雲は遠くて   作:いっぺい

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16章 地上200mの誕生パーティー (4)

16章 地上200mの誕生パーティー (4)

 

「純さん、信也さん、岡村さん、高田さん、

ちょっと、お邪魔(じゃま)しても、よろしいですか?

きょうは、このような、すばらしいパーティーを、

ありがとうございます」

 

そういいながら、純たちのテーブルに近づいてきたのは、

理工学部1年、19歳の、森隼人(もりはやと)だった。

 

「よお、森ちゃん、そこの席で、よかったら、どうぞ」

 

と、ていねいにいって、森隼人に、空いている席を、

純は勧(すす)めた。

 

「純さん、ありがとうございます。

このお店、ボーノ(Buono)って、純さんの企画だそうですね。

純さんらしくって、センスもよくて、すばらしいお店ですよね」

 

森隼人は、純と向かい合う席に座(すわ)ると、

人懐(ひとなつ)こそうに、わらった。

 

「お褒(ほめ)めの言葉を、ありがとう。

森ちゃんや、森ちゃんのお父さまも、

この店を使ってくれているそうじゃないですか。

ありがとうございます。お父さまにも、よろしくお伝えください。

森ちゃんの、お父(とう)さまの会社も、

順調に、店舗(てんぽ)も増やして、

業績(ぎょうせき)も伸びているようですよね」と、純がいった。

 

「ええ、おかげさまで、純さんの会社のモリカワみたいに、

大都市を中心にして、店舗を拡大していくようです」と森隼人。

 

森隼人の父親は、森昭夫といって、45歳の実業家であった。

CDやDVD、ゲームや本などの、レンタルや販売の店を、

東京や大阪などの大都市を中心に、経営している。

ネット販売もしていた。

英語のフォレスト(Forest)という名前の会社と店舗で、

森という意味であった。

 

「森ちゃんのところと、うちとでは、業態(ぎょうたい)というか、

経営内容が、まったく、違(ち)っていて、

よかったですよ。外食産業と、ソフトの販売会社とでもいいますか。

場合によっては、手ごわい、強力な、

商売上のライバル、競争相手だったかもしれませんからね。

あっはっは」と森川純。

 

「まったくですよね。ぼくは、純さんとは、いつまでも、

仲よくしていただけたらと、思っているんですよ。

純さんことは、よき先輩(せんぱい)だと、

常々(つねづね)、尊敬したり、感じていますから」と、森隼人。

 

「森ちゃんも、女の子のことでは、かなり、

修行(しゅぎょう)を積(つ)んでいるようだよね」と高田翔太がいった。

 

そこへ、

「みなさん、ここの席(せき)、空(あ)いていますでしょうか?」

と、いいながら、

岡昇が、おもしろそうメンバーが、揃(そろ)っていると思って、やってきた。

 

「岡ちゃん、まあ、どうぞ、どうぞ」と、いって、川口信也は、席を、勧(すす)めた。

 

「また、女の子の話ですか?森ちゃんは。あっはっは」といって、岡がわらった。

 

「森ちゃんは、まさに、現代のプレイボーイを、実践している男ですなんでよ、

みなさん」と岡昇。

 

「どんなふうに?」と、興味津々(きょうみしんしん)に聞くのは、岡村明だ。

 

「ぼくの観察(かんさつ)している限(かぎ)りでは、森ちゃんは、

自分から、愛を告白するとか、惚(ほ)れるとかは、

一切(いっさい)しないというか、

そういう感情の、1歩手前で、意識的に、恋愛感情に、ブレーキを、

かけちゃっているんですよ。

ねえ、森ちゃん」と岡昇(おかのぼる)が、森隼人(もりはやと)に、

親しみをこめた、笑(え)みでいった。

 

「岡ちゃんも、よく、おれを観察してるね。ほとんど、そのとおりだよね。

おれって、女の子に対する独占欲は、

人一倍強いと思うのですが、

それと、

矛盾(むじゅん)してますが、女の子には、拘束(こうそく)というか、

自由を、

奪(うば)われたくないんですよ。ですから、いまも、

好きな女の子はいるんですけど、

ぼくの孤独の領域とでもいいますか、あまり、深入りしないで、くれていて、

それでも、OK!っていう、

いいわよ!っていってくれる、心の広(ひろ)いような女の子としか、

長続きしないんですよ」と、森隼人は、どこか、照れながら、

みんなの顔を窺(うかが)うようにして、口ごもりながら、話した。

 

≪つづく≫ 


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