ヒカルの傍観者   作:dorodoro

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第5話

男子団体戦。

男子は筒井さんを含め確実に勝っていく。傍目からみても海王中と葉瀬中の実力が突出しているのが分かる。

やっぱりヒカルは強い!いや、ヒカルに引っ張られるようにみんな強い。

ああ、団体戦いいな。私もみんなで協力したらもっと強くなれるのだろうか。

お昼に部員全員で私が作ってきたお弁当食べながら、囲碁話に花を咲かせる。食べ終わった後は時間の限りみんなで囲碁を打ったりした。

 

破竹の勢いで他校を倒し、予定より早い時間で海王戦が始まった。

ヒカルの相手は、あの入学後に声をかけて来た子だ。塔矢アキラ君というらしい。

非常にモテそうなイケメンだ。イケメン度ならヒカルも負けていないけど。

彼は父親がプロらしく、実力がありすぎてアマチュアに出るなとまでいわれた程強いらしい。

ヒカルにがんばってねというと、一言「おう!」とだけ言い、余裕のある表情で席に向かった。

その背中から不思議とヒカルが負けるところが想像できなかった。

 

あれは、武者震い?

トウヤ君の碁笥を持つ手が震えている。

私はそれを見て、そこまで本気で打てるなんてうらやましいと思った。

私といえば、緊張するまもなく何がなんだか分からないうちに終わっていたので尚更だ。

 

肝心の囲碁の内容はといえば、

副将の三谷君が相手を振り回し、攻めに攻め続けて最後まで攻め抜き何とか半目勝ち、

三将の筒井さんがヨセで怒涛の追撃をするも半目負け、

どちらも最後まで見ごたえのあるすばらしい対局だった。

 

いやおうなしにみんなの視線が大将戦に集まる。

ヒカルが優勢だ。噂通りアキラ君は強い。ヒカルもライバルだとか言っていたのもあながちうそじゃない。

でも実力差は明らかだ。心なしかヒカルの表情にもまだ余裕があるように思える。

中盤からアキラ君が仕掛けても、ヒカルはそれをかわすどころか正面から打って立つ。

終盤に入りアキラ君が耐えるも実力差どおり差が開きだす。

誰もが固唾を飲んで、その一手一手を見つめている。

 

「負けました。」

 

ついにアキラ君が投了した。

本当にすばらしい対局だった。少し前の自分なら見ても何をやっているかわからないレベルのものだったけど。まあ、今でもはたしてどこまで理解しきれたのか。

本当に大会に出ておいてよかった。

なんか先にプロの約束がどうとか言っていたり、気になることを言っているけど、

私が打ったわけではないのに私事のように嬉しかった。

みんなおめでとう。

 

 

 

 

 

 

 

パチ、パチ

大会が終わった後、大会の熱気にやられたのか気が付けば最近家でも囲碁を打っていることが多い。

ヒカルのおじいちゃんにねだったら、使っていない二つ折りのお古をくれた。

流石に一万円しないといっても親は意外と渋るものだ。

 

気が付けば、1局終わっている。でも誰かと打っているわけではないはず。

おかしいのは分かっている。気が付くと誰だかわからない人と打っている。

いや、打っているのは私だ。私が二人分並べているのだから・・・・・・・。

ああ、頭は重いのにふわふわする。何なのだろう。

 

 

ヒカルは最近インターネットに夢中のようだ。

暇さえあれば三谷君のお姉さんにお願いしてやらせてもらっている。

迷惑かけていないといいけど。

家にも最近パソコンが来てできないこともないけど、難しそうだしな。

あまり興味がわかないからやっていない。

ああ、それにしてもヒカル大丈夫かな、心配だな。

最近は落ち着いているけどたまに不思議なことしだすし。

今度ついていってみようかな。

 

 

 

 


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