「くそ、なぜ勝てない。俺こそが、俺こそが神の一手を極めるというのに。」
男は打ちのめされているようだ。
「明日の御前試合はなんとしてもあやつに勝たなければ。いざとなれば・・・・・・」
またあの対局なのかな。私は不思議と男の感情に入れ込んでいる。
そしてその対局。私は以前にも見ているから結果は知っている。
「だめだ、どうあがいても勝てん。あそこの石をずらせれば。」
なんで、そんな反則をしようとしているのだろう。
「勝たなければ、俺は明日殺されるそうなるくらいならば・・・・・・。」
対戦相手の気迫とともに男の気迫が伝わってくる。
そっか、殺されちゃうのか。当時って本当の意味で命かけてみんな囲碁を打っていたんだね。
なんてさめた感じで私は見ている。
結果的には彼は反則をし、指摘される前に逆にイチャモンをつけ勝利をもぎ取った。
しかし、次の対局であっさりと負け彼は消えてった。
悔しかっただろうな。反則なんかしたくなかっただろうに。結局それが後を引いて負けちゃうし。
最近良く変な夢を見るなぁ。
たいていそういう夢を見た日は頭痛がひどくなり眠りが浅い。
最近ヒカルの親が、ヒカルが六本木で良く見かけられるとのことで少し心配しているとの事を聞いた。
なぜか私に一回様子を見に行ってきて欲しいなんて頼まれちゃうし。
まあ、どうせ三谷君のお姉さんの所でインターネットだろうけど。
放課後、こっそり後ろから付いていく。部活?今日は筒井さんの用事があるとかで一応休みだし。
まあ、目的地は分かっているからいいんだけどね。
うん、万が一ってことがあるし。
え、ストーカー?いや、ストーカちゃうよ。親公認だし。
案の定、三谷君のお姉さんのところだ。
「こんにちは。三谷君のお姉さん。」
一応、三谷君から説明してもらっている。
「ああ、弟が言ってたアカリちゃん。」
向こうも気さくに話してくれる。
ヒカルがお世話になっていますなんて、挨拶もしておく。
ちょっと世間話して、目的は達成したしもういいかと思いながらも
せっかくここまできたし、ヒカルの打っているところが見たいと思ってこっそり後ろから近づく。
ヒカルはものすごく集中しており、肌がピリピリするような錯覚を受ける。
相手も相当強いらしく、
すごい碁だな・・・・・・。
え、そこに打つの!
そんな手で防げるの!?
などと思いながら画面を見続けていると
頭が、ガンガン痛くなってくる。
サーーーーーーイーーー、フ#ワ¥$#サーーーイーー。
周りを見回しても誰もいない。
ココデアッタガ、1000年め・・・・・・・
知らないよ、だれなの、さい?って。
そうこうしているうちに、ヒカルが優勢で勝負もほぼ決まりかけていたので、
一言三谷君のお姉さんに断って倒れそうになるのに耐えながらも、急いで店をでた。