藍染が立つ!   作:うんこまん

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第6話

藍染が呟いた瞬間、ザンクは足元に何かがいるような違和感を感じた。ふと目を落とすと、

 

 

 

 

――――先日自分が殺した女の生首が右膝から生え、凝視していた。

 

 

 

 

「な…んだこりゃぁ…」

 

いままで自分が殺してきた者の声を聴き続けたザンクであっても、それは異常な出来事に変わりなかった。恐怖に戦くザンクに答えるように女が口を開く。

 

「何ってあなたが殺したんでしょう?そういえば質問に答えてなかったわね。首と胴が離れる気分だったかしら、怖かったわ…倒れ落ちる自分の体を見るまで何が起きてるかわからなかったけど痛みが引いていくと同時に意識も遠くなって怖くて怖くて堪らなかったわ…。」

「そうそう、でもそれ以上に君が憎くて次に会うときには殺してやると誓ったね。」

 

耳元で声がし、横を向くと左肩にも男の生首が生えていた。

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

 

次々と体の一部から生えてくる生首がこちらを見つめ壊れたように言い続ける。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

「会話が好きなんだろう?彼らは君と会話したいらしいんだ。相手をしてやってくれないかい?」

 

凄惨な光景を前にあくまで悠然と話しかける。一方、ザンクは数分前とは違い別人のように怒りを向け切りつける。

 

 

 

ザンクの予想に反し藍染の首がコロンと落ちるが、

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

「うわあああああああああああああああ!!!!」

 

殺人鬼は幻聴に耐えきれず奇声を上げる。

 

 

 

 

レオーネが到着したときには首と胴が離れ、この世の終わりを見たかのように虚ろな目をしたザンクの姿といつも通り何もなかったように立ち尽くす藍染だけだった。

 

 

 

 

「今回もアイゼンが任務を果たしたようだな。まったく、お前の働きには驚いてばかりだよ。」

 

アジトへと帰還したナイトレイドはボスへと報告を終え、各々が緊張を緩め日常へと戻ろうとする中藍染はボスに呼び出されていた。

居間から少し離れた縁側でナジェンダが酒を片手に月見をしているとミシミシと床が鳴る音がし、藍染がこちらを見て話しかけてきた。

 

「ここにいましたか、ボス。それで話とは?」

「おおアイゼン来たか。わざわざ呼び出したんだ他でもない任務のことだ。」

「私個人に…ですか?」

「ああ」

 

杯に酒を注ぎ、月へと向き直しボスが語りだす。

 

「エスデス将軍を知っているか?ブドー大将軍と双璧を成すといわれている若い将軍だ。だが奴は恐ろしく強い氷を操る帝具をもっている。」

「魔神顕現『デモンズエキス』…」

「そうだ。おまけに危険な思想の持ち主でな…弱者を虐げ拷問にかけたり、自ら戦争の火種を撒くような戦闘狂だ。」

「それを倒してこいと?」

「無論そんな無理強いはしない、お前はたしかに優秀だがエスデスは危険すぎるからな。あくまで監視だ、身の危険を感じたら即座に逃げて構わん。もちろんお前が嫌ならこの事もなかったことにする。どうだ?」

「構わないよ、彼女の帝具には少し興味をそそられていたんだ。この任務承ろう。」

「そうか、ではすまないが暫しの間奴の監視を頼む。」

「ああ、任せたまえ。」

 

ホッ、と安堵のため息を漏らしもう一つ杯を取り出し、藍染に渡す。

 

「では仕事についてはここまでにして酒でも飲もうじゃないか!」

「いや私は「ん?私の酒が飲めないっていうのか?」…いただこう。」

 

不承不承、杯を受け取りナジェンダが酔いつぶれるまで付き合わされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダのせいで危うく寝坊しかけた藍染はエスデス監視のため北へと向かっていた。

話によると、エスデス将軍は今北方異民族の征伐に行っているらしい。その北方異民族の王子で北の勇者と呼ばれるヌマ・セイカ、槍を持っては全戦全勝、凄まじい軍略を併せ持ち民の絶大な信頼を受ける。まさに帝国の脅威。彼の精強な軍隊は自国の要塞都市を拠点とし、帝国への侵略を強めていた。

 

「ゆえに北方征伐部隊を組織し、それを支配下においているのがエスデス…か。」

 

いつの間にかたどり着いていた北の大地の上空で藍染が呟く。自らの真下にはいくら北とはいえ微動だにできず全身氷漬けになっている兵士がいたり町そのものが凍っていたりしていた。藍染が氷と聞くと思い浮かべるのが自身と同格の隊長格であり、二度刃を交えた日番谷冬獅郎の存在だ。だが彼は隊長としてもまだまだ未熟で能力そのものも脅威となるには程遠かったが、目の前にある光景は少なくとも彼以上の氷雪系の能力をもっていると推測できる。

 

(能力だけなら…の話だが一応警戒はしておこうか。)

 

霊圧を辿り、エスデスと思われる人間がいる方へと趣く。

 

 

 


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