Jumper -IN CHRONO TRIGGER-   作:明石明

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どうもこんにちは、花粉症に苦しむ作者です。

今回はMLOWを凍結させ、本編が完結してから初の投稿です。
以前より告知していたデナドロ三人集にスポットを当てた外伝となります。
一本で終わらせようかと思いましたが、少し長くなりそうなので3分割することになりました。
後半、徹夜のテンションで書き上げたためおかしなことになっているかもしれませんが、どうかご了承ください。

それでは記念すべき外伝第1話、どうぞご覧ください。


外伝
「三人集が三柱神になるまで 前編」


 ラヴォスとの決戦から数ヶ月。

 それぞれが自分がいるべき時代で元の生活に戻っている頃、中世へと帰還したデナドロ三人集のガイナー、マシュー、オルティーは自分たちの主と交わした誓いを果たすためサンドリノの砂漠を緑化させるべく今日もフィオナやロボと共に砂漠の開拓に勤しんでいた。

 

 

「フィオナ殿。おはようございます」

 

「あら。ガイナーさん、マシューさん、オルティーさん、今日も宜しくお願いしますね」

 

「お任せくだされ」

 

「して、本日は何をすればよろしいか?」

 

 

 到着するなりフィオナから指示をもらい、それに基づいて作業に移るのが彼らの仕事だった。

 合間にサンドリノやパレポリからやってくる人たちと交流を深め、もう一つの誓いである人と魔族の共存を進めることも忘れない。

 この日にもらった最初の指示は、デナドロ山の魔物たちと共にデナドロ山の川から水を引く水路を作って欲しいとのものだ。

 この土地でも探せば水脈があるかもしれないが、如何せんメルフィックが起こした砂漠化の影響が根強く、掘り当てるにはまだ時間がかかりそうなのだ。

 そこで水が豊富なデナドロ山から砂漠へ向けて水を流し、作業の効率化と新たな池や湖を作ろうという計画が上がった。

 しかしそれに当たって問題となったのが人手であり、並の人間ではすぐにへばってしまうためデナドロ山で強い影響力のあるガイナーたちに頼んで魔物たちに協力要請を出してもらうこととなった。

 協力してくれた魔物たちには事情を知るガルディア城から用意された食料が支給され、長期間継続して働いてくれるなら給金の支給もあるという通達が出ている。

 人間と魔族が共同して生活ができる仮設の村のおかげもあって、少しずつではあるが交流が進んでいた。

 

 

「承知しました。ならば早速――」

 

 

 要点を聞いた三人はさっそく来た道を引き返し、デナドロ山の魔物たちに協力を要請することに。

 デナドロ山の魔物たちも少ないリスクで食い扶持が得られ、自分たちの住める場所が増えるならということで人に対しても協力的に行動しており、一部のオウガンなどはその力を頼られて町の修理を依頼されることもあるらしい。

 共存政策がいい方向に進んでいる。この事実が三人の目標へとつながっていると確信でき、このままいけばそう遠くない未来で人も魔族も関係なく暮らせる世の中になっているだろうと感じられた。

 

 

 しかし、物事がすべていい方向に流れないのが世の常であり、彼らの知らぬところで一つの悪意が密かに蠢いていた。

 

 

 

 

 

 

 水路の開拓工事を始めて数日。

 未だに目的地点の半分にも到達していないが、水路は着実に砂漠の中心へと枝を伸ばしていた。

 

 

「――通達は以上だ。皆、本日もよろしく頼む」

 

 

 フィオナから預かった予定を伝え終え、ガイナーたちは目の前の人たち――8割が魔物だが――に水路の開拓再開を始めてもらい自身もその作業に加わろうとする。

 

 

「――む?」

 

 

 オルティーが鍬をもってふと顔を上げると、魔岩窟のほうから妙な砂塵が上がっていた。

 その様子につられて周りの作業者たちもそちらを向き、怪訝そうに首をかしげる。そんな中でマシューが目を細めて注視し、驚愕する。

 砂塵の発生源では多数の魔王のしもべや知性の低いモンスターたちが武器を掲げ、真っ直ぐにこちらに向かって来ていた。

 

 

「な、なんだあの連中は!?」

 

 

 同じように魔王のしもべたちに気付いたサンドリノ出身の作業員が驚くと、魔物たちから一斉に鬨の声が上がった。

 どう解釈しても、これは明らかな攻撃行動だ。

 

 

「作業中断! 作業員は速やかに仮設村へ避難せよ!」

 

「ま、待てよ! お前らはどうする気だ!?」

 

「我ら三人はあの連中を鎮圧する! マシュー! オルティー! 行くぞ!」

 

「「応!」」

 

 

 それぞれクロノから譲り受けた武器を手にし、一番近い敵に接近する。

 人間を逃がしたことでガイナーたちを敵と認識したのか、魔王のしもべたちは武器を握りしめ攻撃を始める。

 大振りな一撃が力任せに振るわれるが、いくつもの死線を潜り抜けてきた三人にとって遅すぎる攻撃だった。

 回避しつつ、ガイナーは声を張り上げて説得を試みる。

 

 

「なぜ我らを攻撃する!? ビネガー殿の宣言でも共存を目指すことで人間と魔族の戦いは終わったはずだぞ!?」

 

「共存!? んなもん知るか! 人間は黙って俺たち魔族に媚びてりゃいいんだよ!」

 

「そうだそうだ! それにお前らの邪魔をすれば僕たちはおなかいっぱいになれるんだ!」

 

「恐怖に怯えて魔族に服従する! 人間の存在価値なんてそれだけなんだからよ!」

 

「聞く耳持たぬ、ということか……ならば致し方あるまい!」

 

 

 どう説得しても無駄だと判断したガイナーは話し合いから実力行使に切り替え、持ち前の素早さを生かして魔王のしもべたちの間を駆けながら抜刀。致命傷を避けて一気に斬り抜ける。

 

 

「――あ?」

 

 

 魔王のしもべが気づいた時にはすでに地面に倒れこんでおり、ガイナーは次の一団に向かって駆け抜ける。すれ違った端から魔王のしもべが霧となって消滅し、同様にマシュー、オルティーもその圧倒的な実力をもって数の暴力をものともせず無力化に追い込んでいくと、10倍近くあったはずの戦力差はみるみるうちにその数を減らしていく。

 

 

「な、なんだこいつら!? ただのフリーランサーじゃねえのか!?」

 

「! ま、まさかこいつら、前に魔王城で暴れてた連中か!?」

 

「ほう、我らを知る者がいたか。 だが、気づくのが遅すぎたな!」

 

 

 鬼丸を一閃し、また一体を仕留めたマシューがオルティーを背後から狙おうとしていた個体に向けて手裏剣を放つ。

 さすがにこれ以上戦うと自分が危ないと判断したのか、残った魔物たちは我が身大事さに次々と逃げ出していった。

 その光景を眺めながらぐるりと辺りを見回し、ガイナーは「フム」とつぶやく。

 

 

「逃亡してくれたおかげで残存兵力なしとなれば、任務完了といったところか」

 

 

 朱雀を鞘に納めるとガイナーは先頭を走っていたリーダー格らしき魔王のしもべの元へ歩み寄り、威圧するように声を低くする。

 

 

「さて、話を聞かせてもらおうか。 何故、このような真似をした? 誰かの差し金か?」

 

 

 フリーランサーとは思えぬ迫力にたじろいだ魔王のしもべだが、何かを決心したのか汗を流しながらも不敵に笑う。

 

 

「へ、へっ! 人間の味方をするような連中に、教えるわけねぇだろ!」

 

「――むっ!?」

 

 

 手にした剣を掲げた魔王のしもべは握り手を逆手に持ち変えると同時に自分の体に突き刺し、自らその命を絶った。

 まさかためらいなく自分の命を捨てるとは思わなかったガイナーたちは、自分たちの失態に表情をゆがめる。

 

 

「……してやられたな」

 

「結局分かったことといえば、襲ってきた連中のほとんどが共存政策に反対しているということだけか」

 

 

 人間代表としてガルディア21世が、魔族代表としてビネガーが共存政策に合意したのが数か月前。

 背反していた種族間の溝がこの砂漠を中心に埋まりつつあったが、やはり全ての者が納得しているわけではないようだ。

 しかし共存に反対の声がある中、それ以外の主張をした個体がいたことが三人の中で引っかかっていた。

 そしてこの襲撃によって、新たな問題が仮設村にて発生することとなった。

 

 

 

 

 

 

 三人が仮設村に戻ってくると人間と魔族の間で剣呑な空気が漂っており、その真ん中で両サイドを抑えるようにロボが手を掲げて立っていた。

 嫌な予感を感じながら、ガイナーはロボに尋ねる。

 

 

「ロボ殿、何事ですか?」

 

「ガイナーさん、お疲れ様デス。実ハ……」

 

「だから魔族は危険だって言っただろ! いつ今日みたいなことがあるかわかったもんじゃねえ!」

 

 

 ロボの声を遮るように大きな声が響き、視線がそちらに集中する。

 パレポリから作業に来ていた大男が子供ほどの背丈しかないジャリーに向かって声を荒げていた。男の物言いに、ジャリーはどこか呆れたようにため息をつく。

 

 

「この作業に加わる前に、俺たちがお前たち人間に敵意がないことは十分伝えたはずだがな。こっちだって生活がかかってるんだ、自分にとって不利益になることをするわけないだろ」

 

「はっ! それこそ俺たちの寝首を掻くための言い訳じゃねえのか!?」

 

「何が悲しくてそんなくだらないことに労力を費やすんだよ。これだから被害妄想の強い脳筋は……」

 

「んだとコラァ!?」

 

「双方静まれぃ!」

 

 

 ヒートアップし始めた両陣営にガイナーたちが割って入り、ロボとともに交互に見渡す。

 

 

「今回、共存に強い反発感情を持つ魔族たちが出てきたことは確かに変えられない事実ではあるが、どうやらそれだけが目的ではないらしい」

 

「どういうことデスカ?」

 

「先ほど攻めてきた敵の中で、我々の邪魔をすれば食に関して問題がなくなると言ったものがいた。つまりこれは、彼らを雇ったものがいるという可能性が非常に高いということに他ならない」

 

 

 オルティーの解説に辺りから一瞬どよめきが走るが、先ほどから叫んでいる大男がのしのしと前に出る。

 

 

「おいおい、雇ったやつがいたとして、そいつにどんなメリットがあるってんだ?」

 

「そこまでは分からぬ。しかし、人間と魔族の感情を煽ることで黒幕が得をしようとしてることは十分にわかる」

 

「黒幕ねぇ……。実はそれ、お前らのことじゃねえのか?」

 

 

 にやにやといやらしい笑みを浮かべる男に三人が一瞬「むっ」となるが、すぐに元の表情に戻る。

 

 

「そう思いたくば勝手にするといい。しかし、我らはただ一人の主が下した人魔共存に全力を尽くすという命を全うするために行動する」

 

「行動するのは構わないけど、具体的にはどうするんだ?」

 

 

 ジャリーの質問に三人は一度頷きあい、ガイナーが代表して宣言する。

 

 

「我ら三人は一度この地を離れ、今回の騒動のきっかけを調査する。その間ここにいる皆に負担をかけることになるが、しばし辛抱していただきたい」

 

 

 そのことにジャリーたち魔族側は納得し、人間側は胡散臭そうにガイナーたちを眺めていた。

 

 

「ワカリマシタ、こちらハお任せ下サイ。フィオナさんにもワタシから伝えておきマス」

 

「感謝する――では」

 

 

 早速とばかりに三人はこの日の作業を改めて伝え、騒動の原因を突き止めるべくまずビネガーたちの元へ向かうことにした。




外伝第1話、いかがでしたでしょうか?

彼らの話が終わった後、今度は魔王にスポットを当てた番外編でも書いてみようかと考えています。
何が来るかは、どうかその時までお待ちください。

それでは、今回はこのあたりで。また次回の投稿でお会いしましょう。




-追 記-

先日ガンダムUCを題材にして『マリーダさんが好きすぎるオリ主がリディ少尉に憑依したら』というネタを思いついたのですが、自分でうまく書ける自信がありません。
どなたか書いてくれませんか?

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