魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
しかし、これでもちゃんと考えて書いている(はず)なので、楽しんでいただけたら幸いです。
「流石”不屈”ダ…!攻撃ガ全ク緩マナイ!シカシ!ソレハコチラモ同ジ!」
「砲撃だけじゃない…、今までの斬撃によるダメージもあるはずなのに!なんでこうも重い攻撃が…!」
フェイトと”憤怒の影”の打ち合いは延々と続いている。互角の戦いにより終わりの見えないものとなってしまっている。”憤怒”は背中の天の炎で、なのはとシグナムにも攻撃している。そちらの攻撃も全く緩む様子はなく、なのははフェイトの援護が中々できないでいる。シグナムはなのはを守る為に、天からの攻撃を防いでいるが、その顔には疲労の色が見えてきていた。
「シグナムさん!支援しながらでも、防御はできます!少し休んでください!」
「ここは戦場だ!そんな悠長なことは言ってられん!それに、今”影”に対抗できる力を持っているのはお前とテスタロッサだけだろう?なら、それを万全の状態にしろ!どんなタイミングでチャンスが回ってくるかはわからないのだからな!」
シグナムは、攻撃を払いのけながら、なのはに言った。なのはは少し微妙な顔をしたが、納得はした様子でフェイトの支援に戻った。
支援を受けているフェイトはというと、斬撃が全く”憤怒の影”に当たらなくなってしまった。スターライトブレイカーを受けたのにもかかわらず、むしろ受ける前より動きが良くなってきているのだ。スピードはフェイトに追いつけるほどまで回復した。故に、先ほどまで食らっていた斬撃が全く当たらなくなったのだ。
「なんで…!こんな…!」
「ドウシタ?当タラナイゾ?コッチカラモイクゾ…!デェイ!」
”憤怒の影”が炎に包まれた右の剣を振り下ろす。その速度は恐るべきもので、”影”で強化されているはずのフェイトでもとっさに反応できなかった。
「フェイトちゃん!?」
吹き飛ばされたフェイトに思わず近寄るなのは。幾重にも重ねた魔方陣でフェイトを受け止める。シグナムにも行ったものだ。
「大丈夫?」
「うん…。ありがとう!」
フェイトはそう言うと、またすぐに”憤怒の影”のもとに、駆けていった。なのはも、空に戻り、アクセルシューターとディバインバスターのコンビネーション技でフェイトを支援する。
しかし”憤怒の影”の攻撃はどんどん強くなっていくばかりで、なのはの支援も意味を成しているかわからない状態になっていた。バランスを崩すや、避けるのに気を取られたりなどしなくなってきているのだ。この調子だと、いずれnこちらの攻撃が全て効かなくなる可能性がある。そう考えたなのはは、次はバインドを中心にした支援をすることにした。ディバインバスターはやめ、アクセルシューターとバインドのみの支援だ。
「唐突に変えちゃうけど、フェイトちゃんごめんね…!」
なのはは、”憤怒の影”が両手で剣を振り上げた時を狙い、バインドをした。作戦は見事当たり、”憤怒の影”は突然のバインドに動けなくなってしまった。
「何!?バインド…コノタイミングデ…!」
「はああぁぁ!疾風!迅雷!スプライトザンバー!!」
フェイトの大型の魔力斬撃は、”憤怒の影”を横に切り裂き、その背後にあった大きな岩までもが切り落とされた。
「はぁ…どう…?」
フェイトは魔力消費の大きな魔法を使ったため、息切れが出てきた。しかし、それでもモードレイジングが解けないのは”不屈の影”とフェイトの相性の良さが成せるものだろう。
「どうやら、切れはしたようだな。まだ生きてはいる、早く拘束を…」
「…コレデ我ガ終ワルトデモ?」
上半身と下半身に分かれてしまった”憤怒の影”は、まだ戦意を失っておらず、むしろ先ほどより増していた。
「まだ…戦う気なの…?」
なのはは半分になった体の方が気がかりだった。完全融合していないとはいえ、アリサは半分以上融合されているのだ。魔力に変換された肉体に何かしらの不具合があってはならない。故に少し心配になっていた。
「戦ウサァ!マダ、ナノハ、オ前ガ死ンデナイダロウ!!」
「まだ、そんなことを…!いい加減にしなさい!」
フェイトが上半身の”憤怒の影”にザンバーを振り下ろす。
しかしその剣先は”影”に届かなかった。フェイトの腕を”憤怒の影”の下半身が止めたのだ。両足を上にあげ、ザンバーを持っている手の降ろす動作を止めている。
「なっ!?半身が動く…!?」
フェイトはとっさに距離を取った。
「コノ身体ハ、”影”ダ。正シクナ。影を斬レルカ?斬レナイダロウ」
「融合しても身体の構造は変わらないってこと…?」
なのはがふと疑問を呟く。”憤怒の影”はそれに答えた。
「ドウカナ?確カニ我ノ身体ノ構造ハ変ワッテナイガ、アリサ・バニングスノ身体ハ魔力トシテコノ身体二入ッテイルノダゾ。何モ影響ガ無イトモ言エナイダロウ」
なのははその答えに、違和感を覚えた。その違和感はなぜわざわざ、自らの体の構造について話したのかという点である。これまでの話の中でも、人格が明確に”憤怒の影”になってから、目的などを少し話したりしていたが、今回のは自らの弱点を知られるかもしれない話なのに答えた。なのははそれに違和感を覚えたのだ。
「我ハ…不滅ダァァァァ!!」
”憤怒の影”が叫んだ時、上半身が浮き上がり、下半身の付け根もその上半身の付け根を目指し浮き上がった。そして、その二つはくっつき、先ほどまで二つに分かれていたなどと感じさせない回復をした。
「そんな…!?」
フェイトが目を見開き驚く。
「”影”とは何でもありなのか…!?」
シグナムもまた、その回復力に驚愕していた。
しかし、なのはは一人その様子を見て驚くわけでもなく”憤怒の影”を打ち破り、アリサを救う方法を思いついていた。そして、その方法を実行する気持ちも決まった。
「やれるかじゃない、やるんだ。絶対に…!」
なのはは、モードフォーレンを使うタイミングを見つけたのだ。絶好のタイミングを。
「フェイトちゃん、私が今度は”憤怒の影”と戦うよ。私と交代ねフェイトちゃん」
「な、何を言ってるのなのは!?今の見てなかったの?それになのはの攻撃はほとんど”憤怒の影”にダメージを与えられないんだよ?」
「ダメージを与えづらいからいいの。安心して、無茶なことはしないから!」
「なのは…わかった。今度は私がなのはを支援するね」
「うん!ありがとう、フェイトちゃん…」
なのはは立ちあがった”憤怒の影”を改めてじっくり見た。その”影”はアリサの形と声をしているが完全に別物の雰囲気と威圧感だ。なのはは息をのむ。そして、先ほど親友に言った『無茶なことはしない』という約束を破ってしまう事を、心の中で謝った。