魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen   作:ルル・ヨザミ

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 今回も台詞地の文を離す書き方をしてみました。どっちが読むとき楽なんでしょう?あまり読まないので分かっていません…。すいません…。後でちゃんと確かめます。



第36話 折れないハート

 アリサ・バニングスと"束縛の影"との戦いは一方的なものになっていた。

たとえ一級の魔導士に教えを乞うてもいざ実戦となると全く練習通りにはいかない。アリサの攻撃は"影"には一度も当たらず、アリサは全ての攻撃を喰らっていた。

 

 「うぁあ!!」

 

  今もまたアリサが蹴りをくわえられ、床に転げる。この光景を見て、はやてたちは何度も助太刀しようとしたがその度アリサが「大丈夫だから!私だけで大丈夫だから!」と制止されてしまっていた。

 

 「こんなん…ただのリンチや…戦いでも何でもない!」

 「はやての言う通りだよ!なのに…何で…」

 

 はやてが飛び出そうとしたのをアリサは手を前に突きだすジェスチャーで制止させた。

 

 「心配いらないから…!まだまだ…いけるから!」

 《でもよお…流石に攻撃を受けすぎだぜ!もうやめた方が》

 「るっさいわね!折るわよ!」

 《ひぃ!?》

 「まだ大丈夫だって言ってんだから…あんたも付き合いなさいよ…」

 「まだやるのー?私流石に飽きてきたんだけど」

 「やるに決まってるでしょう!私が立てる限り終わらないわ…!」

 

 アリサはフレイムアイズの刀身を床に刺し、杖のように寄りかかって立ち上がった。

 端から見れば、アリサの立ち方は限界のそれだ。しかしアリサの目は未だに諦めてはいなかった。

 

 「なんなの…?あ、もしかして、親友の姿してるからムキになってるの?」

 「…そうねぇ…確かにそれもあるかも…」

 「ふーん。なら親友の姿の奴に殺されなさい…本望でしょ?」

 「死ぬってなったら話は別ね。私は死ぬわけにはいかないわ」

「は?なんなの?本当になんなの?ワケわかんない!」

 

  "束縛の影"は明らかにイラついていた。余裕こそまだ十分に感じられるが、先ほどからのアリサとの問答でアリサの目的が読めないことからイラついてきたのだ。

 攻撃するポーズから、膝蹴りをしようとしているのはアリサにもわかった。

 

 《プロテクション!》

 

 フレイムアイズが叫ぶ。

 

 「そんなヘボバリアで私を止められるかぁ!」

 「ぐっ!!」

 

 アリサは耐えた。吹きとばされつつもなんとか膝をつくことをしなかった。しかし、次の瞬間自分は先ほどいた場所から真逆のところにいた。

 アリサは柱に当たり、床に倒れ込む。

 

 「こ、これ…最初にはやてを蹴ったときと同じ…技?」

 「そうよ。ま、"影"の憑依者じゃなくなったあんたには反応なんて無理でしょうけど」

 

 近づいてくる”束縛の影”。冷たい目をしたすずかがアリサを見つめる。

 

 「本当にわからない…自分より強い仲間がいるのにそれに頼らず、攻撃も一度も当たってないのにいつまでも諦めないで向かってくる…。アリサ…あなた一体何がしたいのっ!」

 

 ”束縛の影”が床に倒れているアリサの腹部を蹴り上げる。

 

 「うぐっ…!」

 「アリサちゃん!」

 

 ”束縛の影”はその後も何度も何度もアリサの腹部を蹴り上げる。その度アリサは「あぐっ…」「ぐあっ…」など声にもならない声を上げていた。

 それに我慢できなくなったシグナムがレヴァンティンで斬りかかろうとしたその時

 

 「大…丈夫…大丈夫…だから…手を…出さないで…」

 

 アリサはシグナムに来ないよう言った。手を突き出してまで拒否したのだ。

 

 「何を言っている!?このままでは…このままではお前が…!」

 「わかってる…大丈夫…本当に…大丈夫だから…」

 

 その証拠かというようにアリサは床に魔力弾を撃ち、自分の身体を爆風によって起き上がらせた。腹部のバリアジャケットは地肌が見え、アリサの白い肌が赤黒くなっている。

 

 「もう!めんどくさいことするわね!!あんなにやったのにまだ仲間を頼らないなんて…」

 「貴方が仲間を連れてきたなら考えてあげる」

 「強がり言うもんじゃ…ない!」

 

 ”束縛の影”の姿が消え、「ない」という声が聞こえた時には真後ろにいた。

 

 「はやっ!?うぅっ!」

 「貴方に見えるはずないって言ったでしょ!!」

 

 アリサは背後からそのまま蹴られ吹き飛ばされる。そしてこれの繰り返し。

 

 「ああ!くっ…!」

 「いつになったら!諦めるのよ!!」

 

 ”束縛の影”はその諦めない姿勢に困惑していた。そしてはやてたちも頑なに助太刀を拒否するアリサに困惑していた。この場にいる誰もがアリサの行いを理解できていなかった。

はやては最初、フェイトが来るまでの時間稼ぎをしようとしてるのだと思った。ピンチであれば手助けもできると…。確かに間違ってはいない。アリサの戦っている目的の一つにフェイトが来るまでの時間稼ぎであることは確かなのだ。はやてのモードは戦闘向きではないことが、能力やステータス変化で分かっていることだった。アリサもそれを知っていた。その反対にフェイトは完璧な戦闘向きのモードで後方支援はあまり得意ではない。

 それもありアリサはフェイトを待ち続けている。しかし、アリサが諦めないのにはもう一つ理由があった。

 

 「がはっ…!はぁ…血を吐き出すなんて久しぶり…。」

 「舐めてんの?」

 「あんたがそう思うならそうなんじゃない?…舐められてる気分はどう…?」

 「貴様ぁ!!」

 

 ”束縛の影”はアリサの挑発に乗った。アリサは目の前から消える”束縛の影”を見つつ、自身の背中にフレイムアイズの刀身を回し刀の先を左手で持ち防御の体制を取った。

 そして”束縛の影”はアリサの背後に現れるが、蹴りを入れずにその場に立ち尽くす。

 

 「アリサちゃん…防いだんか?あの攻撃を…?」

 「一体何がどうなって…?」

 「アリサあんた…私の能力が見えるっているの…」

 「別に何にも…?どうしたの、早く来なさいよ…!ほら!」

 「はは…そうよね、まさか…この私の力が見破られるなんて…!」

 

 ”束縛の影”が消える。今度はアリサは右手の方にプロテクションを張る。”束縛の影”はまた蹴りもせず立っている。そしてその場所はアリサの右手側の方向である。

 

 「あんたどうやって!どうやってこの力を!」

 「別に…何もないって言ってるでしょ…!はぁ…はぁ…」

 

 ここにきて今までの攻撃を受けた疲労が一気に襲ってきた。アリサは危うく倒れそうになる。

 

 「あんたも限界ってわけね…じゃあ今までのは偶然ってことで!チャオ、アリサ!」

 

 ”束縛の影”先ほどいた位置から、アリサの眼前に現れ、かかと落としを決めようとする。アリサはもうプロテクションを張る体力が残っておらず、今度はアリサが立ち尽くしてしまっている。

 

 「ぐっ…」

 

 アリサが覚悟し目を瞑った時、”束縛の影”背後から黒い影が現れた。

 

 「何…!?」

 「…そこまでだ!これ以上私の友達を傷つけさせるわけにはいかない…!」

 

 モードレイジングに身を包んだフェイト・T・ハラオウンである。この瞬間に帰ってきたのだ。

 

 「なんか中の様子がおかしいと思ったら…”影”が来ていたなんて」

 「フェイトちゃん!ありがとう!」

 「恩に着るテスタロッサ!」

 「なんで、皆はアリサを助けなかったの?」

 

 フェイトの言葉に駆け寄ってきた三人の表情は固まった。別に好きで手を貸さなかったわけではないが、なんとなく気まずいのだ。

 

 「フェイト…それは私が絶対に手を出さないでって言ったからよ…」

 「えっ、なんで?相手は”影”なんだよ?そんな無茶なこと…」

 「それが私たちにも教えてくれへんのや…」

 「もう、いいわ。フェイトが来たなら…。はやて、私さっき二回”束縛の影”の攻撃を防いだわよね」

 「うん…確かに…」

 「あれ、最初はすごいスピードで動いてるんだと思っていたの。それに使っている本人が『見えないでしょ』っていうもんだからなおさらね…」

 

 ここまで言うと先ほどまで黙っていた”束縛の影”が叫んだ。

 

 「あんたやっぱり私の力に気づいていたわね!」

 

 アリサが答える。

 

 「そのために何度も何度もあんたの攻撃を喰らったんだから…」

 「それで、”影”の能力は…?」

 「あいつ…”束縛の影”の能力は…時間停止…時を止める能力よ」  

 

 アリサがそう言うとフェイトは困惑した。そう、時を止めるなんて所業は不可能であるはずだからだ。かつて死者を生き返らそうとした自らの母プレシアが行おうとしたように、人の死、時間に干渉する魔法など存在しないはずなのだ。なのにアリサはそう断言する。

 

 「本当に…時間停止だとしたらあたしたちどうすれば…」

 

 ヴィータが心配そうに呟く。時間停止、使えるだけで最強の部類にはいる力。それを有しているとしたら今の管理局の魔導士たち全員でかかっても勝てるのか…ヴィータはそう思っていた。しかしアリサはこう続けた。

 

 「でもあいつの時間停止はどうやら無限に止められる訳じゃなく、決まった時間だけ止められるっぽいわ…」

 「そんな事なんで…?」

 「あいつが消えてから攻撃してくるまでの時間を計っていたのよ…そしたら絶対に一分を越えないのよ…毎回律義に一分以内に攻撃してくる…それってつまり一分間しか…時間を止められないってことなんじゃないの…?どうなの…?”束縛の影”さん?」

 「ぐぬぅ…!そうだ…私の力は時間停止…一分間の時間停止だ…!クソ!!」

 

 フェイトは驚愕していた。ついさっきまで魔法の基礎と知識しかなかったはずのアリサがズタボロにされながらも相手の能力を見極めようとしていたからである。アリサを抱えていたフェイトはアリサをシグナムに渡し、笑顔を向けた。

 

 「ありがとう…アリサ。あとは任せて!」

 「頼んだわ…はぁ…あ、はやて…敵の能力がわかったからこれでモードトロイエの特殊能力が使えるわね…」

 「ま、まさかそのために私の手助け断ってたんか!?」

 「あはは…それで怪我でもしたら大変だからね…」

 「それはこっちのセリフや…!もう…無茶するんはなのはちゃんとそっくりや!」

 

 アリサはそれを聞き終わる前に気を失ってしまった。ガクンと首が倒れ、全身の力が抜けている。

 ”束縛の影”が恨めしそうにアリサを睨んでいる。そして恨みのこもった声で叫んだ。 

 

 「アリサァァァ!!」

 「”束縛の影”だっけ?さ、ここからは私が相手だ。残念ながら君の能力は侮っていたアリサに見破られたけどね」

 「…ふふふ…あははははは!だからといって、時間停止がそう簡単に破られるものか!!」

 

 ”束縛の影”にはまだ余裕はあった。それだけ時間停止という力は強く優位に立てる能力なのだ。しかし、フェイトの顔にも全く焦りも心配もなかった。フェイトにはアリサから聞いた対時間停止の秘策があったからだ。

 

 「私…負けるつもりはないよ!全力全開でいかせてもらう!」




追い詰められるのが早い”束縛”さん。でも彼女にはまだ秘密があります。ココカラをお楽しみに!

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