とりあえず私達は今。
温泉に来ている。
しかも混浴!
水着着用が残念だが、別に裸体をみたいわけでは無い。
「ふふ、ふ、ふはははははははははははははははははははははは------ッ!そう、私は今--生きているッ!!」
「カリオストロさん。わたくしが身体を洗ったあとのお湯と泡を回収するのやめて下さいまし。あと浸かった後のお湯も」
「なんという拷問。女神に触れただけでもはや至高の聖遺物だというのに……!」
思いっきり踏まれた。
私にとっては褒美に近いものがあるのだがね。
女神の華奢で柔らかく小さな足裏の感触を堪能出来るのだし、さらに視線を上に向ければ、あぁ!あぁ!
「獣殿。至高天は、ここにあった」
「カリオストロ気持ち悪いですわ……」
それすらすでにご褒美……!
「とてつもない変態ですわねッ!!」
何を今更。
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「あの……カリオストロさん」
温泉から出た後、浴衣姿の女神がもじもじといじらしく私に話しかけて来た。
あぁ、そんな奥ゆかしい女神も素敵だよ。
「あの、わたくしの事、どうしてそんなに……あの、あ、愛して下さいますの?あなたを置いて士道さんとデートに行ったりしているのに……」
そういう女神の顔は真っ赤に染まっている。
自分の事を聞くのは誰でも恥ずかしい事だ。
「女神が女神であるだけで私は女神に恋するのだよ。そして、私の目的は女神に幸せに暮らしてもらう事。--あなたが消える事など、私には耐えられない」
「……。あなたが、分かりませんわ。でも、なんででしょう。貴方になら、わたくしの目的を否定されても嫌じゃないですの」
「あぁ、予言しよう。私はいつか、君の目的を邪魔する最大の敵として立ちふさがる」
「怖いですわね。越えられる気がしませんの」
「しかし、それでいても、私は君に恋を続けるだろう。万象全ては君の幸せの為に」
その為にこの世界を回し続けているのだから。
#side ラタトスク
隔離部屋。
そこで士道と琴理は相対して居た。
「私をデレさせなさい!」
「……はっ?」
「あの時。私の攻撃は確かに士道ごと狂三を焼くコースを走っていたわ。〈メルクリウス〉が止めてくれたおかげで大事には至らなかったけれど」
「お、おう」
士道は目の前に急に現れて炎を握り潰した教育実習生を思い出す。
あらかたの説明で〈メルクリウス〉が〈ナイトメア〉につきまとう精霊だ、というのは聞いたが、的外れで無いものの、当たりではない事は知らない。
「怖いのよ、私が。いつか誰かを殺してしまうんじゃ無いかって。だから--」
「……琴理……?」
「--たすけて、おにーちゃん」
確かにこの瞬間。
舞台は定められたルートを外れた。
この場に〈メルクリウス〉が居たならば、その意味を知覚し、先を予測。
全てを女神に都合良く回す為に調整に走っただろうが、ここに彼は居ない。
座の本体が知覚していても、今は女神の浴衣に夢中だ。
本格的にダメなニートだった。