偽ナイトレイドを狩り終え、タツミはアジトに帰還しメンバーにブラートの死を告げた。
「そうか…ブラートがやられたか…。」
「俺が…俺がもっと強かったらこんなことには!!」
「…くそっ!!!」
イエヤスが自らの力不足に耐え兼ね広間から出ていき、心配そうにサヨが追いかけて行った。
涙を堪え、歯を食いしばるタツミにアカメが声をかける。
「あまり自分を責めすぎるな、ブラートもタツミもよく戦ってくれた。おかげで任務も果たせたじゃないか。」
「でも…。」
「…タツミ君。いま君がすべきことはそんなことじゃないだろう、彼の死を無駄にしないためにも強くならなければならない。とりあえず今日は疲れただろう、ゆっくり体を休めたまえ。」
藍染がそういうとタツミは寝床へと向かっていった。
「…わかってるとは思うが、我々ナイトレイドは革命軍の要でもある。多くの命を犠牲にしてでも生き残って大臣を打ち倒さなければならない。今一度聞いてみよう。お前らにその覚悟があるか?」
ボスの問いかけに間をおかずその場にいた全員が頷く。その返答に満足げに微笑み、その日は解散となった。
「誰かあたしと訓練しなさい!…ってなにやってるの?」
翌日、傷を完治したマインが訓練所に駆け込み叫ぶがそれに応える者はおらず、各々忙しそうにしていた。タツミ、イエヤス、ラバックはそれぞれアカメ、サヨ、レオーネを上に乗せ腕立てをし、藍染はなぜか書道をしていた。
「こいつ等いつまでも鍛錬やってるから手伝いをな。」
「…装備してみて分かったけどインクルシオは凄え勢いで体力を消耗する。兄貴みたいに長時間付けられるように体を作らないと…!今のままじゃ透明化だって一瞬で終わっちまう。」
ブラートの帝具であるインクルシオは竜船での戦いでタツミに託されていた。タツミの言葉にマインは少し関心したように頬を染め、恥ずかしげに話をそらす。
「ラバの汗まみれは珍しいわね。」
「2人に感化されてさすがの俺も頑張らなきゃと思ったわけよ。」
「かっこつけてるけど腕立て回数タツミの半分以下だからな。」
「それは仕方ない、私とレオーネでは体重に大きな差がある。」
刹那、空気が凍り、アカメ以外絶望したような顔をし藍染すらも筆を止めていた。静寂はアカメの頭に振り下ろされた鉄拳により破られるが、鉄拳を受けた本人は不満げに涙目になりながら頭を押さえている。
「で、イエヤスも腕立てしてるの?あんた無駄に腕力あるんだからそれ以上する意味あるの?」
それを聞くと腕を伸ばした状態で静止し、数秒後確信したように口を開く。
「…それもそうだった…!」
「今頃気づくなよ!」
サヨの無慈悲な頭部へのツッコミにぐぇ、と声を漏らしてから地に伏す。その場景に呆れながらも一番理解できないことに耽る藍染に声をかける。
「…あんたは何やってるの?」
「意臨だよ。」
「…なんで?」
「まあ趣味だからね。」
そういう藍染が書く字は素人とは程遠く、名人の域に達するほど丁寧で力強いものだった。マインが書道などに興味もなく再び話をそらす。
「あんたは鍛錬しないの?まあしなくても十分強いだろうけど。」
「する必要がない…とまではいかないが相手が将軍クラスでもない限り負けるつもりはないからね、それに僕はどちらかというと研究者タイプなんでね。」
「ハッ!言うじゃない。だったらその自惚れ叩き直してあげるわ、あたしと訓練しなさい!」
「…かまわないよ。」
そうして始まった2人の訓練は何故かマインの水鉄砲をひたすら藍染がよけるという一方的な虐殺…のはずだった。
息が切れ、ぐったりとした状態で横になっているマインと先ほどのように書道をしている藍染を含めたナイトレイドのメンバーの前にボスであるナジェンダが現れる。
「お、ここにいたかサヨ、イエヤス。お前らにとっておきの帝具があるんだ。」
そういいボスがサヨに指輪、イエヤスに戦斧を渡す。
指輪の帝具、水龍憑依『ブラックマイン』。水棲の危険種が水を操作するための器官を素材としている。装着者は触れたことのある液体なら自在に操ることができ、液体を様々な形に変えて攻撃手段として使える。ただし、液体を自ら生み出すことができるわけではないので、使用できる液体が無い場所では無力。
斧の帝具、二挺大斧『ベルヴァーク』。使用するには人並み外れた膂力を必要とするが、その分凄まじい攻撃力を持つ。中心から2挺の斧に分離させることも可能で、投擲すると勢いの続く限り敵を追跡し、打ち倒す。
「綺麗な指輪…。」
「おおおお!これほしかったんだよ、もらっていいのか?ボス。」
「ああ、運がいいことにブラックマリンはサヨに適合してるし、ベルヴァークもイエヤスの膂力ならつかいこなせるだろう。」
「「ありがとうボス!」」
一礼すると2人とも帝具を見つめ満ち足りたように自分の世界に閉じこもった。それを見てナジェンダもそれを見て嬉しげにしながらアカメの方を向く。
「アカメ。私は三獣士の残りの帝具を本部に届けてくるから留守は頼んだぞ。作戦は“みんながんばれ”だ!」
「だいたいわかった。」
「わかるのかよ…。」
納得いかなそうな顔をしているタツミをよそにボスが話し出す。
「本部へ行く目的はメンバーの補充も兼ねている、即戦力でこちらに回せるとなると期待は薄いがな。」
それを聞いてタツミとイエヤスが苦そうな顔をする。彼らなりにブラートの死に責任を感じているのだろう。
「お前たちが戦った三獣士は帝国最強の攻撃力を持つエスデス軍の中軸だ。そいつらを全員撃破してかつ帝具を3つ奪取してきた、いくらエスデスが無双でも軍の弱体化は確実だ。お前達は強いし、よくやっているさ。」
「ブラート君は言ってたよ。タツミはまだ青いけどまだまだ強くなるし、イエヤスも判断力は欠けるものの力は十分にある。2人とも経験を積めば俺を超える男になる、とね。」
藍染のフォローに満足そうに皆に後ろを向き歩きながらボスが言う。
「自分を誇れ、そして生き延びてブラートが見込んだ男になってみろ。」
「…ああ!」「言われずともだぜ!」
次話あたりからオリジナル要素強めていきたいですね、設定ガバガバですけど。