「今回の標的は、帝都で噂の連続通り魔だ。」
無事任務を遂行し、暫しの平穏を迎えたナイトレイドにボスから召集がかけられ次の任務を言い渡す。
「深夜無差別に現れ首を斬りとっていく。もう何十人殺されたかわからん。」
「その中の3割は警備隊なんだろ?強ぇな…」
「間違いなく、あの首切りザンクだろうね。」
「ん?なんだそれ?」
「知らないの!?ほんとド田舎に住んでいたのね。」
いつも通りタツミに強く当たるマインが説明する。
「首切りザンク。もとは帝国最大の監獄で働く首切り役人だったそうよ。大臣のせいで処刑する人数が多くて、毎日毎日繰り返し繰り返し命乞いする人間の首を斬り落としていったんだって。何年も続けてるうち、もう首を斬るのが癖になったそうよ。」
「そりゃおかしくもなるわな…」
「討伐隊が組織された直後に姿を消しちまったんだが…まさか帝都に出てくるとはな。」
「危険な奴だな。探し出して倒そうぜ!」
「まあ待てタツミ。」
無駄に燃えるタツミに対し、ブラートが頭に手をポン、と乗せ宥める。
「アニキ?」
「ザンクは獄長の持っていた帝具を盗み、辻斬りになったんだ。二人一組になって行動しないとお前危ないぜ?」
(今別の意味で危ない気がする…)
「ねぇボス、それでザンクの帝具が何かわかってるの?」
「残念ながら調査中だ。」
「あのぉ…そもそも帝具ってなんなんだ?」
ボスに尋ねるタツミの横にアカメ刀が振る。
「こういうのだ。」「わ、わかりません…」
「いい機会だ、タツミにも教えておこう。」
約千年前、大帝国を築いた始皇帝は悩んでいた。永遠に帝国を守っていきたい彼は武器や防具を遺した。伝説と言われた超級危険種の素材、オリハルコンなどのレアメタル、世界各地から呼び寄せた最高の職人たち。始皇帝の絶大な権力と財力は現代では到底製造できない48の兵器を生み出し、それを『帝具』と名付けた。帝具の能力はどれも強力で中には一騎当千の力を持つものもある。帝具を貸し与えられた臣下達はより大きな戦果をあげるようになったという。だが、500年前の大規模な内乱によりその半分近くは各地へ姿を消してしまった。
「…というわけだ」
「それが…その48の兵器の1つなのか?」
ナジェンダの話を聞き終わったタツミがアカメに向けて問い、それに対し頷いた。
さらにナジェンダがメンバーの帝具について話し出す。
一斬必殺『村雨』 この妖刀に切られれば傷口から呪毒が入り、即座に死へと至る。解毒方法はない。
百獣王化『ライオネル』 ベルト型の帝具。己自身が獣化し身体能力を飛躍的に向上させる。嗅覚なども強化され索敵も可能。
浪漫砲台『パンプキン』 精神エネルギーを衝撃波として打ち出す銃の帝具。使用者がピンチになるほど、その破壊力は増していく。
悪鬼纏身『インクルシオ』 鉄壁の防御力を誇る鎧の帝具。装着者に負担がかかるため、並の人間が身につければ死亡する。
千変万化『クローステール』 強靭な糸の帝具。張り巡らせて罠や敵を察知する結界にしたり、拘束、切断も可能な異名通りの千変万化。
万物両断『エクスタス』 大型鋏の帝具。世界のどんなものでも必ず両断できる。その硬度ゆえ、防御にも使用できる。
「また、奥の手を持つ帝具も存在する。インクルシオは素材に使われた生物の特質を生かし、暫しの間その姿を透明化できる。」
まあこんなところだ。とナジェンダが一区切りついたように息を吐く。
「ボス!俺には?」「はあ?あんたにも帝具があるとおもってんの?」
「そういえば聞いていなかったが、お前ら4人とも全員帝具をもていないのか?」
顔を見合わせ当然のようにないと答えるタツミ、サヨ、イエヤス。そこに藍染が口を挟む。
「恐らくだが、私の刀も帝具の一つだろう。」
「まじかよアイゼン!どんなやつなんだ?」
驚いたようにイエヤスが藍染に問い、それに応えるように刀を抜く。
「――――砕けろ『鏡花水月』」
すると部屋一面に霧が溢れだした。
「これは…」
「私の鏡花水月は流水系の帝具でね。霧と水流の乱反射により敵を攪乱させ同士討ちにさせる能力を持つ。あまり使わないが言っておかないと仲間も攪乱させかねないからね、丁度よかった。」
「なるほど、頼もしい限りだな。」
「たしかにこりゃ間違ってパンプキンでタツミを打ちかねないわね…」
「またあんなのくらったら今度こそはげるぞ俺…」
藍染が刀をしまうと霧が晴れた。
「さて、帝具についてはこのくらいにしておこう。ブラートの言うとおり二人一組で行動しようと思う。天が裁けぬ外道を…狩れ!」
再び、闇に溶け込む。
「ん~、辻斬りに加えて殺し屋も現れたときたもんだ。」
男がクツクツと笑う。ナイトレイドを視察しながら次の獲物を見つけたように。
「ここはまったく物騒な町だねぇ…愉快愉快。」
「ナイトレイド…さぁどの首から切って…!」
(あの眼鏡をかけた男…こっちを見て笑ってやがる。あの底知れぬ笑み…怖いねぇ。)
「だがそれでこそやりがいがある!気に入ったぜ兄ちゃん首洗って待ってなぁ…」
「…見つけた。」「へっ?」
ザンク狩りのため夜の帝都を歩いていた藍染が呟き、同行していたレオーネが頓狂な声を上げる。
「ザンクを?いくらなんでも早すぎないか?」
「猿みたいに高いところに上ってるんだ。嫌でも目に入るさ。」
「どこどこ…ってあ~ほんとにいた。でも猿っていうよりゴリラだよあの面と容姿は。」
「とりあえず先に行ってるよ」「えちょ…もういないし」
瞬時に隣から消えた藍染を追うようにザンクのもとへ向かうレオーネ
「君が首切りザンク…で間違いないかな?」
「驚いたねぇ…こんなに早く着くなんて思わなかったぜ。ああ間違ってねぇぜ、俺の事を知ってるなら俺がしたいことも知ってるよなぁ…?」
「私の首がほしいのかい?」
「ああたまんなく欲しいぜぇ…てめえのような極悪非道なやつの首をな…!!」
切りかかるザンクに対して全く動じずに右手を前に出し刃を受け止めた
「あぁ?」「こんなものかな?」
すぐさま藍染から距離をとり思考を廻らす
(スピードだけかと思ってたが俺の刃を素手で受け止めるだとぉ?おいおいとんでもねえ化け物じゃねえか。一体全体どうしたものかねェ…)
「ハッ、愉快愉快。ちょっとばかし予想を超えちまったが問題ねぇ。俺の法具は『スペクテッド』っていってなぁ「洞視、遠視、透視、未来視、幻視の五視を持つ目の形をした帝具」…なんだしってんのか、せっかくお喋りできると思ったのに残念だぜ。」
「なら話をしようか。実は私も帝具使いでね、この刀をみてくれないか?」
徐に刀を抜き言い放つ。
「砕けろ『鏡花水月』」