「今宵はなんと素晴らしい日なのか……!」
輝きの先。
咲き誇る光は女神のものだ。
その光に照らされた私は悪魔のように浄化されてしまいそうだ……!
「あの、カリオストロさん。なんで私、折紙さんのコスしないとなりませんの?」
「野暮なことを聞くのだね女神。——世界がそうあったから、なのだよ……!」
「無駄に壮大ですわね!?」
「ふふ、何度も申し上げておりますが、女神よ。この世界は女神を中心に回っているのです」
「それとこれとは関係なさそうですわよ!? って! 撮らないでくださいまし!」
「恥ずかしがる女神もやはり至高」
思いっきり蹴られた。
せっかくの女神のプレゼント(物理)なので甘んじて受け止めた上で衝撃を永久保存した。
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「トリックオアトリート、ですわ」
「ふふ女神。私がトリック以外を選ぶとでも……?」
「トリートして下さったらわたくし、人生最高の笑顔が出る気がしますわよ」
のたうった。
究極の選択だ。女神のイタズラと女神の人生最高の笑顔。どちらも欲しい。
「あぁ、女神……矮小なる我が身を今ほど恨んだことはない。女神のイタズラも欲しい。されど人生最高の笑顔も見たい。あぁ、どうすれば良いのだ。ラインハルトよ、教えてくれ……」
「ラインハルトさんがどなたかは存じませんけれど、二兎を追う者は一兎をも得ず、ですわよ」
「ぐわああああ! っく、なんなる無情、なんたる絶望……ッ! 今までの回帰で最も女神からの好感度が高かったが、だからといってこのような小悪魔女神を作り出さずともよいであろう。嗚呼、しかし、そのような要求をする女神が非常に可愛らしい」
「……はぁ……。カリオストロさん。あと三十秒で決めてくださいまし」
「——両方」
「イタズラ決定ですわ」
笑顔でイタズラしてもらった。
拗ねた女神にお菓子を差し出した。
女神の笑顔だが——こればかりは座に保存しよう。
私の後となる神にも我が女神の素晴らしさを知ってもらわねば。
少しして機嫌を直した女神は私を見て笑う。
「カリオストロさん。転移系の魔法、使えますわよね?」
「もちろんだとも」
「なら——二人でお菓子を強請りに参りましょう」
是非もなく。
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コスプレだが——私はメガゲンガー、女神は吸血鬼のコスプレをしている。
なぜメガゲンガーかといえば、女神の手作りだからだ。
私はそこまでポケモンに詳しいわけではないが、女神はよく対戦などをしているからか設定などに詳しい。
『カリオストロさんでも知らないことがありますのねっ!』
と嬉しそうにメガゲンガーの設定を語る女神をあらゆる角度から録画録音撮影油絵とあらゆる方法で形に残し、コレクションにした。
女神の話からすればメガゲンガーは攻撃時などに異次元から現れる……ということだ。
そんなところが私にそっくりだとか。
ふふ。可愛いではないか。
先ほど対戦している女神を覗いたところ、ゲンガーのニックネームはカリオストロとなっていた。
ふふ、いじらしくって可愛いではないか。
あぁ……! 女神への愛が溢れ出す……!
「さて、カリオストロさん。まずは琴里のところに向かいますわよ。異次元からトリックオアトリート大作戦ですわ!」
異次元から現れるというそれだけで十分悪戯になる気がするのだが、そんな事はどうでもよろしい。
私は嬉しそうにする女神の姿を全力で保存するのみ……!
なんと可憐なのだろうか。
おそらくその可憐さを衆生に語ろうとした場合、宇宙開闢から終焉までを用いても足りないことであろう。
「——では参ろうか、女神よ」
「いつでもよろしいですわ!」
……実はすでに2月なのだが、女神がハロウィンだと言い張るのだからハロウィンなのだ。
「というわけで来たわけだよ諸君。さっさと出すもの出したまえ」
「なんなのだおまえはいつもいつも!!」
〈プリンセス〉が怒りマークを額に浮かべながら苛立ちの声を上げる。
やがて同居したり遊びに来てる他の精霊なんかが集まっていく。
それぞれに遊びながら菓子やイタズラなどをしつつ実に楽しそうな女神をこの世界に存在するありとあらゆる手段を用いて記録保存保管する。
素晴らしいぞ? ん? 見せないが。