退き佐久間   作:ヘッツァー

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祝お気に入り40突破!やったね!これからも楽しんでいただけたら幸いです!
あと、自分は携帯でこれを書いているのですが、最近調子がすこぶる悪いです。データとか消えたらどうしよう。


第十話

「姉ちゃん、そのたこ焼きとやらを二舟くれや。」

「はい、たこ焼きを二舟ですね、かしこまりました!では、二舟で40文になります!」

「ほらよ」

「40文丁度お預かりいたします、では少々お待ち下さい。佐久間さんたこ焼き二舟入りまーす!」

「はーい!すぐ出します!あと誰かに生地と蛸の買い込みに行かせて下さい!これじゃ足りないです!」

「俺が行ってくる!」

「あ、小西さんお願いします!」

 

小西さんというのは、最初にたこ焼きを振る舞った竃を作ってくれた人(フルネームは小西隆佐)の事で、薬屋を開くための金を稼ぐために漁師をやってたとか。

もっと他に稼げる仕事は無かったのだろうか・・・。

あれから俺と小西さんは、何人かに手伝ってもらって即席の屋台を作ってたこ焼きを売っていた。戦国時代の人達のDIY力半端ねぇ。売り子の人も日雇いで女の人を雇い、かなり繁盛していた。

たこ焼きを焼ける人が俺しかいないけど、小西さんや他の日雇いの人にも少しずつ教えているし、作れる人が増えた時にこの屋台は本格的に軌道に乗れる!

 

「よし、とりあえず皆さん焼いてみましょう!何事も経験です!」

「おう!」

 

なんと驚くべきは堺人。直ぐにたこ焼きをマスターしていた。これならいける!

 

「よし、じゃあたこ焼きを焼くのは任せます!俺は前に行って売り子をやってきます!」

 

とにかく売り子を増やして対応しなくては!でも俺接客したことないよ・・・。仕方ない、やるしかないか!

 

「いらっしゃいませ!」

「で、あんたは何をしてるわけ?」

「え?あっ、姫様⁉︎」

 

そこにいたのは、俺の主君、織田信奈だった。

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「全く、私達が堺を駆け回っていた中、あんたは何をしていたの?」

「た、たこ焼きを焼いていました・・・。」

 

信奈ちゃんに見つかった後、店がある程度落ち着いてから俺は三人に囲まれて説教をくらっていた。

と言っても、怒っているのは信奈ちゃんだけで、長秀ちゃんは呆れて声も出ない様で、犬千代ちゃんに至ってはちゃっかりたこ焼きを買って頬張っていた。

 

「まぁまぁ、彼も悪気があった訳では無いんやし、ここは許してやりまへんか?」

 

すると、知らないおじさんが俺をフォローしてくれた。

 

「えーと、姫様、この人は?」

「この人は商人、今井宗久よ。色々と手伝ってくれたの。」

「銭はきっちりと貰いましたからな。毎度あり。ところで、佐久間はん?」

「ん?何ですか?」

「あのたこ焼きとかいう食べ物をここ堺で売る権利、いくらなら売ってくれまっか?」

「え⁉︎うーん、それが、この権利は既に小西さんに譲ってるしさ、小西さんに聞いてよ。」

 

すると今井さんはすぐさま小西さんの所へ行った。

よっぽど金になると思ったんだな。うんうん。

あの様子だと小西さんの夢であるところの薬屋を開く為のお金も調達できそうだな。

 

「良かった。めでたしめでたし。」

「どこがよ?」

 

やべえ、説教をくらっていたの忘れていた・・・。

 

「まぁ良いわ。とにかく、南蛮人を見つけたのよ!さぁ、

会いに行くわよ!」

「分かりました、でもどこにいるんですか?」

「既に今井宗久の屋敷へ招待しているわ、招待した側が遅れるわけには行かないじゃない?それで急いで向かっていたら、あんたを見つけたのよ!」

 

怒りが再燃していらっしゃる・・・。でも、まてよ?

 

「でも、南蛮人に会ったんですよね?ならなんで一緒に来なかったんですか?」

「実際には南蛮人自体は見てないわ。その南蛮人に付き添っている通訳に運良く会えたのよ。確か・・・弥次郎って言ったかしらね。」

「なるほど。そういう事でしたか。で、その弥次郎って人に伝言を頼んで所在不明の南蛮人を今井殿の屋敷へ招待したという訳ですか。納得しました。」

「そうして屋敷へ向かえばたこ焼きとかいうものを売ってる阿呆な家臣がいた訳よ!」

 

まだ掘り返すの⁉︎いい加減勘弁してよ!

 

「す、すみません。」

「でも、そうね、そのたこ焼きとかいうものを南蛮人に振る舞うってのも悪くないわね。よし、南蛮人をもてなす為のたこ焼きを用意しなさい!それで許してあげるわ!」

「はぁ、仰せのままに。」

 

こうして俺はたこ焼きを三舟ほど作ってから屋敷へむかったのだった。

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俺が屋敷へ到着すると、既に皆席へ着いていた。俺の席はと、一番端、犬千代ちゃんの隣か。俺一番身分低いってことか?はぁ・・・。

 

「すまないわね、ザビエル。従者が料理を持ってくるのが遅れて。」

「いえいえ、お気になさらず、信奈様。」

 

なんかすでに自己紹介終わってるし・・・。いつ名乗ろうかな。

俺はたこ焼きを配り終え、ゴホン、と咳払いしてから話し出した。

 

「初めまして、私、さ」

「ところでザビエル!」

 

待って、まだ話してる!気付いてるだろ絶対!

俺が怒りで震えてるのを申し訳無さそうに見てからザビエルは返事を返した。

 

「はい、なんでしょうか?」

「南蛮は日ノ本よりも学問が進んでいるのよね?」

「はい、そうですね。」

「なら聞いていいかしら。この私達が住んでいる世界というものは、一体どんな形をしているの?」

 

俺は心底驚いていた。なんて高度な質問をこの子はするのだろうか、と。俺が住んでいた頃の子供とは訳が違う。そもそもそんなことに好奇心を持つようには育てられないはずだ。それなのに、この子は、なんて、

 

「なんて、捻くれてるんだ・・・。」

「なんですって・・・?」

 

ヤバイな、怒りゲージがMAXに近い。

手討ちにされかねん。

 

「ほう、信奈様、貴方は聡明なお方のようだ。そうですね、この世界の姿。これは諸説ありますが、私が信じているのは地球球体説ですね。」

「ち、地球?」

 

俺以外の皆が戸惑う。

まあ、聞いたこともないはずだしね。

 

「地球とは、今私達が住むこの世界の事です。地球は平らではなく、球体をしている。そう考える学者もいます。これがその説を元にして考えられた、地球儀というものです。」

 

そうしてザビエルは地球儀を信奈に手渡した。どこに持ってたんだ。用意良過ぎるだろ。

 

「これが、地球・・・。」

「ちなみに、これが私達の国で、これがこの日ノ本の国です。」

そうしてザビエルは俺の慣れ親しんだ形とは少し違う、しかし大体は合っている小さな島国を指差した。

「こんな小さな国が、日ノ本⁉︎」

 

驚く信奈。最早空気になりかけている今井宗久さんと従者三人。ちなみに弥次郎さんはさっきから通訳で大忙しです。

 

「はい、そうです。」

「こんな小さな国を皆で奪い合っていたのね、愚かだわ。だって、ザビエル、貴方達の国が日ノ本より進んだ学問を持ち、既にこんなに遠く離れたこの日ノ本まで来ることが出来ると言うことは、軍を派遣されたら日ノ本なんかあっという間に蹂躙される。そういうことでしょ?」

「そうです、今は私達の様な宣教師やら私達を連れてきてくれた商人などしか日ノ本に来ておりませんが、人の欲望は計り知れません。いずれこの日ノ本の地まで押し寄せても不思議ではありません。ですが」

 

彼らを救うために私達宣教師がいるのです、とか南蛮人を拒まないでほしいとかザビエルは続けようとしたのだろうか。しかしその言葉は信奈ちゃんの言葉によって遮られた。

 

「なるほど、じゃあ今のうちに南蛮から武器などを輸入したり政の仕組みを学んだりすれば侵略に耐えられるかもしれないわね!」

「‼︎」

 

流石にこの答えにはザビエルも動揺を隠せなかった様で、驚きつつこう尋ねていた。

 

「貴方は、私達が恐ろしくは無いのですか?攻められるかもしれないという恐怖は無いのですか?」

「なぜ同じ人間を何もしてないのに拒む必要があるのよ?」

「なるほど、信奈様、貴方は聡明なだけでなくこの国の誰よりも先進的でもあるのですね。ですが、質問はここで一旦止めて、彼の持ってきた物を頂きましょう。冷ましては、作ったものに失礼だ。食べ終わってからまた質問を受け付けますよ。」

「分かったわ。それではいただきます!」

 

そうしてやっと、皆でたこ焼きを食べた。

無論、この後中に入っている具材をタコだと知ったザビエルと一悶着あった事は言うまでもない。


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