「カリオストロさん!右ですわ!」
「あぁ、女神、わかっているよ」
女神の焦ったような声に、金色に輝く獅子の名を冠するゴリラの叩きつけるような右フックをステップで躱す。
そして前転二回くらいの距離をとってその頭に矢を打ち込む。
「GUooOooo!!!」
怒りの悲鳴をあげてさらに金色に輝き、その体表には雷を纏う。
ラージャン。金獅子、超攻撃的生物などと呼ばれるこの存在の名前だ。
ーー私達は今、モンスターハンターをやっている。
女神は両手に武器じゃないと落ち着かないとかで双剣。私は弓。
女神はヘイト、私は火力担当だ。
弓の火力を舐めないでいただきたい。
「カリオストロさん気持ち悪い位お上手ですわね」
女神のために那由他の時間やりこんだからね。
平行世界での実地演習も行った。
いつか女神を招待してみたいものだね。
アプノトスを撫でる女神とか何それ癒される。
「ラージャンでも五分……わたくし逃げ惑ってるだけですのに……」
「ラージャンは好き嫌いが分かれるからだろうね。逃げ惑ってる女神も可憐だよ」
「……強撃ビン残して無傷余裕なカリオストロさん気持ち悪い……」
ははは。
私などまだまだ初心者だよ。
たぶん獣殿なら目を合わせた瞬間にラージャンが平伏するね。
そしてグラズヘイムに……。
なんて悪夢だ。
いやいや、現実世界に現れる前提は良く無いね。
まぁ、ゲームでも嬉々として討伐していそうだが。
「カリオストロさん。これからどうしますの?」
「これから?とはどういう意味ですかな」
「友達のために、友達を穢した何者かをどうにかする、とか言ってませんでした?」
「うむ。槍も無くては困るだろうし、元あった位置に戻さなくてはならない。粗製乱造の使徒といえ、この世界で暴れられても困る。まずは背後にいるものから叩かねばどうにもならない。任されよ女神。既に調査は世界中で行いつつある」
何の前触れも無く唐突に現れた辺り転生者だと思うが、こんなに影からこそこそやられると手がかりも掴めなくて困る。
槍には幾重もの封印を施して常人が見てもプレッシャーを感じる程度に抑えさせたが、これも早めに不二の地下遺跡に置いておかないと大変な事になるだろう。
とはいえ、私が動けば第六天もまたその身に触れるものが増えたと糞を投げつけてくるだろうしリスクがすごい。
というか、第六天がいるあの世界から槍を持って来たのか?
神域に至ったとするならば相当攻撃されそうだが。
……となれば、自分で真に迫った贋作を作ったか、それとも並行世界の何処かから槍を持って来たか。
ふむ。手強そうな存在だ。獣殿なら喜びそうだが、私としては不愉快でしかない。
「ふむ。次はクシャルダオラは如何かな」
「分かりましたわ」
とりあえず調査が終わるまでは女神と遊ぼう。