魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen   作:ルル・ヨザミ

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第30話 ”影”との融合

 「駆ケロ!炎剣ーアマツ!」

 ”憤怒の影”が双剣を振ると、私とフェイトちゃんを目がけ炎の柱が飛んできた。

 「いくよ!なのは!」

 「うん!」

 私とフェイトちゃんは左右に分かれて同時攻撃をする作戦に出た。”憤怒の影”は魔法を撃った場に立って動いていない。恐らく受け止めるつもりなんだろう…。私は三つのシューターを用意して突撃をした。

 「はあぁぁ!!」

 私のザンバーは右手の剣で抑えられてしまった。

 「でやぁぁあ!」

 フェイトちゃんも斬りかかる。しかし、私と同じように左の剣で抑えられてしまった。用意しておいてよかった…ここがチャンスだ!

 私はシューターを”憤怒の影”の左手に向かって撃ちこんだ。

 「ホウ…!」

 ”憤怒の影”の左手はバランスを崩し、フェイトちゃんのザンバーが腹部に当たる。

 「ナイス、なのは!」

 フェイトちゃんは当たったザンバーをそのまま振りぬき、”影”のバリアジャケットには大きな傷ができた。その切れたバリアジャケットから見えたのは、肌ではなく、黒く蠢く何かだった。

 それは映像で見た私の時と同じ現象だった。つまりアリサちゃんの身体はあの中に…!

 「やっぱり、そうなっていたか…。なのはの時と全く同じ、でもあの時は”隷属”が私を吸収しようとしたから中に入れたんだよね…今回はどうしよう…」

 「無理やりってわけには…行かないもんね…」

 「…アリサにも被害が及ぶかもしれないからね。でも、どうする…?」

 そんな悩んでいる私たちをみて”憤怒の影”は笑っていた。大笑いではない、クックックと堪えるような笑い方だった。…そういえば私が切ってしまったアリサちゃんの左手…なんであるんだろう。”影”が不便だから、そこだけ作ったのかな…?

 「オ前等ハ、マダコノ身体ノ娘ヲ助ヨウトシテイルノカ?…ソウカ、ソウカ…。ナラバ今カラ、ソノ望ミ、希望ヲ…絶ツ…!」

 「何!?何をしようというんだ…?」

 「望みを絶つ…あっ!まさか…!」

 「どうしたのなのは?なにか思い当たることが…?」

 「もしかして…アリサちゃんと完全に融合するつもり…?」

 「ヤハリ、一度憑依サレテ肉体ノ所有権ヲ奪ワレタダケアッテ、知ッテイタカ」

 「ど、どういう事なの?なのは」

 「フェイトちゃん、私が”隷属の影”の中にいる時、抜けだそうとして失敗したみたいなこと言ったの覚えてる?」

 「え、ああうん。それで私が連れて逃げようとしたら沢山の”隷属”が出てきて中に戻そうとしてきて…」

 「そう、その戻そうとする行為、あれが融合なの。私は三回逃げようとして、少しずつ融合させられていった…。”隷属の影”は完全融合すれば、誰にも負けないって、よく言ってた」

 「という事は…完全融合って、”影”たちにとっては一番早い強化方法…!?」

 「マ、ソンナトコロダ!見テナ!コノ我ガ完全体二ナル所ヲ!」

 「そんな事…!させない!」

 フェイトちゃんが物凄いスピードで”憤怒の影”に近づいていた。全く私には見えない速度だった。あれがモードレイジングの力。凄い…。

 「飛竜一閃!」

 すると後方からシグナムさんの飛竜一閃が私の視界を横切った。

 「シグナム!?何を!?」

 フェイトちゃんも突撃を止められ、さらにレヴァンティンで巻かれて私の隣まで戻されてしまった。

 「テスタロッサ、気持ちはわかる、だが奴の背中を見てみろ!」

 「あの天の炎がどうかしたんですか?」

 「お前は気付いていないようだったが、あれがお前に向かっていたのを私は見た。推測ではあるがあれは自動防衛システムの様なものなのではないか?」

 私も気づかなかった…そっかあの天はブースター以外にも用途があったんだ…。

 「そ、そんな…じゃあアリサが融合されていくのをただ黙って見ていろって言うんですか…!?」

 「そんな事誰も言っていない。奴の融合を防ぐため私も援護する。高町も手伝ってくれるな?」

 「勿論です!」

 「一人で抱え込むだけでは解決しないこともあるんだぞ、テスタロッサ」

 「わ、わかってますよ!じゃあ仕切り直して、行きましょう!」

 「おう!」

 私たちは一気に”憤怒の影”に突撃した。先ほどから”影”が静かなのは、内部で融合を始めているからだろう…。早く、早く助けなきゃ!

 そして、シグナムさんの読み通り、背中の天は、私たちにその炎を向けた。どうやら剣の様に鋭くなっているようで、こちらの防御魔法を軽く切って切る。

 「面倒くさい仕掛けだな…だが!」

 シグナムさんが立ち止まり、「紫電一閃」が放たれる。それにより”憤怒の影”までの道が空いた。

 「今だ!なのは!テスタロッサ!」

 「うおおお!!!」

 「やあぁぁぁあ!」

 さっきとは違うザンバー二本による同時攻撃。私とフェイトちゃんの斬撃は確かに”影”に当たった。当たったのだ。

 だけど、当たった場所から見えたのは黒いものではなかった。肌。人間の肌だった。

 「そ、そんな…!?」

 間に合わなかったの…?という思いが私の中に立ち込める。

 「チィ…」

 しかし、”影”が次のように言ったことで、私たちが間に合っていたことを証明した。

 「オ前等ァ!完全融合マデアト少シダッタトイウノニ!」

 「完全融合まであと少し…?なら!」

 「なのは!?」

 私はもう一度、”憤怒の影”に向かって振り下ろしたままのザンバーをそのまま振り上げ攻撃する。この攻撃は、防がれてしまう。しかし、この攻撃で”影”がどのくらい融合できているかがわかった。

 「急ニ来ルジャァナイカ…!」

 「成程…礼を言うぞなのは!」

 「え、どういう事なんですか?なんでなのはは攻撃を…」

 「なのはは”影”がどのくらいバニングスと融合したのかを確かめたのだ」

 「…!反応速度を見たの…?」

 「だろうな。見たところ、左手の反応が少々遅かった」

 「はい。なのでまだ左手の融合はできていないんだと思います」

 とはいえそれ以外の反応に差が無かったことを見ると…左手以外はもう融合されてしまったという事…。アリサちゃん…。いや、まだ諦めない。絶対に助けて見せる!

 「本当にギリギリだったんだね、融合を止めれたのは」

 「アリサちゃんは私たちみたいに魔法使えないから…抵抗できないんだよ」

 「左手クライ、ナンテ事ハナイ。コノママオ前等ヲ叩キ潰シテヤル!」

 「こっちだって、モードがあるんだ!そう簡単にやられない!」

 ≪MASTER Mode fallen 稼働限界時間です。強制解除します≫

 「え、そんな!?」

 私のばバリアジャケットがみるみる白くなっていく。これじゃ…アリサちゃんを助けられない…!?

 「ナノハハ、ドウヤラ終ワリラシイナァ。フェイトオ前ハドウダ?」

 「まだまだ行ける!覚悟しろ!”憤怒”!」

 フェイトちゃんは再び、”憤怒の影”に接近戦を挑みに行く。”憤怒の影”は今までの戦いを見てきた通り、接近戦が得意なのだけど。フェイトちゃんはそれに負けず劣らずの戦いを繰り広げている。

 「防戦一方だった私とは大きな違いだな」

 とシグナムさんが言う。しかし、この互角の勝負の鍵は”影”の力なのだろう。フェイトちゃんはどうやら”影”と協力しているらしい。私の制御とは全く違う。私はどうしたらいいんだろう…。目の前で何度も何度も剣で鍔迫り合いを繰り広げるフェイトちゃんを見て、私はそう思った。今の私じゃ変に手伝えばピンチを作ってしまうかもしれない…。しかし手伝わなくてもいいというわけでもない。私がモードフォーレンになってからおよそ10分…短すぎる。これが協力関係にある者との差なのかもしれない。

 ≪Master モードフォーレンを使えないわけではないのです。あのままでは暴走していたかもしれないのです≫

 「暴走…」

 暴走をしたらどうなるだろう。多分だけど乗っ取られている時と同じになっちゃうと思う。という事は、アリサちゃんを助けられない…。じゃあダメだ、暴走してでも助けられるかわからないんじゃ…。なら今私が撮るべき選択肢は…。

 「やっぱり…援護射撃…かな?」

 邪魔になるかもしれない、ピンチを作ってしまうかもしれない。でも、それでも、何もやらずにいるよりはずっといい!

 「フェイトちゃん!援護するよ!ディバインバスター!」

 フェイトちゃんの真後ろからディバインバスターを撃ちこむ。フェイトちゃんはそれを紙一重の瞬間にしゃがみ込んで攻撃を”憤怒の影”に当てる。

 「グゥ!小癪ナ真似ヲォ!」

 ”憤怒の影”は反撃として炎の球を私に飛ばしてきた。その数はおおよそ30個。私もアクセルシューターで迎え撃とうとした時

 「飛竜一閃!はぁぁぁ!!」

 シグナムさんが、全て撃ち落としてくれた。

 「お前は、テスタロッサの支援に集中しろ!なのはへの攻撃は全て私が防ぐ!」

 「あ、ありがとうございます!いくよ!フェイトちゃん!」

 「ありがとうなのは!シグナムも!」

 私とフェイトちゃんで”憤怒の影”を追い詰めていく。アクセルシューターを使い、”憤怒の影”の足元を崩し、フェイトちゃんの斬撃が左手に当たる様にする。ディバインバスターで空へ逃げようとする”影”を止めたりもする。私が支援している間、フェイトちゃんは着々と”影”にダメージを負わせていた。既に左手で剣は持てないくらいには追い詰めている。

 「ハァ…ハァ…。二対一デココマデキツイノハ、流石ノコンビネーションダト、誉メテヤロウ…」

 「まだ、そんな口を利けるとは…!しぶとい!プラズマスマッシャー!」

 今度はフェイトちゃんが射撃魔法を”影”に撃つ。”影”は疲労していたのか全く回避行動を

取らず直撃した。背中の天のバーニアはまだ出ていることから、直撃は少なくとも回避できたはず…。

 「フェイトちゃん!警戒して!何か来るかも!」

 「うん!わかった!…確かにおとなしく直撃したのは妙だな…」

 「…ッ!フゥ…ギリギリダッタゼ…!」

 相変わらず、頑丈なバリアジャケット…”影”のダメージは斬撃の物しか見受けられなかった。…斬撃のダメージだけ?これって…。

 (フェイトちゃん、もしかして”憤怒の影”って斬撃とか近接の技に弱いのかな?)

 (なのは、私もちょうどそれを考えていたところだよ。今までなのはは支援レベルの射撃、砲撃しかしてないから、確実ではないけどね)

 (じゃあ、今から、本気で砲撃してみるね…!フェイトちゃんにはできれば時間稼ぎをお願いしたいんだけど…)

 (OK!やってみよう!)

 よし、じゃあ、久しぶりにスターライトブレイカーやってみようかな…。近接と砲撃、どっちがダメージが多いかでここからの作戦が変わる…かも。

 スターライトザンバーブレイカーは、あまりダメージ入っていない気がしたけど…。変に不安定なモードより、安定しているこっちの方がいいかもしれないし、とにかくやってみよう!

 「お願い!レイジングハート!」

 ≪All LIGHT MY MASTER≫

 「チャージ完了まで…あと15秒!」

 「!何ヲスルツモリダ!ナノハ!」

 「邪魔はさせない!ハーケンスライサー!」

 「チィィ!!邪魔ダ!フェイトォォォ!!」

 「あと5秒!」

 「ライトニングバインド!」

 「シマッタ!コレデハ…収束魔法ノ直撃コース!!」

 焦ってはいることから、どうやら完全にダメージを0にするわけではないらしい。この砲撃だとアリサちゃんと融合したところにもあたってしまう…ごめんね…絶対助けるから、その時今までのこと全部謝るから!

 「スターライトォ!」

 ≪Starlight Breaker≫

 「ブレイカー!!」

 フェイトちゃんはバインドを保ったまま爆風範囲から離脱。シグナムさんも同様に、援護体制のまま爆風範囲から離脱。

 さぁ…ダメージはどのくらいなの…?

 爆風が収まるが、視界には砂ぼこりが舞う。まだ”影”の姿は見えない。フェイトちゃんとシグナムさんも注意しながら周りを見ている。どこから攻撃してくるとも限らない。

 しかし、私たちの目の前には、先ほどバインドを受けた場所から一歩も動かず、立っていた”憤怒の影”が目に入った。

 「…フフフ、意外ト大丈夫ナモノダナ、収束魔法砲撃ノ直撃ヲ食ラッテモ」

 「射撃や砲撃はあまり意味がないって事だね…」

 「うん。…なのはもしかして…」

 「モードはタイミングを見計らって使うよ。フェイトちゃんみたいに自由がきかないし」

 「よし、作戦はそのまま、私がなのはの援護、なのははテスタロッサの支援、テスタロッサが攻撃のフォーメーションで行くぞ」

 「そうだね…そうしよう」

 フェイトちゃんは少し心配そうな目で私を見た。心配かけちゃったな…まあ仕方ないかな、モードに関しては。私も心配だし。

 「でも、まだ、まだ使うべき時じゃない…!」

 ―SIDE  OUT―




対”憤怒の影”戦の前編がこの話です。次回は中編…になるように頑張ります。あと、リンディさんめっちゃ空気ですけどちゃんといます。グラナードに。なのはたちの帰る場所を守っているのです…。

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