雲は遠くて   作:いっぺい

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26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (5)

26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (5)

 

「わたしも、前に、美樹ちゃんちの法律事務所で、

アルバイトさせていただいわよね。

そのとき、感じたけど、法律事務所って、

社会の縮図(しゅくず)にみたいな気がしたわ。

美樹ちゃんちの法律事務所は、ほんと、

知的な感じで、センスがあって、お部屋もきれいで、

優(やさ)しくて、すてきな、お姉さまやお兄さまばかりで、

居心地(いごこち)も、最高だったわ。

また、アルバイト、させてね、美樹ちゃん」

 

「こちらこそ、よろしくだわよ、真央ちゃん」

 

「美樹ちゃんはね。

そんな環境の中で、育ってきたんだもの。

それで、

世の中、社会の仕組みとか、よく知っているし、

理解できるのよ。

人の気持ちの、機微(きび)とでもいうのかしら、

そういうものも、

わたしなんかよりも、よくわかっているし…。

美樹(みき)は、

人の 外面(がいめん)からは、決して、わからないような、

微妙(びみょう)な 心の動きとか、

物事(ものごと)の趣(おもむき)というのかな、状況(じょうきょう)とか、

察知(さっち)いたするの、特技(とくぎ)なんだもの!」

 

「そうかしら、真央(まお)ちゃん。自分では よくわからないな!」

 

「うん、美樹は、妙(みょう)に、オトナの、ところあるもん。

たぶん、

そんな、法律事務所という、特殊な家庭 環境(かんきょう)

の中で、

美樹は 育(そだ)ってきたからなのよ。そんな環境のせいで、

いつのまにか、

美樹ちゃんは、その魅力的で、少女のような、あどけなさとは、

なんというのかしら、

アンバランスで、どこか、つり合(あ)いがとれていないような、

妙(みょう)に、悟(さと)りきっている オトナの女性の、

考え方が身についているのよ、きっと…」

 

「アンバランスで、悪(わる)うございましたわ」 と 美樹。

 

「美樹ちゃん、ごめんなさい。でも、そんな、美樹だから、

バンドのリーダだって、立派に 務(つと)まるのよ!

わたしは、いつだって、美樹を応援(おうえん)してるんだから!」

 

「ありがとう!真央ちゃん!わたしも真央ちゃんが大好き!」

と美樹は、

いいいながら、瞳(ひとみ)を 潤(うる)ませる。

 

そんな会話に、4人が、声を出して、わらった。

 

「ははは。たしかに、人間のもめごとの、ほとんどは、お金。

お金に 纏(まつ)わることばかりだし…」

 

そういって、松下陽斗(まつしたはると)が わらった。

 

「人の欲望(よくぼう)には、際限(さいげん)がないとか、

よく、いいますもんね」

 

陽斗(はると)の 隣(となり)にいる 野口(のぐち) 翼(つばさ)が、

そういって、若者らしく 微笑(ほほえ)む。

 

「お金は、時(とき)には、恐(おそ)ろしいものだわ。

その人から、地位でも、名誉(めいよ)でも、信用でも、

家族とか、愛や友情でも、奪(うば)いとってしまうんだから」

 

いつもは、明るい 美樹が、ちょっと 暗い表情になって、そういう。

 

「大丈夫(だいじょうぶ)よ!美樹。そんな悲しいこと、

考えないの!いつも 元気な、美樹らしくないわ!

美樹が、いくら、お金持ちになっても、

私は、いつまでも、美樹の 親友でいるつもりなんだから!

美樹は、お金なんかより、

大切なものがあることを、よく知っている、いい子だもん!」

 

小川真央(おがわまお)が、そういって、声を出してわらう。

 

「ありがとう、真央(まお)」 といって、美樹は、真央の手を

固(かた)く 握(にぎ)った。

 

≪つづく≫ 


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