バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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「このパンケーキにしようかしら。」

「島田よ、こんなところに男と2人で来てもいいものなのかの?それに掃除もほぼしてないのじゃ。」
「いーのよ。ほら、あんたはなに食べるのよ?」

「うむ…なら、このストロベリーベリーパフェに…。」
「あんたってほんと乙女よね。」
「やっぱりワシはこのガッツリガーリックチキンパスタにするぞい。」
「単純ね。」
「うるさいのじゃ…。」


僕とゴミ拾いと甘い考えっ!

バカテスト

現代社会

 

暮らしやすい地域社会を目指す取り組みの例をあげなさい。

 

 

姫路瑞希の答え

バリアフリー化

 

教師のコメント

正解です。障害者や老人に配慮した取り組みのことですね。

 

吉井明久の答え

偽善活動!

 

教師のコメント

あなたがたの場合そうかもしれませんね。

 

 

 

坂本雄二の答え

 

バリアフ……霧島翔子との結婚

 

教師のコメント

途中で答えは止まってしまって、塗り替えられ、血で染まり、突如として愛の告白という流れが気になるところです。

 

 

 

朝、校門を出てからどれほどたったろうか。

僕たちは、一生懸命ゴミを探す(ふり)。

まだまだゴミ袋は、ほぼ空だ。

 

 

「姫路さん。」

「なんですか、明久くん。」

「うん。このゴミステーションのゴミを持って帰ればいいと思うんだ。」

僕は、天才じゃなかろうか?

幸いここには、まだゴミ収集車は来ていない。

 

今日は、プラゴミの日らしく、プラスチックゴミが道端には大量に積まれていた。

 

「おい、真中!このゴミ袋を持ってかえったらいいんじゃね?俺って天才?」

 

 

 

「やぁ。須川くん、真中くん。調子はどうだい?」

「吉井。そのゴミは俺たちが先に見つけたんだが…」

「待つんだ、須川くん。そんなに持ってても意味がないし、重いだろ?半分僕に…」

 

須川くんたちと同じゴミを争うことになるなんて、、。

 

というか僕以外に同じことを考える天才がいるなんて、思いもよらなかった。

「明久くん、バカなことはやめて、真剣にゴミを…」

 

 

「バカって言わないで!」

 

認めたくなかったんだ。薄々気づいてたよ?須川くんたちと同じ考えに至るなんて、やっぱり僕はバカじゃなかろうか、と。

 

「須川くんたちも、ちゃんとゴミ拾いしないと、西村先生におこられちゃいますよ?」

 

「うっ…分かったよ。」そう言うと、おとなしく去って行った。

このクラスで一番怖いのは、もしかしたら女子2人かもしれない。

 

 

「これで、このゴミは僕たちのものだねー」さすがは姫路さん。僕の策に気づいてくれて、邪魔者をどかせてくれるなんて。

 

 

「明久くん。まだそんなバカなこと言ってるんですか?それは、ゴミ収集車が回収しますので、おいて置いてください。」

 

「いっそ、僕も収集してくれないかな?」

僕は吉井明久。先生に気に入られ、愛される観察処分者。

 

 

 

 

端的に言うと、バカ。僕なんかゴミなんだ…

と、ヒステリックになっている僕に姫路さんが話しかけてくれる。

 

 

「明久くん。河川敷に行きませんか?」

「僕をポイ捨てする気⁉︎」

 

 

「いえ、私はただ河川敷のほうがゴミも落ちているかな、と思っただけです。」

 

冷静になって考える。いつまでもヒステリックでもしょうがない。

たしかに河川敷ならゴミもたくさん落ちてそうだ。

「明久くん?」

 

「うん。そーだね!いこう!」

時間は夕方、他のクラスの下校まで。河川敷ならお昼もゆっくり休める。

 

 

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朝、校門から出てどれくらいたったろうか。

 

 

俺とムッツリーニは、公園で一通りゴミを拾い(盗撮)、サボっていた。あまりに暇すぎるのだ。

 

「おい、ムッツリーニ。」

 

「…いない。」

「なにが、だ。」

「…散歩している若妻。」

だめだ。探しているものが慈善活動どころか、犯罪だ。

 

「こうなったら、ゲーセンでも行かないか?大学生の女の子がいるかもしれねーぞ。」

ゲームセンターは、少し町外れにある。

掃除の範囲の少し外だ。見回りも来ないだろう。

 

「…任せておけ。」

エロさえちらつけば、いずれ詐欺でも引っかかるかもしれない。

 

 

 

 

 

「ムッツリーニ。とりあえず、ボクシングゲーム対決しようぜ。」

「…ない。」

もうなにがないか、なんてわかっているが一応聞いてみる。

「なにがだ?」

 

「…ゴミ。」

なんで、ゲーセンに来たら、ゴミを探し出すんだろうか、やっぱりこいつは分からない。

 

「タバコの吸殻ならあるぞ。」

「…おっさんの口の匂いがするなんて最悪。」

「こっちのタバコはどうだ?」

「…これは!26才のギャルの匂いっ!」

年齢と、どんな奴かまでは、タバコに残った匂いで分かるらしい。

「じゃあこのゴミもらっていこうぜ。」

「…当たり前。むしろ宝。」

あいかわらず、弩級の変態だ。

 

そうして、ボクシングゲームをして、遊んでいると

地元の大学生だろうか、女の人たちに声をかけられる。

 

「君たち、文月学園の子たち?」

 

「…そう。」ムッツリーニが正直に答える。

「なにやってるのー?」

「サボリだ。今日は慈善活動の日でな。」

「そうなんだ…。ねぇ、だったら私たちとカラオケ行かない?ちょうどそんな子探してたんだー。」

「…お金がない。」珍しくムッツリーニが妥当なことを言う。

こいつは、こういうところで無駄にマトモだ。ただしその言っている顔から、鼻血が出ていなければ。

 

「そうだ。高校生にたかるなんざ…」

 

「じゃあ奢ってあげるからさ!友達に男の子連れてくるって言っちゃって…。」

 

「…。」ムッツリーニが黙り込む。鼻血を出しながら。

こいつにとっては、女子大生という存在がすでにエロいのだろう。

 

「それならいいが、俺たちは夕方には戻らないと行けないんだが…」

 

「じゃあそれまででもいいわ!とにかく、お願いできる?」

なにやら困ってるようだし、暇だったからむしろ助かる。

 

ムッツリーニが血を吹かないか心配なところだが。

これが…逆ナンという奴なのだろうか。

 

…はっ!待てよ。翔子に見つかる危険性が、、

 

見つかったら確実に殺されるだろう。

 

でも、翔子は教室で授業中のはずだ。さすがに追ってこれまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は大丈夫だよな…?

 

 

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「姫路さん。」

「なんですか?そろそろお昼にしない?」

時間的には、もう昼だ。

ご飯を食べてもおかしくない時間である。

「明久くん、そういえば今朝のマドレーヌ美味しかったですか?」

 

「うん!とっても美味しかったよ。」本当は、食べてないんだけど。

今頃須川くんが食あたり(毒は致死量)でも起こしているだろう。

 

「ここら辺でお弁当にしよう!」

「そうですね。そういえば、明久くん。」

「なにかな?」

「美波ちゃんと一緒の生活楽しかったですか?」

 

 

そう言われて思い返すのは、楽しかった生活のことよりも、やっぱり

昨日の夜のこと。

朝からいつもと変わらない騒々しい生活を過ごしたから、忘れかけていたけれど、

いつもと違う美波。

そして、今日のちょっとだけ違和感を感じた美波。

 

「えっーと…明久くん?」

「あ、ごめん。ちょっと考えごとを…」

「美波ちゃんのことですか?(私といるのに、美波ちゃんの…)」

「いや、なんでもないよ!美波のお母さんがお礼の挨拶に来る、とか言ってたのを思い出して…。」

 

なにも嘘は言ってない。本当にそんな話になっているのだ。別にわざわざ忙しい中、そんなことしてくれなくてもいいんだけど…

 

 

「そうですか。そういえば私が泊まった時も、お礼に行きましたね。」姫路さんが少しほっとしたような顔をする。

 

「姫路さんのお母さんには本当に驚いたよ。」

「そうですよね。うちの母はどこに行っても、幼く見られるんです。」

 

本当に小さすぎて、妹かと思って、間違えて、失礼なことをしてしまった。

 

美波のお母さんが葉月ちゃんみたいだったらどうしようか。

 

 

 

「明久くんが、いつか挨拶に…」

なにを言っているんだろうか。

「僕が?」

「はいっ!明久くんが、その場で考えるとかじゃなくて、もっとちゃんと考えて、それでもう一度答え聞かせてくれる時のことです。」

なにを聞かせるのだろうか?バカな頭ではさっぱり分からない。

「なんのこと…かな?」

 

 

「もういいです…明久くんは、やっぱり明久くんですね。じゃあお昼たべましょうか。」姫路さんが残念そうな顔をしたあと、笑顔でいう。

 

「そうだね。」

 

 

 

弁当を食べながら雑談をする。ちょうど心地の良い風が、河川敷に吹きつける。

こんなことなら毎日慈善活動してやる。ただの偽善だけど。

 

 

「ちょっと、量足りなかったかな…」

 

美波に合わせて、作ったから弁当箱はいつもより小さめにしたからかな。

 

「明久くん。私、明久くんに食後のデザートを…」

「お腹いっぱい!腹10分。」

「今日は、ただのカットフルーツなんですけど…」

それならば、詰めるだけだから大丈夫ということじゃないか!

「お腹が空いてきたかもしれない。」

「はいっ。じゃあ、どうぞ?」

姫路さんが楊枝にりんごをさして、こっちに突き出してくる。

 

こうなったら食べるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

たぶん大丈夫だよね…?

 

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「ほら、行くわよ?木下。」

 

「島田よ!さすがに、3件目は、きついと思うのじゃが…」

 

「たまには、本気でサボってもいいんじゃないかしら?」

 

 

「やはり今日のお主は、なにかおかしいと思うのじゃが…。」

 

今のところ、ワシらのゴミ袋には、紅茶の砂糖の紙くずと、口臭を気にして買ったガムの紙くずの2つしか入っていない。

 

「そうかしら?」島田が不思議そうに聞いてくる。

「とにかく、弁当もあることじゃし…」

「弁当…か。そうね。じゃあ、適当なとこで弁当でも食べる?」

「お主…まだ食うとは…やけ食いでもしとるのか?」

さっきも、パフェを食べたばかりである。一件目でも、ワッフルを食べていた。

「あら?木下こそ、よく食べてたじゃない。」

おだてられたとはいえ、1件目はにんにくパスタ、2件目は、カルボナーラ。もはや限界は近い。

 

 

 

しかし、なにを言おうと今日の島田は、ガンとしてきかず、ベンチで2人して弁当を開ける。島田と2人きりというのは実際ほとんどなかったことだ。

 

「島田よ、その弁当は明久が作ったものかの?」

「そうね…。アキが作ったもの。」その弁当の大きさに、島田への気遣いが感じられた。

明久と一緒に住んでいたこと。様子が少しおかしい島田。

 

 

「明久となにかあったのかの?」

こういうことに結びつくのは時間の問題だった。

「なにもないわよ!そう、なにも…」

「いいたくないのなら構わぬのじゃがな。」

 

「木下には関係のないことよ。」

 

「そういわれると少し寂しいのう。…明久に告白でもしたのかの?」

「木下が秘密にしてくれるなら言ってもいい…わ。」

「それは、任せておくのじゃ!」日本男児として当然のことだ。

 

 

「逆よ。」

「まさか、明久がお主に…⁉︎」

「なにもないの。ウチが、アキのことをー」

 

 

 

 

島田が教えてくれたことは予想外すぎて、少しの戸惑いを覚えた。

 

そんな戸惑いに満ちたワシに島田が声をかけてくる。

「そういえば、このマドレーヌ食べる?」

 

マドレーヌと言えば…なにかとても重大なことがあったような…。考えごとをしすぎて頭が回らない。

 

「では、もらうのじゃ。」

こう命にかかわるようななにかを忘れているような…

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと、大丈夫じゃろう、のう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その夜、僕たち4人が、三途の川での壮絶な争いの末、そろって病室で目を覚ました、のは言うまでもない。

 


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