「島田よ、こんなところに男と2人で来てもいいものなのかの?それに掃除もほぼしてないのじゃ。」
「いーのよ。ほら、あんたはなに食べるのよ?」
「うむ…なら、このストロベリーベリーパフェに…。」
「あんたってほんと乙女よね。」
「やっぱりワシはこのガッツリガーリックチキンパスタにするぞい。」
「単純ね。」
「うるさいのじゃ…。」
バカテスト
現代社会
暮らしやすい地域社会を目指す取り組みの例をあげなさい。
姫路瑞希の答え
バリアフリー化
教師のコメント
正解です。障害者や老人に配慮した取り組みのことですね。
吉井明久の答え
偽善活動!
教師のコメント
あなたがたの場合そうかもしれませんね。
坂本雄二の答え
バリアフ……霧島翔子との結婚
教師のコメント
途中で答えは止まってしまって、塗り替えられ、血で染まり、突如として愛の告白という流れが気になるところです。
朝、校門を出てからどれほどたったろうか。
僕たちは、一生懸命ゴミを探す(ふり)。
まだまだゴミ袋は、ほぼ空だ。
「姫路さん。」
「なんですか、明久くん。」
「うん。このゴミステーションのゴミを持って帰ればいいと思うんだ。」
僕は、天才じゃなかろうか?
幸いここには、まだゴミ収集車は来ていない。
今日は、プラゴミの日らしく、プラスチックゴミが道端には大量に積まれていた。
「おい、真中!このゴミ袋を持ってかえったらいいんじゃね?俺って天才?」
「やぁ。須川くん、真中くん。調子はどうだい?」
「吉井。そのゴミは俺たちが先に見つけたんだが…」
「待つんだ、須川くん。そんなに持ってても意味がないし、重いだろ?半分僕に…」
須川くんたちと同じゴミを争うことになるなんて、、。
というか僕以外に同じことを考える天才がいるなんて、思いもよらなかった。
「明久くん、バカなことはやめて、真剣にゴミを…」
「バカって言わないで!」
認めたくなかったんだ。薄々気づいてたよ?須川くんたちと同じ考えに至るなんて、やっぱり僕はバカじゃなかろうか、と。
「須川くんたちも、ちゃんとゴミ拾いしないと、西村先生におこられちゃいますよ?」
「うっ…分かったよ。」そう言うと、おとなしく去って行った。
このクラスで一番怖いのは、もしかしたら女子2人かもしれない。
「これで、このゴミは僕たちのものだねー」さすがは姫路さん。僕の策に気づいてくれて、邪魔者をどかせてくれるなんて。
「明久くん。まだそんなバカなこと言ってるんですか?それは、ゴミ収集車が回収しますので、おいて置いてください。」
「いっそ、僕も収集してくれないかな?」
僕は吉井明久。先生に気に入られ、愛される観察処分者。
端的に言うと、バカ。僕なんかゴミなんだ…
と、ヒステリックになっている僕に姫路さんが話しかけてくれる。
「明久くん。河川敷に行きませんか?」
「僕をポイ捨てする気⁉︎」
「いえ、私はただ河川敷のほうがゴミも落ちているかな、と思っただけです。」
冷静になって考える。いつまでもヒステリックでもしょうがない。
たしかに河川敷ならゴミもたくさん落ちてそうだ。
「明久くん?」
「うん。そーだね!いこう!」
時間は夕方、他のクラスの下校まで。河川敷ならお昼もゆっくり休める。
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朝、校門から出てどれくらいたったろうか。
俺とムッツリーニは、公園で一通りゴミを拾い(盗撮)、サボっていた。あまりに暇すぎるのだ。
「おい、ムッツリーニ。」
「…いない。」
「なにが、だ。」
「…散歩している若妻。」
だめだ。探しているものが慈善活動どころか、犯罪だ。
「こうなったら、ゲーセンでも行かないか?大学生の女の子がいるかもしれねーぞ。」
ゲームセンターは、少し町外れにある。
掃除の範囲の少し外だ。見回りも来ないだろう。
「…任せておけ。」
エロさえちらつけば、いずれ詐欺でも引っかかるかもしれない。
「ムッツリーニ。とりあえず、ボクシングゲーム対決しようぜ。」
「…ない。」
もうなにがないか、なんてわかっているが一応聞いてみる。
「なにがだ?」
「…ゴミ。」
なんで、ゲーセンに来たら、ゴミを探し出すんだろうか、やっぱりこいつは分からない。
「タバコの吸殻ならあるぞ。」
「…おっさんの口の匂いがするなんて最悪。」
「こっちのタバコはどうだ?」
「…これは!26才のギャルの匂いっ!」
年齢と、どんな奴かまでは、タバコに残った匂いで分かるらしい。
「じゃあこのゴミもらっていこうぜ。」
「…当たり前。むしろ宝。」
あいかわらず、弩級の変態だ。
そうして、ボクシングゲームをして、遊んでいると
地元の大学生だろうか、女の人たちに声をかけられる。
「君たち、文月学園の子たち?」
「…そう。」ムッツリーニが正直に答える。
「なにやってるのー?」
「サボリだ。今日は慈善活動の日でな。」
「そうなんだ…。ねぇ、だったら私たちとカラオケ行かない?ちょうどそんな子探してたんだー。」
「…お金がない。」珍しくムッツリーニが妥当なことを言う。
こいつは、こういうところで無駄にマトモだ。ただしその言っている顔から、鼻血が出ていなければ。
「そうだ。高校生にたかるなんざ…」
「じゃあ奢ってあげるからさ!友達に男の子連れてくるって言っちゃって…。」
「…。」ムッツリーニが黙り込む。鼻血を出しながら。
こいつにとっては、女子大生という存在がすでにエロいのだろう。
「それならいいが、俺たちは夕方には戻らないと行けないんだが…」
「じゃあそれまででもいいわ!とにかく、お願いできる?」
なにやら困ってるようだし、暇だったからむしろ助かる。
ムッツリーニが血を吹かないか心配なところだが。
これが…逆ナンという奴なのだろうか。
…はっ!待てよ。翔子に見つかる危険性が、、
見つかったら確実に殺されるだろう。
でも、翔子は教室で授業中のはずだ。さすがに追ってこれまい。
今日は大丈夫だよな…?
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「姫路さん。」
「なんですか?そろそろお昼にしない?」
時間的には、もう昼だ。
ご飯を食べてもおかしくない時間である。
「明久くん、そういえば今朝のマドレーヌ美味しかったですか?」
「うん!とっても美味しかったよ。」本当は、食べてないんだけど。
今頃須川くんが食あたり(毒は致死量)でも起こしているだろう。
「ここら辺でお弁当にしよう!」
「そうですね。そういえば、明久くん。」
「なにかな?」
「美波ちゃんと一緒の生活楽しかったですか?」
そう言われて思い返すのは、楽しかった生活のことよりも、やっぱり
昨日の夜のこと。
朝からいつもと変わらない騒々しい生活を過ごしたから、忘れかけていたけれど、
いつもと違う美波。
そして、今日のちょっとだけ違和感を感じた美波。
「えっーと…明久くん?」
「あ、ごめん。ちょっと考えごとを…」
「美波ちゃんのことですか?(私といるのに、美波ちゃんの…)」
「いや、なんでもないよ!美波のお母さんがお礼の挨拶に来る、とか言ってたのを思い出して…。」
なにも嘘は言ってない。本当にそんな話になっているのだ。別にわざわざ忙しい中、そんなことしてくれなくてもいいんだけど…
「そうですか。そういえば私が泊まった時も、お礼に行きましたね。」姫路さんが少しほっとしたような顔をする。
「姫路さんのお母さんには本当に驚いたよ。」
「そうですよね。うちの母はどこに行っても、幼く見られるんです。」
本当に小さすぎて、妹かと思って、間違えて、失礼なことをしてしまった。
美波のお母さんが葉月ちゃんみたいだったらどうしようか。
「明久くんが、いつか挨拶に…」
なにを言っているんだろうか。
「僕が?」
「はいっ!明久くんが、その場で考えるとかじゃなくて、もっとちゃんと考えて、それでもう一度答え聞かせてくれる時のことです。」
なにを聞かせるのだろうか?バカな頭ではさっぱり分からない。
「なんのこと…かな?」
「もういいです…明久くんは、やっぱり明久くんですね。じゃあお昼たべましょうか。」姫路さんが残念そうな顔をしたあと、笑顔でいう。
「そうだね。」
弁当を食べながら雑談をする。ちょうど心地の良い風が、河川敷に吹きつける。
こんなことなら毎日慈善活動してやる。ただの偽善だけど。
「ちょっと、量足りなかったかな…」
美波に合わせて、作ったから弁当箱はいつもより小さめにしたからかな。
「明久くん。私、明久くんに食後のデザートを…」
「お腹いっぱい!腹10分。」
「今日は、ただのカットフルーツなんですけど…」
それならば、詰めるだけだから大丈夫ということじゃないか!
「お腹が空いてきたかもしれない。」
「はいっ。じゃあ、どうぞ?」
姫路さんが楊枝にりんごをさして、こっちに突き出してくる。
こうなったら食べるしかない。
たぶん大丈夫だよね…?
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「ほら、行くわよ?木下。」
「島田よ!さすがに、3件目は、きついと思うのじゃが…」
「たまには、本気でサボってもいいんじゃないかしら?」
「やはり今日のお主は、なにかおかしいと思うのじゃが…。」
今のところ、ワシらのゴミ袋には、紅茶の砂糖の紙くずと、口臭を気にして買ったガムの紙くずの2つしか入っていない。
「そうかしら?」島田が不思議そうに聞いてくる。
「とにかく、弁当もあることじゃし…」
「弁当…か。そうね。じゃあ、適当なとこで弁当でも食べる?」
「お主…まだ食うとは…やけ食いでもしとるのか?」
さっきも、パフェを食べたばかりである。一件目でも、ワッフルを食べていた。
「あら?木下こそ、よく食べてたじゃない。」
おだてられたとはいえ、1件目はにんにくパスタ、2件目は、カルボナーラ。もはや限界は近い。
しかし、なにを言おうと今日の島田は、ガンとしてきかず、ベンチで2人して弁当を開ける。島田と2人きりというのは実際ほとんどなかったことだ。
「島田よ、その弁当は明久が作ったものかの?」
「そうね…。アキが作ったもの。」その弁当の大きさに、島田への気遣いが感じられた。
明久と一緒に住んでいたこと。様子が少しおかしい島田。
「明久となにかあったのかの?」
こういうことに結びつくのは時間の問題だった。
「なにもないわよ!そう、なにも…」
「いいたくないのなら構わぬのじゃがな。」
「木下には関係のないことよ。」
「そういわれると少し寂しいのう。…明久に告白でもしたのかの?」
「木下が秘密にしてくれるなら言ってもいい…わ。」
「それは、任せておくのじゃ!」日本男児として当然のことだ。
「逆よ。」
「まさか、明久がお主に…⁉︎」
「なにもないの。ウチが、アキのことをー」
島田が教えてくれたことは予想外すぎて、少しの戸惑いを覚えた。
そんな戸惑いに満ちたワシに島田が声をかけてくる。
「そういえば、このマドレーヌ食べる?」
マドレーヌと言えば…なにかとても重大なことがあったような…。考えごとをしすぎて頭が回らない。
「では、もらうのじゃ。」
こう命にかかわるようななにかを忘れているような…
きっと、大丈夫じゃろう、のう?
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その夜、僕たち4人が、三途の川での壮絶な争いの末、そろって病室で目を覚ました、のは言うまでもない。