魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
「さア、第二ラウンドよ…二人とモ…!」
アリサちゃんがそう呟くと、両手の剣を前に突き出す。その刀身に炎を纏わせる。
「来るぞ!なのは!」
「はい!」
≪Protection Powered≫
≪Panzergeist≫
「そンな防御魔法!無駄無駄無駄無駄ァ!!」
勢いよく突撃してきたアリサちゃん。右手で私を左手でシグナムさんを攻撃する。プロテクションを張ってはいるけど…!確かにこれは…。
「ここにきて魔力が増大している!?なのはと戦っている時もあったが、なんなのだこれは!ぐっ…!」
レヴァンティンでアリサちゃんの剣を押さえているシグナムさんの呟き一つ仮説ができた。
「も、もしかしてこの急激な魔力量の変化、“影”の特性なんじゃ…っ!」
「フふフ、マだ余裕そうじゃなイ?ナノハぁ!」
ぐっ!しまった…プロテクションに少しづつだけどヒビが入ってきた。このままじゃ押し切られる…!シグナムさんはまだ大丈夫そうだ…。恐らくこれはさっきまでの戦っていたかの違いだろう。私はあと数秒で破られるだろう。どうする…どうやったら…アリサちゃんを助けられる…!…ん?たす…ける…?私今助けるって…。そういえば戦う覚悟を決めた時も助けるって…。
あ、ああ、あぁ…そうだ。そうだった…!私は…私が今まで戦ってきた理由は…!
―SIDE OUT―
―FATE SIDE―
「うおぉぉぉ!バルディッシュ!!」
≪Photon Lancer≫
「ファイア!!」
「当たらないねぇ!」
フォトンランサーはウネウネと動く局長には何一つ当たらなかった。まさしく“影”の様に避ける局長に、射撃魔法はまるで意味をなさなかった。
なんで…!なんで!私はいつも…!いざという時に!
「次はどうするぅ?近接かい?もっと強い射撃、砲撃で来るかいぃ?」
砲撃…なんて…こんな周りに他の局員がいる中で使えるわけがない!射撃だけでもギリギリの手なのに!
なら次は接近戦。でも当たる可能性は低い…。やるしかない、か。
「ザンバー!」
「近接かぁ!いいねぇ…!でも“断罪の影”たるこの私にぃ、ただの人間の君が勝てるのかなぁ?」
「“断罪の影”…。それがあなたの名前なんですね。“影”の名前は全て隷属というわけではないのですか?」
それを聞いて私は攻撃をピタリと止めてしまった。
「もちろんさぁ!六つの“影”に六通りの名前があるぅ」
「六つ!?“影”はそんなにいるの…?」
「君のお友達である高町なのはの“隷属の影”、私“断罪の影”、そしてアリサ・バニングスの…」
そこまでで局長は黙ってしまった。
「どうしたんですか?早くアリサに入った“影”の名前を教えてください!」
「ただこのまま教えるんじゃぁ、なんかつまらないよねぇ…」
「何をふざけたことを!早く!」
なぜこうも自分が焦っているのかはわからなけど、局長に対して私は強く催促する。
「そもそもここまでの会話である程度予測はつくはずだよぉ?アリサ・バニングスは高町なのはに対して何をしようとしているか、それをもう一度考えれば、おのずとわかることさぁ!」
局長は急に魔力弾を私に向かって撃ってきた。ここまで完全に話を聞くことに集中していた私は不意を突かれ、ダメージを負ってしまう。
「ぐっ、がはっ…!ひ、卑怯な…!」
「卑怯も何もないさぁ。ここは君にとって敵の本拠地だよぉ?警戒しない君がいけないのさぁ」
くっ、でも今のうちにアリサの“影”について考えなきゃ。戦いながらでも、動きながらでも考えるんだ。アリサはなのはに何をしようとしている?確か復讐だったはずだ。復讐は恨みを持った相手にやるものだ。ということは恨みの影?でも何かしっくりこない。なにか私の中の奥底から違うって言われているような気分だ。
恨み…恨みの根本って何だろう。誰かを恨んで、その復讐を果たそうとする人は、ほぼ本とか物語の中では怒りで表現されているよね…。恨んでいる対象の人物への怒り、それが復讐の力となっている。ということは、怒り…怒りの影…?
なんか近くなってきた気がする…。
「はぁ…はぁ…!もしかしてアリサの中にいる“影”は怒りの影、ですか?」
局長の猛攻をどうにか抑え、答え合わせのような聞き方をした。
「いいねぇ、惜しいぃ!だがそこまで考え付いたならぁ、もう教えてもいいだろう、答えは怒りを少し言い換えた“憤怒の影”さぁ!まあ正解でいいでしょうねえ!」
「“憤怒の影”…。あと三つあるんですよね…その名前ももしかしてクイズみたいにするつもりですか?」
私は息も絶え絶えに、局長に聞く。あと三つの“影”の名前がわからない。それにここまで“影”やその事情に詳しいのなら、誰に憑依したかわかっているはずだ。それも聞きださなくちゃ!
「それについては言えないかなぁ…!そもそも二つの所在は本当に私知らないし、最後の一つだけは絶対に言えない存在の“影”だしねぇ…。きっと君たちもすぐに出会うだろう。その圧倒的な“影”に。ここから生きて帰れたらねぇ」
圧倒的な…“影”?一体何が圧倒的なんだ。
「とにかく…!貴方を捕まえ、全てを聞き出します!!」
「それは無理さぁ、私は捕まらない。君にも、誰にも」
局長の右人差し指から魔力砲が出ているのにその時私は気付かなかった。気付いたのはザンバーで斬りかかろうと、突撃した時だった。
「しまっ…!」
その魔力砲は私の腹部を軽く貫通した。やってしまった、あの時みたいに、なのはが“影”に乗っ取られた時の初戦みたいに、私はまた失敗するのか…?私は薄れゆく意識の中でそう考えていた。
い、嫌だ!そんなの嫌だ!私は“隷属の影”を倒せたじゃないか!あの“影”を倒せて今回の“断罪の影”を倒せない道理はない!…でも奴に攻撃は何一つ通らない。…“隷属の影”は面白いからシグナムやヴィータを洗脳したと言ってた。これは“隷属”は戦いをゲームの様に楽しんでいた、ということなのではないか?つまり“隷属”はこの“断罪”の様に“影”として戦うのではなくあくまでも一人の戦士として戦っていたのかもしれない。
しかし今回の“断罪”は指揮官だ。“憤怒の影”という別の“影”まで操って…。魔法攻撃は全く当たらない…。もしかして“影”の力が無いと倒せないのかな…?
でも“影”の力って…なのはみたいになるかもしれないし、アリサの様になるかもしれない。やっぱり…今回ばかりは…ダメ、なのかな…。
(…けて…たす…け…て…)
誰だろう…誰かが私に話しかけてくる。でも、この声どこかで聞いたことがあるような…。
(ねぇ…たすけて……たすけてあげるって何度言ったらわかるのよー!!)
わぁ!?急に大きな声で念話しないでよ…。助けてあげるって…一体君はどこの誰…なの…?
(私?私は“不屈の影”!さっき“断罪”が言っていた所在のわからない“影”の一つよ!)
なん…だと…!?