ヒカルの傍観者   作:dorodoro

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第31話

家に帰って、とりあえずさっきの悩みはしまっておいて、さっきの対局の検討をする。

内容は覚えているけれども、最後はわからないのでネットで調べてみる。

結果的に、あの後すぐ塔矢先生が投了したみたいだ。本当に危なかった。

まあ、見られていようが問題ないとは思うけど。

幽霊さんと話せるようになったので、検討しながらいろいろと話す。

なんでも、昔は初代本因坊に乗り移っていたって、ますますヒカルに伝えなきゃいけない理由が増えていく。

初代本因坊の幼名は虎次郎と言うらしい。

虎次郎さんのときは、何事もなく最初から話せていたそうで彼が残した棋譜のほとんどは佐為が打ったものらしい。

でも、何で私に憑いたのだろう。どうせ憑くならヒカルに憑けばよかったのに。

そうしたら、そうしたら・・・。ヒカルは他の人を誰も見なくなっていたかもしれないな・・・・・・。

結果的に私に憑いて良かったのかも。

ちなみに、ヨセに入るところで、一手変えるとsaiの負けだったと発見したとき、佐為は大いに驚いていた。

 

考えたくないことに目を背け、そんな私に自己嫌悪しながらいつもの様に幽霊さんと対局する。

今までと違って、検討も話しながらできるから楽だ。

そこで、幽霊さんが私以外、特にヒカルや塔矢先生と打ちたいという話をしてきた。

うーん、でもなぁ。どうしたら良いのだろう。

ヒカルはともかく、塔矢先生だって口は堅いだろうけど信じないだろうし。

とそこで、うん、ヒカル?そういえばインターネットなら。

家のパソコンへ行く、家族共用なのでちゃんと許可を取ってから座る。

「アカリ、この箱で打つのですか。あの者がしていたように。」

「そう、ヒカルが打っていたように、前にも説明したけどいろいろな人と打てるよ。」

「それはすごい、早く打ちましょう。」

うーん、佐為の名前どうしよう。saiではヒカルとかぶっちゃうし。

いっそのことsyodaihonninnbou、うーん何か良い名前ないかな。

torazirouもいいけど、fuziwaraの方がいっそのこと分かりやすいかな。

できれば、ヒカルに伝わるほうが良いな。

同じ名前も登録できるみたいだけどどうしよう。

きっとヒカルも望んでいるだろうし、saiにしちゃおうか。

佐為に聞いてみると、やはりsaiのほうが良いらしく、考えるのがめんどくさくなってsaiに決定した。

本人が同じように打つって言ったし、良いよね。なんでヒカルがそんな打ち方、いや、そこまで佐為の打ち方を知っているのかは疑問が残るところだけど。

 

他の人と打っている場面を見ても参考になる。

やはり、ネットでは塔矢先生と打って以来、再開したのかと誰もが誤魔化されている。

疑う人がいない以上、本当に打ち筋は同じなのだろう。

明らかにプロ級と思われる人と打っても寄せ付けない。

ヒカルが気が付くと良いけど。

 

 

翌日、緒方先生に誘われて再度塔矢先生のお見舞いに行くことになった。

緒方先生のご自慢のMAZDAのRX-7という、車に乗せてもらう。

かっこいいから高いのだろうな。これに乗せて彼女とドライブしているのか。

なんてどうでも良いことを考えていると、

「君はsaiを知っているか。」

え、緒方先生からsaiの話が。ネットですごく強くて有名ですし、研究会で話題に登っていたのでそのくらいだと無難に答えておいた。

ついでに昨日の対局も見たと伝えておく。

「実は、進藤がsaiではないかと疑っている。」

うん、当たっています。

でも男と男の約束とか言っていたし、saiはたぶんこの佐為でもありそうだしな。

一応、打ち筋が似ていますが似ているだけですし違うのではと答えておいた。

それっきり、緒方先生はsaiについて考えているのか黙り込んでしまう。

塔矢先生の病室の前に行くまでずっと黙り込んだままだった。

 

 

塔矢先生の病室に付くと、中から声が聞こえてくる。

この声は、ヒカル?

その声を聞いて、緒方先生がノックをしようとしていた手を止める。

「saiとの対局は叶うか分かりません。」

「だが、昨日もあれから打っていた様だが。」

「え、本当ですか。パソコンお借りしていいですか。」

という、本当に驚いたという声が聞こえてくる。

そこまで聞くと、緒方先生が乗り込む。

「進藤、やはりsaiと何か関係があるのだな。」

ヒカルは、少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を戻し、

「関係ないです。さようなら。」

と言って、忍者みたいにさっと病室から出て行ってしまう。

緒方先生が、「進藤」と叫んで急いでヒカルを追って出て行ってしまった。

私はと言うと、ヒカルを追っかけても追いつかないし、言いたくないことは絶対言わないのは分かっているので塔矢先生にお体の状態を聞く。

私が、病院なのに騒がしくなってしまって申し訳ないですと言ったところで緒方先生が戻ってきた。

あれ、アキラ君までいる。

進藤が対局を持ちかけてきたのかなど、saiについて緒方先生が聞くも塔矢先生は知らないの一点張りだった。

男と男の約束ってとっても重いんだななんて思ってしまう。

塔矢先生も口が堅い人なので、アキラ君が早々に白旗を上げた。

 

えっと、始めの話から、ヒカルが佐為の存在に気が付いたと言って良いんだよね。

結果的に良かったのかな。

佐為とヒカルの対局が叶うといいな。

うまくいけば、塔矢先生とも緒方先生とも叶うかもしれないし良かったのかな。

なんか、もうヒカルに言わなくても良いかな?

 

 

 

 


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