ウツロナ ラクエンノ カケラ   作:kanpan

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【ご注意】独自解釈をいれつつのランサー召還エピソードです。


ランサー召還

 裂けた腹から飛び出そうな内臓を抑え、血まみれの体を柱に括り付けながら戦士は走馬灯のように己の一生を振り返る。

 ドルイドの予言の通り英雄となり、アルスターの盾として故郷を守った。

 だが常に誓約(ゲッシュ)に縛られ、大事な人々を己が手にかける人生だった。

 その生涯に悔いなどない。二度目の生などに興味はない。

 

 けれども、もしオレにそんなものが与えられるとしたら、今度こそ誰にも何にも邪魔されず全力を尽くした戦いがしたい。

 

 そして、彼は英霊の座に迎えられた。それからどれだけの時間が過ぎたのか数えることすらできない。

 

「———クーフーリン」

 

 英霊の座にて眠っていた彼を、時の果てから呼ぶ者の声が目覚めさせる。

 

「貴方こそが最強の英雄だ」

 

なんだかわからないが、おもしれえ。

いいだろう。槍兵(ランサー)の名にかけてアンタの声に応えよう

 

 

ー・ー・♢・ー・ー

 

 

 闇夜にルーンの火が灯る。初老の男が屋敷の蔵に向かって全速力で駆けていた。

 男は屋敷の結界が発した警報で叩き起こされた。この屋敷は神代から続くルーン魔術師の一族が構える家。男は一族に古より伝わるルーンの秘技を受け継ぐ当主だ。

 

 この一族はアイルランドの小さな漁村のさして立派でもない屋敷で細々と命脈を繋いできた。すでに権威も知名度も失われて久しいが、それでも彼らが持つルーン魔術の神秘は衰えてはいない。この屋敷に施されたルーンの結界は一級品であり、並の魔術師が破れるものではない。

 その結界を何者かが大胆に突破し、蔵を狙っている。

 

「———っ!」

 

 蔵に着いた男は扉を開けようと、鍵穴をがちゃがちゃと鳴らして取っ手を力一杯ひいたがびくともしない。おそらくは侵入者が中から扉を強化して塞いだのだろう。

 男は右拳の甲をなぞってルーンを描く。そして頭の後ろに大きく振りかぶり、

 

強化(テイワズ)!」

 

 ルーンで強化したパンチを蔵の扉にぶちこんだ。

 

 ぼごお!!!

 

 鈍い音とともに扉のど真ん中に穴が開いて、ばりばりと亀裂が入っていく。あっという間に扉は土塊に変わって蔵の中に砕け散った。

 

 明かりがなく真っ暗な蔵の中で人影が動くのを感じた。男は暗闇の中の人影に飛びかかっていった。

 男は魔術師であると同時に戦士でもある。彼の一族はその特殊なルーン魔術を受け継ぐ為に人並みはずれた格闘術を身につけている。男はすでに白髪まじりの頭になる年齢だがそれでもプロの格闘家にもエリート兵士にもひけをとらない屈強さを維持していた。侵入者が結界を破壊できる手だれの魔術師だとしても取っ組み合いになればこちらの勝ちだ。

 

 狭い蔵の中を侵入者は巧みに逃げ回っていたが、蔵の中なら男の方に分があった。男は自分の屋敷の蔵の中なら熟知しており暗闇の中でも十分に動ける。男は慎重に侵入者を追いつめ、ついに相手の体を掴んで柱に叩き付けた。

 相手の腕をねじ上げながらルーンの光で姿を照らす。闇にまぎれる黒いスーツ姿の侵入者の体は意外に細身に見えた。つかんだ腕にぎりりと力を込める。

 

「つかまえたぞ。賊め。顔をあげろ」

「痛っ……」

 

 侵入者は小声で呻きながら微かに頭をあげた。顔を確かめるために男は相手の頭に光を当てた。そこに照らし出されたのは、

 

 男と同じ鳶色の目、男よりも艶があって鮮やかな暗赤色の髪。

 その顔は見覚えのある、若い女だった。 

 

「おまえは……」

 

 それだけ呟いてそのまま男は言葉を失ってしまう。

 女はとまどったように、照れたように、ごまかすように微笑んでいた。そして恥ずかしそうに、一言。

 

「お久しぶりです、父さん」

 

 

 

「バゼット! ここで何をしている!」

 

 男は思わず声を荒げたが、その際にうっかり女を捕まえていた手の力が緩んだ。その隙を逃さず彼女は男の腕を振りほどき脇をすり抜ける。走りながら棚に手を伸ばし、棚の木戸を叩き割ると、そのまま中にしまっていた物をつかみ取った。そして蔵の外へ一目散に逃走していった。

 彼女の後ろ姿を男の怒号が追いかけた。

 

「何故ちっとも帰ってこない! たまには里帰りしろ!」

 

 男は拳にルーンを描いて地面に叩き付けた。トゲのルーン文字thurisaz(スリザズ)。その一撃で地面が割れる。衝撃波が蔵の外まで広がっていき一直線に彼女めがけて伸びていく。地面の割れ目からガガガガッと鋭い岩のトゲが突き上がっていった。

 

 女は身軽にステップを切ってトゲをかわしてゆく。まったく走る速度を緩める事なく屋敷の出口に向かって疾駆する。

 男は次なるルーン魔術の攻撃を打ち出しながら叫んだ。

 

「だいたいその格好は何だ! なんで男物のスーツなんか着てるんだ!」

 

 (ハガラズ)のルーンで作られた氷のつぶてが女の背後を襲う。それをとっさに地面に横転して避けた。女の頭上を刺すような冷気とともに鋭い氷の刃が通り過ぎていき、屋敷の外壁にぶつかって壁をバリバリと凍り付かせる。

 

 女は地面でくるりと一回転して立ち上がり、その反動を利用した無駄のない動きで再び走り出した。屋敷の入り口の門がもう目の前だ。

 

 門には物理的な鍵と同時に魔術的な鍵も仕掛けてある。無理にこじあけようとすれば迎撃用のルーン魔術が起動する。

 彼女はそれを承知で真っ正面から門に突っ込んでいった。駆けながら両足にルーンを刻む。

 

ansuz(アンサズ)ehwaz(エワズ)inguz(イングス)!」

 

 両足をルーン魔術で強化して屋敷の門にドロップキックを見舞う。ルーンの光が彼女の両足を包み、閃光弾のように門の扉を爆砕した。

 即座に門に施された迎撃魔法が彼女をしとめようと攻撃を始めたが、すでに彼女は勢い良く屋敷の外に飛び出した後であった。

 

 彼女の背後から男の怒声がまたしても響いてくる。

 

「それを持ち出してどうするつもりだ!」

 

 彼女は走る脚を止めないまま、一度だけ振り返って叫んだ。

 

「ごめんなさい父さん。そのうち返します!」

「バゼット! こらあああああああああああ」

 

 人気のない真夜中の村に響く男の声だけを残して、女の姿は夜の闇に消えた。

 

 

 

 侵入者の正体はこの男の娘バゼットだった。

 彼女は15歳になり正式に一族の後継者となってから間もなく、ロンドンの魔術協会に所属するといってこの家を出て行った。それっきり滅多に戻ってこない。

 

 男の一族はこのさびれた小さな漁村の古びた屋敷で、神話の剣を受け継ぎ、子孫に伝え、そして殆どの人間に知られることなく、古の神々のように忘れられていく。そんな生き方があの娘には耐えられなかったのだろう。

 

 男は無言で倉に戻った。娘が荒らしていった棚を見る。棚の中に置いてあったものがなくなっていた。おそらく娘はそれを持ち出す為にやってきたのだろう。

 荒々しく壊された棚の木戸と棚の中にぽっかりとできた空間を眺め、男はふと幼い頃の娘を思い出した。

 

 子供の頃から聞き分けの良い娘だった。一族の秘技を受け継ぐ定めを素直に受け入れ、日々の鍛錬を真面目にこなしていた。同じ年頃の子供が楽しむ遊びに興味を示さず、課せられた責務を受け入れていた。冷めた子供だった、と言ってもよかった。

 

 そんな娘がただひとつだけ夢中になっていたものがあった。昔話の英雄の物語だ。この国ではどこの家にもある昔話の本を、娘は何度も何度も読みかえしていた。

 

 そんな娘の姿を見た男は、ある日、娘を蔵に連れてきた。特別にだぞ、と言い含めながら娘に棚の中にしまっていたものを見せてやった。

 

「これがあのクーフーリンがつけていた耳飾りだ」

 

 娘は眼を輝かせて一心にその耳飾りを見ていたものだ。

 

 

ー・ー・♢・ー・ー

 

 

 故郷の村を走り出たバゼットはもう振り返ることなく先を急ぐ。

 目的地は日本にある冬木市という街である。ここで「聖杯戦争」と呼ばれる大規模な魔術儀式が行われる。

 

 バゼットが故郷を出てからもう8年が過ぎていた。

 15歳で魔術協会に所属したバゼットはその実力を買われ、封印指定執行者という役目を得ていた。執行者の役目を大まかに言えば、魔術協会にとって都合の悪い問題、たとえば魔術を悪用したり暴走させたりして魔術の神秘を一般社会に露見させる者が出現した場合、そうした者たちを始末する戦闘要員である。

 

 バゼットは魔術協会の代表として聖杯戦争に参加する事を命じられた。聖杯戦争に勝利して聖杯を魔術協会に持ち帰ることが任務だ。

 

 聖杯戦争には7人の魔術師が参加する。魔術師はマスターと呼ばれ、それぞれサーヴァントと呼ばれる使い魔を召還する。この7組が互いに殺し合い、最後まで勝ち残った1組が聖杯を手に入れることができるのだ。

 そして聖杯戦争においてサーヴァントとして召還されるのは通常の使い魔ではない。マスターには聖杯によって伝説上の英雄を召還する力が与えられる。

 

 魔術協会によって指名され、英雄召還のための触媒を手に入れたバゼットは聖杯から正式に聖杯戦争の参加者として認められた。その証が彼女の左腕に刻まれている。

 令呪。マスターとサーヴァントを結びつけ、そしてサーヴァントへの絶対命令権となる3画の刻印。

 バゼットの左腕にある赤い紋様はまるで槍のような形をしていた。

 

 

 封印指定執行者としての役割を得てからもバゼットは淡々と課せられた任務をこなしていた。他人からはともかく、彼女自身は相変わらず子供の頃と同じく作業のように日々を過ごしていた。

 

 けれども、

 聖杯戦争。この任務についてからバゼットは始めて自らの役割に楽しさを感じているのだ。

 手にしたクーフーリンの耳飾りを握りしめる。

 

 ———いと崇き光の御子。

 

 五つ国に知らぬものなく。

 彼を愛さぬ女はおらず、彼を誇らぬ男はおるまい。

 槍の閃きは赤枝の誉れとなり、

 戦車の嘶きは牛奪りを震えさせる。

 

 

 彼の存在を信じてはいなかったけれど、彼は子供の頃に憧れたおとぎ話の英雄だとしか思っていなかったけれど。

 もし本当に会えるというのなら、召還するのはあの英雄しかいない。

 

 幼かった頃の彼女は昔話の本を読みながら何度も思ったものだ。

 

 何もできない私だけど、もし許されるのなら、彼を救いたいと”願ってもいい”のでしょうか———。

 

 それが叶う時がやって来るなんて。

 

 

ー・ー・♢・ー・ー

 

「あ———」

 

 溜息のような、感嘆のような小さな声が聞こえる。

 召還されたランサーが目を開けると目の前に一人の人間が立っていた。

 

 ん……女……?

 

 サーヴァントは召還と同時に聖杯によってその時代の知識を授けられる。ランサーが見たところ、目の前の人間の髪はショートカットと呼ばれるスタイルで短めに切りそろえられ、スーツと呼ばれる黒い布地で全身を覆う服を身につけている。ランサーの理解ではスーツとはこの時代の、主に男向けの軽兵装といったところだ。

 だが胸元や腰回りのシルエットをみれば男でない事は一目瞭然だった。

 

「……クーフーリン」

 

 ランサーの前にいる女はまるで懐かしい相手、親しい仲間を見るような顔をして、彼の名を呟いていた。

 現状から察するにこの女が彼を召還した魔術師に違いない。ランサーはさっきからずっと驚いたように彼の顔を見つめ続けている彼女に問う。

 

「アンタがオレのマスターか?」

 

 女がはっ、と我に返ったように背筋を伸ばした。彼女の眉根が引きしまり、瞳に力が込もる。少し緊張した声で彼女は名を名乗った。

 

「私の名はバゼット・フラガ・マクレミッツ。故郷アイルランドの英雄クーフーリンよ、聖杯戦争を勝ち抜く為に私に力を」

 

 同郷の人間だったか。なるほど納得だ。彼女はアイルランド人らしい暗赤色の髪と目をしている。それに、

 

「……フラガ?」

 

 彼女はランサーが聞き覚えのある名を口にした。フラガとは光の御子たるクーフーリンのの父に当たる太陽神ルーの剣の名前である。

 

「ええ、私はルーに使えた魔術師一族の末裔であり、赤枝の騎士の精神を受け継ぐ者です」

 

 なるほど。彼女はランサーを召還するに相応しい、いわば彼ら古代アイルランド戦士の子孫ともいえる人間なのだ。

 

 バゼットと名乗ったこの女魔術師からランサーに伝わる魔力は申し分ない。ランサーが生きていた神代から遥かな時を経た後の世代、神秘が薄れたこの時代においては彼女は高位の魔術師に違いない。彼女がマスターならば自分の力を不自由なく振るえるだろう、とランサーは感じた。

 宝具が槍だけで戦車も城も持ってこられなかったのが残念ではあるが、戦場がこの極東の国では仕方があるまい。

 

 名乗り終えたバゼットはまだ硬い表情のまま、まっすぐにランサーの顔を見据えている。ランサーはにっと笑って赤い瞳をぱちりとウィンクしてみせた。

 

「もちろんだ、現代の赤枝の騎士さんよ。ここに契約は成立した」

 

 そんなランサーの態度にバゼットの緊張が崩れる。バゼットは少し戸惑ったような顔になった。

 

「えっ、と……」

「なんだよ。ま、そんな堅くなりなさんな。これからアンタとオレは相棒なんだぜ」

 

 ケラケラと笑いながらランサーは軽口を叩く。これから共に戦う仲間だ。そんなに気を張っていてはこの先疲れてしまうだろう。

 バゼットは、はあ、と軽く溜息をついて肩の力を抜いた。

 

「まだ、貴方をこの世に召還できたという実感が湧かないのです。なにしろ貴方は私たちアイルランドの者にとっては伝説の大英雄なのですから」

 

 張りつめていた部屋の中の空気が少しづつ緩んでいく。

 

「あの……」

 

 バゼットがおずおずとした声でランサーに話しかけてきた。先ほどの緊張と意気込みはどこへいったのかと少々拍子抜けしてしまうくらいに。

 

「私がマスターで不満はないのでしょうか?」

 

「あ?」

 

 今度はランサーが一瞬きょとんとしてしまった。が、馬鹿馬鹿しいので、すぐに笑いがこみ上げてくる。

 

「ははははははは! 今さら何を言ってんだアンタ」

「なんですかランサー、そんなに笑わなくても」

 

 ランサーはむくれるバゼットを気分良く笑い飛ばしながら言った。

 

「昔、一度だけ女戦士と戦った事があってな。アンタには、あの女の面影がある」

 

 

ー・ー・♢・ー・ー

 

 

 その後、ランサーとバゼットは聖杯戦争について必要な事項をあらかた相談し終え、部屋の中で特にやることもなく寛いでいた。

 

「おっと、そういえば。バゼット、ちょっと頼みがあるんだが」

「なんですかランサー?」

 

 不意にランサーから声をかけられてバゼットは振り向いた。

 

「マスターは令呪というヤツを持ってるんだろ。見せてくれよ」

「え……」

 

 ランサーは軽い興味で聞いてみただけだったのだが、バゼットは慌てて左腕をぎゅっと握りしめる。

 

「あれ、ダメか?」

「そんなことは……ありませんが」

 

 バゼットはなぜか焦りながら、左そでをまくり上げようとしている。しかしスーツの上着の生地はしっかりしていて肘までまくり上げられない。

 バゼットは急に顔を上げて真顔でランサーの目を正面から見つめた。

 

「そうですよねランサー。貴方はサーヴァントなのですから、やはり自らを縛るものが気になるでしょう」

 

 バゼットはそう一気に言い終えて、ふう、と一度深呼吸をしてから、やおらばさっとスーツの上着を脱ぎすてた。そしてネクタイに手をかけてするりと首元から抜き取る。

 

「え!? 何すんだアンタ」

 

 驚いて眼を丸くするランサーの前でバゼットはパチパチとシャツのボタンを外していく。首筋から胸元の白い肌があらわになる。ランサーの眼はさらに丸くなる。

 

「お……」

 

 バゼットは左腕をシャツの袖から引き抜き、左半身をはだけて見せた。

 なにも身につけていない左腕をランサーの目の前にかざす。腕の肘の上あたりに細長い模様が現れていた。バゼットの雪のような色白の腕の上に赤い令呪が色鮮やかに刻まれていた。

 

「どうですかランサー、これが私の令呪です。…………ランサー?」

「おおお……」

 

 ランサーはついふらふらとバゼットに近づいた。

 左腕の令呪。引き締まってなめらかな二の腕。鎖骨のくぼみ。まっすぐで綺麗な喉元。

 そして、その真下の豊かでやわらかそうな球体。

 触ると想像通り、いやそれ以上の弾力と手応えがあって——————

 

 がすっっっっっっ!!!!

 

 何かが突き刺さる音がした。あれ、何だろう? という他人事のような一瞬の思考を経たのちランサーは、

 

「痛ってええええええええええええ!!!」

 

 額を押さえて床をのたうち回ったのだった。

 床を転げるランサーの横にどさり、と重そうな物が落ちる。ランサーは痛みを堪えながら落ちてきた物を拾ってみた。

 

『完訳ケルト神話大全』

 豪華上製本。総ページ数800ページ。重さ約2キロ。

 ちなみにその本のカドはぐしゃりとひしゃげていた。

 

「ひ、ひでーよバゼット。いくらオレでもこれはダメージでかいぜ……」

 

 かろうじて床から体を起こし立ち上がろうとしたランサーの眼にさらに信じがたいものが映る。

 バゼットがソファーを頭上に抱え上げて立っていた。手がふるふると震え、眼にはうっすら涙が滲んでいる。

 

「バ、バゼット?」

「私の憧れのクーフーリンは……そんなこと言わない!」

 

 バゼットの泣き声とともにソファーがクーフーリンめがけて飛んできた。

 

「うああああああ!」

 

 ランサーはそれを素早く避ける。が、その後も泣き叫ぶバゼットは部屋中のありとあらゆる物をランサーに投げつけたのだった。

 ランサーは敏捷ステータスAの能力を遺憾なく発揮して飛来する家具や日用品をひたすら避けつづけながら思う。

 

 ああ、矢除けの加護がなかったらオレここで死んでたな。

 それにしても憧れのって……。一体バゼットのイメージの中ではオレはどのように美化されてんだろ?

 

 

 1月23日。

 こうして、魔術師(マスター)バゼットと槍の英霊(ランサー)クーフーリンの聖杯戦争が始まった。

 




バゼットの令呪の場所は左腕の上のほうという解釈にしてます。

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