に見えてる。

あっ、でもそれはそれで嬉しいんじゃ・・・。

うおお、ダメだ混乱してきた。

 

「・・・・・・よし、風呂に入ってこよう。」

 

物を考える時は風呂に限るぜ。

俺は段蔵を起こさない様に静かに部屋を後にした。

 

風呂にて。

 

「あぁ〜、良い湯だなぁ〜。」

 

早い時間だからなのか、俺の他には誰もいなかった。

ゆったりと風呂に浸かりながら呟く。

風呂のあのかぽーんって音は何なんだろうな。

あれとてもすきですわたし。

 

その時、突然ガラリと扉が開く。

入って来たのは、服装(?)が布一枚の段蔵さんでした。

なんでやねん。

段蔵はかなり暗い表情をして歩いてきたが、俺を見るなりパァァ、と顔を輝かせた。

 

「うえぇ!な、なんでお前こっちに、女湯行けよ!」

「良かったあ、信盛、お前生きてたんだな!あのまま死んだかと思ったよ!」

「死んでたまるかよ、死んでたまるかよ。てかお前死体抱いて寝るのかよ。」

 

大事なことなので二回言いました。

そして段蔵さんが普通に怖い。

満面の笑みのまま普通に風呂に浸かろうとする。

 

「いやぁ、死んだと思ったのは嘘だけど、にしても無事で良かったよ〜♪」

「おいおい、だから女湯行けって、何自然に入ってきてんだよ。」

 

そしてまずは体を洗ってから入りなさい。

べ、別に見たいから言ってる訳じゃねえし!

本当だし!

 

「しかも、ちゃんと動けるようになったみたいじゃないか。」

「・・・・・・本当だ、普通にしてたけど昨日あれだけの距離走ったんだ、筋肉痛どころか筋肉切れててもおかしくないんだけどな。」

 

そういやそうだ、昨日ですらまともに歩けなかったのに、翌日に普通に歩けるのは変じゃないか?

すると段像が胸を張りながら鼻高々に説明する。

 

「まぁ、昨日お前が失神した後特製の軟膏を塗っておいたからな、効果は抜群だぞ!」

「あーなるほど、特製の軟膏かー、って、は?」

 

今なんて言いやがったこの馬車馬女。

 

「段蔵さん。」

「ん?なんだよさん付けするなよ照れるだろう。」

「つかぬ事をお聞きしますが、その軟膏は体のどこまで塗ったの?」

 

ここでの答えによって俺の心の傷が決まる。

注目の鑑定結果は・・・?

 

「塗った時か?まずお前を全裸に剥いて・・・」

「あっもういいですありがとうございます。」

 

トラウマゲージMAXですわこれは。

 

「なんか落ち込んでるけど大丈夫か?」

「気にせんといておくれやす・・・。」

 

もうお嫁に行けない。

まぁ、婿には行ってるけどな!

 

「ふぅ、それにしても、良い湯だなぁ♪」

「ああ、全くだ。そして女湯行けってば、これで三回目だぞ。」

 

すると段蔵はさも当然の様に言い放つ。

 

「女湯ゥ?そんなもの、ないよ。」

「ゑ?」

 

いや声裏返ったじゃねぇか。

女湯が、無いだと?

そういえば、聞いたことがある。

昔は混浴が普通で、特に夫婦だと互いの体に刺青が無いか確かめる為の場だったと。

だとすると、この頃から無いのか?

いや、まず存在していたのか、女湯⁉︎

 

「ある所もあるけど、ここは無いぞ?」

「マジか・・・。」

 

俺が来たかったのはラブホじゃねぇんだぞ・・・。

 

「そういや、ここはどの辺りなんだ?俺後半から意識無くて分からなかったんだが。」

 

起きたら旅籠の部屋についていた。

段蔵は先に風呂に入っていたからその時はかち合わなかったってわけか。

 

「ここはもう播磨領の近くのはずだぞ?詳しくは覚えてないけど。」

「は?えっ、ちょっ、は?」

 

それが何か?みたいにさらっと段蔵は告げる。

それなら俺はあの時何㎞走ってるんだ・・・?

 

「まー目的地まではあと少しあるが、それでも兵糧丸を使うまでもない距離だな。」

「そうか、今度は死にかけなくて良いんだな?」

 

よかったー、本当によかったー!

 

「死にかけるって・・・ぷぷっ。ま、まぁその必要はないし、そうなる事も無いはずだ。」

「おいこら何笑ってんだお前。」

 

このニマァって笑い顔クッソ腹立つ。

 

「ん?そうなる事はないって、どういう事?」

「あー、お前の全身に塗りたくった軟膏だがな?」

「・・・・・・ああ。」

 

どうやらトラウマスイッチをオフにする方法を探らなくてはならんようだ。

 

「あれは、身体の代謝を強制的に上げることで傷を治したりしているわけだが、極限まで疲労した筋肉を治す場合は筋肉そのものを作り変えるのさ。ここまでは分かるか?」

「え、あ、うん。わ、分かるぜ?」

 

やべぇ、全く意味分からん。

 

「分からなくてもいいよ。つまりお前は短期間で膨大な量の運動をして筋肉をその日のうちに作り変えたってことさ。今までとは別物の肉体になっているはずだよ。」

「そうなのか?実感ねえけどなぁ。」

「そのうち分かるよ、きっとね。ほら、さっさと出発しようか!」

 

ざぱぁ、と風呂から段蔵が立ち上がる。

何度も言うが、一糸纏わぬ姿で。

しばらく目に焼き付いて離れませんでした。


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