ぼくのかんがえた(ry でアイラたんに恨みをぶつける物語 作:ユルサナイネン
Gジェネフロンティアが重すぎる。ダブルオーライザーが作れないじゃないか(絶句)
今回で前話は終わり。次から本編。アイラたんを泣かせたら終わります。
「おーヒナタヒナタ。何かさ、生徒会執行部の奴が中学生とガンプラバトルをしてるらしいぞ」「ゴンダの野郎が八つ当たりしてる感じらしいぞ」
モゴモゴと焼きそばパンを頬張りながらクラスメイトの話を聞くミズキさん十九歳。何か盛り上がっているようだが何かあったのだろうかとビルドファイターズの時系列を思い出そうとする。
ゴンダといえば……モガモゴゴゴ。
「お、おいヒナタァ!?」
焼きそばパンを咥えたまま慌ただしく教室から出たミズキは体育館に走って向かう。もし、自分の考えている事が正しければこのイベントはあの二人が初邂逅するはずだ。
ビルドファイターズという作品のトリを務める主人公とライバルの二人が初めて会い、初めて戦うイベントが起こっている最中だと思いながらも同時にセイの作るガンプラのビルドストライクの出来を視察する為に足を速める。
体育館のガンプラバトルベースのある場所に入れば、もう既にバトルは始まっていた。ビルドストライクらしきガンプラとゴールドスモーが戦っている。
「む。ヒナタ君ではないか」
いやいや。とツッコミを入れるミズキ。何でラルさんいるの? とイベントの細かい部分を覚えていない事に少し記憶力に自信を無くす。
隣には見覚えのある委員長タイプの少女がいる。何故か自分を睨んでくる事が解せぬと思いつつも戦いの佳境に入るガンプラバトルに注目する。世界大会のライバルとなるであろう、異世界の王子というイミフ設定のレイジの実力も調べる必要もある。
タツヤがシナンジュを操ると豪語した事も考えると、ビルドストライクがスタービルドストライクに乗り換えするタイミングが早まったりスタービルドストライク以上のガンプラが生まれる事もありえるわけだ。
それを踏まえた上でこちらもユニコーンを改造するか否か、方針を決める。特に主人公補正の掛かるレイジ、アリスタを持つ故に不可解逆転展開も起こり得るのだ。同じアリスタで対抗する事も考慮している。アリスタも欠片だけ確保しているミズキだからこそできている準備なのだが、それでも安心できないのがアニメの世界の展開だ。
この前はすいません、とラルさんと対戦した時の寝落ちを詫びる。あの後にナニがあったかは憚れるが、取り敢えず謝るミズキ。
「ハッハッハ。構わんよミズキ君。いいものを見せてもらったから気にしていないよ」
どうも、と謝るとガンプラバトルに再び顔を向ける。アニメで見たような景色をそのまま再現するようにゴールドスモーがビルドストライクに敗れる。ゴンダという執行部員が絶叫しているがレイジの踏み台みたいな扱いをされればそうなるわな、と哀れに思う。
ミズキからすればゴンダはタツヤを崇拝するが故に突っ掛る邪魔者というのが彼に対する印象なのでそんな感情しか抱けない理由もある。
「流石はレイジ君。彼の才能は素晴らしいものだ。セイ君のガンプラの完成度も相まって凄まじい化学反応を起こしている」
対してミズキは別の感想を抱く。後期のレイジならまだしも、今のレイジではユニコーンを使わなくともアゲハのウィングを借りるだけでも十分に勝てるな、と評価を下す。
そう考えるとレイジの成長率がインフレ化している。主人公補正があったとしても異常そのものだと感じていた。摘むなら今、という考えが浮かんだがガンプラファイターとしての誇りにも似たそれがそれを許さない。勝つなら真正面から勝つのがファイターとしての使命……とビルドファイターズの世界に馴染んできたようである。
「――故に彼はこう言われる。紅の彗星、と」
ラルさんの解説を聞きながらもいきなり乱入しているタツヤに呆れるミズキ。本気モードのオールバックにしてグラハムが乗り移ったような言動をしながらビルドストライクをボコしてる。大人げない。まるで大人げない。初心者相手に大人げない。
グラハムになるのはいいが、もう少し自重をだな、と思わずにはいられない。
考えている間にも決着が着いたようでタツヤがこっちに手を振ってる。こっちに振ってんじゃねーよとツッコミを入れる。レイジとかセイにバレるだろーがと思う。
既に手遅れです。とセイに手を振られるミズキ。知らない仲ではないので振り返すが、レイジがセイにこちらを指差す姿に嫌な予感しか感じない。
完全に目を付けられたか、と逆の意味でポジティブに考える事にした。ここで面識を持てた事は近付けるチャンスが増えるということ。セイに悪いが良い顔をして偵察をさせてもらおうと外道思考をする。
「ちなみにだがこのミズキ君は超新星と呼ばれている」
――は? と声に出さずとも変な声を漏らす事になる。
「ミズキ君、少し前まで多くのファイターとガンプラバトルをしているだろう? 軒並みに勝利した事で期待の新星、されど大型新星という事で超新星と名付けられてる。皆、君に期待をしている事になるな」
「へー。すごいんですねーヒナタ先輩」
棒読みなのは気のせいか? と思う。どうもこの少女はミズキを目の敵にしているようで、ミズキからすれば思い当たる理由がわからない。
コウサカ・チナ。多分、この少女の名前はこうだろうと思い出す。だけど睨まれる筋合いはないはずだが、と疑問に思うしかない。どこかで恨みを買ったのだろうかと考えを巡らすが、思い当たらない。
これ以上睨まれるのも嫌なのでミズキは一言断りを入れてその場から離れる事にした。途中でタツヤと合流して会話をする。特にレイジの実力はどうだったか、を。
「ああ。彼は今はまだ弱いが、これからどんどん強くなるだろう。先程のバトルで彼の未来を垣間見た。君と並ぶライバルになるだろう」
スタービルドストライクのパイロットとなれば、それはもうチート級の強さになる。それはボロボロになりながらも勝利を収める事を知っているミズキは反応を返せなかった。
タツヤも驚異だが、恐らく最大の驚異となるのはレイジだ。特にイオリ・セイのビルダーの腕が更に進化を遂げると恐ろしい事になる。更にタツヤもシナンジュを使うと言い出す。もうどうすればいいのやらと頭を抱える毎日が前までは続いていた。
「彼の、イオリ・セイ君が作るガンプラとあのレイジ君。あのタッグであれば世界大会でも上位に食い込む。油断はできないな?」
それはもう。と返す。そこはよく自分がわかっている。
油断ができないのはお前も同じだがな、と言えばタツヤは苦笑する。油断してくれた事が嬉しいのか、友人にそこまで警戒されている事がショックなのか。おそらくは両方だろう。
「ヒナタ選手にもよろしく」
ああ、と終わるやり取りが最近のタツヤとミズキの会話だ。タツヤの宣言した敵同士発言を律儀に守る事で少ない会話で済まされる事が多いわけだ。
所変わり、ヒナタ家。世界大会の地区予選が近い事もあり、ミズキとアゲハは最終調整に入っていた。自分の操るガンプラの操縦慣らしをしたり、不満な点をミズキに告げて微調整をさせたりとほとんどがミズキ任せになっているが。
今は大会があるので手の内を明かしたくないと別々に別れて準備を進めている。
ユニコーンの変身を課題に、長らく情熱を注いできたミズキとしてはビルドファイターズの世界観、更に細かい設定を知らないままで完成はできずにいた。
棚から牡丹餅、意外な盲点。ガンプラを改造するのではなくGPベースに完成の糸口があった。携帯電話にも見えるそれの中身はプラフスキー粒子の発見に伴ってメモリ等も強化されていると気付いた。
携帯ゲーム機のセーブデータ保存に使われるような小さな物でもかなりのデータを保存できる事を知り、更にはGPベースにもそれが使われている事を知ると開発は一気に進んだ。
ラルさんと戦った時はそれに気付いての試運転だったが、ミズキが思った以上の成果をたたき出せた。
ユニコーンデストロイモードへの変身をモビルスーツからモビルアーマーへの変形を参考にすると話は簡単なのだが、一から構成すると経験値が大量に必要になる。正確には稼働データがだ。
Ζガンダムを始め、変形するモビルスーツは元々のビルドファイターズの世界にあったものは所謂、運営が変形するプログラムをガンプラバトルフィールド内に組み込んでいる。だからこそ何もしなくても変形ができる仕組みなのだ。
しかし、ユニコーンはまだガンプラとして存在は確立していない。ユニコーンモードは発売予定だが、デストロイモードに変身できるプログラムはガンプラバトルシステムに組み込まれていない事になる。
だからこそユニコーンをガンプラバトルで動かしてミズキ専用にする意味合いも含み、動かして動かして……を繰り返して完璧なユニコーンを作る事が今行っている事なのだ。
ヒナタ家にあるガンプラバトルフィールドを使い、ユニコーンを動かす。動かすだけではなくユニコーンの標準装備のビームマグナムとIフィールドもあるシールドがスムーズに動くのかも確かめる。
ユニコーンモードは前々から使っていたので問題はないようだ、とミズキは思うがデストロイモードを加えた事でおかしな場所はないかと調べる。
――デストロイモード、始動。
ある程度の動作確認をすると、SP欄にあるデストロイモードを起動させる。特製アリスタクリアパーツが赤く輝き、ユニコーンは真のユニコーンに変わる。
角が割れ、一際大きくなったユニコーンは間に見えるクリアパーツ、サイコフレームに当たる部分が赤く発光しながらゆっくりと回転しながらフィールドの宇宙を駆ける。
赤く光るのはユニコーンだけではない。操るミズキの両手の中指に着けられた指輪も淡い赤を放っていた。チラリとミズキはその指輪を見ながらユニコーンは宇宙の中を移動する。
これもビルドファイターズという作品を見た事で得られるズルの一つ。作中のレイジ、アイラの両名がアクセサリーとして使っていたアリスタ。それがガンプラバトルで摩訶不思議現象を引き起こす要因となると考察しているミズキは純粋なアリスタではなく、残りカスを安物の指輪の宝石に削り入れた。擦り込んだ、とも言える。
ユニコーンの設定でもあるサイコフレーム、それもサイコフレーム搭載機の中でも異質なフルサイコフレームシステムを最大限に再現するのにアリスタを使っている。
これでアリスタを使っているのはユニコーンのクリアパーツ部分、ミズキのアクセサリーの指輪二つ。指輪はユニコーンのデストロイモードをコントロールするのに使うのだ。
コンソールを操作する彼は作中のユニコーンの暴走時の動きを思い出しながら高速で移動させる。赤い軌跡を描きながらジグザグと飛び始める。その高速さにコントロールが困難になり、ミズキは少しだけ顔を顰めてスピードを落とす。
これでまだ全力のスピードではないのだからユニコーンのスペックが恐ろしいものだと改めて感じる。
――あ。とミズキはやってしまったと声を漏らす。フィールドが狭いのもあってか、凄まじいスピードのユニコーンはフィールドの外に飛び出す。デストロイモードが解かれ、ユニコーンモードに戻ったユニコーンは勢い余って壁に激突する。
うああああ、と激突したユニコーンのガンプラを見て頭を抱えるミズキ。壁に当たった事でユニコーンの象徴でもある白い角がポッキリと折れていた。何とも災難である。
すまぬ……すまぬ……と心からガンプラに謝りながらもGPベースに蓄積された稼働データはしっかりと確認していた。ガンプラファイター、ヒナタ・ミズキ。ガンプラ、ユニコーンガンダム。稼働回数七十四回。
七十四回も試運転をした事でユニコーンがガンプラバトルでどう動くかをGPベースにある程度記憶され、普通のガンプラと同じように普通に戦えるだけの完成度にまで達した。後は野となれ山となれ、ミズキのファイターとしての腕に全てがかかっている。
ユニコーンの角を新しいパーツに変えて修理をし、少しだけ磨く事で角は輝いて見える。これからの戦いはこのユニコーンに任せっきりになるだろう事を予知すると、大事に扱おうとショーケースの中にそっと仕舞うのであった。
――よし。とミズキは仕事を終えた。時計を確認し、夕食の時間も近付いているのでそろそろ母を手伝おうかと伸びをしながら部屋を出る事にするのだった。
アリスタ指輪を外し、盗まれぬように紐に通して首から下げて服の中に入れるとヒナタ家のリビングに向かって降りるのだった。
二日後、地区予選は始まる。