121章 『君の名は。』と、子どもの心や詩の心
よく晴れた、風も穏(おだ)やかな正月の、2017年、1月3日。気温は12度ほどだ。
川口信也と、大沢詩織、岡昇(おかのぼる)と 南野美菜(みなみのみな)の4人は、
朝の渋谷駅ハチ公前広場で待ち合わせをした。
ハチ公前広場から、スクランブル交差点を渡って、
西武百貨店の裏にある渋谷シネパレスまでは、歩いて約3分だ。
その映画館で、信也たち4人は、10時40分に上映する、
新海誠監督の青春アニメ『君の名は。』を観(み)た。
朝いちの上映時間だったおかげか、信也たちは指定席券を無事に購入できた。
落ち着いた雰囲気の内装やフロアの館内。座席も座り心地がよい。笑顔のスタッフの応対もいい。
現在、国内や海外でも大ヒットとなっている『君の名は。』。
アニメ映画の興行収入ランキングでは、現在、『君の名は。』は
『千と千尋(ちひろ)の神隠し』と『アナと雪の女王』に次ぐ、第3位で、
国内の1500万人以上、8人に1人が劇場で観ている、とメディアの情報だ。
『君の名は。』を観たあと、信也たち4人は、そこから歩いて1分の、
イタリアン・レストランの『オッティモ(ottimo)』に行って、昼食をとりながら寛(くつろ)いでいる。
オッティモは、地上8階、地下2階、テナント数は121店のSHIBUYA(渋谷)109の7階にある。
「このオッティモって、『君の名は。』の中で、
瀧(たき)くんがアルバイトでウエイターをしていた、
あのイタリアン・レストランになんとなく似ていますよね!」
そう岡は言って、おいしそうにピザを頬(ほお)ばり、赤ワインを飲む。
「ああ、瀧くんがウエイターしていたあの店ね。確かに似ているかな、岡ちゃん。
ここのスタッフは、瀧くんがしていたような蝶ネクタイはしてないけどね。
瀧くんのあの店、敷居が高そうな店だったよね、。あっははは。
まあ、われわれの仕事場のモリカワも、けっして敷居(しきい)が高くなくって、
本当の意味で、堅苦しくなく寛げる、カジュアルなイタリアンレストランを目指しているんですよ。
そして、絶品と言ってもらえるようなピザとかのある、
美味(おい)しい本格的イタリアンを食べてもらえる店!というコンセプトで、
このオッティモも全国展開しているんですよ。
みんなの力で、こんなモリカワを、さらに大きくしていきたいですよね。あっははは」
そう言って信也が笑うと、みんなも笑顔で目を合わせたりした。
信也は26歳、早瀬田(わせだ)大学、商学部を卒業。
現在、外食産業やライブハウスで急成長の株式会社モリカワ本部の課長をしている。
大学からのロックバンド、クラッシュ・ビートの、ギター、ヴォーカルもやっている。
信也と詩織、岡と美菜、それぞれにカップルであり、この4人はみんなモリカワの社員だ。
詩織は22歳、早瀬田大学、文化構想学部、4年生。今年3月には大学も卒業で、
信也たちがいるモリカワ本社に就職が内定している。
岡昇も22歳、早瀬田大学、商学部、4年生。今年3月に大学も卒業で、
信也たちのモリカワ本社に就職が内定している。
過去には、信也の現在の彼女の大沢詩織にフラれたこともあった。
そして、信也には、詩織を紹介するという偉業(?)を成しとげていて、
そんな岡は、信也と詩織と、別に仲がいい。
美菜は24歳、早瀬田大学、商学部を卒業、2015年4月から、
信也たちのモリカワ本社に勤めている。
「おもしろい映画だったわ!
でも、瀧(たき)くんと三葉(みつは)ちゃんの二人が何度も入れ替(か)わったり、
元に戻(もど)ったり、目まぐるしいんだもの。
1回じゃよくわからなくって、もう1度見たいくらいよ」
美菜が岡にそう言って、微笑む。
「そうだね、また観(み)よう、美菜ちゃん。DVDもそろそろ出るんじゃないかな」
天真爛漫な子どものような澄んだ瞳で微笑む岡。
「『君の名は。』は話の展開に、スピード感があったよ。
あれって、観客の集中力を高める効果を、ねらったんじゃないかな」
信也がそう言って、みんなの笑顔を眺めながら、赤ワインを飲む。
赤ワインでほろ酔いの上機嫌(じょうきげん)なのは、信也と岡だ。
詩織は、フレッシュオレンジの香るオレンジジュース、
美菜は、フレッシュレモンのコカコーラを飲んでいる。
「何度も涙腺が緩(ゆる)んでしまう映画よね!
年齢や世代を超えて、支持されているっていうものね!でも、なぜなのかしら?しんちゃん!」
そう言って、信也に、明るく微笑む詩織。
「新海監督は、よくいろいろと勉強している人だと思うよ。
やっぱり、天才には、努力とひらめきが必要なんだろうね。あっははは。
『君の名は。』のモチーフ(題材)の、夢の中で誰かと出会うとか、
夢の中で男女が入れ替わるとかの、こうした物語の設定っていうのはね、
いまから、1000年以上も前の・・・、鎌倉幕府が成立する前のころかなぁ、
平安時代にまでさかのぼる、日本文学の伝統的のモチーフや主題だったんですよ。
みなさんなら、知ってることかもしれないけど」
信也がそう言うと、みんなは「知らなかったですよ」「知りませんでした」とか言って笑う。
「あっははは。ちょっと、文学の講義みたいになるけれど。
『とりかえばや物語』なんてのは、そんな男女が入れ替わる有名な物語だよね。
あと、平安時代の女流歌人の小野小町(おののこまち)は、
古今和歌集の中でこんな歌を詠(よ)んでるんですよ。
『思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚(さ)めざらましを』っていう歌だけどね。
訳すと、『あの人のことを思いながら、眠りについたから、夢にでてきたのだろうか。
夢と知っていたなら、目を覚(さ)まさなかっただろうものを。』っていうんだけどね。
いい歌だよね。あっははは。おれたちの心にも、すごくわかるし、共感があるよね。
これが、1000年以上も前の歌だもんね!いい芸術は、時を超えて、
いつまでも、人の心に感動を呼ぶってことだよね」
信也はしみじみとそう言った。
「そういえば、新海監督は、NHKの『クローズアップ現代』で語ってましたよ。
≪夢で真実を知るというのは、ずーっと、日本の文学や実際の生活の中で、
繰り返し語られてきたし、ぼくらの実感でもあるんですよ、今でも。≫とか。
≪夢で、本当に好きなのは誰なのかを知るとか、そういう僕らの実感みたいなものに、
まあ、この物語がマッチしたんじゃないかと、1つ思いますね。≫とか言ってましたよ。
さすが、新海さんは、すごいとおれも思いましたよ。しんちゃん!」
そう言って、信也と目を合わせて微笑む、岡だ。
「新海さんは、やっぱり、子どものような澄んだ視線で、世界を見ている人って感じで、
やっぱり、芸術家や詩人的って感じがするんだよね。やっぱり、おれの持論のようなもんで、
人間、子どものころの童心を忘れたら、ダメなんじゃないかな?
そんな子どもの心を忘れてしまったら、人生を楽しめなくなると思うよ。
新海さんのデビュー作は、地球と宇宙の超遠距離恋愛の『ほしのこえ』だけど、
『ねえ、わたしたちは、宇宙と地球に引き裂かれる恋人みたいだね。』と、
主人公の男女が同時に語るセリフがあるけど。あれは、とても象徴的で、印象深いよね。
新海作品に通底する、心が通じているのに、届かない、もどかしさ。そんな心の通い合いは、
この1作目から描かれているんだよね。
新海さんは、29歳のときなのかな、
ゲーム会社でCG(コンピューターグラフィックス)デザイナーをしていた新海さんが、
会社を辞(や)めて作ったのが、
自分の悩みから、解き放たれる転機になったという、この『ほしのこえ』なんだよね。
新海さん、ご本人は、テレビで、こんなことも語ってるよね。
『とにかく、作りたいという衝動だけだったんですよね。それと同時に、
いろんなことがうまくいっていなかった時期ですよ。
いろんな人間関係とか、友人関係とか、会社との関係とかだったりして。
何か、もう≪言いたいことがあるんだ≫と、・・・何があったんだろう?でも、
とても恥ずかしいんですけど、≪ほしのこえ≫って、
最後、≪ぼくはここにいるよ≫という言葉で終わるんだけど、もしかしたら、
単純に、そういう気持ちだったのかもしれない。
誰にも見られていないような気持ちもあったし。
だれにも届いていないような気持ちもあったし。
何か言えることがあるし。届けられるものがある。
そんな気持ちだけがあるし、衝動だけがあって、≪ほしのこえ≫は作り始めた。』
そんなふうに新海さんは語っていましたよ。
そんな『ほしのこえ』は、2002年に、下北沢にある短編映画専門館の『トリウッド』で、
監督・脚本・演出・作画・美術・編集などの作業をひとりで行った自主製作の、
約25分のフルデジタルアニメーションとして、初上映されたんだよね。
そのときの会場で、新海さんは挨拶して、そのときの拍手が、生まれて初めての自分への拍手で、
いまでも創作のモチベーションになっているって、新海さんは語っているけどね。
やっぱり、子どものような行動力や好奇心や感性がなければ、
こんな創造的なことはできないことなんだろうね」
信也はそう言って、みんなに微笑んだ。おいしそうにピザを頬張って、赤ワインを飲む。
「そうですね。子どものように澄んだ感性を感じます。
ストーリーもすごくいいけど、映像美が、これまでにない美しさです!」
美菜がそう言う。
「そうだよね。映像が、圧倒的に美しくて、精緻で、リアルだよね。
日本で活動するアメリカのギタリストのマーティ・フリードマンさんが、クローズアップ現代で、
アニメーションの世界のエディ・ヴァン・ヘイレンだって言っていたもの。
エディ・ヴァン・ヘイレンは、ロックのギターの世界では、
デヴューした直後から、卓抜(たくばつ)したタッピングとかの技術やテクニカルで、
そのあとに続く音楽に、長く、影響を与えたんだよね。
新海さんのアニメはそれに等しいって、マーティさんは言うんだ」
赤ワインに気分もよく酔って、陽気な笑顔で岡はそう言った。
「おれも、あのクローズアップ現代は見ていた。マーティ・フリードマンさんは、視点が鋭いよね。
Jポップとかの音楽評論家としても、おれは感心するしね。
マーティさんが、『1番大事なコンセプトをお祖母(ばあ)ちゃんがいう』って言っていたよね。
『土地の氏神(うじがみ)様を古い言葉で『ムスビ』って呼ぶんやさ。この言葉には深い意味がある。
糸をつなげることも結び。人をつなげることも結び。』とか、お祖母(ばあ)ちゃんはいっている。
『君の名は。』では、遠く離れた二人を結ぶものとして、
組紐(くみひも)が象徴的に描かれているじゃない。
運命の赤い糸を連想させるような組紐だよね。
それが効果的に使われて、観客に、人との結びつきとか、思い出させたりして、
感動を呼んでいるだよね、きっと。人生にとって、出会いがいかに、大切なことかって。
それと、三葉(みつは)が、神社にお供(そな)えする口噛み酒(くちかみざけ)。
その口噛み酒を瀧(たき)くんが飲んで、過去にタイムスリップして、三葉(みつは)ちゃんや
町の人たちを避難させる行動をとるよね。
そして、みんなを、彗星(すいせい)の隕石の落下という災害から、救うことになる・・・。
あれって、瀧くんが、勇敢にも、時間を巻き戻して、更新するようなことだろうけど。
そして、社会人になって、オトナっぽくなった、瀧くんと三葉ちゃんが再会する。
壮大なスペクタクル(光景)の、感動的なアニメだよね」
信也は、みんなを時々見ながら、そう話した。
「新海誠さんと、詩人で芥川賞作家の川上未映子(かわかみみえこ)さんとの対談の番組があって、
それがものすごく良かったの!
川上さんが、新海さんにこんなことを聞くの。
『イノセンス(純粋さ)というと、監督の場合は、いつの、どの景色を思い出します?』って。
新海さんは、『ぼくは、12~13歳かもしれないです』って答えていたわ。
あとね、川上さんは、
『秒速35センチメートル』の中の主人公のセリフで、
『僕たちは精神的に似ていた』というセリフを指摘して、
それを、『僕たちは似ていた』では済ませられない人なんだなと思ったって、おっしゃってる。
川上さんの指摘は、鋭いなって、感心しているの!
川上さんは、新海さんに、『精神的に似ているんだ』っていうことを、おっしゃりたいんですねって。
そんな気持ちが、そのセリフにはすごく出ているって。なんか、微笑ましくて、おかしくって、
楽しくって、未来への希望や力も感じる、素敵な対談っていうか会話よね。
新海さんは、そんな川上さんの指摘に、はっとして新たな自分を再発見したような、
驚きの表情をしてたわ。うふふ。
いまの混乱しているオトナの社会に対する、子どもの心、詩の心、そんな感じのする対談だったわ。
そして、新海さんはこんなこと言ってたわ。
『1本の映画が、長い時間軸の1曲みたいな、
そんな1曲を聞いたあとみたいな気持ちになって欲しい。』って。
新海さんのアニメには、モノローグ(ひとりごと)使うところが多いんですって。
それについて、新海さんご自身で、
『状況を客観視たりして、未知の巨大な悪意を持った人生みたいなものに、
立ち向かったり、乗り越えたりしようみたいな気持ちがあるってことで、
それは、サバイブ(困難を乗り越える)ことなのかも。』とか、おっしゃっていた。ね、しんちゃん」
詩織が、信也や岡や美菜(みな)に、微笑(ほほえ)みながら、そう語った。
「うん、あの番組ね、『SWITCHインタビュー達人たち』だっけ、おれも見たんだよね。
女優の吉田羊(よしだよう)さんのナレーションが、
『新海の描く世界は、心をかよわせながらも、会えない、通じない、届かないといった、
若い男女のせつない恋物語が多い。心の距離感を風景や情景を巧みに使いながら、
描き出す新海マジックは、若者はもちろん、かつて若者だった世代をも虜(とりこ)にする。』
ってあったけど、心に残る、すてきな語りだよね。
『新海作品の特徴の1つ。映像美。特に背景の美しさは見る者の心を癒(いや)す。
夜景や雲、そして夕暮れの道。記憶の中にある原風景を緻密に再現することで、
印象的な風景を作り出す。』とかのナレーションも良かった。
川上未映子(みえこ)さんは、
『人が生まれる意味とは何なのか?人が死ぬとはどいうことなのか?』とかの、
『普段の生活では見過ごしがちな、根源的な問いを、鋭い感性で描いてきた。』
とかも、ナレーションっで言ってたよね。
川上さんって、おれも、個性的で、すてきな人だと思うよ。
子どものころ、自分の誕生会で、
≪詩に向かっているのに、なぜ喜ぶの?≫と言葉に出すと、まわりが引いていたっていうよね。
それで≪自分の考えを言葉に出してはいけない≫って思ったそうなんだ。
そんな思いを抱えていた小学4年生の時、何でもいいから作文を書くという国語の授業があって、
その教師のひと言が大きな転機となったんだってさ。
≪いつも、くよくよとして、いつか、みんなは死んでしまうとか、それだったら、
誰よりも先に死んでしまいたい≫とか考えていたんだってさ、川上さんは。
自分が思っていることはそうだったから、それを作文に書いたんだって。
川上さんは、『それまで、子どもが≪死ぬ≫とか≪何で産んだのと?≫いうと、
嫌(いや)がるんですよ、オトナは。それで、ドキドキしながら作文を読んだんですよ。
そしたら、すごく褒めてくれた先生がいて。名前を呼ばれて、立ちなさいって言われて、
≪また、言われるんだろうな≫と思ったら、先生は、
≪それは、先生にも分からへん。でも、考え続けるのはいいこと≫ってくれて、
拍手してくれて、すごく、うれしかった』って、そんなふうに語ってましたよ。
それを聞いていた、新海さんは、
『川上未映子(みえこ)さんが誕生した瞬間かもしれないですね』って言っていたし。
川上さんは、『本当に思っていることは言葉にしていいし、
共有してくれる人がいるんだ。肯定されたことが大きかった。
トイレで、すごく泣いたことをおぼえています。うれしくて、恥(は)ずかしいし。』
とか言ったいましたよね。
オトナの世界と、子どもの心や詩の心が、対決しているような感じの、
すばらしい対談だったですよね。
新海さんは、この対談に先立って、こんな解説をしてましたよね。
『作家というのが、アイデアを組みだしてくる水源のようなものと、
それいかにを紡(つむ)ぐかという技術。
そんな水源と技術の両輪で回っているように見える。』って言ってたよね。
『その両輪のバランスがどのようになっているか、すごく興味があるし。
その2つを組み合わせて、このうえなく、うまく見合わせているようにも見えるし、
その組み合わせ方というのも作品ごとに変化しているようにも見える。
そんな雰囲気を本を読んでいると、とても感じる。
作家としての生きかたを少しでも垣間(かいま)見ることができるとうれしいです。』とか言って、
新宿にある川上さんの自宅を新海さんは訪問したんだよね。
とても、興味深い貴重な対談だったので、しっかり、録画してありますよ。あっははは」
「ほんと、楽しい対談だったわよね、しんちゃん!
川上さんが『そのぉ・・・。、新海さんは、絵は得意だったんですか?」とか聞いたわよね!」
「そうそう、そしたら、新海さんは、
『たとえば、クラスで、2~3番目くらいには、うまいなくらいの気分はあったんですけど。』
とか言っていたよね、詩織ちゃん。あっははは。
新海さんは、『背景とかが好きだったんです。人間にはあまり興味がなかった。
人間を描くことには興味がなかった。』とか言っていて、
『もう風景画ばかり描いていたようなこと言っていて。その色も好きだった』とか言っていて。
川上さんが、『何に、1番にひかれていました?』って聞いたら、
新海さんは、こんなふうに言っていました。
『ぼくは、雲の形と、雲の色でした。雲の絵を、水彩絵の具で描いてました。
曇って難しい素材だと思います。
曇って漠然と描くと、本当に漠然とした雲になる。
子どもに雲描いてと言ったときポカポカと言った雲になるじゃないですか。
ああいうものが、オトナになっても、力量はあっても、ああいう印象になったりする。
でも、曇って、気象現象の総体じゃないですか。
そのバックグラウンドには、上空でどれくらい強い風が吹いているのか?とか、
寒いのか?とか。そういうことが、なんとなく、体感があると、いい雲になるような気がします。』
と、こんな内容だったかな。
雲について、こんなに真剣に考えている新海さんって、素敵だよね。ねえ、岡ちゃん」
「そうですね。新海さんって、芸術家の心の持ち主ですよね。
ほんと、飾(かざ)り気がなく、ありのままなで、
素朴でいいなあって、おれは思いましたよ。新海さんも川上さんも、
子どもらしさを失っていない、オトナの方たちで、詩人だし、芸術家だし、
人間らしいってことですよね。混迷の時代を、良くしていきたいって願う、
きっと、ぼくらの仲間って感じの人たちですよね」
岡がそう言うと、みんなは、笑顔で、「そうだね」と言ったり、拍手をしたりした。
☆参考・文献・資料☆
NHK クローズアップ現代 『想定外!?君の名は。メガヒットの謎』
NHK Eテレ SWITCH インタビュー達人たち 『新海誠×川上未映子』
≪つづく≫ --- 121章 おわり ---