魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen   作:ルル・ヨザミ

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また遅くなってしまい申し訳ありません…。ようやくアルバイトが決まって少し忙しくなっていたもので…。もしかしたらこれは年内で話し終わらないかもしれないなぁ…。
いつも読んで下さっている方、お気に入り登録してくださっている方、チラリと見に来て下さった方、いつもありがとうございます。モチベーションにつながりとてもうれしいです。



第47話 少女の目的

 なのはが目覚める三日前。月村邸の戦いから三時間後。遂に一人の局員からの報告が入る。

 PWなのはの潜伏先がわかったのだ。

 

 「クロノ!」

 「ああ、わかっている。行くのは僕とフェイト、はやて、シグナム、ヴィータ、ザフィーラだ。局員は既に現場に待機している!」

 「了解や!行くで、皆!」

 「了解しました、主はやて。」

 「ああ…アリサたちを助けんだ!」

 

 六人は早速地球支部を飛びだし、潜伏先へ急いだ。アリサたちが無事かどうかは確認されていない。つまり時間は限られているのだ。

 十数分後、潜伏先の海鳴市外の廃墟が立ち並ぶ街の上空に到着する。すると地上から報告を行った局員がクロノの元に来る。

 その局員によると、この街の中心部にある一番高いビルの最上階で、PWなのはがアリサたちを部屋の中に連れて入っていくのが見つけられたらしい。

 そして、PWなのはが部屋の外に飛びだし、数人の局員を撃退し、また戻ったところが確認された。

 

 「じゃあ、ここにいるのはほぼ間違いないってことだね…!」

 「そうやね…」

 「主、ここはテスタロッサと私、ヴィータを突撃させましょう」

 「僕はどうするんだ」

 「パラレルワールドのなのはが出てきたところを主と共に攻撃し、捕まえていただきたい」

 「…成程…時間がない。それでいくか。あまり考えれた作戦とは言い難いがな」

 「しょうがねえさ、作戦立案はシグナムの役回りじゃないもんな」

 

 シグナムがヴィータの頭に拳骨を加えた後、フェイト、シグナム、ヴィータの三人がすぐさまビルの最上階へ突撃した。もちろん影を警戒しつつだ。

 

 「どこもかしこも明るいな…」

 

 ビル内を飛んで移動しながら、ヴィータが呟く。

 

 「これこそ奴にとっての一番の罠となるんだろう…影、厄介なものだな」

 「そうですね…。あ、この扉の部屋が局員の人が言っていた、アリサたちが連れられた部屋ですよ」

 

 三人は錆びついた部屋の前に降り立つ。明らかに開けると同時に攻撃されそうだが、ここはもうためらっている場合ではないことから、ヴィータが扉を破壊し、その流れで残りの二人が部屋に突撃する段取りとなった。

 

 「行くぜ…!ラーケテンシュラーク!」

 

 ヴィータのアイゼンが扉を軽々とぶち抜く。そしてフェイトちシグナムが飛び込む。

 そして、デバイスを構え部屋の中を確認する。部屋に仕切りはなく、入り口から全体が見渡せるレイアウトになっていた。

 

 「誰もいない…!?」

 「嘘だろ…移動してたってのか…!?」

 「まて、二人とも。この部屋の端にある血痕。まだ新しいものだ」

 「新しい血痕…つまりこの部屋を出てそんなに時間はたっていないと…?」

 「ああ、そう考えられる。もしかしたらこのビルの別の部屋かもしれないな」

 「探そうぜ。クロノには移動しながら報告しよう」

 「うん!」

 

 三人の報告を聞いたクロノにより、ビルの中の魔力反応を調べることになった。そして、先ほど突入した部屋から五部屋分離れた部屋に強力な魔力反応が出たのだ。

 

 「なんと、まさか今から確認しようとしてた部屋だったとはな…」

 

 とシグナムが呟くと部屋の奥から『おいでよ。面白いもの見せてあげる』というPWなのはの誘いがきた。

 その誘いを注意しながら、部屋に入るとそこには巨大な肉塊が部屋の中心に鎮座している。そしてその肉塊の前にアリサとすずかが横たわって並んでいる。

 

 「こ、これは…!?」

 「趣味わりーな…!なんだよ、これ!」

 『これから私の肉体になる素材だよ。ここにこの二人を入れれば完成なんだ!』

 「させると思うか?」

 『知らないよ。私がやるって言ってるんだから、やるんだよ』

 「なんて頑固な…!…私が相手する!」

 「テスタロッサ、手筈通りに頼むぞ」

 

 フェイトはバルディッシュをハーケンにして、PWなのはに突撃する。ハーケンの刃先がPWなのはに到達した時、その足元から影が伸びその刃先をくるむ様にして止めた。

 

 「堅い…!?動かない…!!」

 『私の影、強いんだよ』

 「そっか…でも私とバルディッシュも…強いから…!」

 

 ハーケンの魔力刃を自分の方へ思い切り引く。その時魔力刃の出力を一気に上げることで、纏わりついていた影を切り裂いた。影は地面に落ち、溶ける様に消えた。

 再びハーケンで斬りかかる。フェイトの背後にはその腹部を突き刺そうとする影が迫っていた。この部屋に窓も蛍光灯もなく、一見光源はないように思えるがフェイトのハーケンが光源となり、影を発動する条件を満たしているのだ。

 

 「私が気づかないとでも思ったの?」

 『何!?』

 

 フェイトは背後から迫る影を横に移動することで避け、PWなのはの右腕を斬る。

 

 『ああ!!うああ…!ぐぅう…まさか…私が怪我をするとは…』

 「油断してたね。このまま押し切らせてもらう!」

 

 ハーケンがもう一度振り下ろされる。無くなった右腕の方向から足を両足を切り落とすつもりなのだ。

 

 『殺意に満ちた攻撃…!いい殺意だよ!フェイトちゃん!』

 

 PWなのはは魔力で構成されている足を魔力に戻し消滅させ、斬撃を回避した。その勢いでフェイトはその場で一回転してしまう。

 背後を見せてしまったフェイト。その背中にPWなのはの左手による手刀が迫る。

 

 「早い!?」

 『もらったぁ!』

 

 フェイトはギリギリで回避を試みるが、直撃は避けることができたもののマントが横に半分切り落とされてしまった。フェイトはそのマントを切り離し、PWなのはの目の前に投げ、目くらましを行う。

 

 『こんな小細工、私には通用しない!』

 「どう…対処する気なんだ…」

 

 魔力から再び足の形になったPWなのはの足から影が伸び、マントの下からフェイト目がけて突進をしてくる。PWなのは本人はそのマントを左手で払いのけ、フェイトの方を見る。

 その目は勝ち誇った余裕の目であった。

 

 『右手の修復も完了したし、戦いは振出し。最初からだねぇ…』

 

 フェイトは高速移動で何とか避けており、その言葉に返答す余裕はなかった。肉塊の方へは行かず、ずっと扉の反対方向で避け続けるフェイト。PWなのははそれに違和感を感じ始めた。フェイトは明らかに魔法で防御をするなどといった行動を意図的にせず、危険度の高い回避行動のみを行っているのだ。

 

 『…まさか…何かの作戦…?一体…』

 

 PWなのはがふと視線をフェイトから部屋中央にある肉塊側へ移動させた時の事だった。彼女は気付いてしまったのだ。そう、肉塊前にあったはずのアリサとすずかが何処にもいない事を。さらには肉塊に押し込んでいた魔法石も無くなっている事を。

 

 『これはどういう…!?…!シグナムとヴィータもいない!あいつ等か!!』

 「気づいた時にはもう遅い!!」

 

 フェイトはようやく出てきた余裕の合間に叫び、影をザンバーにしていたバルディッシュで追いかけてきた影を切り落とした。切り落とされた影は根元から消えていった。

 

 『どうりであの二人がなんの支援もしてこないわけだよ…。最初から貴方が囮だったわけだね、フェイトちゃん』

 「そういう事。…私の事はこっちのなのはと同じ呼び方なのに、シグナムたちは違うんだね」

 『?あんな虚像にどんな敬意が必要なの?あれは夜天の書の機能で主にもたらされるただのシステムの一つに過ぎないんだよ?あ、もしかしてこっちだと元々人だったとか?それなら納得』

 「シグナムたちだって人だよ!呼吸もするし、食事もする、感情だってある!人と同じように生活しているんだ!」

 『知らないよ…こっちのヴォルケンリッターの事情なんて…』

 「そっちのヴォルケンリッターだってそうだよ!」

 『こっちの世界の事なんて、何も知らないくせによく言うよ…』

 

 PWなのはが左手を前に突き出し、手のひらをフェイトの方に向ける。

 ディバインバスターの準備だ。PWなのはは何も言わずに、魔力の収束を始めた。

 

 「!砲撃魔法…!デバイスも介さず使うなんて…!バルディッシュ!」

 ≪Yes sir MODE RAGING Start Up≫

 

フェイトは一度目のモードレイジングになった。これでディバインバスターを回避しようとしているのだ。

 

 『モード…!?…“不屈”め種を植えてたな。まあいいや、もう避けさせやしないよ!』

 

 チャージが終了し、放たれるピンク色の一閃。そのディバインバスターは部屋の半分。フェイトの全方向を包むほど太い砲撃であった。

 

 「なんて、無茶苦茶な…!」

 

 フェイトは回避できないとわかった時点で、プロテクションを発動し砲撃を受け止めることにした。だが、これはPWなのはの影が背後からくる可能性があるためかなり危険性の高い選択である。

 案の定、背後からの影の攻撃が来る。フェイトは背後にもプロテクションを張り、なんとか耐えていたが、砲撃が終わりそうになってきた時、モードレイジングが解け始めてしまったのだ。これは元々不完全な種でモードを使ったことによる副作用ともいえる症状である。

 

 ≪Time Out≫

 

 バルディッシュの無機質な音声が終わりを告げる。モードレイジングは完全に解除されてしまった。

 

 「くっ…こんなに早く解除されてしまうなんて!」

 『魔力の消費が激しくなったからだよ。ディバインバスターと影、どっちも防いでたしね』

 「流石開発者。“影”の能力の事はすぐわかるんだね…」

 『そりゃあね…。にしても酷いことするね。私からあの二人を盗るなんて』

 「元々あの二人は望んでここに来たわけじゃないでしょう!」

 『まあね。でも私は、悲しいよ…これじゃ、私身体が取り戻せないよ』

 「本当の身体でもないのに取り戻すって…なんか変な気もするけど…。もう止めよう?これ以上戦う必要なんてないよ。きっと私たちは貴女の力になれる…」

 『そんなわけないでしょ。私の事は私にかわからない。私の気持ちなんて何も知らないくせにわかってもいないくせに…』

 「確かにそうかもしれないけど…。ちゃんと話合えば!」

『…癪だけど、あれを使うか?…でも…いや……しょうがないのかな…。くそっ…!』

「何をブツブツと…?私の話聞いてる?」

 

 フェイトが聞くと、PWなのはは急に部屋から飛び出し、どこかへ行ってしまった。フェイトが目で追った時、見えたPWなのはが行った方向がビルの出入り口ではない事から、外へ出たわけではないとフェイトは考えた。

 であるならば、一体どこへ行ってしまったのか。フェイトはエイミィに通信で魔力反応の位置を聞く。すると、今いるビルの地下に反応があるという事がわかった。

 フェイトは、クロノたちに肉塊となった局員たちの保護を頼み、地下へ向かう。

 

 「いくら何でも地下に行くには早すぎる…。つまり、地下には魔力を持った何かがいるという事なのかな?でも、あのなのはの事だから転移魔法とか使えそうだな…」

 

 フェイトが床を抜きながら、地下へ向かっているとPWなのはの後姿を捉えた。

 しかし、距離は詰まらず大声で制止するように告げながら追うという形になってしまった。

 

 「地下に何があるっていうの…?」

 

 と言うとPWなのはが後ろ、つまりフェイトの方を振り向き次のように言った。

 

 『私についてきてもイイことないよ?特にここからは』

 「どういう事?この先に何があるっていうの?」

 『見たきゃあ見ればいいけど…。きっと気分悪くなるよ』

 「一体何が…。肉塊よりも酷いのかな…」

 

 フェイトはPWなのはの後をついて行き、地下の部屋の扉の前に降りた。地下室の扉は他の部屋の鉄の扉と違って木の扉であった。

 明らかに異様な雰囲気が扉の向こう側から伝わってくる。

 そして、開けられる扉。静かに、重々しく開かれる扉の向こうには凍り付いた人間が転がっていた。

 

 「人…!?なんで、こんなところに…!」

 『死体を置いておくのにここの地下の温度は丁度よかったんだよ』

 「死…体…?まさか、その人死んでるの…?」

 『そうだよ。このクズは私の世界で一年前に死んでいる人間なんだよ』

 「死んだ人を氷漬けに…。なんて…なんてことを…」

 

 するとPWなのはの目がキッと鋭くなり、フェイトを睨みつける。

 

 『そんな事を言えるのは私の事を理解していないからだよ!やっぱり貴方と話し合うなんてできないね!私の事何も知らない貴方とは!』

 「そんなっ!」

 

 PWなのははフェイトの足元に魔方陣を作り、転移魔法でフェイトをビルの外へ追い出した。

 そして、その部屋にはPWなのはと氷漬けの死体のみとなった。

 氷漬けの死体の特徴は金髪で二つ結びの小学生程の少女である。閉じられた瞼の間からうっすらと見える瞳の色は赤色、来ている服は黒いレオタードのようなもの。まるでフェイトの様な少女であった。

 

 『見るたび吐き気がする。…本当に嫌なんだ、癪なんてもんじゃない。私にとって最大級の屈辱だよ』

 

 氷が解け、中の死体が床に落ちる。そして、あの局員たちの様に段々と肉塊になっていく。まるで粘土の様にされた肉体は少しづつ高町なのはの姿へと変わっていく。変化していく時の音はグチャグチャととても聞いていられない様な醜く汚い音をたてていた。

 5分後、完全に高町なのはになった肉体に、魔力体であるPWなのはが憑依するように、一体化する。

 

 「……出来タ。これで私は肉体に戻ったんダ…。あレ?声に変なノイズが入ってるナ」

 

 PWなのはは喉に手を当てて発声を確かめるが、必ず言葉の最期にノイズが入るようになっていた。

 

 「やっぱリ、人間一人じゃ私の復活には足りなかったのかナ」

 

 微妙な顔をしながら、PWなのはは地下室から外へ出た。その足取りは肉体と精神を馴染ませるようなものだった。

 その頃、外へ追い出されていたフェイトはシグナムたちと合流し、ビルを局員と共に奉仕する準備をしていた。

 

 「テスタロッサ、その死体は誰なのか知っているのか?」

 「いや、知らない人だった。…私に似ているようにも思えたけど、あのなのはの私への態度を見るに、私とは別人と考えた方がいい」

 「死体の人間の事をクズって言うくらいだからすげー恨んでんだろうな」

 「そう、だから違う人。私によく似た別人だって思ったの」

 

 三人が話していると、クロノから通信が入る。PWなのはらしき人影がビルから出てきたというものだ。

 

 「出てきたか…!」

 「行きましょう。あのなのはを止めるために!」

 「おう!」

 

 三人はクロノの元へ飛んでいく。

 そして三人が合流地点に辿り着いた時、目の前に広がっていたのは多くの局員とザフィーラが地に落ち、クロノとはやてがボロボロのバリアジャケットでPWなのはと対峙している光景だった。

 

 「これは一体…何が起こったというのだ…!?」

 「クロノ!はやて!」

 「三人とも来たんだネ…。さア、遊ぼうヨ」

 「みんなに何をしたの…!」

 「別ニ?変なことはしてないヨ。私はただビルから出てきただけだヨ」

 「出るだけでこんなになるかよ!ふざけんな!」

 「ヴィータは賑やかだねェ。でもクロノ君たちからすればただ出てきただけなんだヨ?」

 「主、どういう事なのか説明を…」

 「もう一人のなのはちゃんの姿が見えたと思ったら、こんな状況になってたんや…。皆瞬きしたらやられとった…」

 「本当に…でてきただけで…こんなことに…?」

 「さ、私が嘘をついていない事がわかったところデ…レイジングハート、お願イ」

 ≪Stand By Ready Set Up≫

 

 レイジングハートの合図と同時に、PWなのはの身体をピンク色の魔力光が包む。そして中からバリアジャケットを身に着けた姿を現す。

 

 「レイジングハートも、なのはのバリアジャケットと全く同じ…」

 「そりゃあ、私なのはだもノ」

 

 PWなのはは視線をフェイトからヴィータに移す。そして次の瞬間、ヴィータは近くにあった別のビルの壁に激突していた。

 

 「なっ…」

 「ヴィータァ!」

 

 シグナムが叫ぶ。しかしヴィータはあまりに突然の事で動揺して返事ができなかった。

 

 「ふふ…今の私は少し機嫌が悪いんダ。特に私の身体を取り戻す邪魔をしヴィータとシグナムには痛い目に遭ってもらわないと気が済まイ…」

 「なんだよそれ…!せこいぞ!あたしに何したんだ!」

 「時間を止めて、殴り飛ばしたノ。それだけだヨ」

 「時間を止めた…?まるで“束縛の影”じゃあねえか!」

 「その“束縛の影”は私の能力の試作品。私自身が時を止めるようになるためのデータ収集用のデバイスだったんだけど…あれは結局失敗作で全然止められなかっタ。それでも私はその少ない時止めの情報とデータを解析し、“束縛”を身体に戻して完成させたんダ。本当の時間停止ヲ…!」

 「本当の時間停止…そんなのどうやって勝てば…」

 

 ヴィータが呟いた時、はやてが思い出す。自らのモードトロイエを使えば戦えるようになるのではないかと。

 

 「モードトロイエなら、その時間停止にも対抗できるはずや!」

 「そうか…!それでいこうはやて。ヴィータとシグナムに能力を早く!」

 「わかった!」

 「無駄だヨ」

 

 フェイトとはやてに告げるPWなのは。

 

 「“忠誠”の力はその無効にする能力の詳細。つまり仕組みを知らないとその効力を持たないんだヨ。そして、この時間停止に仕組みなんてなイ。ただ時間を止めるだケ。それだけなんダ」

 「仕組みがない!?じゃあ貴女はどうやってその魔法を作ったの?どんな魔法にも仕組みや理論、計算があるんだ!それらがないなんておかしい!」

 「フェイトちゃン…。貴方は知っているはずだヨ?身近な人で理論も何も無いところから魔法を創り上げる能力を持っていた人ヲ…」

 「なにもない所から…?……!なの…は…?」

 「そう、高町なのは。この世界の私。ま、あれは私が中にいたから使えたんだけどネ」

 「なのはちゃんの中…つまり種の中に貴女がいたから使えた力ってことなんか…」

 「そういう事。そしてこの魔法を創る力に必要なのは創造力とより明確な感覚とイメージ。そのための“束縛”ってわケ」

 「データ収集ってそういう事だったんか…!」

 「じゃあ時間を止める感覚さえわかれば、上限なしの完全な時間停止が使える様になるという事か…。強すぎる…!」

 

 シグナムたちが驚いていると、気持ちが落ち着いたヴィータが、再び空を飛び元居た場所へ戻ってきた。

 

 「人が動揺してる時に重要な話してんじゃねぇよ…!」

 「いいのいいノ。ヴィータはここで退場だかラ」

 「くるか…!」

 

 ヴィータはグラーフアイゼンを構えるが、構えた次の瞬間シグナムの方向に蹴り飛ばされてしまった。シグナムとヴィータはぶつかり、そのまま地面へ落下し、大きなクレーターを作るほどの勢いで地面にぶつかる。

 

 「一瞬で…二人が…!」

 「時間停止に対策ができないならどうやって勝てばええんや…!」

 「時間停止は楽でいいねエー。さくさく倒せル」

 「まるでゲームみたいに!許さないぞ!」

 「許さないなら…どうする気?」

 「貴女を…なのはちゃんを止めるんや!」

 

 はやてが夜天の書を開き、魔法を使用しようとする。フェイトも同時にバルディッシュを構え、周りにフォトンランサーを展開する。

 

 「おおー、面白いネ。時止めないで対応してあげるヨ」

 「完全に舐められてる…!」

 「しょうがないよ。完全に向こうが優勢なんだから…!クロノが治癒を受けている時間くらい稼がなきゃ…」

 

 二人の魔法が放たれる。はやてはミストルティン、フェイトはフォトンランサーファランクスシフトだ。PWなのははその魔法たちにプロテクションなどの防御魔法の体制を取ることはない。その代わりに影がその身を守った。ミストルティンに当たって石化した影はフォトンランサーによって砕けるが、PWなのはにダメージは与えることはできなかった。

 砕け、飛び散る石の破片から見えるその顔はまるで無力な二人をあざ笑うかような、不気味な笑みだった。

 

 「多少の誤算はあったけれど、私の計画は問題なく進みそうだネ。嬉しいなァ」

 「そんな…!ノーモーションからの影は警戒していたはずなのに…!」

 「いつの間にかなのはちゃんの身体を包んで防がれてしもうた…時間は止めないって言っていたのになんで気づけなかったんや…?」

 「いい反応してくれたから教えてあげル。なんでいつの間にか影が私を包んでいたかというと、私が肉体を手に入れたことでパワーアップし速度が上がったからだヨ」

 「パワーアップして速度が上がった…たったそれだけであれだけの違いが出るものなの…?」

 「圧倒的すぎる…こんなんどうやって…」

 

 あまりの強さに絶望を感じる二人。もしクロノが戻ってきてもこの差は埋まらないだろう。それほどの差がここにはあるのだ。PWなのはの余裕の態度は変わらず、空を飛び続けている。ビルの屋上に降りているフェイトとはやてはそれを見上げている。

 

 「来ないノ?こっちから言ってもいいんだけど…それだとすぐ終わりすぎちゃうなァ」

 「完全に下に見られている…。本当だからしょうがないけど…」

 「モードを使っても向こうの方が“影”の事をよく知っているせいで、モードが解除されるほどの砲撃をくらわされてすぐに解除されるのが見えているから…まだ使わんほうがええんやろな…」

 

 二人とPWなのはの睨み合いが続く。PWなのはは時々、影で牽制をしてきたが、二人は協力し、何とか凌いでいた。

 

 「どうする…!どうやって!」

 「近づくこともできひん…」

 「…面白い事考えタ。これは良いゲームダ」

 

 PWなのはが笑みを浮かべ呟く。フェイトとはやてを見比べるしぐさを行う。

 

 「な、なに…?」

 「急に攻撃を止めてどうしたんや…?」

 

 そして、フェイトを指差す。

 

 「貴方に決めタ」

 

 そう言うと、フェイトとPWなのはがその場から消えてしまった。

 

 「…は?な、何が起こっているんや…?二人がいなくなった…!?」

 

 はやてが周りを見て、二人を探す。エリアサーチも行い周囲を調べる。しかし、どこにも二人は存在しない。一瞬でフェイトとPWなのはは忽然と姿を消してしまったのだ。

 はやては、とりあえずクロノの所へ移動し、この事態を報告することにした。

 ————なのはが目覚めるまであと、2日と3時間。




サブタイトルは思いつかなかったので、簡潔にしました…。全く持って興味をそそられるサブタイではないですね。これからもっと精進します…。
読んで下さりありがとうございました。感想や評価お待ちしております。

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