コズミック変態と哀れな最悪の精霊さん。   作:冬月雪乃

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蟹。

蟹。

それは高級食材とされ、家族で食べる際には無言の空間が広がるものとゾーネンキント(腹黒)が言っていた。

星座で言えばそのまま蟹座で、占星術的な言い方をするならば巨蟹宮。属性は水で、活動宮であり、男女で表すならば女性宮。支配惑星は月で、月とは銀の属性をもつ。

蟹座が双子座や乙女座の位置にあれば蟹座が水星……つまりは水銀の属性をもつ惑星に対応し、女神に占星術的な意味で食される感覚を味わえたというのに……。

星座を動かすか……?

次の回帰では考えておこう。

もちろん回帰しない事が一番良いのだが。

 

「カリオストロさん?どうかしましたの?」

「あぁ、すまない。少し女神に見惚れてしまってね」

「……あぅ」

 

女神はまた静かに蟹を食べ始めた。

もくもくと食べるその姿はまさに小動物。

あぁ、あぁ、なんと可愛らしい。なんと可憐。私の貧弱な語彙ではその姿を正しく表現出来ない。

故に、女神の食べ残したカスや女神が触れた蟹の甲殻を回収し、保存し、愛でることしか私には出来ん。

 

「カリオストロさん?そちらはわたくしの食べカスですわよ。こちらを食べてはいかがですの?」

 

女神に回収を阻止されたが、女神から直接手渡しで蟹を渡された。

 

「女神。あーんしてくれると嬉しいのだが」

「…………………………仕方ありませんわね。一回だけですわよ?」

「本当か女神!!」

「やっぱりやめましたわ」

 

もぐ、と女神は差し出しかけた蟹を自分で食べた。

くれ騙しするなんて可愛らしい……!!

 

「カリオストロさん、追加の蟹を注文しますわ」

「……少し食べ過……あぁ、なんでもないよ。二杯で良いかね?」

「三杯で」

 

少し本気で食べ終わったら暗黒天体で店ごと料金踏み倒したくなった。

 

 

 

 

 

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腹ごなしにロシアまで足を運んでみた。

女神を小脇に抱えつつ海を歩いて渡った訳だが、認識阻害するのを忘れていてロシアの人民共に、『オゥジャパニーズニンジャ!ブラボォー』みたいな感激の視線をもらった。敵性言語?知らんな。女神が話す言語圏以外は全て敵性言語だ。

とりあえず彼らには『遺憾の意』としてディスケリーベンスしたが。

 

「たまにわたくし、自分が霞んで見えるくらいあなたがとんでもない外道に見えるのですが」

「女神が外道?そんなことはあるまい。私が保証しよう。我が女神時崎狂三は至高の神であると」

「……自分の事は否定しないんですのね」

 

回帰し続け幾星霜、やり直す端から外道外道言われ続けていれば慣れるというものだ。

 

「私の事はどうでもいいのだよ」

「……あ、見て下さいまし!狼ですわ!」

 

モフモフしたい!と目を輝かせる女神を愛でつつ、私も犬にでもなればモフモフしてもらえるかと想像してそのうち実行することを固く決めた。

 

「カリオストロさん、次はカンガルーを見たいですわ!」

「あぁ、わかった。ならば動物園にでも行こう。わざわざ国境を跨ぐというのも疲れるだろう?」

「……カリオストロさんが疲れるだけですわね」

 

女神に触れているのに疲れるわけもなかろう。


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