ISGジェネレーション   作:京勇樹

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鋼鉄の七人1

「この戦いを最後に、キンケドゥさんとベラ艦長は海賊から身を引いて、パン屋さんを開店しました」

 

「本当の名前、シーブックとセシリーとしてな」

 

「だけど数年後、また木星帝国が動くんだ……禁断の兵器を建造してな」

 

三人がそう言うと、映像が切り替わった

場所は、どこかの渓谷らしい

旧式MSがMSサイズの工具を持ち、なにやら作業している

その時、爆発が起きた

その直後、警報音が鳴り響いた

 

『敵襲っ!』

 

『盗賊……じゃない、木星帝国か!』

 

『アマクサ確認……まて、未確認機が1! 新型が居るぞ!?』

 

三機が見ていた先には、二十機以上のMSが展開していた

その殆どがガンダムに似た造形の機体

アマクサだった

アマクサはこの時代には珍しく、20m近い大型機だ

しかしその性能は、バタラ等とは比較にはならない程に高かった

その理由は、木星帝国の技術でクロスボーンガンダムを超える機体を作ろうと開発されたからだ

故に、この時代としては珍しい20m級になったのだ

しかし、それに比例するように性能は高い

直哉達は知らなかったが、以前にとあるバイオ脳を搭載したアマクサが、クロスボーンガンダム・X1改・スカルハートに大ダメージを与えている

その時はトビアの機転で撃破

そのバイオ脳の量産計画は止められた

だが、アマクサのデータは既に木星帝国に送られていたのだ

故に木星帝国でアマクサは、少数製産されて親衛隊等に配備されている

つまり、精鋭部隊ということ

そして何よりも、そのアマクサ隊の中心に立っている未確認新型機

その機体から、凄まじいプレッシャーを三人は感じていた

その機体はモノクロに塗装されており、鳥を彷彿させる造形だった

その機体がこちらを指差すと、アマクサ隊が動き出した

 

『工作隊、退避しろ! 防衛隊、前進!』

 

『相手は精鋭だ! 絶対に一機で戦うな!』

 

『ハリソン大尉、そちらの指揮は任せます!』

 

『了解した!』

 

その会話を皮切りに、戦闘が始まった

防衛隊はある一ヶ所を守っており、その先に進ませないように奮闘している

アマクサ相手には耐えていたが、あの未確認新型機が動き出すと戦線が押され始めた

 

『なんだ、あの機体は!? 動きがデタラメ過ぎるぞ!?』

 

『事前に気付いてる……? NTか!?』

 

『いや、NTとも違う……なんなんだ!?』

 

なんと、直哉達三機がかりでもその機体に終始押されている

機体の各関節部分の可動範囲が広く、通常では考えられない回避をしたと思ったら、そこから反撃が来る

その戦闘力はNTに匹敵するが、直哉はNTではないと感じていた

 

『ぐうっ!?』

 

『こいつ、本当になんなんだ!?』

 

『気を付けろ! カリストは、サイキッカーだ!』

 

蹴られた一夏機のカバーに直哉が入った時、女性の声が聞こえた

 

『エウロペ女史!?』

 

『サイキッカーって、超能力!?』

 

『オカルトかっての!!』

 

三人はそう言うと、直哉を先頭にして一列になって突撃した

だが、その三人の連携すらもカリストは全て紙一重で回避

三機に素早く攻撃を繰り出し、押し飛ばした

三機が岩壁にぶつかると同時に、今度はクロスボーンガンダム、ガンダムF91、量産型クァバーゼが飛び掛かった

パイロットはトビア、ハリソン大尉、ギリである

三人共、パイロットとしてはトップエースである

そんな三人でも、カリストに一撃も入れられないでいた

まるで、動きを読まれているように

直哉達は態勢を立て直すと、近くに来たアマクサの対応を始めた

アマクサは複合武装でもある楯のクローを突きだしてきたが、それを直哉は屈んで避けて、ビームサーベルをコクピットに突き刺した

一夏機はすれ違い様に、アマクサの頭をもぎ取り、倒れたアマクサのコクピットを踏み潰した

弾は銃剣を膝裏に突き刺すと、そのアマクサを蹴り飛ばし別のアマクサにぶつけて二機纏めて撃ち抜いた

直哉は機体を戦闘機形態にすると、一気に上昇

カリストの真上を取ると、今度は急降下した

よく見ると、機首下部に箱が付いている

直哉の狙いに気付いたのか、カリストと交戦していたトビア達は一気に離れた

その直後、機首下部の箱から次々と鉄塊が射出された

それに連動するように、ビームライフルとグレネードも連射

地面に着弾し、土煙を巻き上げた

その直後、周囲に布陣していたトビア達と一夏、弾が一斉砲撃を敢行

普通だったら、終わっているのは間違いないだろう

しかし、予想外の事態が起きた

土煙の中からビームが発射され、直哉機の右主翼を撃ち抜いた

 

『なにぃっ!? ガアッ!!』

 

『直哉!!』

 

『今ので、無傷かよっ!!』

 

直哉機は岩壁にぶつかり、一時機能停止

土煙の中から姿を現したカリストは、無傷だった

それを見て、殆どが戦慄していた

あの攻撃で、無傷の敵

カリストと戦っているパイロットは、全員がトップランクのパイロット達だ

だと言うのに、一撃も当てられない

既に、他の木星帝国軍MS部隊はほぼ全滅している

数では、こちらが圧倒的に優勢だ

しかし、エースパイロット全員で掛かっているカリストが倒せない

その時だった

全員の頭上を、一機のティルト機か煙を上げながら通り過ぎた

 

『いかん! 防衛隊、そのティルト機を撃ち落とせ! 行かせるな!!』

 

そのティルト機の進んだ先には、岩壁に引っ掛かってる不恰好なMSがあった

それが破壊されたら、木星帝国の野望を阻止出来ない

ハリソンの命令を受けて、無事だった防衛隊MSがティルト機を狙ってビームを撃ちまくった

それによりティルト機は撃墜出来たが、カリストと交戦していた全員の意識が僅かな時間だったが、カリストから離れた

その隙を突いて、カリストが包囲網を突破

その引っ掛かってるMSに接近を始めた

 

『行かせるなぁ!!』

 

『止めろ!!』

 

一夏と弾が進路上で足止めしようとしたが、弾機を蹴って一夏機にぶつけた

そして、カリストはビームライフルを構えた

その直後、引っ掛かっていたMSが背中の板状のパーツを外してカリストに突撃した

カリストは狙いを変えて、そのMSを撃った

ビームの直撃を受けて、そのMSは中破

倒れた

 

『おい、あのMSには誰が乗っていた!?』

 

『エウロペ女史です!』

 

『エウロペさん!』

 

ハリソン大尉が問い掛けるとオペレーターが返答し、それを聞いたトビアが声を張り上げた

するとどういう訳か、カリストが動きを止めていた

トビアはその隙を逃さず、持っていたピーコックスマッシャーを発射

それをカリストは避けたが、トビアはそれを読んでビームザンバーで斬りかかっていた

しかし、それは腕を斬り飛ばされて防がれた

だがトビアは、腰部チェーンアンカーを使ってビームザンバーを掴むと、カリスト目掛けて振り下ろした

どうやらその一撃は予想外だったのか、命中

カリストはバランスを崩した

その時

 

『アアアァァァァァ!!』

 

なんと、直哉機がカリストに体当たりを仕掛けた

そして、カリストを岩壁に押し付けると

 

『今だ、やれぇ!!』

 

と声を上げた

その瞬間、トビア以外の全員がビームサーベルや銃剣をカリスト機に突き刺した

それでもカリスト機は直哉機を突き飛ばして、逃げようとした

だが、既にトビア機が左手でビームザンバーを振り上げていて

 

『これで……終わりだぁ!!』

 

と一撃入れた

この一撃でカリスト機は、完全に機能停止

未来への希望は守られたのだった


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