「ふむ。中々に良い場所ではないかね」
「……なんでわたくしの家に当たり前の様に居て、当たり前の様に寛いで、当たり前のように下着を持ってるかはもう問いませんわ。けれど一つ」
「どうかしたのかね女神」
「--カリオストロ超気持ち悪い」
時が凍った。
#
「カリオストロさん。貴方、これからどうするつもりですの?」
「それこそ愚問。私はいつまでも女神のそばにいるとも」
時折、彼が分からなくなる。
自称神。呼び名は数多とあるが、最近使ってるのはカリオストロとメルクリウス。あと水銀の蛇。
メルクリウスは識別名ともなっているし、カリオストロはわたくし以外に呼ばれると思わず手が滑って消し炭にしかける。
長身で青い髪を綺麗に太ももまで伸ばし、胡散くさい整った顔立ち。
服装は本人曰く裸マントか黒い軍服。
言動はわたくしの事を第一においたものが多く、滅多に自分の要求を口に--訂正。まともな要求を口にしない。
そして彼が分からないのは今更だ。
一万人もの人間を殺害した穢れた罪人に、どうしてこんなにも優しくしてくれるのか。
それが一番分からない。
「……はぁ。まぁ良いですわ」
なにやら奇声をあげてカリオストロが喜びわめいているが無視。
構うと悪化する。
「これからわたくし、天宮というところに行こうと思うのですわ」
「では参ろう」
手を差し出してきた。
今日は裸マントじゃないので普通に手を取る。
目を閉じて、開くとビルの屋上だった。
「……ッ!? !!?」
思わず驚愕にカリオストロを見れば、今まで見たことが無いような頼もしい表情で町並みを見ている。
--きっと、彼となら。
普段の変態性が無ければ頼もしいのだ。
最初に会った、あのままの彼なら。
#side 水銀
ようやく原作舞台!!
ここまで来るのに何十万回回帰した事か……。
まさか原作の流れが奇跡と奇跡の組み合わせで出来た流れだと誰が想像出来ただろうか。
次は天宮だと女神が言った瞬間に歓喜のあまりアクトエストファーブラしなかった自分を褒めたい。
いやいやまだ安心はできない。
いつだったかの回帰時の士道は落とした精霊と女の子をその日のうちにベッドに連れ込み孕ませる鬼畜だった。
女神が落ちかけたので回帰したが。
今回もああだとは思いたくはない。回帰時に芽は潰したつもりだが、それでも不安は消えないのだ。
と、決意も新たに町並みを眺めていると、我が女神が微笑みで私を見ているのに気付いた。
速攻で時を止めて写真に撮り、女神コレクションに追加しておく。
ふふふ、これで642896472812546754つ目のコレクション……!
そう考えると妊婦な女神もコレクションに加えるべきかと後悔した。
多分あれだけで百万枚はコレクションが増えただろうし、母親な女神まで含めれば何垓ものコレクションが増えたのだ。
あぁ!あぁ!
しかし、後悔ばかりではいけないね。
……いっそ私が……いやいや、ならんならん。
いわば異物である私が率先して世界を破壊するわけにはいかないのだ。
女神の幸せを考えるならば。
「カリオストロさん?何をしているんですの?」
「すまない女神。考え事を、ね」
「貴方が長い考え事なんて、珍しいですわね」
そうだろうか。
「何、女神に比べれば大したことでは無いよ」
「あらあら。カリオストロさんはわたくしに夢中なんですのね」
「もちろんだとも女神よ!君が産まれる以前より君に焦がれ、恋していたのだからね」
「……気持ち悪い……」
聞こえているぞ女神よ。
だが追撃だ。
「あぁ、貴方に跪かせていただきたい。触れる栄誉を与えていただきたい。華よ。貴方に、恋をした」
「……ッヒッ……」
あぁ、あぁ!
その引いた顔も素敵だよ女神。
早速コレクションに加えよう。
後ずさりして分かりやすく怯えを顔に貼り付けるが、優しい女神は私を傷つけないように手を取って跪いた私を引っ張り起こすのだ。
そんな女神もコレクション。
「ま、全く……殿方が簡単に頭を下げるべきではありませんわよ」
「女神の前では如何な事情も考慮にいれる価値はないよ。女神を唯一神として宗教を立ち上げてもいい位だ」
「自称神が率先して宗教を立ち上げるのはどうなんでしょうか」
「私の前には些細な事だよ女神」
「とにかく。やめて下さいまし」
「女神がそう言うならば私に是非は無いよ」
まぁ何回目かの回帰時にやったが。
中々の熱狂ぶりだったね。
ASTもDEMも恐れぬ肉壁役として中々使えた。
「さて。女神よ。悪いがこれより私とは別行動だ。本体に招待されていてね。しかし、何かあったら呼びたまえ。君もまた女神なのだから」
「……分かりましたわ。何かあったら助けを呼びますので、きっと来てくださいまし」
「是非もない」