魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
いつも読んで下さる方、お気に入りしてくださっている方、チラッと読みに来てくださった方、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
◇◆◇◆◇◆
どこか見覚えがある街並み。少し歩くと住宅街。
「ここは…どこ?」
呟くも誰も答えてはくれない。
寂しくても誰も慰めてはくれない。
寒くても誰も温めてはくれない。
「誰もいない…?」
また少し見覚えのある住宅街を進みひとつのそこそこ大きな家を見つけた。
「私の家だ…」
そうそこは『高町なのは』の家。今いる位置は家から数百メートル離れているのだが、本来ここまで聞こえてこないはずの家族が話して笑う声が聞こえる。
「お母さんたちの声…」
と呟いた時、『高町なのは』の家の上空に一人の少女が飛んでいるのを見つける。
「あれは誰?」
飛んでいる少女は長い金髪を左右対称に黒いリボンでまとめており、瞳は赤かった。
「フェイトちゃん?いや、似てるだけだ…フェイトちゃんじゃない…」
そのフェイトに似た少女は口をパクパクと動かしている。どうやらこちらに何か話しているようだ。しかし、何も聞こえては来ない。
「なんて言ってるの?貴女は…」
するとその少女はいつの間にか手に持っていたデバイスと思しき杖を下に向けた。その先にあるのは『高町なのは』の家。
「えっ…。ま、まさか…!?」
思わず駆け出していた。しかし中々家までたどり着けない。いつもより早く走っているはずなのに、その距離は縮まらない。
走る心は恐怖に染まっていた。何が起こっているかわからない恐怖。どこから出てきているのかわからない後悔という恐怖。それらが走っている自分の身体を支配していくのがわかった。
デバイスの先に光が集まっていく。大声を出してそれを止めさせようする。どうにか止めて欲しいと。
「やだっ…!止めて!お願い!!止めてぇ!!!」
その声も虚しく、光は放たれる。その光は『高町なのは』の家を包み、焼いた。
木造の家からは火の手が上がる。ようやく、家の前まにたどり着く。
上にいた少女が背後に着地し、耳元で何かを囁く。しかし、それもまたパクパクと口を動かしているようにしか見えず何を言っているのかわからない。
「そ、そんな事より皆は…!」
背後に向けていた視線を目の前の燃えている自分の家に向ける。
まず目に入ったのは人の肉体が入ったジーンズ。黒いベルトが巻かれている。しかし上半身はどこにも見当たらない。
「あれって…お兄ちゃんの…」
次に目に入ったのは先ほどのモノとは逆の下半身の見当たらない女性の上半身だった。黒い髪を三つ編みにしてそれを赤いリボンで縛っている。
「あれは…お姉ちゃん…」
最後に目に入ったのは、肩を抱え合っている人間とそれに寄り添っている人間の真っ黒に焦げたモノであった。
「あ、あれはお父さんと…お母さ…ん…?」
膝から崩れ落ちる。目からは止めどなく涙が溢れる。
「うああ…あぁ…!いや…だ…。いやぁぁぁ!!!!」
狂ったように声を上げ、地面に突っ伏してしまう。目の前にある遺体は自分の家族なのだ。いや、正しくは家族だったのだ。もう声も出さぬ、抱きしめもしてくれなくなってしまった家族だったモノ。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁ!!!」
再び大きな声を上げる。
その叫びにも誰も答えない。返さない。
「…てやる…」
次に発したのは小さな呟き。
「…殺してやる…殺して…やる!」
その目には確かな殺意と覚悟が宿っていた。しかしそこには希望は無かった。あるのは絶望と理不尽に対する怒りだけであった。
そして涙を拭うため、目を閉じる。
◆◇◆◇◆◇
無意識に目を拭い、目を開く。するとそこに広がっていた景色は医務室の天井だった。
「私…寝てた…?あれは…夢…。また…あの夢見たんだ…あの悲しい夢…もしかしてあの夢って…」
遠くから管理局員の慌ただしい声が聞こえる。
近にある結界内で戦闘が行われているということは分かった。なのはも参加しようと身体を起き上がらせると、腹部にあったはずの影に刺された傷が無くなっていることに気づいた。
「シャマルさんがやってくれたのかな…?あ、そんな事より早く行かなきゃ!」
なのははベッドから急いで降りて、医務室の外へ駆け出す。
局員に何が起こっているのか聞こうとした時、モニターにピンク色の閃光がフェイトたちを襲っているのが目に入った。
PWなのはとフェイトたちが闘っているのだ。なおさら助太刀に行かない訳にはいかない。するとエイミィが話しかけてきた。
「あ、なのはちゃん。目が覚めたんだね。もう歩いて大丈夫なの?」
「はい!もう何にも異常なしです!」
「そ、そっか…」
「?あ、それよりエイミィさん!フェイトちゃんたちが闘っている場所を教えてください!」
「えっ!助太刀に行こうとしてるの!?無茶だよ、なのはちゃんこの三日間ずっと寝てたんだよ?今は何ともないようだけど怪我も大きかったし…」
「私三日も寝てたんですか!?」
「うん…何かにうなされてる様子もあったし、今はやめた方が…」
「それでも…行かなきゃ…!私はアリサちゃんたちを助けられなかった。だからフェイトちゃんたちを助けに行って…」
「そんなに気負わなくても…」
「そういうんじゃないんです!フェイトちゃんを助けるのもそうなんですけど…もう一人の私、高町なのはを救えるのは…私だけなんです!」
「どういうこと…?なんで救えるのがなのはちゃんだけなの?」
「最近いつも見る夢があるんです。さっきも見ました。わかったんです。それがもう一人の私の過去だって…」
「…その過去を理解できているのがなのはちゃんだけだから救えるのは自分だけていうの?」
「はい」
「…本当は止めるべきなんだろうけど…。その話を信じるなら、行かせた方がいいんだろうね…。今クロノ君もはやてちゃんもシグナムさんもやられて、戦ってるのフェイトちゃんだけだし…」
「そんなに、危機迫っていたんですか!?」
「もう一人のなのはちゃん、滅茶苦茶強いんだよ…。それに何か怒っているみたいで…」
「じゃあ、急いで行きます!」
なのはは駆け出した。心に決めた救いの決意を強く握りしめ。
まさにその時、PWなのはが引き起こした事態は既に最終局面に近くなってきていた。
これはどちらかというと幕間みたいな感じなんですが、一応重要な話なので読んで下さるとありがたいです。読んで下さった方はありがとうございます。
この夢は誰の夢なのか、いつの光景を映してるのか。それがわかるのは話数的に、もう少し先になります。
早めに更新しなければ…!
※流石に短すぎたので、少し加筆しました。それでも短い気もしますがご了承ください。