魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
書き溜めたのをこまめに出したのでここ数話は三千字程度で少なくなっているのは申し訳ないです…。
「全く…しぶといわね…!」
なのはは、はやての元に辿り着きトロイエに能力を使われていた。”束縛の影”は失った優勢は大きいものの、余裕は残っていた。それは時間の巻き戻しの能力を持つということからくるものだった。
「この事を知っていようがいまいが…これは干渉されないなど関係ない力!」
「何を!」
フェイトが”束縛の影”に斬りかかる。その攻撃の速度はモードレイジングにより引き上げられたスピード。同じ”影”とはいえ反応できるような速度ではなかった。しかし、その攻撃は当たることはなかった。
「どういう事…!?思ったより遠い位置に”束縛”がいた…?」
「なんでフェイトの攻撃が当たらなかったの?今のは当たる間合いだったのに…!」
「これが私の力!今お前たちが対策したのは時間停止だけ!所詮一つだけ!私の力は一つだけじゃないのよぉ!!」
”束縛の影”は動揺していたフェイトをアリサの方向に蹴り飛ばす。アリサは受け止めきれず、フェイトごとビルの壁を削りながら道路に激突してしまう。
「あははは!!まだ私の優勢は変わっていない様ね!数じゃ私の優勢は覆らない!それだけの力が私にはあるのよ!!」
「くっ…!何なのよ…!”影”って今までそんな沢山特殊能力持ってたっけ…?」
「いや…”隷属”は紋章のあの能力だけだったし、”憤怒”は人の怒りをエネルギーに変換、”断罪”は魔法攻撃の反射…みんな一つだけだった…」
「じゃあ、あいつが規格外なのね…!ムカつくー!」
「どんなに悔しがったところで、私に勝てる確率は上がらないわよ?」
”束縛の影”が道路に降りてくる。その表情は完全に勝ち誇った勝者の顔だった。余裕ここに極まれりという雰囲気だった。
「なのははこの能力の正体を知っているのかしら…」
「多分…あの時飛び出したのはそういう事だろうし…なのはの強化はまだなの…!」
「なのはが来るま耐えれるかしら…?」
「別に貴方自身に強力な攻撃能力が備わっているわけじゃない!」
アリサが飛び出し、フレイムアイズを叩きつける様に、”束縛の影”に振り下ろす。
「この程度なら、力を使わずとも止められるわ…!」
掴んだ。掴んだのだ。”束縛の影”はフレイムアイズの魔力刃である刀身を掴み、その攻撃を止めた。
「そんな!?」
「下がりなさい!」
”束縛の影”はそのままアリサを投げ飛ばす。アリサは歩道橋にぶつかり地面に落ち気を失ってしまった。
「アリサ!…なんて…規格外の強さ…!」
「私に勝とうなんて百年早いわよ!」
そして”束縛の影”は事件を五秒だけ巻き戻す。五秒間で少し前に移動していたフェイトが少しだけ後ろに下がってしまう。またここでフェイトの頭の間合いから離れてしまう。
「貴方の速度は私には全く意味をなさない…時間停止が意味なくなったのは確かに痛い…でも貴方たちだけなら対応できる」
「”影”との一対一はかなり危険だ…でもなのはが来るまで耐えなきゃ…!」
フェイトが斬りかかる。ハーケンの刃は少しだけ”束縛の影”に辿り着かなかった。それは先ほどの時間の巻き戻しによる誤差だった。
”束縛の影”はハーケンが下に振り下ろされた後、フェイトの顔を横から蹴る。それをモロに受けたフェイトは勢いよく地面を転がる。フェイトは再び自分が思ったより遠い位置に”束縛の影”がいたことに困惑していた。
「なん…で…!一体どんな能力なんだ…!」
「なのははすぐに見抜いたけれど…貴方はどれくらいで見抜けるのかしら?フェイト…!」
「なのははやはり…見破っていたのか…」
フェイトはフラフラしながらも立ち上がりバルディッシュを構える。”束縛の影”はその場に動かず立っている。フェイトが少し前に歩く。しかしここで時間が五秒間巻き戻される。再び構えた時の位置に戻される。
「…!今何か違和感があった様な…」
「ふふふ…」
気づきかけたフェイトだったがその違和感に確証をもてなかったためそのまま突撃することにした。しかしバルディッシュはザンバーに変えた。それはザンバーほどの長さの剣ならば多少の間合いの誤差は埋められると考えたからだ。
「なるほど考えたわね…!」
「これなら!」
「しかし、足りないわ!」
このザンバーの攻撃も”束縛の影”には当たらなかった。時間巻き戻しを突撃の直前にも行われてしまったため、ザンバーの刀身分離れてしまっていた。しかしフェイトは外れたからといって攻撃を止めず下がったザンバーを上にあげることで”束縛の影”への攻撃とした。
しかし上げる時にも時間を巻き戻されたことにより、一拍攻撃のタイミングが遅れてしまう。
「これも当たらないのか!」
「まだ…足りないわね!でやぁぁ!」
また”束縛の影”の蹴りを喰らってしまうフェイト。今回は地面を転がることはなく、踏み止まる。
「今の感覚…やはりこの違和感が”束縛”の二つ目の能力の正体…!」
「じゃあどんな力かしら?」
「…能力の詳細…。疑似時間停止という一つ目の能力から考えて疑似的な時間干渉能力だと考えていいだろう…」
「ほほう…?」
「……!もしかして、時間の巻き戻し…?それも時間停止と同じ疑似的な…!」
「おお!正解!流石”影”の憑依者!鋭いわね!」
「当たった…でも疑似的とはいえ時間を巻き戻すなんて!」
「そのまま対策も立ててみなさいよ!一流の魔導士の娘でしょう!」
”束縛の影”がフェイトに突撃してくる。その速度はそこまで速くはないが、疑似時間巻き戻しを行えるだけフェイトには劣勢である。
「この非常識なまでの脚力っ…!”影”の中でもかなり強い!」
フェイトはバルディッシュの柄の部分で”束縛の影”の攻撃を防ぎながら考察する。ここまで強く、自分のことを軽くあしらうことができるでろう目の前の敵は何故直接なのはの元に行かないのか…。”影”の共通目的が高町なのはの抹殺であるという前提ではあるがここまでの”影”たちの行動を考えると恐らく”束縛の影”の目的も間違いないだろう。ということは”束縛の影”が今行っている戦闘は…。
「考え事しながらだなんてずいぶん余裕ね!」
「全く余裕じゃないですよっ…!でもあなたが私と戦っている理由に見当ついたのでここからは考え事なしで行かせてもらいます!!」
とフェイトが宣言したとほぼ同時に”束縛の影”にピンク色の魔力弾が直撃する。なのはのアクセルシューターだ。
「フェイトちゃん!ごめん、遅れた!」
「な、なのは!今格好良く宣言したところだったのに…」
「あはは、格好つかんかったなぁ…ドンマイや」
”束縛の影”が魔力弾が当たったところを摩り、なのはたちを睨む。
「やはり、高町なのは…あなたは私たちにとって絶対的な障害。殺すべき敵の様ね…!」
憎しみを込めたその言葉はなのはの心に深く刺さる。なぜこうも自分が恨まれているのか考え当た事のないなのはにとってこの言葉は何より辛いものだった。もう自分の話を聞かない絶対的な拒絶。投降なんてしない、武器を捨てたりもしない。高町なのはという存在が消えるまできっと戦い続けるのだろう。なのははそう考えていた。
「何で…何で私なの…?私が何かしたの?」
「厳密には貴方じゃないわ…でも、それでも、私たちにとって貴方は憎しみの対象となる!」
「そんな…理不尽すぎる!」
「はやて、理不尽な暴力なんて生きていれば必ず出会うわ」
「そうだとしても、今ここでなのはが理不尽な暴力に晒される必要はない!」
「勇ましいわねフェイト。流石”不屈”に選ばれただけあるわ…」
「”束縛の影”…私は死なないよ。絶対に。いつか死ぬとしてもそれは寿命で。その時まで私は生き続けるよ」
「いいぞ高町なのは…!そうでなくては私たちの恨みつらみは晴れない!」
高笑いする”束縛の影”。その姿を悲しい目で見つめるなのは。自分の恨まれる理由もわからず、しかし目の前の人をどう助けたらいいのかも分からない。なのははあの”影”利用しようと考えた。…練習場で倒れたあの日。シャマルから言われ知った事。誰にも言っていない秘密。
『貴方の中に”憤怒の影”がいる』