「納得行きませんわ……」
「私が料理すると毎回言っているね」
「何度でもいいますわよ!普通どころか一流レベルの料理技術持ってるなんてあり得ませんわ!変態なのに!」
「私は全知全能なのだが」
「……最近否定しにくくなってきましたわね……」
ともあれ。
私の料理を女神が美味しく頂いてくれるのは非常にありがたい事だ。
「わたくし、女として自信が無くなって来ましたわよ……」
「そんな女神も私は愛しているよ」
「……貴方はブレませんわね……」
はぁ、と物憂気な溜息を保存したところで外を見る。
「最近やけに溜息を吐くのは雨のせいなのだね。どれ、少し晴れにしてこよう」
「貴方のせいですわよ!」
「なるほど、照れ隠しの溜息と」
「……もうそれで良いですわ……」
完食。
……あ。
「女神の唾液付き食器……!」
「本気で気持ち悪いからやめて下さいます!?」
脳天を撃ち抜かれた。
「……貴方と話していると脳が溶けそうですわ……」
「脳が蕩けそう?それは参ったな女神。私には共にベッドインするしかやれる事が無いのだが」
「助走付きで殴り飛ばして欲しいんですの?」
「女神ならば悦んで」
女神(分身体)のロケットパンチが私の顔面を捉えた。
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「さて。どうかね。たまには散歩でも」
「今度は何を企んでいるんですの?」
「女神にもそう見えるのかね……」
「……あの、いじめてるわけではないので三角座りやめて下さいまし」
小声で気持ち悪いと言ったのがはっきり聞こえた。
とはいえ演技だ。
「では女神よ。デートと行こう」
「……えっ」
「ドイツ仕込みのデートをこれでもかという程味わわせよう」
「えぇっ……いえ、あの、私は--」
有無を言わさず連れ回した。
最初は乗り気じゃなかった女神だが、少しずつ笑顔が増えてきたので良かったとしよう。
あまり家に篭りきりでも良く無いのだから。
「わたくし、あなたに聞きたいことがありますの」
帰り。
通りすがりに寄ったゲーセンで手に入れた獣殿似のぬいぐるみを抱く女神が、いきなり立ち止まって口を開いた。
「何かね女神」
その目は真剣そのものだ。
「なぜ、貴方はわたくしにこんなにも良くして下さいますの?」
簡単な問いだ。
「私が女神に恋してるから……では不満かね?」
「……えぇ」
こんな時、獣殿だったら甘い言葉を吐いて一気にベッドインな訳だが、私にはそんな技術はない。
「ならば、私には答えようがないよ。真実、私はあなたに恋をして、愛しているが故にこうしているのだからね」
「……嘘っぽいですわよ」
見れば、震えている様にも見える。
なにか不安にさせたのだろうか。
雨か。雨のせいか。
おのれ許さん。
「証明が必要かね?」
なるべく優しく。
女神を抱き寄せる。
「キスとかでは嫌ですわよ」
この流れでそう来るかね……。
……難儀な……。
「ふむ。では結婚届を書いて提出しよう」
「……割と生々しい本気ですのね……」
伝わった様で何より。