退き佐久間   作:ヘッツァー

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UA17000突破です!
ありがたき幸せです!これからもどうぞ宜しくお願いします!
急募!
今回は合戦の様子を書きましたが、「分かりづらい」や「ここはもっとこうした方が良い」などありましたら是非ご意見下さい!
※内容を少し変更しました。



第二十四話

「では、信辰、頼んだ。死ぬなよ。」

「ふっ、お互い様だ。」

「姫様に援軍を要請した後、清洲城へ近付いて来たら狼煙を上げてくれ。」

「了解、では行ってくる!」

 

そう言って信辰は出撃する。

 

「はぁ、俺に出来るのは僅かな護衛をつけてやる事のみ、寂しい時代だと思わんかね。」

「信じたんじゃろう?それに、多くつけても不利益しか無い気がするがのう。」

「それに、お前には清洲城の防衛があるだろ。姫様や信辰が帰ってきても城が制圧されましたじゃあ会わす顔がねぇだろが。」

「それもそうですね。ありがとうございます、平手さん。可成もありがとな。」

「礼には及ばんよ。」

「それより戦はまだかよ、早く戦いたいぜ!」

「全く、女の子がそんなにがっつくんじゃありません!それより可成。お前その武器本当に使うの?」

「あ?この十字槍の事か?使うも何も俺の愛槍だぞ?」

「あれ?お前騎馬隊じゃなかったか?」

「そうだけど?」

 

小首を傾げて答える可成。

不覚にも可愛いと思ってしまった。

しかしそんな素振りを見せては負けだ。

ポーカーフェイスで行くんだ。

 

「・・・お前に乗られる馬が可哀想だよ。」

「あー、この槍の刃で傷付けるかもって事か?心配するな。」

「まぁ、流石にそんな事は無いよな?」

「ふっ、私と五代目百段は阿吽の呼吸だぞ?そんな事がある訳ないだろう?」

 

四代目までの名馬の冥福をただ祈るしか出来なかった。

 

「尾張にそれほど名馬がいるとは聞いて無いけどな。」

「まぁ、初代からの襲名だからな。百段という名はもはや飾りだよ。全く、そんな細かい事気にするなよ、男だろう。」

「・・・おう。すまなかったな。じゃあ、作戦なんだけど・・・。」

 

なんか辛くなってきた・・・。

頑張れ五代目!負けるな五代目!

作戦会議中、その事が頭から離れなかった。

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「前方、敵を発見しました!旗印に織田木瓜、二つ引両、二つ雁金を確認!」

「うん、ご苦労!敵が合流するのを待っていたとしたら、信辰が発見されていない可能性が高まったな。」

「それより我が身の心配、いやこの城の心配じゃろう。」

「この色ボケめ。まぁ、臆病よりはマシだけどね。」

「よし、さっき話した作戦で行く!可成、騎馬隊をいつでも出撃出来るように準備してくれ。」

「ふっ、舐めるな、もう既に完了している。後は合図待ちだ。」

「頼もしいな・・・。じゃあ平手さん、俺らは敵の迎撃に出よう。」

「ふっ、分かったぞい。お主がここまでやるようになっておるとは。正直驚いておるぞ。」

「大将でも無いのにこんな事をしている無礼は百も承知です。しかし、ここは俺にやらせて下さい。」

「元よりそのつもりじゃったよ。気にするでない。」

「ありがとうございます。では行きましょう。盾を設置しつつ長柄衆構え!敵の先鋒は騎馬隊!大将は誰だあいつ!知らん!ってよく見たら勝家ちゃんじゃねぇか!」

「流石にそれは酷いのう・・・。」

 

ドドドドっと轟音を響かせながら騎馬隊が近付いてくる。

 

「あれは平手政秀に佐久間信盛だー!討ち取れ!」

「信勝様に勝利を!うおおぉ!」

 

「そろそろかな、鉄砲隊!盾から身体を出すなよ!火蓋、切れー!まだまだー!」

 

馬や人の足音は次第に大きくなってくる。

 

「先程から佐久間は何を言っておるのだ?」

「おおかた長柄衆を鼓舞しておるのだろう。ふん、蹴散らしてくれるわ!」

 

「目付けー!まだまだー!長柄衆が槍を下げたら鉄砲隊は盾から身を出せー!」

 

後三十秒かそれくらいで長柄衆の間合いに入る。

 

「長柄衆、槍下げー!鉄砲隊発砲!構え!撃てぇ!」

 

ドォーン!ドォーン!

 

銃声が連続して聞こえる。

あまり訓練していない為、狙いが甘い。

元が、銃の使い方を覚えただけの素人集団だ。

 

「なっ、鉄砲隊⁉︎伏兵か⁉︎」

「落ち着け、態勢を立て直ッ・・・!」

 

当たったのは2〜3発が良いところだろう。

もしかするとだれも命中させる事ができていないかもしれない。

しかし、それでも効果は抜群だった。

 

ヒヒィィィン!

「どうしたというんだ⁉︎馬が言う事を、うわぁ!」

「どうどう!くそっ、これはマズ、ぐあぁ!」

 

鉄砲戦の素人という点ではあちらも同じである。

そして、もう一つ。

そもそも、馬は臆病な生き物である。

それを銃声などに慣れさせるには一朝一夕で出来るものではない。

 

敵の騎馬隊は大混乱に陥った。

最前線にいた馬が騎馬武者を振り落としながら荒ぶり、後方の騎馬へ突撃する。

馬から馬へ恐怖が伝染し、最早馬は使い物にならなくなる。

振り落とされた騎馬武者が馬に轢き殺され、暴走する馬に足軽が薙ぎ倒される。

 

「こっちへ来るなぁ!全軍止まるんだぁぁ!」

「ひぃぃ、助け、ぐえっ!」

 

「なかなかの策士で、かつ残虐じゃのう・・・。」

「ここで恐怖を叩き込みます。二度と裏切る事の無いように。追い討ちをかける!可成!騎馬隊出撃!」

「応ッ!腕が鳴るぜ!」

「良いか!向かってくる奴を叩き伏せろ!逃げる奴は追わなくて良いから!」

「分かってるって!」

「長柄衆及び鉄砲隊は第二次攻撃に備え待機!足軽隊は俺に続け!騎馬隊の支援及び負傷者を保護する!平手さん、長柄衆と鉄砲隊を頼みます。」

「任せておれ。蟻一匹通すものか。」

「心強いです!足軽隊出るぞ!遅れるなよ!」

 

織田信勝・林秀貞隊は撤退を始めている。

このまま敵部隊を適度に追撃すれば俺らの勝ちだ!

そう思っていた。それはきっと慢心だったのだろう。

策が上手くいって有頂天だったんだ。

 

「うおお!りゃあ!」

「なっ⁉︎馬鹿な!」

 

男らしい掛け声とともに馬を叩き伏せる。

この姫武将の存在を忘れていた・・・!

 

「馬なんぞ恐るるに足らず!殿隊かかれぇ!」

「『かかれ柴田』・・・柴田勝家!」

 

後の織田家筆頭家老。柴田勝家。

織田家最強の姫武将が殿として降臨していた。


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