魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
≪MODE FALLEN SET UP≫
「何…!?」
白騎士が急停止した。むしろ少し下がっている。そりゃあ警戒するよね。だって…
「黒い球体に身を包んだ…だと…!?」
シグナムさんも驚いている。そう、これは私とレイジングハートが編み出した必殺技!
≪Burst≫
レイジングハートの掛け声を合図に私を身を包んでいた黒い球体がひび割れ、爆散する。
「…!その姿…」
「なのは……」
私のバリアジャケットは黒く染まり、その姿は完全に”隷属の影”に取り込まれていた時の私だ。シグナムさんの表情が強張る。それもそうだよね。シグナムさんにはいい思い出いないものね。でも白騎士も距離をとって、さっきまで程しゃべりかけてこなくなっている。
「この姿は私の中に残っていた僅かな”隷属の影”をレイジングハートが最適化してくれて実現した新たな力…!モードフォーレン。まだ安定はしないけど白騎士さん、貴方と対等にそして話を聞かせてもらえるようにするため、この力を使うよ」
「…忌々しい…」
「えっ…?」
「忌々しいって言ってんのよ!その姿が!」
「この姿が…?」
戸惑う私に、白騎士は再び間合いを詰めてくる。…この姿に忌々しいと言う程恨みを持っているのって…。白騎士の正体って…まさか、いや…でも…。
「行こう、レイジングハート…。ザンバー!」
≪ZAMBERMODE STAND BY READY≫
レイジングハートがザンバーモードへと変わる。ピンクの魔力刃をもつ大剣へと姿を変える。
「貴方が接近戦…!?」
この姿の私がこれを使うことを知らない…。やっぱり白騎士の正体は…あの子だ…!
ジャマダハルとザンバーがぶつかり合う。私は受け止める形になったが。このモードは私の近接格闘能力を底上げしてくれるので、意外と辛くはない。
「ザンバーは使えなくなっていたはず…なぜ?」
(このモードの時だけ、レイジングハートにザンバーモードの機能が追加されるんです)
「そういう事か…」
とシグナムさんの疑問にしっかりではないけれど答えながら、白騎士と鍔迫り合いを続けていた。
「念話しながらで私を止められるとでも…!!」
急に魔力が…上がった!?なんでこんな急に、それも大幅に魔力が上がるんだ?
「ごめんね…!集中するよ!ここカラね!」
しまった。声にノイズが入りだした。もう限界なのかな…。じゃあ、短期決戦だ!
「はあア嗚呼あぁ!!刀身爆発!!」
≪Burst Zamber≫
白騎士と私の間でレイジングハートの魔力刃が爆発する。これはフェイトちゃんが”隷属の影”を倒す時に使った技だ。ここではちょっと間を取るのに使わせてもらうよ!
「ぐっ!小癪な真似を!」
爆発が思った以上の効果を見せてくれた。白騎士の右膝が地面についたのだ。今がチャンス!
「スターライトォ…!」
≪Starlight Zamber Breaker≫
「ザンバーブレイカァァ―!!」
「何だと!?」
私と白騎士の距離は爆発のおかげで20mほど開いた。この距離からの収束砲撃はいくら強い白騎士でも避けるのは容易ではないはず。
この砲撃分の魔力をどうやって短時間で溜めたかというと、このモードを維持する魔力を全てにチャージにまわしたら一気に溜まったんだ。なので、この砲撃が終わったらモードフォーレンは解けてしまう。
そうこうしているうちに、ピンク色の砲撃は左側に避けようとした白騎士を飲み込み、大きな爆風が巻き起こった。
「近くにグラナードがあるんだぞ!なんて無茶を…なのは!!」
上からシグナムさんの怒号が飛んでくる。そういえば私の真後ろにグラナードがあるんだった。忘れてたよ。にゃはは。
「ごめんなさーい!」
「謝るなら真面目に謝れ!」
シグナムさんのごもっともなお説教を聞いていると、爆発の中心地にある煙の中から、ゆらりと立ち上がる人影が。白騎士だ。まだ…まだ倒せないの…?…倒す…?なんで私こんなに倒すことに躍起になっているんだろう。昔の私は倒すことを目的に戦っていただろうか…。もちろんそんなときもあるにはあるだろうけど、常にそう思っていたのか、という話だ。
「やってくれたわね…。なのはぁ…」
白騎士の辛うじて聞こえる声は息も絶え絶えといったところだった。やはり収束砲撃を受けたらさすがの白騎士も疲労はくるんだね。安心した。
「まだ、やりますか?もう貴方に戦えるだけの体力は無いように見えるけど」
「そんなのアンタも同じでしょ…!忌々しいあの姿じゃなくなっているし、魔力もかなり限界なんじゃないの?」
私のモードフォーレンは確かに解けている。しかし、魔力的に限界かといわれればそうでもないのが事実だ。
「私はまだ大丈夫ですよ。魔力的にも身体的にも。でも貴方は…もう限界でしょう?」
「…ホント、バカ魔力ね…」
私の心とは裏腹に戦いたくないような言葉を紡ぐ口。なんなんだろうこの違和感…。やっぱり”隷属の影”の影響が未だに強く残っているのかもしれない。
「こうなったら…奥の手よ…」
「えっ…」
そう言った白騎士は赤い魔力光に包まれ、身長が縮んでいった。
「変身魔法を使っていたのか!」
シグナムさんに言われハッと気が付く。そうだったんだ…。
縮んだ白騎士はシグナムさんほどだったものが私と同じくらいの背丈になり、急にこじんまりとした印象を与える。
「ここから…ここからよ…」
ブツブツと独り言を言っている、白騎士。そして突然、常に着けていた頭部甲冑を取ったのだ。
「いくわよ。なのは」
「…!?やっぱり、貴方だったんだね…」
ーSIDE OUTー
ーFATE SIDEー
この目の前にいる飄々とした男。時空保安局局長が言った白騎士がなのはを恨んでいるという言葉に私は答えを出せずにいた。
「まだ、わからないぃ?まあしょうがないのかなぁ、君はその時忙しく動き回っていたしねぇ」
「動き回っていた?ここ最近で私が忙しかったのは…”隷属の影”事件…!」
「お、じゃあなんで白騎士が恨んでいるか分かったかなぁ?」
「…もしかして、白騎士の正体って…」
「もう、そこまで考えがいったんだねぇ。流石フェイト・テスタロッサ!」
「うるさい!今私の中の白騎士候補は魔法を使えないはずなんです!でも白騎士は確かに魔法を使っている。でも、もしなのはに恨みを持つとしたらあの人しか…。」
「君は忘れたのかい?君が吹き飛ばした公園の近くの海から発見された謎の結晶型のロストロギアを」
「結晶型のロストロギア!しかし、あれは管理局が厳重に保管を!」
「別にあれは君たちの世界だけで見つかったものではない…!このリーリョでも見つかったんだよぉ!」
局長は何が面白いかはわからないが大笑いしながらそう言った。この世界でもあのロストロギアが見つかったのか…。だからここを拠点に。
「あのロストロギアはねぇ、魔力を持たない人間にぃ、魔力を与える力を持っているのさぁ!」
「なん…だと!?それじゃあ…あの人が魔法を使えるかもしれないということ…!?」
「さしずめ魔法石とでもいうかなぁ。あれはいいよ、うんいいものだぁ。ただの少女だったモノを、白騎士と言う復讐の悪鬼に変えてしまうんだからぁ」
再びニヤニヤとしながら話し始めた。
「ただの少女だった…じゃあやっぱり、白騎士の正体は…アリサ…アリサ・バニングス…!」
「せいかぁい!大正解だよぉ!」
「貴方は…!貴方という人は…!どこまで腐っているんだ!!」
アリサが行方不明になったのはこの人が病院から誘拐したんだ。アリサを!アリサを使って魔法石の実験をするために…!!
許さない…。
「許さないぞ!!」
「じゃあ、私を捕まえてごらんよぉ!君にならそれができるんじゃあないのかいぃ?」
やってやる…アリサを狂わしたこいつを…捕まえて見せる…!!
ーSIDE OUTー
ーNANOHA SIDEー
「やっぱり、アリサちゃんだったんだね…」
「なに…!?なぜバニングスが、お前が魔法を…?」
「シグナムはちゃんと驚いてくれているみたいね。なのは、アンタは別にそんなでもないのね」
「いや、驚いてるよ。シグナムさん同様なんでアリサちゃんが魔法を使えるのか、なんで保安局にいるのか。まだ何もわかっていないもの。ただ私にわかったのは、私の黒いバリアジャケットを見て忌々しいと言って、私がザンバーを使うのを知らないのは、私が”隷属の影”に取りこまれた直後に怪我を負い入院していたアリサちゃんかすずかちゃんだけだってことくらい。」
「全く知らないわけではなかったけどね。アンタのザンバー」
「私がアリサちゃんの手を切った後、痛がってる中で見たの?」
「少しだけね。まぁそんなことはどうでもいいわ…今重要なのは、アンタへの復讐を完遂すること!それだけよ!」
白騎士改めアリサちゃんが大きく叫ぶ。どういう訳かさっきからアリサちゃんは全く間合いを詰めようとしたり、そもそも攻撃しようとしてこない。
ここまでの話を聞くに、別に戦闘を止めようとはしていないみたいだけど。
「アリサちゃん…もし、もしこのまま戦闘を続けちゃうと、どんどん罪が重くなっていっちゃうんだよ?止めよう?もう戦闘なんて…」
こう私がアリサちゃんを諭した時、アリサちゃんから信じられないような言葉を言われた。
「そんなこと言って、あたしわかってるんだからね。アンタが口ではそんな事言っているけど心では微塵もそんな事思っていないんだってね!」
「!?な、なんでそう思うの!?」
「当たり前でしょ、だってアたしも”影”ノ力を使っていルんダかラ」
「そ、その声のノイズ!」
「…テスタロッサか?…そうか、わかった。どうもバニングスの様子がおかしいと思ったら…なのは!テスタロッサから連絡で奴には”影”が入り込んでいるらしい!」
ふと横を見るとシグナムさんがいた。フェイトちゃんもどうやら白騎士の正体に辿り着いたらしい。
「はい、今私もわかりました。アリサちゃん自身がそう言っていたのと、声に入るあの不快なノイズ。確かにアリサちゃんには何かしらの”影”が入り込んでいるようです」
「そうか…!」
「シグナム、降りてきタところ悪いンダケどこレまで通り私が望むのはなノはとノ一騎打チ。邪魔しないでモラエル?」
「…そう言われてもな、私とてただ見ているだけというわけにはいかない。」
シグナムさんは毅然とした態度でそう答える。ここまでずっと黙って見てくれていたんだもんね。さすがにこれ以上は…一騎打ちはダメだよね。
「一応高町もそう望んだため一騎打ちをさせたが、これ以上は流石に許可できない。まがいなりにも今お前はテロリストの仲間であることを忘れるな。管理局はテロリストの要求を呑んでしまってしまっては問題だからな」
「既に一回呑んデイるのはイイの?」
「だから、これ以上は呑んだことになるということだ」
どうやら、シグナムさん的には一回目のは私が望んでそうしたからアリサちゃんの要求を呑んだ内に入らないらしい。
「ふーん。じゃ、いいわ。このままいかせてもらうから」
そう言うと、アリサちゃんの周りの空気がガラッと変わった。何か…来る…!
「何をするつもりだ!バニングス!」
「つまり、シグナム!貴方を倒せばなのはと一騎打ちできるわけでしょう!ダカラあたしノ奥ノ手!いくわヨ!!」
アリサちゃんは両手に持っていたジャマダハルを背中の左右の肩甲骨辺りに取り付けた。一見するとロボットのブースターの様だ。
「アトはこウするダケ…!」
そしてジャマダハルの三本あるうちの中心の一本の刀身が抜け、剣となった。もう片方のジャマダハルからも中心部分の刀身が抜け剣となった。
「二刀流か。だがそうなったところで私に勝てるとでも?」
私もそう思っていた。二刀流で、さらにジャマダハルと比べると軽量化がなされているのはわかっていたが、それだけで勝てるほどシグナムさんは弱くない。それにここからはアリサちゃんにとっては二対一になるんだ。どうするつもりなんだろう。
「フォームチェンジ!天!」
とアリサちゃんが叫ぶと背中の刀身が二本になったジャマダハルが漢字の『天』を作るように開いた。しかしそのままでは『天』の下の線が無い、と思っていたら、背中から火が出て、アリサちゃんは背中に『天』を背負うようなバリアジャケットに変化した。
「アリサちゃんの背中に『天』が…」
「心なしかバリアジャケットの色も少し赤みがかったようだな…高町気を付けろ、恐らくあの姿は奴に入り込んだ”影”の力を解放する姿だろうからな。」
「はい、わかりました…!」
私とシグナムさんは眼前に両手に剣を携え、背中に天の字を持つアリサちゃんと戦う覚悟を決めた。もし”影”に意識まで乗り移られていたら、私のように乗っ取られていたら…助けなきゃ…!
「さア、第二ラウンドよ…二人とモ…!」
アリサちゃんはうつろな目でそう言った。
最後のアリサのフォームチェンジシーンわかりづらくてすいません…。
参考にしたバトルスピリッツの「剣豪龍サムライ・ドラゴン・天」を画像検索していただけたら完全にわかります。背中に炎で『天』と書いてあるのです。
わかりづらくて本当にすいませんでした。