魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
時空保安局打倒のため結成された、対保安局戦 第21部隊FATE。21部隊というのは、20部隊までが保安局側に全滅させられたからである。部隊名のFATE、これは部隊長に任命されたフェイト・T・ハラオウンの名前をとったものである。
部隊への任命式が終わり、なのははフェイトのところへ駆けて行った。
「すごいねフェイトちゃん、まさか部隊長だなんて」
「さっきリンディ提督から言われたんだけど、部隊長というのは名前だけで実際は中隊長みたいなものなんだってさ」
「テスタロッサ、だとしてもやることは同じだろう?」
「し、シグナム!そうですね。保安局の暴走を止める、これが部隊の目標です」
「あと白騎士って魔導士を保護?するだよね」
「うん、そうだよなのは」
「なのはは無理をするなよ、まだ体調は万全ではないのだからな」
「あうう…わかってはいるんですけど…」
なのはとシグナムの会話を聞くとわだかまりはなくなり、かつての関係に戻っているかのように思えるが、なのはの方が責任を感じ続けてしまっているため、未だにシグナムに対して壁のようなものを作ってしまっている。シグナムはむしろ前よりなのはのことを気にかけているくらいだ。
「じゃあ、指定された艦に乗りに行こうか」
三人で今回の作戦専用の次元航行戦艦『グラナード』に向かった。
「うわぁ、大きい戦艦だね」
「テスタロッサ、艦長は誰だか知ってるのか?」
「確か、リンディ提督だったはずですよ」
「そうだったか…確かに大きい船だ。今回の作戦専用の船なのだろう?余程上の人間は保安局が邪魔と見える」
「全長50m超の大型戦艦を専用で作ってしまうくらいだもんね、この部隊で保安局を倒すつもり満々だよね」
「私たちの手で、被害を食い止めよう!」
「「おおー!」」
心なしかシグナムは頬を赤らめていた。
「突然やるものだから…全く…」
なのはたちはグラナードに乗り込んだ。そして、時空保安局が潜伏しているとされている世界への時空転移の準備に取り掛かることになった。出発は3時間後の13時20分だ。
‐NANOHA SIDE‐
今私はグラナードのコックピットに来ている。次元航行艦とは違う次元航行戦艦の内装は見慣れたアースラとほぼ同じであった。後から知った話だけど設計した人が同じ人らしい。
コックピットはざっと見て回れたので、次は自分の部屋に行こう。そこで今の私の気持ちを整理しなくちゃ。このままじゃ作戦中に迷惑をかけちゃうかもしれない…また…迷惑を…。
自室へ向かう廊下を歩いていると、向かい側からはやてちゃんが歩いてきた。はやてちゃん、フルネームで八神はやて。”隷属の影”事件ではフェイトちゃんの次に迷惑をかけた相手だ。私はこの子の大切な家族の絆を一時的にとはいえ断ち切ってしまったんだ…。
などと考え込んでいるとはやてちゃんの方から話しかけてきた。
「やっほーなのはちゃん!…まだ本調子じゃなさそうやね?」
「にゃはは…そうだね、でも大丈夫作戦までには戻すから」
「そんな…無理せんほうがええよ…?結構あの”影”深くまで入り込んでたんやろ?」
「深くって言っても海馬?っていう記憶を司る場所に長期間謎の信号を出されていただけだってば」
「それを人は、重症って言うんよ」
「にゃはは、そうとも言う」
「そうしか言わへん」
はやてちゃんはシグナムさんやフェイトちゃんと違ってここまでの会話で笑顔を見せてこない。これはあえて笑わないようにしているのかな…?
「なぁ、なのはちゃん」
「なに?はやてちゃん」
「なんで私がここにいるか気にならない?」
「えっ…?」
そういえばはやてちゃんは今回の保安局の部隊には配属じゃなかった。なんでここにいるんだろう?シグナムさんの見送りかな。
「シグナムさんの見送りで来てたの…?」
「まぁそれもあるけど、私この作戦の救援部隊に配属されたんよ。その打ち合わせでなぁ、この戦艦に来てたんや」
「救援部隊?」
「そう、もしもなのはちゃんやフェイトちゃんの部隊が壊滅しそうになったり、予想外のハプニングとかで作戦の続行が難しくなったりした時に、応援で駆け付ける部隊や!もし、ピンチになったら、私たちに任せてな!」
「そうなんだ…。うん!もしもの時は頼りにしてるね、はやてちゃん!」
「うん!」
ようやくはやてちゃんが笑ってくれた。この笑顔はなんだか心がいたくはないな。でも、はやてちゃんに頼らないくらい頑張らなくちゃ…!
「ほな、任務が終わったらなー」
「うん、またねー!」
はやてちゃんは戦艦を降りて行った。救援部隊は本局で待機しているそうだ。もしものことがあったらすぐに迎えるように転送ポートも常に開けてあるらしい。
…そうだ。自分の部屋を見に行く途中だった。
先ほどの地点から、歩いて2分ほどの場所にあった。自動ドアが開き、部屋に入る。
内装は特に変わったところはない。よくある次元航行船とほぼ同じだ。違う点を挙げるとしたら、部屋自体が少々狭いというところだろうか。
「もしかしてアースラが特別大きかったとかなのかな?…そんなことないか」
少し狭く感じるけど、まぁ贅沢なんて言っていられない。これから保安局、白騎士と戦うことになるんだから。気を引き締めないと…!やるぞ!
「おー!」
「どうしたの、なのは」
「えっ…」
背後にいたのはフェイトちゃんだった。
フェイトちゃんの目、可哀そうなものを見る目だ…。