退き佐久間   作:ヘッツァー

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超遅くなりました。申し訳ない。多分まだエタってませんよ!


第十四話

「勝手に名乗っておいてなんだが、敵である君に私の名を知られたからにはその首、頂戴いたす。」

「・・・本当に勝手だな。加藤段蔵って言うからにはアンタ忍者なんだろ?普通忍者が名乗るものかよ。」

 

俺はなんとか皮肉を言うが、内心は逃げたくてたまらなかった。

何しろ、相手はあの加藤段蔵だ。かの英傑、上杉謙信と武田信玄の二人が危険と判断したほどの強者だ。

勝てるわけねぇじゃねぇかよ。なんでいるんだよ。

 

「行くぞ。部下の仇。」

「出来れば来ないでくれるとありがたい!」

 

段蔵が忍者刀を構えて突進するのを見て、俺は刀の柄を握り直す。

 

「クソッ、相手が加藤段蔵だろうと俺は生き残ってやる!」

 

俺は居合斬りの間合いに入った加藤段蔵に斬りかかる。

そして加藤段蔵は、右手で俺の腕に触れた後、あっけなく胴を両断された。相手はあの加藤段蔵なので、全力で戦わざるを得ないと思っていた俺は、完全に虚を衝かれた。

 

次の瞬間、加藤段蔵の上半身がずり落ち、下半身の切断部から、あり得ない量の血が噴き出した。別に俺は医者とかではないが、素人目にも異常だと感じる量の血が噴き出した。俺は刀を取り落としそうになりながらも両手で顔を覆うと、そこには。

 

先程斬ったはずの加藤段蔵が、立っていた。

 

「私を殺したと思った?私はこうして生きている。ご自慢の居合斬りが通じなくて残念だったね。」

「どうしてだ⁉︎斬り殺したくはなかったが、確かにお前の胴は両断してしまっていたはずだ!」

「それは、向こうで冥土の土産にでも話してやろう。」

「・・・向こう?何の事だ。」

 

加藤段蔵は、俺の質問に答えず、おもむろに懐から何かを取り出し、地面に撒いた。いや、蒔いたと表記した方が良いのかもしれない。何故なら、蒔いた箇所からあり得ないスピードで植物が生えてきたからだ。

 

「ッ!まさかそれは!」

「そぅら、どんどん育って行くぞ。」

 

みるみるうちに植物の先から夕顔らしき花が咲いた。これは、謎の多い加藤段蔵の伝説の一つ、呑牛の術の際の話に出てきた術ではないのだろうか?

 

「待てッ、やめろ、俺はまだッ」

「残念だったな、もう遅い。」

 

言うが早いか、段蔵は手に持っていた忍者刀で夕顔の花を斬り落とした。花が地に落ちる。ゴトッという音と共に。

 

何故なら。

 

夕顔の花と共に、俺こと佐久間信盛の首も同時に落ちていたからだ。

俺の記憶は、そこで途絶える。

 

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「ん・・・。」

あれ、俺、生きてる?でも確かに、俺の首は、あの時。

なんだかすっきりとしない頭でなんとか考えていると、後ろから声をかけられた。言うまでもなく、加藤段蔵だ。

 

「よう、お目覚めかい?待ちくたびれたよ。」

「・・・おう。」

 

改めて自分の姿を見直してみると、木に縄で縛られていた。これは抜けられそうにない、な。

 

「・・・何で俺は生きているんだ?」

「君がどんな体験をしたのかは知らないが、あっち側でお前は死んだのか。そうか、それは不思議に思うだろうな。」

 

俺はあの時確かに斬ったはずで、そして斬られているはずなのに。

 

「君に使った術は大まかに言えば幻術と呼ばれるものでな、芦屋道海とかいう婆さんに教えてもらった術だよ。この術は確かに強力だが、近くに龍脈が無い場合、自分自身の生命力を使ってしまう。ぐったり疲れるくらいなら良いが、使い過ぎると命を削る。君が呑気に寝てる間に、少し休ませてもらったよ。」

「・・・ふーん。」

「なんだ、驚かないのか。つまらん。」

「いや、加藤段蔵ならそのくらい出来そうだなーって、納得しちゃってさ。それに、前ならいざ知らず、今はその幻術とかいうやつを体験してるからね。・・・あまり聞きたくはなかったが、あえて聞こう。俺はなぜこうして縛られているんだい?」

「百聞は一見に如かず、か。フン。そうだな、君をこうして縛っている理由だが、それは・・・。」

「それは?」

「君をこれからジワジワと拷問しつつ苦しませながら死なせるためだよ。」

 

何サラッと怖い事言ってんのこの子。てか冗談抜きでヤバい!何か、何か手を打たなければ、即☆死、いやそれすらさせてもらえない!

 

「ま、待て!」

「何だ、君は私の部下を殺したのだろう?忍びとはいえ、人を殺すなら、殺される覚悟を持つべきだ。そら、覚悟は良いな?」

「わっー!待て待て!よく見ろ、あんたの部下は二人とも生きてるって!」

「・・・なんだと?冗談も休み休み言えよ。しかし、確認してこよう。その間、これでも味わっておけ。」

 

言うと加藤段蔵は俺の首筋を少し斬って行く。

痛っ!くそっ、粋なカットしていきやがって!カリスマ美容師か!

 

「こ、これは、本当に生きている・・・?よ、良かったぁ・・・。」

 

俺が痛みに悶えている間に、確認が済んだようだ。加藤段蔵が忍びの二人に向ける眼差しが慈悲に溢れたものになる。その慈悲を少しこっちに分けちゃくれませんかね?お願いだから。

 

「お、おほん。確かに、仇と言うのは間違いだったようだ。」

 

おっ、これは、死亡回避いけるかも⁉︎

 

「でも、君のことは見逃せない。べ、別に私個人じゃなくてあくまで仕事の為なんだからねッ!」

 

前言撤回、こりゃ詰んでるわ。

やべぇ、どうしよう。




加藤段蔵がデ、デレた?(困惑)

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