藍染が立つ!   作:うんこまん

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第18話

 時は加速し荒れ果てた荒野を三頭の馬が駆ける。その馬にはイェーガーズのウェイブ、クロメ、ボルスが乗っていた。

 

「まさかウェイブ君の回復がここまで早いとはねぇ…」

「魚食いまくってたらいつの間にか治ってましたよ!」

 

 ワハハと笑うウェイブ。ボルスは奇特な治癒力に他人からは窺えないが神妙な面持ちでいた。クロメは依然として半目で前を見つめている。

 

「二人ともそろそろ引き締めないとコロッと死んじゃうよ」

「おっといけね」

「ナイトレイドかぁ・・・」

 

 彼らは現在帝都最強の人殺し集団ナイトレイドの鎮圧及び粛清のため、一員であるナジェンダとアカメを目撃したとの情報を基にエスデス、セリュー、ランはナジェンダを。そしてこの3人はアカメを追っている。暗殺者が顔を表に出すなど普通ならありえないと判断するのが妥当だろう。だが罠だとわかっててもこの機を逃すわけにはいかず、エスデスはわざわざ罠にかかることにした。

 

「私なんかで勝てるのかな」

「大丈夫ですよ。俺もインクルシオと戦ったときは相手が致命傷を受けてると油断してましたが、今回は徹底的に潰します。前よりも強くなったし問題ないです!力を合わせればきっと勝てますって!」

「なんて調子の良いこと言ってるけどウェイブが一番足引っ張りそう」

「なにおうっ!!」

 

 クロメと言い合ってるウェイブを横目に少し感謝する。いくらグランシャリオを纏おうとインクルシオに勝てるとは思えない、そう内心ではウェイブもわかっていてボルスを励ますために嘘をついてまで元気づけてくれたのだ。たとえ負け戦だとしても誰かが倒さない限りナイトレイドは活動を止めない。誰かがやらなければならないなら自分がやろう、いままでだってそうだった。どちらにせよこんなところで死ぬわけにはいかない。

 決心するボルスの目先に案山子が移る。ウェイブも気づいたようで2人に声をかける。

 

「おい前方に何かあるぜ」

「かかし…?」

「罠だったら大変、用心して調べよう」

 

 ボルスから順にウェイブ、クロメと馬を下りて案山子に近づく。本来田や畑などに設置され害獣を追い払うための人影を模したそれは、妙に筋肉質で上腕二頭筋を強調したポーズはダブルバイセップスと呼ばれるマッチョと連想したら思い浮かぶようなポーズであり、荒野に堂々と立つその姿は不自然極まりないといった様子だ。

 

 

 

風を切る音が鳴る。

 

 

 

 どこかしらからクロメに向かって放たれた弾丸は一直線に彼女の頭部を貫こうと突き進む。

 本人もそれを弾丸とは分からずとも危害を加えるものと察し、その場を離れることで回避しようとする。そしてそれは正しく、自分がいた場所に粉塵が舞う。

 

(敵…!)

 

 コンマ1秒で判別し、鉛玉が来た先を睨む。

 それと同時に案山子もミシリと音を立てる。中から長身の男が飛び出し、狼牙棒を片手にクロメを襲う。

 

「クロメ!あぶねえ!!」

 

 誰よりも仲間思いのウェイブが即座に反応し、クロメの前に駆け寄る。グランシャリオを呼び出す刀の鞘で一撃を凌ごうとするが、相手の予想以上の力に体ごと遠くに吹き飛ばされる

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

「ウェイブ君!」

 

 ボルスの声も空しく遥か彼方へ飛ばされたウェイブ。案ずる暇もなく次々と人影が現れる。

 

「狙撃にはしくじったが戦力を1つ…かつ標的でもない奴を吹き飛ばせたのは大きいな」

「ナイトレイド…?しかもこれは全員!?東は全くのフェイクだったんだね」

 

 両者が睨み合い、火蓋が斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロメにボルス。イェーガーズの中でもお前達は標的だ。覚悟してもらうぞ」

「数えきれないほど焼いてきたから刺客に狙われてもしょうがないと思ってる…でも私は死ぬわけにはいかない!」

 

 自らの帝具。煉獄招致『ルビカンテ』を背負い、繋がれた銃部をナジェンダに向ける。一触即発の緊迫した空気が漂う中、そこにいた誰もが予想できなかったことが起こる。

 

 ナイトレイドの上空にどこからともなく巨大な氷塊が作り出される。重力に逆らうことなく真下にいるナイトレイドを襲うが間一髪全員避けきる。

 その場が凍てつくように蠱惑的な声が響く。ナジェンダ以外のナイトレイドもすぐに現状を把握する。その声の持ち主こそが彼のドS将軍エスデスだろうと。

 

「よく言ったボルス。死ぬことはないだろう、こいつらを全員殺して終わりだ」

「えっ…隊長!?東にいったんじゃないんですか!?」

「お前達にはそういったな…いいことを教えてやろう、敵を騙すにはまず味方からだ」

「「えぇ…」」

 

 自信満々に論説するエスデスに見事騙されたクロメとボルスは二の句を継げれずにいた。2人と話していたエスデスがナジェンダのほうを向きなおす。

 

「随分久しぶりだな、ナジェンダ。右腕はどうした?」

「…お前が凍らせたんだろうが」

「おや?そうだったか。昔の事だったので忘れてしまったよ。なあに、心配することはない。」

 

 

 

「お前の仲間もろともこの世からも消してやるよ」

 

 

 

 ドスをきかせた低い声に怒りを露にした表情からは憎悪に満ちた眼光が窺える。田舎でぬくぬくと育ってきたタツミ、サヨ、イエヤスの3人はいままで感じたことのない目が合うだけでぞっとするような感情を覚える。それこそが被食者から見た捕食者の姿だとも分からずに。

 だが、それを真正面で受けていたナジェンダは決して臆さず人間でないスサノオはもちろん、アカメやレオーネも歴戦の猛者。動じることなく敵の初動を逃さずに睨み返す。

 それに高揚感を感じたエスデスが歯を剥き出しに妖艶に微笑む。

 

「帝具戦の始まりだ、全員生かして返さんぞ」




キャラ多いと動かしにくいですね。次でやっと主人公登場かな?

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